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9章 もふうさフィーバー
349.僕の運は……!
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もうすぐ所持金0になるプレイヤーさんは、ランっていう名前らしい。種族はエルフで魔術士なんだって。
僕がスロットを始めながら「本当に大丈夫なの?」と聞いてみたら、ランはにこやかな表情で肩をすくめた。
「所持金は0になりますけど、銀行に預けてる分があるので大丈夫ですよー」
「銀行に? ランは何か商売してるの?」
銀行にお金を預けるのって、商売してる人が多い。銀行は商業ギルド内にあるから。
商売人仲間かなーと思って僕がランを見上げると、「そうです」と頷きが返ってきた。
「薬士なので、作った薬を時々屋台で売ってます。それなりに品質がいいので、毎回完売するんですよ」
「おお、すごいねー」
ちゃんと商売してるプレイヤーに始めて会ったかも。
色々と話を聞いてみたら、どうやらランは普段生産職として活動してることが多いらしい。「第三の街に行く時には友だちに頼りましたー。エリアボス、私の実力じゃ絶対倒せないですもん」と胸を張っていた。
確かに、第三の街に行くために倒さなきゃいけないボス、強いもんねー。僕もルトたちと一緒だったから倒せたようなものだし。
そんなことを考えて、僕がうんうんと頷いていると、ランが「あ、メダル尽きた……」と呟いた。ついに遊ぶのに必要なメダルがなくなったらしい。
「またメダル買ってくるの?」
「ちょっとしか買えなさそうだから、また今度にしますかねー。あ、モモさん、薬買います?」
所持金足りないわー、と嘆いていたランが、ふと目を輝かせて僕を見つめてきた。
僕に買ってもらって、遊ぶためのお金を増やそうとしてるらしい。
「どんな薬があるの?」
無人島を手に入れようとしてる仲間だし、他のプレイヤーが作った薬も気になるし、買ってもいいなー、と思いながら尋ねる。
すると、ランはアイテムボックスから「じゃじゃじゃーん」と何かを取り出した。
「【回避薬】です! これ、職業薬士しか作れないので、モモさんは持ってないと思うんですけど」
「うん、持ってない。鑑定していい?」
「どうぞー」
にこやかに微笑むランの手にある瓶を鑑定する。中に入ってるのは、ラムネみたいな粒だ。
——————
【回避薬】レア度☆☆☆☆
使用すると、一回だけ敵の攻撃を必ず回避できる
即死攻撃には効果なし
薬士専用レシピで作製された
品質:最高
——————
え、即死攻撃には対応できなくても、必ず回避が成功するのは凄いよね。
「結構な人気商品じゃない?」
「売り出したら即完売の商品です」
「僕に売らなくても、すぐにお金稼げるんじゃ……?」
近くにいた他のプレイヤーが欲しそうにこっちを見てる。
でも、ランはそっちに売るつもりはないらしく、ニコニコと微笑んでる。
「私が作った薬をモモさんに売りたいんです。次の屋台用に作り溜めていた分なんで、モモさん以外にはまだ売りません」
「なるほど……?」
よくわかんないけど、たぶんファン心理なんだろう。
売ってくれると言うなら買うけど。
僕が知らなかっただけで、ランって結構注目されてるプレイヤーな気がする。
「——おいくら?」
「一つ二千リョウです」
「じゃあ、三つくださーい」
チャリン、とお支払いしてアイテムゲット。
いつ使うかわからないけど、持ってるだけで安心感がある。
「ヤッター、これでメダル買い足してきます!」
「いってらっしゃーい」
嬉しそうに手を振ってメダル購入所に向かったランを見送る。
僕はスロットがんばるぞー。
◇◆◇
しばらくスロットで遊んで、ちょっぴり勝った。
現在メダル金四枚、銀五枚。目標はメダル金十枚だけど、スロットはやっぱり運任せな感じが強くて勝ちにくい。
追加でメダルを手に入れたランは、再び撃沈して「今日はダメです……また来ます……」と去っていった。
僕と握手したらすぐにテンション上がってルンルンとした感じになってたけど。知らない人からは、きっと大勝ちしたように見えてたはず。
「今度はルーレットしようっと」
トテトテと空いてるルーレットテーブルを探す。
カードゲームはルールがよくわからないから手を出さない。ルーレットは単純でいいよねー。
「モモ、一緒にするかにゃ?」
「あ、ムギ、いたんだ?」
不意に声をかけられたと思ったら、丸猫のムギがルーレットテーブルのところにいた。
「僕もいますよ。お久しぶりです」
「ソウタ、久しぶり」
僕より小さい絹銀鼠のソウタに「わーい」と抱きつくと、照れくさそうな笑みが返ってくる。年が近いっぽいから、親近感があるんだよね。
「——あれ? ツッキーは?」
希少種会のメンバーが足りない、と気づいて僕がキョロキョロと周囲を見渡すと、ムギとソウタが疲れたような顔で視線を交わした。
「……ツッキーはカジノ出禁にゃ」
「カジノといえばイカサマなんて騒いで、ディーラーさんに怒られたんです」
「ツッキー、何やってるの……」
僕も思わず呆れちゃった。
現実でのカジノがどうかは知らないけど、このゲーム内のカジノでイカサマはないでしょ。
「まぁ、ツッキーはあの調子じゃ所持金0になりそうだったから、出禁になってよかったかもしれないにゃー」
「負けてる人多いね」
「そうじゃないとカジノ側の収益がないですからね」
そんな話をしながら僕もムギたちと同じテーブルにつく。
ルーレットで勝負、始めよう。
「どこに賭けますか?」
玉を手に尋ねてきたディーラーさんに、悩んだ末に「……赤の5」と答えながらメダル銀を出す。
最初から一点賭けして、運勢を占うよー。
「モモ、強気にゃ……あたいは黒」
「僕は赤で」
苦笑しながらムギとソウタがメダル銀を出したところで、ルーレットが回り始めた。
ディーラーが玉を投げ入れて、ルーレットがくるくる回っているところを固唾を飲んで見守る。
——カラン。
「……赤の5です」
「にゃ!?」
「えっ!?」
見事に赤の5のポケットに落ちた玉を、テーブルについている全員が目を見開いて見下ろした。
「ヤッター! 僕、ツイてる~♪」
いきなり勝ってメダル銀が三十六倍になるのは幸先いいね!
大歓声を受けて、お手振りしたりウインクしたり。これでみんなにも幸運をお裾分けできたらいいな。
僕がスロットを始めながら「本当に大丈夫なの?」と聞いてみたら、ランはにこやかな表情で肩をすくめた。
「所持金は0になりますけど、銀行に預けてる分があるので大丈夫ですよー」
「銀行に? ランは何か商売してるの?」
銀行にお金を預けるのって、商売してる人が多い。銀行は商業ギルド内にあるから。
商売人仲間かなーと思って僕がランを見上げると、「そうです」と頷きが返ってきた。
「薬士なので、作った薬を時々屋台で売ってます。それなりに品質がいいので、毎回完売するんですよ」
「おお、すごいねー」
ちゃんと商売してるプレイヤーに始めて会ったかも。
色々と話を聞いてみたら、どうやらランは普段生産職として活動してることが多いらしい。「第三の街に行く時には友だちに頼りましたー。エリアボス、私の実力じゃ絶対倒せないですもん」と胸を張っていた。
確かに、第三の街に行くために倒さなきゃいけないボス、強いもんねー。僕もルトたちと一緒だったから倒せたようなものだし。
そんなことを考えて、僕がうんうんと頷いていると、ランが「あ、メダル尽きた……」と呟いた。ついに遊ぶのに必要なメダルがなくなったらしい。
「またメダル買ってくるの?」
「ちょっとしか買えなさそうだから、また今度にしますかねー。あ、モモさん、薬買います?」
所持金足りないわー、と嘆いていたランが、ふと目を輝かせて僕を見つめてきた。
僕に買ってもらって、遊ぶためのお金を増やそうとしてるらしい。
「どんな薬があるの?」
無人島を手に入れようとしてる仲間だし、他のプレイヤーが作った薬も気になるし、買ってもいいなー、と思いながら尋ねる。
すると、ランはアイテムボックスから「じゃじゃじゃーん」と何かを取り出した。
「【回避薬】です! これ、職業薬士しか作れないので、モモさんは持ってないと思うんですけど」
「うん、持ってない。鑑定していい?」
「どうぞー」
にこやかに微笑むランの手にある瓶を鑑定する。中に入ってるのは、ラムネみたいな粒だ。
——————
【回避薬】レア度☆☆☆☆
使用すると、一回だけ敵の攻撃を必ず回避できる
即死攻撃には効果なし
薬士専用レシピで作製された
品質:最高
——————
え、即死攻撃には対応できなくても、必ず回避が成功するのは凄いよね。
「結構な人気商品じゃない?」
「売り出したら即完売の商品です」
「僕に売らなくても、すぐにお金稼げるんじゃ……?」
近くにいた他のプレイヤーが欲しそうにこっちを見てる。
でも、ランはそっちに売るつもりはないらしく、ニコニコと微笑んでる。
「私が作った薬をモモさんに売りたいんです。次の屋台用に作り溜めていた分なんで、モモさん以外にはまだ売りません」
「なるほど……?」
よくわかんないけど、たぶんファン心理なんだろう。
売ってくれると言うなら買うけど。
僕が知らなかっただけで、ランって結構注目されてるプレイヤーな気がする。
「——おいくら?」
「一つ二千リョウです」
「じゃあ、三つくださーい」
チャリン、とお支払いしてアイテムゲット。
いつ使うかわからないけど、持ってるだけで安心感がある。
「ヤッター、これでメダル買い足してきます!」
「いってらっしゃーい」
嬉しそうに手を振ってメダル購入所に向かったランを見送る。
僕はスロットがんばるぞー。
◇◆◇
しばらくスロットで遊んで、ちょっぴり勝った。
現在メダル金四枚、銀五枚。目標はメダル金十枚だけど、スロットはやっぱり運任せな感じが強くて勝ちにくい。
追加でメダルを手に入れたランは、再び撃沈して「今日はダメです……また来ます……」と去っていった。
僕と握手したらすぐにテンション上がってルンルンとした感じになってたけど。知らない人からは、きっと大勝ちしたように見えてたはず。
「今度はルーレットしようっと」
トテトテと空いてるルーレットテーブルを探す。
カードゲームはルールがよくわからないから手を出さない。ルーレットは単純でいいよねー。
「モモ、一緒にするかにゃ?」
「あ、ムギ、いたんだ?」
不意に声をかけられたと思ったら、丸猫のムギがルーレットテーブルのところにいた。
「僕もいますよ。お久しぶりです」
「ソウタ、久しぶり」
僕より小さい絹銀鼠のソウタに「わーい」と抱きつくと、照れくさそうな笑みが返ってくる。年が近いっぽいから、親近感があるんだよね。
「——あれ? ツッキーは?」
希少種会のメンバーが足りない、と気づいて僕がキョロキョロと周囲を見渡すと、ムギとソウタが疲れたような顔で視線を交わした。
「……ツッキーはカジノ出禁にゃ」
「カジノといえばイカサマなんて騒いで、ディーラーさんに怒られたんです」
「ツッキー、何やってるの……」
僕も思わず呆れちゃった。
現実でのカジノがどうかは知らないけど、このゲーム内のカジノでイカサマはないでしょ。
「まぁ、ツッキーはあの調子じゃ所持金0になりそうだったから、出禁になってよかったかもしれないにゃー」
「負けてる人多いね」
「そうじゃないとカジノ側の収益がないですからね」
そんな話をしながら僕もムギたちと同じテーブルにつく。
ルーレットで勝負、始めよう。
「どこに賭けますか?」
玉を手に尋ねてきたディーラーさんに、悩んだ末に「……赤の5」と答えながらメダル銀を出す。
最初から一点賭けして、運勢を占うよー。
「モモ、強気にゃ……あたいは黒」
「僕は赤で」
苦笑しながらムギとソウタがメダル銀を出したところで、ルーレットが回り始めた。
ディーラーが玉を投げ入れて、ルーレットがくるくる回っているところを固唾を飲んで見守る。
——カラン。
「……赤の5です」
「にゃ!?」
「えっ!?」
見事に赤の5のポケットに落ちた玉を、テーブルについている全員が目を見開いて見下ろした。
「ヤッター! 僕、ツイてる~♪」
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