もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

362.船に帰還です

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 いろいろ発見できたしそろそろ外に出よっかー、とルトと話しながら、何かを忘れている気がして落ち着かない。
 重要なことがあったような……?

「どうした、モモ?」

 不思議そうなルトを見上げて「うーん」と首を傾げたところで、ポンッと通知音が聞こえた。フレンドチャットだ。送ってきたのはタマモ。
 外で何かあったのかな?

——————
タマモ:
 急に暴走鯱バイオレンシャチの攻撃力がとんでもなく上がったのですが、モモさんたちは大丈夫ですか!?
 ちなみに、なぜか暴走鯱バイオレンシャチの鎧(?)のようなものは消えて、防御力が下がったので、外からでも十分に攻撃が通るようになってます。
——————

 内容を見て、ワタワタと慌てちゃう。
 ワールドアナウンスに気を取られて忘れてたことを思い出した。

「はわわっ、そうだよ、暴走鯱バイオレンシャチの封じを解いちゃったんだった!」
「封じ? っ、この剣か!」

 一瞬きょとんとしたルトが、すぐに剣を見下ろし顔を強張らせる。
 海竜剣シードラソードが災厄のモンスターの力を封じる効果があることはルトも知ってるから、状況を察するのは早い。
 ルトにもタマモから連絡が入ったようで、眉を寄せて悩ましげな顔になる。

「——またこの剣をぶっ刺せば封印できると思うか?」
「え、そうしたら、その剣を回収できなくなるかもよ?」

 せっかく手に入れたのにもったいない、と告げると、ルトがなんとも言えない表情で僕を見る。

「けど、封じを解いたせいでレイドイベ失敗になったら、ヤバいだろ」
「それはそうだけど、封じなくてもクリアできるかもしれないし」

 封印する効果がある剣だから、ここで使えって示唆されてるのかもしれない。でも、安易にその選択をする必要はないと思うんだよね。だって、暴走鯱バイオレンシャチの攻撃力は増したみたいだけど、防御力は下がって、対処しやすくなってるわけだし。

「——まずは情報収集!」

 タマモに「僕たちは大丈夫ー」と連絡を返すついでに、このまま暴走鯱バイオレンシャチを討伐可能か聞いてみた。
 ちょっと抜けてるところはあるけど、タマモはバトルセンスが高いし、もふもふが関わらなければ状況判断は的確だと思うから、信頼できる。
 返事はすぐに来た。

——————
タマモ:
 ご無事でよかったです!
 暴走鯱バイオレンシャチについては現状押さえ込むことができています。
 討伐も可能だと思いますが……再度ストルムさんに大技を発動してもらった上で、もふもふ教の奥義を放てば、確実に勝利できると思います!
——————

 おお! それならなんとかなりそうだねー。
 でも、結局もふもふ教の奥義を使うことになるのかぁ。

 ルトにタマモの返事を伝えると、少しホッとした表情で「それなら外に出よう」と頷いた。
 というわけで、転移スキルを使って戻るよー。

◇◆◇ 

 船に転移すると、すぐさま大暴れしてる暴走鯱バイオレンシャチの姿が視界に飛び込んできた。
 たくさんの水属性攻撃を使ってるみたいだけど、暴走鯱バイオレンシャチを光の壁のようなもの囲んでいて、すべての攻撃を防いでくれていたから、船に損傷は出ていないようだ。

 光の壁は五つの船から放たれた光線で構成されているようで、暴走鯱バイオレンシャチを星の中に閉じ込めているような形になってる。

 ルトがポカンと口を開けてその光景を眺めた。僕も正直同じ気持ちです。

「おかえりなさい、モモさん!」

 僕たちを見て、すぐさまタマモが駆け寄ってきた。
 ホッと安堵の息を吐き、にこにこと笑っている。危機的状況なのを忘れるくらい嬉しそうな表情だ。

 タマモらしいなー、と思いながら、僕は「ただいま」と返した。そして、暴走鯱バイオレンシャチの方を指して尋ねる。

「あれ、何?」
「船に搭載されている【封じ結界砲】だそうですよ。暴走鯱バイオレンシャチが暴れ始めた途端、船長さんが『まさかコイツは厄災のモンスターだったのか!』と叫んで、すぐさま発動させたんです。どうやら厄災のモンスターというものに対しては、このような対処をすると決まっていたようですね。封じ結界は内部からの攻撃を防ぐ効果があるそうです」

 タマモが甲板で佇む男の人を指す。その人がこの船の船長で、各船と連絡を取り合って封じ結界を発動させたらしい。

「封じ結界って、ずっと保つの?」
「いえ、十分間しか保たないそうなので、それまでになんとか討伐するべく、皆さんで一斉攻撃をしています。私たちの方で攻撃を防ぐ必要がないですし、暴走鯱バイオレンシャチの防御力が前より下がっているので、ちょっと楽です」

 どうやら封じを解いてから倒すまでに猶予をくれる仕様だったらしい。
 ルトがそれを知って安堵してる。

 暴走鯱バイオレンシャチの体力は残すところ五分の一以下。
 タマモ曰く、一時的に内部から攻撃を加えてダメージを稼げていたから、この調子で攻撃を続けたら、封じ結界が解ける前に倒せる可能性もある、とのこと。

 でも、確実じゃないから、やっぱりストルムの攻撃ともふもふ教の奥義の発動をしたいそうだ。
 奥義発動のための信仰心チャージはすでに進めているらしい。
 ……耳を澄ませば、攻撃音の合間に聞いたことがある言葉が聞こえてくる気がした。

「モモさんは神!」
「「「モモさんは神!」」」
「モモさんは神!」
「「「モモさんは神!」」」
「もふもふ最高ー!」
「もふもふは癒やし!」
「もふもふ様、愛でさせてー!」
「うふふ、これでもふもふ神さまの威光を再び感じることができる……!」

 聖句以外にも欲望に溢れた言葉が聞こえてきた。
 満面の笑みを浮かべている人はもふもふ教の信徒で、ちょっと引き攣った顔をしてるのはそれ以外の人って、はっきりと分かれてる。
 もふもふ教と関係ない人を巻き込んじゃってるみたいでごめんね……。

「さすモモ」
「ルトがそれを言わないで」
「この状況で他に言える言葉は『モモさんは神』くらいしかねーぞ?」
「ルトがそれを言わないで!」

 二度言ったら、ルトがハハッと笑って頷いた。僕をからかっただけらしい。
 ちょっと現実逃避も混じっていたみたいだから、それ以上怒るのはやめておこう。いつも巻き込んじゃってちょっと申し訳ないんだよ……。

「信仰心チャージにはもう少し時間がかかりますから、まずはストルムさんのお力を発揮していただいてもいいですか?」

 タマモに促され僕は「わかったよー」と頷く。
 さて、そろそろレイドイベントに決着をつけようか。

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