もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

357.ちょっと休憩しよう

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 ジリジリと暴走鯱バイオレンシャチの体力を削る。それは順調に進んでいたけど、プレイヤー側の状態がちょっとずつ悪くなってきた。

 遠隔攻撃の主は魔力での攻撃だから、魔力消費量が多い。魔力回復薬や魔力回復スキルを使っても、回復が追いつかなくなってきているのだ。

 それによって、暴走鯱バイオレンシャチからの攻撃を防ぐのに手間取るようになってる。
 幸い、僕が乗ってる船はまだ損傷してないけど、時間の問題かも。

「うーん、ちょっとピンチ?」
「めっちゃのほほんと言うなよ」

 休憩する、と言って僕の側で座り込んでいたルトが、桃ジュースを飲みながら小さくため息をついた。桃ジュースは「腹減った」と言ったルトに僕があげたものだ。

 こういう長時間のバトルだと、満腹度管理が大変だよねー。空腹になりにくくなるアイテムが大活躍してくれてる。

「ごめんごめん。でも、まだ倒せなそうだよね」
「……だな。モモの天の断罪アンジュジャッジスキルの効果が切れてから、体力の減りが悪い」

 ルトが難しい表情で暴走鯱バイオレンシャチを眺めながら呟く。
 暴走鯱バイオレンシャチは数多の攻撃を受けながら、今も元気に大暴れ中だ。体力ありすぎだよ。

「だよねー。また使えたらよかったんだけど、クールタイムがあるからなぁ……」

 天の断罪アンジュジャッジスキルは再使用できるまでにちょっと時間がかかる。まだ使うことはできなさそうだ。

暴走鯱バイオレンシャチの表面の防御力の強さが厄介だ。ありゃ、鎧だろ……」

 ルトの言葉を聞いて、僕も暴走鯱バイオレンシャチに視線を向ける。

 シャチらしい黒白の色合いだと初見で思ったけど、それはある意味間違っていたのだと、浄化の結果わかった。

 僕の月光ルナライトとユキマルの浄化スキルを使ったことで、体の黒色だった部分が灰色の分厚い鱗のようなものだと判明したのだ。

 その見た目はまるで鎧。理由はわからないけど、穢れをまとっていたことで暴走鯱バイオレンシャチに一体化して見えていたらしい。

 鎧のようなものは僕たちの攻撃を受けてもひび割れることもなく、あらゆる攻撃を半減させているようだ。
 白くて鎧がない部分を狙おうとしても、暴走鯱バイオレンシャチが動くから難しい。

「モモのおかげでわかったのは嬉しいけど、対策が思い浮かばねえ……」

 ルトがぼやく。
 鎧のような部分は魔力攻撃にも物理攻撃にも強く、いまだに効果的な攻撃法を見つけられていないのだ。どうしたらいいんだろうねー。

「今まではどう倒してたんだろう?」
「ひたすらタコ殴り。ギリギリ制限時間内で倒せたらしいぞ」
「……そっか」

 ルトが掲示板で得た情報を教えてくれたけど、なんの役にも立たなかった。
 まぁ、しかたない。暴走鯱バイオレンシャチが鎧のようなものをまとっているなんて、僕たちが浄化をするまで知られてなかったんだから。

「このまま攻撃を続ければいずれ倒せそうではあるけど。モモのテイムモンスたちのおかげで、随分とダメージを稼げたし、最速討伐タイムにはなるんじゃね?」

 ルトがストルムたちを眺め、ニヤリと笑う。
 確かに強烈な攻撃だったもんねー。クールタイムが長いから、ひたすらそれで攻撃することができないのが残念。

「そうだねー。でも、僕はそろそろ飽きてきたよ……」
「あ? ……あー、そうだな。お前元々あんまりバトル好きじゃないしな」

 訝しげに僕を見下ろしたルトが、すぐに苦笑して僕の頭をポンポンと叩くように撫でた。僕の気持ちをわかってくれて何より。
 単調にダメージを稼ぐっていうバトルが、僕にはあんまり合わないんだよねぇ。

「——それなら、もふもふ教の奥義を使うか?」

 ふと思い出した様子でルトが提案した。
 奥義とは第三の街のレイドイベントで使った攻撃のことだ。

「使っていいの? みんな、ガッカリしない?」
「んー……まぁ、嫌だっつーヤツはいるかもだけど、みんな好きに戦ってるわけだし、公然と批判してくるヤツはいないだろ」

 ルトが肩をすくめる。
 まだ嬉々と戦っているプレイヤーがいるし、強制的にバトルを終了させるようなことをしたら反感を買うだろうと思った僕の考えは間違ってなさそうだ。
 そんな状態になってまで、バトルを終了させるのを優先させたくはないなぁ。

「——つーか。前のレイドイベントより、このバトルフィールドにいるもふもふ教の信者数が少ないから、倒しきれるほどの効果が出るかは微妙だよな」
「あ、そっか。あの奥義って、もふもふ教の信者の思いが強ければ強いほど効果が大きくなるんだっけ?」
「発動するためにも一定以上の信仰心が必要だな」

 そっかー、それなら使ったところで狙ったような効果が出ない可能性が高いかも。
 僕は納得して、脱力する。やっぱり地道に攻撃を続けるしかないのかぁ。

 タマモはどうしてるんだろう、と思って暴走鯱バイオレンシャチの方を見る。
 遠隔攻撃用の魔力が減ったから、今は僕があげたニンジンエナドリの効果で空を飛び、暴走鯱バイオレンシャチに物理攻撃を与えてるみたいだ。生き生きとしてる。強い。

「……あの鎧をどうにかできたらなぁ」

 暴走鯱バイオレンシャチが大きな口を開けてタマモに食らいつこうとしてるけど、タマモはサッと回避する。身のこなしが綺麗だ。尻尾がぶわっと膨らんでるから、危機感は覚えてるみたいだけど。

 ぼんやりと眺めていたら、ふと暴走鯱バイオレンシャチの口が気になった。
 バトル前にルトに『丸呑みされるぞ』と脅された大きな口。その中は赤く柔らかに見える。

 それを見ていたら、あるアイディアが頭に浮かんだ。
 からかわれて拒否したけど、実はそれが有効的な攻略法だった可能性ないかな?

「……ねぇ、ルト」
「なんだ?」
「一緒に暴走鯱バイオレンシャチに丸呑みされてみない?」
「……はあ?」

 ポカンと口を開けたルトに、僕はえへへと笑いかける。
 ちょっと退屈だし、好奇心に任せて行動してみてもいいよね!

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