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9章 もふうさフィーバー
363.神さまがんばります
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僕がいない間も、暴走鯱に物理攻撃を仕掛けてくれていたストルムを見上げる。
「ストルムー。そろそろ二回目の竜息吹やろうか」
『……わかったよ』
なんとも複雑な感情がストルムの目に滲んでる気がする。どうしたの?
僕が首を傾げると、横でストルムを見上げていたルトが慈愛に満ちた笑みを浮かべて頷いた。
「俺はあいつの気持ちがわかるぞ。絶対、この戦場とは思えないカオスな聖句の乱舞に困惑してる」
「……なるほど」
納得した。
ストルムはライブに参加したことがあるとはいえ、もふもふ教とちゃんと関わったのは会議の時くらいしかなかったもんね。戦場でこのノリを見て、ちょっと引いちゃうのは仕方ない。
もふもふ教幹部扱いされてるルトですら、まだ完全にノリきれてるわけじゃないし。むしろ「これからも毎回困惑する予感しかしねーよ。つーか馴染みたくねえ」と言っていた。
その気持ちは僕もわからないでもない。
まぁ、僕はタマモたちの気持ちをもう受け入れてるからあんまり気にしないけど。誰だって好かれたら嬉しいものでしょ。
そんなことを考えていたら、ストルムの口元に太陽のような光が集まり始める。
『【竜息吹】』
放たれた光を追うように、僕はぴょんぴょんしてる旗に風の刃を放った。
この旗が健気に見えて、折るのがちょっと申し訳なくなってきてるんだけど、津波は許容できないから仕方ない。
今度、大きな影響がなさそうな旗なら、ちゃんと活躍させてあげるからね!
「最高です、ストルムさん!」
「やっぱ、ドラゴンはカッケェな……」
タマモとルトがキラキラした目でストルムを見上げる。
褒められたストルムは『えっへん。おいらは強い竜だから当然だよ』と胸を張ってる。そのちょっと偉そうだけど単純なところが可愛い。
「さすがストルム。強いねー。次は竜嵐をお願い!」
『はいはい。おいらのカッコいいところを見せてあげるよ——【竜嵐】』
ストルムが気軽な感じで発動した嵐が暴走鯱に迫る。
衝突する直前に現れた旗を、僕は風の槍で折った。
「グオオオッ!」
嵐に襲われた暴走鯱の悲鳴が聞こえる。
体力バーを削り切るまであと少しだ。
もふもふ教の奥義を使わなくても倒しきれる気がしたけど、タマモからの期待の眼差しと、今もせっせと信仰心ゲージを溜めてくれてるみんなの思いは裏切れない。
「モモさんは神!」
「「「モモさんは神!」」」
「モモさんは神!」
「「「モモさんは神!」」」
響く聖句と共に、信仰心ゲージが満たされていく。
そろそろ発動できそうだねー。
前回使った時は神さまアイドルっぽい演出をしたけど、今回も必要かな?
チラッとルトを見る——『またやんのかよ』と言いたげな疲れた表情で見られた。
タマモを振り向く——満面の笑みで『モモさんの可愛らしさ全開のお姿を再び見ることができるなんて嬉しい!』というキラキラとした眼差しを感じた。
……うん、全力でがんばるよ! ルト、なんかごめんね?
アイテムボックスからニンジンエナドリを取り出す。ゴクゴクッと飲めば、あら不思議! 僕の羽が大きくなりまーす。普通に不思議じゃなくてアイテムの効果だけど。
タマモが「はうっ、神々しさが増してるッ」と胸を押さえて悶えた。そんないつも通りな反応は気にせず、僕は飛翔スキルを使ってふわっと浮かび上がる。
今回はどんな感じにしようかなー。ちょっと神さま感強めで威厳を出してみる?
「……厄災のモンスターが現れ、世界に危機が訪れた」
僕が語り始めると、騒がしかった船上が静まる。たくさんの視線を感じた。
おっと……ここまで注目されると、緊張しちゃうよ。
ちょっとたじろぎながらも、始めたからにはやり通さなきゃ、と気合いを入れて言葉を続ける。
ルトから『今度は神さま全力成り切りかよ……』と呆れた目を向けられてる気がして、そっと目を逸らしちゃったけど。すでにちょっと後悔してるから、何も言わないでほしいな……。
「でも、この場には僕がいる。そして、支えてくれるみんながいる」
船上を見渡す。
キラキラした目で力強く頷くプレイヤー多数。『こいつスゲーな』『噂で聞いてたけどマジでノリノリ神さまプレイしてんだな……』と引いてる人が若干名。
ドン引きしてる人は、イベントが終わったらサクッと忘れてくれていいですよ?
バサッと羽を開いて、両腕を広げる。
なぜか背後から光が差した。チラッと見ると、太陽が僕の背後にあり、その輝きが増したようだ。
……これ、運営さんが仕掛けた演出だったりする? もしそうなら、お礼を言った方がいい?
もふもふ教のみんなが「はう……神だ、神がいる……」「もふもふ神さまぁ!」と抑えきれない声を漏らしている。
僕の想定以上に神さま成り切りの効果が凄いです。
そろそろ熱狂的な眼差しに耐えきれなくなってきたから終わらせちゃうぞ。封じ結界も解けちゃいそうだし。
「僕たちの力を一つにして、今こそ災厄のモンスターを打ち倒す! ——奥義【神の威光】!」
クルッと回ってから、暴走鯱をビシッと指して奥義を発動した。すると、なぜか僕の周囲にたくさんの白い羽根がふわっと舞う。
……え、僕の羽根、抜けちゃった!?
眩い光が世界を白く染め上げる中、僕が気にしていたのは羽の状態。
なんか決まり切らなくて申し訳ない。
でも、奥義はきちんと暴走鯱の体力を削り切ってくれたようで、巨大な体が数多の光の粒になって弾け、消えていく。
〈海上レイドイベント【航海を阻む巨大モンスター討伐】をクリアしました。この船の損傷率は5%です。クリアタイムは一時間十八分。最速記録を更新しました〉
ちゃんとアナウンスが聞こえてきた。
暴走鯱が消えた海は広くて穏やかだ。
一拍の間を置いて、湧き上がるような歓声が澄んだ空気に大きく響いた。
ようやくイベントが終わったね!
「ストルムー。そろそろ二回目の竜息吹やろうか」
『……わかったよ』
なんとも複雑な感情がストルムの目に滲んでる気がする。どうしたの?
僕が首を傾げると、横でストルムを見上げていたルトが慈愛に満ちた笑みを浮かべて頷いた。
「俺はあいつの気持ちがわかるぞ。絶対、この戦場とは思えないカオスな聖句の乱舞に困惑してる」
「……なるほど」
納得した。
ストルムはライブに参加したことがあるとはいえ、もふもふ教とちゃんと関わったのは会議の時くらいしかなかったもんね。戦場でこのノリを見て、ちょっと引いちゃうのは仕方ない。
もふもふ教幹部扱いされてるルトですら、まだ完全にノリきれてるわけじゃないし。むしろ「これからも毎回困惑する予感しかしねーよ。つーか馴染みたくねえ」と言っていた。
その気持ちは僕もわからないでもない。
まぁ、僕はタマモたちの気持ちをもう受け入れてるからあんまり気にしないけど。誰だって好かれたら嬉しいものでしょ。
そんなことを考えていたら、ストルムの口元に太陽のような光が集まり始める。
『【竜息吹】』
放たれた光を追うように、僕はぴょんぴょんしてる旗に風の刃を放った。
この旗が健気に見えて、折るのがちょっと申し訳なくなってきてるんだけど、津波は許容できないから仕方ない。
今度、大きな影響がなさそうな旗なら、ちゃんと活躍させてあげるからね!
「最高です、ストルムさん!」
「やっぱ、ドラゴンはカッケェな……」
タマモとルトがキラキラした目でストルムを見上げる。
褒められたストルムは『えっへん。おいらは強い竜だから当然だよ』と胸を張ってる。そのちょっと偉そうだけど単純なところが可愛い。
「さすがストルム。強いねー。次は竜嵐をお願い!」
『はいはい。おいらのカッコいいところを見せてあげるよ——【竜嵐】』
ストルムが気軽な感じで発動した嵐が暴走鯱に迫る。
衝突する直前に現れた旗を、僕は風の槍で折った。
「グオオオッ!」
嵐に襲われた暴走鯱の悲鳴が聞こえる。
体力バーを削り切るまであと少しだ。
もふもふ教の奥義を使わなくても倒しきれる気がしたけど、タマモからの期待の眼差しと、今もせっせと信仰心ゲージを溜めてくれてるみんなの思いは裏切れない。
「モモさんは神!」
「「「モモさんは神!」」」
「モモさんは神!」
「「「モモさんは神!」」」
響く聖句と共に、信仰心ゲージが満たされていく。
そろそろ発動できそうだねー。
前回使った時は神さまアイドルっぽい演出をしたけど、今回も必要かな?
チラッとルトを見る——『またやんのかよ』と言いたげな疲れた表情で見られた。
タマモを振り向く——満面の笑みで『モモさんの可愛らしさ全開のお姿を再び見ることができるなんて嬉しい!』というキラキラとした眼差しを感じた。
……うん、全力でがんばるよ! ルト、なんかごめんね?
アイテムボックスからニンジンエナドリを取り出す。ゴクゴクッと飲めば、あら不思議! 僕の羽が大きくなりまーす。普通に不思議じゃなくてアイテムの効果だけど。
タマモが「はうっ、神々しさが増してるッ」と胸を押さえて悶えた。そんないつも通りな反応は気にせず、僕は飛翔スキルを使ってふわっと浮かび上がる。
今回はどんな感じにしようかなー。ちょっと神さま感強めで威厳を出してみる?
「……厄災のモンスターが現れ、世界に危機が訪れた」
僕が語り始めると、騒がしかった船上が静まる。たくさんの視線を感じた。
おっと……ここまで注目されると、緊張しちゃうよ。
ちょっとたじろぎながらも、始めたからにはやり通さなきゃ、と気合いを入れて言葉を続ける。
ルトから『今度は神さま全力成り切りかよ……』と呆れた目を向けられてる気がして、そっと目を逸らしちゃったけど。すでにちょっと後悔してるから、何も言わないでほしいな……。
「でも、この場には僕がいる。そして、支えてくれるみんながいる」
船上を見渡す。
キラキラした目で力強く頷くプレイヤー多数。『こいつスゲーな』『噂で聞いてたけどマジでノリノリ神さまプレイしてんだな……』と引いてる人が若干名。
ドン引きしてる人は、イベントが終わったらサクッと忘れてくれていいですよ?
バサッと羽を開いて、両腕を広げる。
なぜか背後から光が差した。チラッと見ると、太陽が僕の背後にあり、その輝きが増したようだ。
……これ、運営さんが仕掛けた演出だったりする? もしそうなら、お礼を言った方がいい?
もふもふ教のみんなが「はう……神だ、神がいる……」「もふもふ神さまぁ!」と抑えきれない声を漏らしている。
僕の想定以上に神さま成り切りの効果が凄いです。
そろそろ熱狂的な眼差しに耐えきれなくなってきたから終わらせちゃうぞ。封じ結界も解けちゃいそうだし。
「僕たちの力を一つにして、今こそ災厄のモンスターを打ち倒す! ——奥義【神の威光】!」
クルッと回ってから、暴走鯱をビシッと指して奥義を発動した。すると、なぜか僕の周囲にたくさんの白い羽根がふわっと舞う。
……え、僕の羽根、抜けちゃった!?
眩い光が世界を白く染め上げる中、僕が気にしていたのは羽の状態。
なんか決まり切らなくて申し訳ない。
でも、奥義はきちんと暴走鯱の体力を削り切ってくれたようで、巨大な体が数多の光の粒になって弾け、消えていく。
〈海上レイドイベント【航海を阻む巨大モンスター討伐】をクリアしました。この船の損傷率は5%です。クリアタイムは一時間十八分。最速記録を更新しました〉
ちゃんとアナウンスが聞こえてきた。
暴走鯱が消えた海は広くて穏やかだ。
一拍の間を置いて、湧き上がるような歓声が澄んだ空気に大きく響いた。
ようやくイベントが終わったね!
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