もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

356.ガンガン行くぞ

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 プレイヤーたちが暴走鯱バイオレンシャチ目掛けて、数多の攻撃をバンバンと放つのを眺めた。

 暴走鯱バイオレンシャチの方も海に渦を作ったり、大量の水を含んだ竜巻を起こしたりと、天変地異かと思うほどの反撃をしてくる。その攻撃のほとんどを、プレイヤーたちが力を合わせてスキルを使い相殺しているから、まだ船に被害は出てない。

 その活躍しているプレイヤーにはルトとタマモも含まれる。

「——【光空斬リヒスパティスラッシュ】!」

 ルトが光り輝く剣を横に振ると、放たれた光の刃がこの船に襲いかかろうとしていた竜巻を上下に分断し、霧散させる。そればかりか、暴走鯱バイオレンシャチまで光の刃が届き、しっかりとダメージを負わせた。

「【パンチ弾】! 【キック弾】! 【気迫】!」

 タマモが暴走鯱バイオレンシャチに向けて鋭く拳を振ると、それによって生じた衝撃波で空気が蜃気楼のように歪むのが見えた。その力の塊は、暴走鯱バイオレンシャチがまとった水の壁を突き壊し、しっかりとダメージを与える。

 追加で放たれた気迫は、暴走鯱バイオレンシャチを一瞬怯ませて、その隙を狙って他のプレイヤーたちが攻勢を強めた。

「なんというか……過剰戦力な気がする……?」

 さっきルトが呟いていた言葉を、今度は僕がこぼした。ルトの気持ちがよく理解できたよ。

 あと、ルトはよく僕を無自覚みたいに言うけど、ルトも大概自覚が薄いと思う。周りのプレイヤーたちの反応を見ても、ルトって凄く注目されて憧れられてる人気のプレイヤーなんだろうな。

「ほへぇ、知らなかったなぁ」

 僕の友だちがカッコいい! 僕もがんばろうっと。

『おいらの仕事はもう終わりなの?』

 不意にストルムの声が聞こえた。見上げると、ストルムが少しつまらなそうな顔をしている。
 ハッとスラリンたちの方を見ると、バトルと僕を交互に見ながらウズウズとした様子で指示を待っているのがわかった。
 みんなのバトルに圧倒されて、指示を出すのを忘れてたよ。

 暴走鯱バイオレンシャチはタコ殴りされてるような状態だけど、予想していたよりあまり体力が減少してない。それだけ防御力が高いのかな?

 うーん、と首を傾げながらも、ストルムに指示を出すために視線を向ける。もう一個確認しておきたいスキルがあるんだよねー。

「まだ戦ってもらうよ。次は竜嵐ドラゴンストームをお願い」
『わかったー』

 軽い調子で了解したストルムが、飛びながらぐるっと旋回した。長い尾がそれに合わせて空に円を描く。

『——【竜嵐ドラゴンストーム】』

 ぶわっと強烈な風が吹き付けてきた。
 空に生じた嵐が小さな台風のような形で暴走鯱バイオレンシャチへと叩きつけられる。

「ッ、グオオオッ!」

 悲鳴を上げた暴走鯱バイオレンシャチが尾を海面に叩きつけて、海中へ潜った。

「えっ、逃げた!?」

 そんなことが起きるなんて聞いてない。
 暴走鯱バイオレンシャチの体力はまだ半分も削れてないし、モンスターが瀕死前の激昂状態になるほどじゃないと思うんだけど……

 海の中にいるモンスターをどうすればいいんだろう? 僕以外のプレイヤーたちも困ったように動きを止めた。

 でも、それから一分も経たない内に、再び巨体が海上に現れる。
 暴走鯱バイオレンシャチは不本意そうに暴れてるから、おそらくルトが言ってた『暴走鯱バイオレンシャチを海上におびき寄せる術』が使われてる影響なんだろう。

 激しく暴れるせいで荒れた海に船ごと翻弄されながら、今回は他の人たちに迷惑をかけることにならなくてよかった、とちょっと安心した。

「ストルムの攻撃が済んだし、次はスラリンだねー」
「きゅぃっ(任せて!)」

 スラリンが待ってましたと言わんばかりに気合いのこもった声を上げる。
 それに「よしよし、一発叩き込んじゃおうね」と応じながら、僕はフラグを折る準備を整えた。スラリンに遠隔攻撃させるなら、確実に必要になるからね。

「じゃあ、スラリン、流星ステラを使って」
「きゅぴっ(【流星ステラ】!)」

 指示を出すと、間髪入れずにスラリンがスキルを発動させた。思った以上に我慢させてたらしい。ストルムの能力を把握するのを優先しちゃって、ちょっと悪かったな。

 空からいくつも星が落ちてくる。それが暴走鯱バイオレンシャチに激突する前に現れていたフラグは、すぐさま風の刃ウィンドスラッシュを叩き込んで粉砕した。
 ふはは、津波の前兆さえ起こさせないぞー。

 ドンッドンッと衝撃波を伴って暴走鯱バイオレンシャチを襲う星を、たくさんの人がポカンと眺め、タマモの叱咤を受けて攻撃を再開する。
 また驚かせちゃってごめんねー。

 のほほんとバトルを観察しながら、暴走鯱バイオレンシャチの体力バーを見つめて僕はちょっぴり落胆した。だって、思ったより暴走鯱バイオレンシャチの体力を削れてなかったんだもん。

 ちゃんと直撃してるはずなんだけどなー。防御力高すぎなのは、さすがレイドボスって感じ。

 ヒスイやオギン、ユキマルにも遠隔攻撃を指示し、僕も風魔術を放つ。
 ストルムは主な遠隔攻撃がクールタイム中だから、爪や尾での攻撃をしてもらった。とっても怪獣対決らしい戦いで、ワクワクしちゃう。

「あ、せっかく光属性耐性を下げてるし、今の内に月の雫に付属したスキルを使ってみよう」

 僕は風魔術をあまり育ててないから、クールタイムがあるとどうしても攻撃できない時間が生まれる。
 そこで、ふと思いついたことを試してみることにした。

 天兎アンジュラパたちが行っていた花月の祝いイベントの報酬としてもらったネックレスである月の雫は、装備してたら月光ルナライトっていう光属性のスキルを使えるんだよね。

 アイテムボックスから取り出した月の雫を首にかけ、スキルを発動する。

「【月光ルナライト】!」

 スキル名を唱えた途端、ふわっと柔らかな光の玉が生まれた。まるで月のようだ。
 その光の玉は一直線に暴走鯱バイオレンシャチに向かい、ぶつかった途端に光の粒を撒き散らして消える。

「グォオオッ!」

 暴走鯱バイオレンシャチが激しく暴れた。その体色の黒が少し白っぽくなったように見える。

「……あれ? もしかして、浄化の効果も出てる?」

 月光ルナライトスキルは光属性のダメージを与えるだけでなく、浄化の効果もある。暴走鯱バイオレンシャチが穢れているとは考えてなかったけど、どう見ても浄化されたような気がした。

「んー……よくわかんないけど、まぁいっか!」

 なんで暴走鯱バイオレンシャチが穢れてるんだろう、とは思うけど、今はバトルに集中しよう。

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