もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

344.探すよー

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 追加されたヘルプを見てみる。
 それによると、別時空イベントは全部で十種類あって、ワールド内に点在する時空門から転移した先で行われるものらしい。

 マップを見てみると、霊峰頂上に青い点がついていて、『花月の祝い』と表示されていた。
 他にも九箇所に青い点があったけど、表示は『???』だ。誰かがクリアしないとどんなイベントがそこで起きるのかわからないらしい。

 ただ、別時空イベントが開催されるのは時空門周辺が白い雲——時空雲で覆われている時だけ、という情報は出ていた。
 僕は偶然別時空イベントに参加できたんだね~。ラッキーだったな♪

「他の別時空イベントも面白そうかも。気が向いたら行ってみよ~」

 そう呟いては見たけど、時空門がある場所はどこも行きにくい場所だから、あまり積極的に行くつもりはない。
 きっと他のプレイヤーが攻略を始めるだろうし、情報が出てから行くかどうか決めようっと。

 それよりも今は天兎アンジュラパとの交流が重要だよ!

 みんな、まだ別時空にいるのかな?
 霊峰頂上で天兎アンジュラパが見当たらなかったのは、ちょうど月に一度の花月の祝いイベントがある日だったからなんだろうけど、普段はどこにいるの?

 みんなもこっちに帰ってきてるなら、一緒にお菓子パーティーしたいよー。

「♪天兎アンジュラパ~、い~るな~ら一緒~に、お菓子食~べよ!」

 歌いながら洞窟の外を目指す。
 先ほどと同じように飛んで仙桃ミルクの滝を通り抜けようとすると——

「ふぎゃっ!? ベチョベチョー! え、なんで!?」

 頭からたっぷり仙桃ミルクまみれになっちゃった。ビックリしたよ。全身から甘い香りがする。
 もしかして、別時空イベント開催時だけ、仙桃ミルクの滝は幻覚に変わるのかな。

 仙桃ミルクの滝が流れ込む池を越えて、地面におり立ってから、ぷるぷると身震いする。でも、それくらいで仙桃ミルクが落ちるわけがない。

「【洗浄】!」

 生活魔術の一つである洗浄を使って、パパッと仙桃ミルクを落とした。ついでに毛繕いも~。

「——うん、完璧☆」

 綺麗になった毛がふんわりもふもふになったところで、イェーイと両手を上げる。……誰もいないから、ちょっぴり寂しい。誰か喚ぼうかなー。

 もう時空雲はなくなっていて、霊峰の下の方に第三の街が小さく見えた。見晴らしいいねー。

 視界はよくなったけど、天兎アンジュラパの姿は見つからないから、ここを住処にしているとしても、普段は隠れてるんだと思う。探すにはやっぱり人手があった方がいいよね。

「【召喚】オギン、スラリン、ナッティ、ピア!」

 ポンッと現れた四体が、きょろきょろと周囲を見渡す。

「キュオ(あら、戻ってきたのね)」
「きゅぃ(こっちの方が落ち着くー)」
「きゅーきゅい(寒いわ……)」
「もふ(なにここ、楽しーい!)」

 慌ててナッティに防寒アイテムをあげた。たまには喚ぼうと思っただけだったんだけど、ここは寒い場所だったのを忘れてたよ。

 ピアは寒さなんて気にしてないみたいで『白ーい。ふわふわー!』と雪を吹っ飛ばすように空を飛んで楽しんでる。うん、ピアは好きに遊んでていいよ。

 にこやかにピアを眺めてから、オギンたちに視線を戻して気合いを入れる。

「一緒にまた天兎アンジュラパを探そう!」
「キュオ(さっき会ったのにまだ足りないの?)」
「うん、まだあんまり仲良くなってないし」

 イベントばっかりで、ちゃんと交流できなかったのが悔しいんだもん。
 僕がそう主張すると、オギンは「キュオ(……わかったわ)」と肩をすくめる感じで頷いてくれた。

「きゅーきゅい(探しものは得意よ)」
「頼りにしてるよー」

 仙桃ミルクの滝周辺は敵モンスターが出ないから、ナッティも自由に行動できるはず。一緒にがんばろうねー。

 僕が「レッツゴー」と合図を出すと、オギンたちが散って天兎アンジュラパを探し始めた。僕も探さなきゃ。

「うーん……どこにいるかなぁ」

 きょろきょろ。見渡しても、周りにあるのは雪や岩場。他にちらほらと木や草むらもあるけど、結構殺風景だ。
 本当にここに天兎アンジュラパがいるのかな。別時空が住処で、普段こっちには出てこない可能性ある?

 ムムーと悩みながら探し回っていると、岩に丸い穴が開いているのを見つけた。
 穴は僕がすっぽりと入れるくらいの大きさで、雪で作られてたら雪室かまくらかなって思う感じの見た目だ。

 なんとなく入ってみたい気がする。猫じゃないけど、狭いところにぎゅぎゅっと詰まるの、僕も結構好き。
 いそいそと入り込んでみると、ジャストフィットだった。おお、居心地いい。冷たい風も遮られて暖かいし。

「あ、お腹空いてたかも」

 満腹度の表示が半分をきっているのを見て、ルンルンとお菓子の準備を始める。
 天兎アンジュラパに会った時用に、たくさんお菓子作ってきたんだ。少し僕が食べたくらいじゃ、渡す量が足りなくなることはないはず。

「みんなー、一旦休憩しよう!」
「きゅぃ(モモ、どこにいるの?)」

 散っていたスラリンたちが、少しずつ僕がいるところに近づいてくる気配がする。声を頼りに探してくれてるみたいだ。
 僕は穴から顔を出して、近くまで来ていたスラリンたちに手を振った。

「ここだよ、ここー」
「キュオ(そんなところにいたのね)」

 オギンが少し呆れた顔で言う。その足元を駆けてきたナッティは、僕がいる穴を見て首を傾げた。

「きゅーきゅい(不思議な気配がする場所ね)」
「え、そう?」
「きゅーきゅい(ええ。なんだか光の気配を強く感じるわ)」
「穴なのに?」

 他の場所より陰っているのに、光の気配を感じるとはどういうこと?
 僕が首を傾げていると、スラリンがぴょんぴょんと跳ねた。

「きゅぃ(天兎アンジュラパがいた場所と、少し似てるよ)」
「それって、さっきの別時空?」
「きゅぃ(うん——あ、僕、仙桃ミルク飲みたいな)」

 クッキーを差し出しながら僕が尋ねると、スラリンは頷くように体を揺らしながらねだってきた。
 仙桃ミルクはお菓子にしなくても、そのままで美味しいからねー。言われたら、僕も飲みたくなってきた。

 アイテムボックスにたくさん収納していた仙桃ミルクの瓶を取り出し、スラリンに渡そうとしたところで、突然アナウンスが聞こえてくる。

〈【天の礼拝所】で【仙桃ミルク】を捧げました〉

「ほえ?」

 ぽかんとした僕の手から仙桃ミルクが消える。
 え、勝手に捧げたことになっちゃった!?

「キュオ(あら、もしかして、ここって——)」

 オギンが何かを言おうとしてる。
 でも、続く言葉を聞くより先に、僕の体に何かが衝突してきて、穴から転げ出ることになっちゃった。

「ふぎゃっ!? あ、ダメージくらってる……!」

 僕の体力バーが三分の一も削られてるのを見て、固まった。
 一体何が起こったのー??

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