384 / 661
9章 もふうさフィーバー
364.まずは別の報酬
よーし、報酬を確かめよう! と届いていた通知を見ようとしたところで、アナウンスが聞こえてきた。
〈海上レイドイベントのシークレットミッション【巨大モンスターの内部探索】を完全クリアしました。報酬として称号【秘密を暴く者】とアイテム【海獣の卵】が贈られます〉
——————
称号【秘密を暴く者】
秘密というものは、それがあると知られた時点で秘密にはなりえない……
シークレットミッションクリア成功率が5%アップ、幸運値+7
【海獣の卵】レア度☆☆☆☆☆
種族不明な水属性モンスターの卵
孵化すると、テイムモンスターとなる
テイム枠が一つ以上余っていないと孵化しない
——————
なんと。暴走鯱の内部を探索するのは、シークレットミッションだったらしい。
僕はそんなことになるとは考えずに、好きに行動しただけだ。でも、報酬もらえたからラッキーだね。
称号の効果は結構いいし、アイテムも好奇心をそそる。海獣の卵からどんなモンスターが孵るのか気になるな~。テイム枠を余らせておかないと。
「モモ……」
不意にルトの呆然とした声が聞こえた。
ルトも一緒に行動してたんだから、同じアナウンスがあったんだろう。その手には青いマーブル模様の卵もあるし。
「——俺、テイム枠なんて持ってねーよ?」
「大丈夫だよ。テイマーじゃなくても、六体まではテイムできるらしいから」
オギンをテイムした時に入手した情報を教えると、ルトがホッと表情を緩めた。
「それならいいんだけど、これ、アイテムボックスに入れたままで孵化すると思うか?」
「……それは大丈夫だと思うよ? 卵を抱えて冒険しろ、なんてさすがに言わないでしょ」
卵はルトでも両手で抱えるほどのサイズがあるし、僕よりちょっと小さめくらいな感じだ。背負って行動するなんてできそうもない。
そんな理不尽な要求はされないだろう、という僕の予想に、ルトは納得したのか頷いた。
「だよな。よし、これは孵るまで放置しとこ」
「……もうちょっと愛情を持ってもいいんじゃない?」
「俺はテイマーじゃないし、卵に愛情を持てるタイプじゃない」
はっきりと断言するルトに、思わず苦笑する。
望んで手に入れたわけじゃないし、そんなこともあるよね。僕はたまにアイテムボックスから取り出して磨いて愛でよう。
「モモさんたち、どうされました?」
もふもふ教の奥義発動に恍惚とした表情だったタマモが、ようやく正常化した。すぐさま僕の顔を覗き込んで笑み崩れてるけど、これは通常運転です。
「暴走鯱の中に入って探索したのがシークレットミッション扱いで、報酬をもらえたんだよー」
「それはよかったですね。もう少し時間があれば、他の方も探索できたのでしょうが……」
「ごめんね?」
「いえいえ! 早いもの勝ちは世の常ですから、お気になさらず!」
慌ててフォローしてくれたタマモに「ありがとー」と返して、シークレットミッションについて話す。
ワールドミッションクリアから暴走鯱への最終攻撃まであまり時間がなかったから、ちゃんと報告できてなかったんだよねー。
たまにルトが補足を入れてくれたから、残さず伝えられたと思う。タマモたちはこの情報を掲示板に流すらしい。
最後の第四回レイドイベント参加者は、今回の情報を元にイベントを進められそうだ。よかったね。攻略最速タイムを更新されたら、ちょっぴり悔しいけど。
「タマモさん! 俺はシークレットミッション、半分クリアって出ましたよ」
不意に知らない男の人がタマモに話しかけた。タマモは「ラキアさん、よかったですね!」と微笑みながら応じてる。
「へぇ、口に突入しただけのヤツも、シークレットミッション半分クリア扱いか」
感心した様子でルトが呟く。
ラキアと呼ばれた人がタマモに報告してる内容を盗み聞きすると、半分クリアで報酬としてアイテム【暴走鯱の牙】が贈られたらしいとわかった。
僕はそれよりこの男の人が気になるんだけど!
「ルト、あの人が誰か知ってる?」
「あ? ……んー、タマモに惚れてるプレイヤー? 相手にされてない、つーかタマモは気づいてないけど。わりと攻略前線にいることが多いヤツだよ」
「へえ! タマモにそんな人がいたんだ」
今フラグ可視化を使ったら、恋愛フラグが見えるのかな?
ラキアにカフェに誘われても、タマモは「今日はもふもふを愛でるのに忙しいので!」と明るく断ってるから、フラグがベキッと折られている気がしなくもない。
フラグ折りスキルがなくたって、フラグは容易に折られてしまうものなんだよ……可哀想なフラグ君……。
僕が密かに憐れんでいると、ラキアが僕を見てスッと腰を下ろした。榛色の瞳と目が合う。優しそうな人だ。
「はじめまして、俺はラキアです」
「はじめましてー、僕はモモだよ」
僕がにこにこと微笑みかけると、ラキアも目を細めてうんうん、と頷いた。
「知ってます。タマモさんが大好きな人……もふもふ? なので」
途中で『人じゃないな』と言いたげに僕を見たラキアが訂正を入れながら微笑む。
ラキアの恋心をルトに聞かされてるから、ちょっぴり申し訳ない。
でも、ラキアは僕に含むところはないようで、「これから俺とも仲良くしてもらえると嬉しいです」と丁寧に頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくー」
握手。
たくさんのもふもふ教信徒と思しき人たちに羨ましそうに見られていても気にしないラキアは、見た目以上に強かなタイプのようだ。
「俺、アクセサリー技士なので、必要な時は声を掛けてください」
「アクセサリー技士?」
僕が首を傾げると、ラキアがにこやかに補足を入れてくれる。
「鍛冶士の進化先です。最近転職したんです。アクセサリー作製に補正効果が付くんですよ」
「へえ! そういうのがあるんだ? いいね。僕は装備してもアクセサリーしか効果が出ないから、今度作ってもらうかも」
いい人に出会えたな~。
喜ぶ僕に、ラキアも微笑みながら「素材は持ち込みをお願いする可能性が高いですけど、いつでもご依頼ください」と言ってくれた。
「モモ、報酬の確認はしなくていいのか?」
「あ、そうだった!」
不意にルトに声をかけられ、ちらりと船の外を見ると、いつの間にか王都の船着き場近くまで戻ってきているようだ。
着くまでに確認を終わらせようと、大量の通知マークを選択。
さて、レイドイベント報酬はどんなものをもらえてるのかな~。
〈海上レイドイベントのシークレットミッション【巨大モンスターの内部探索】を完全クリアしました。報酬として称号【秘密を暴く者】とアイテム【海獣の卵】が贈られます〉
——————
称号【秘密を暴く者】
秘密というものは、それがあると知られた時点で秘密にはなりえない……
シークレットミッションクリア成功率が5%アップ、幸運値+7
【海獣の卵】レア度☆☆☆☆☆
種族不明な水属性モンスターの卵
孵化すると、テイムモンスターとなる
テイム枠が一つ以上余っていないと孵化しない
——————
なんと。暴走鯱の内部を探索するのは、シークレットミッションだったらしい。
僕はそんなことになるとは考えずに、好きに行動しただけだ。でも、報酬もらえたからラッキーだね。
称号の効果は結構いいし、アイテムも好奇心をそそる。海獣の卵からどんなモンスターが孵るのか気になるな~。テイム枠を余らせておかないと。
「モモ……」
不意にルトの呆然とした声が聞こえた。
ルトも一緒に行動してたんだから、同じアナウンスがあったんだろう。その手には青いマーブル模様の卵もあるし。
「——俺、テイム枠なんて持ってねーよ?」
「大丈夫だよ。テイマーじゃなくても、六体まではテイムできるらしいから」
オギンをテイムした時に入手した情報を教えると、ルトがホッと表情を緩めた。
「それならいいんだけど、これ、アイテムボックスに入れたままで孵化すると思うか?」
「……それは大丈夫だと思うよ? 卵を抱えて冒険しろ、なんてさすがに言わないでしょ」
卵はルトでも両手で抱えるほどのサイズがあるし、僕よりちょっと小さめくらいな感じだ。背負って行動するなんてできそうもない。
そんな理不尽な要求はされないだろう、という僕の予想に、ルトは納得したのか頷いた。
「だよな。よし、これは孵るまで放置しとこ」
「……もうちょっと愛情を持ってもいいんじゃない?」
「俺はテイマーじゃないし、卵に愛情を持てるタイプじゃない」
はっきりと断言するルトに、思わず苦笑する。
望んで手に入れたわけじゃないし、そんなこともあるよね。僕はたまにアイテムボックスから取り出して磨いて愛でよう。
「モモさんたち、どうされました?」
もふもふ教の奥義発動に恍惚とした表情だったタマモが、ようやく正常化した。すぐさま僕の顔を覗き込んで笑み崩れてるけど、これは通常運転です。
「暴走鯱の中に入って探索したのがシークレットミッション扱いで、報酬をもらえたんだよー」
「それはよかったですね。もう少し時間があれば、他の方も探索できたのでしょうが……」
「ごめんね?」
「いえいえ! 早いもの勝ちは世の常ですから、お気になさらず!」
慌ててフォローしてくれたタマモに「ありがとー」と返して、シークレットミッションについて話す。
ワールドミッションクリアから暴走鯱への最終攻撃まであまり時間がなかったから、ちゃんと報告できてなかったんだよねー。
たまにルトが補足を入れてくれたから、残さず伝えられたと思う。タマモたちはこの情報を掲示板に流すらしい。
最後の第四回レイドイベント参加者は、今回の情報を元にイベントを進められそうだ。よかったね。攻略最速タイムを更新されたら、ちょっぴり悔しいけど。
「タマモさん! 俺はシークレットミッション、半分クリアって出ましたよ」
不意に知らない男の人がタマモに話しかけた。タマモは「ラキアさん、よかったですね!」と微笑みながら応じてる。
「へぇ、口に突入しただけのヤツも、シークレットミッション半分クリア扱いか」
感心した様子でルトが呟く。
ラキアと呼ばれた人がタマモに報告してる内容を盗み聞きすると、半分クリアで報酬としてアイテム【暴走鯱の牙】が贈られたらしいとわかった。
僕はそれよりこの男の人が気になるんだけど!
「ルト、あの人が誰か知ってる?」
「あ? ……んー、タマモに惚れてるプレイヤー? 相手にされてない、つーかタマモは気づいてないけど。わりと攻略前線にいることが多いヤツだよ」
「へえ! タマモにそんな人がいたんだ」
今フラグ可視化を使ったら、恋愛フラグが見えるのかな?
ラキアにカフェに誘われても、タマモは「今日はもふもふを愛でるのに忙しいので!」と明るく断ってるから、フラグがベキッと折られている気がしなくもない。
フラグ折りスキルがなくたって、フラグは容易に折られてしまうものなんだよ……可哀想なフラグ君……。
僕が密かに憐れんでいると、ラキアが僕を見てスッと腰を下ろした。榛色の瞳と目が合う。優しそうな人だ。
「はじめまして、俺はラキアです」
「はじめましてー、僕はモモだよ」
僕がにこにこと微笑みかけると、ラキアも目を細めてうんうん、と頷いた。
「知ってます。タマモさんが大好きな人……もふもふ? なので」
途中で『人じゃないな』と言いたげに僕を見たラキアが訂正を入れながら微笑む。
ラキアの恋心をルトに聞かされてるから、ちょっぴり申し訳ない。
でも、ラキアは僕に含むところはないようで、「これから俺とも仲良くしてもらえると嬉しいです」と丁寧に頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくー」
握手。
たくさんのもふもふ教信徒と思しき人たちに羨ましそうに見られていても気にしないラキアは、見た目以上に強かなタイプのようだ。
「俺、アクセサリー技士なので、必要な時は声を掛けてください」
「アクセサリー技士?」
僕が首を傾げると、ラキアがにこやかに補足を入れてくれる。
「鍛冶士の進化先です。最近転職したんです。アクセサリー作製に補正効果が付くんですよ」
「へえ! そういうのがあるんだ? いいね。僕は装備してもアクセサリーしか効果が出ないから、今度作ってもらうかも」
いい人に出会えたな~。
喜ぶ僕に、ラキアも微笑みながら「素材は持ち込みをお願いする可能性が高いですけど、いつでもご依頼ください」と言ってくれた。
「モモ、報酬の確認はしなくていいのか?」
「あ、そうだった!」
不意にルトに声をかけられ、ちらりと船の外を見ると、いつの間にか王都の船着き場近くまで戻ってきているようだ。
着くまでに確認を終わらせようと、大量の通知マークを選択。
さて、レイドイベント報酬はどんなものをもらえてるのかな~。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
グリゴリ
ファンタジー
木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。
恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。
蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。
そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。
隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。
死にたくないので、今世は「悪女」の看板を下ろして「聖女」の利権を奪い尽くします
あめとおと
恋愛
「死に様なら、もう八通りも見てきたわ」
公爵令嬢レオノーラは、義妹ミアを「聖女」として引き立てるための「悪役」として、九回の人生をループしてきた。
どれほど善人に振る舞おうと、どれほど婚約者の王太子に縋ろうと、最後は常に処刑台か追放。
すべては、周囲の好感度を強制的に書き換えるミアの「偽りの奇跡」のせいだった。
十度目の十六歳。
累計八十年の人生を経験し、精神年齢も魔導知識も「枯れた」域に達したレオノーラは、ついに決意する。
「いい子を演じるのは、もう飽きたわ。今世は悪役令嬢らしく、あなたの『幸運』をすべて奪い尽くしてあげる」
ミアが手に入れるはずだった【癒やしの聖杯】を先回りして献上し、
ミアの信奉者になるはずだった【最強の騎士団長】を魔導の力で救済して味方につけ、
王太子との「思い出の場所」を物理的に整地してバラ園に変える。
「あら、殿下。ゴミ(思い出)を片付けて何が悪いのかしら?」
冷徹に、そして優雅に「ざまぁ」を完遂していくレオノーラ。
そんな彼女の前に、前世では「死神」と恐れられた隣国の皇帝ギルバートが現れる。
彼は、聖女の補正が効かない唯一の男。そして、誰よりも重すぎる独占欲を抱えた男だった――。
「君は世界を奪え。私は、そんな君を奪うとしよう」
これは、九回殺された悪役令嬢が、十回目で「真の幸福」と「最強の地位」を力ずくでもぎ取る、逆転無双の物語。
【全10話+後日談 完結まで投稿済 最終投稿は3/27】