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9章 もふうさフィーバー
364.まずは別の報酬
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よーし、報酬を確かめよう! と届いていた通知を見ようとしたところで、アナウンスが聞こえてきた。
〈海上レイドイベントのシークレットミッション【巨大モンスターの内部探索】を完全クリアしました。報酬として称号【秘密を暴く者】とアイテム【海獣の卵】が贈られます〉
——————
称号【秘密を暴く者】
秘密というものは、それがあると知られた時点で秘密にはなりえない……
シークレットミッションクリア成功率が5%アップ、幸運値+7
【海獣の卵】レア度☆☆☆☆☆
種族不明な水属性モンスターの卵
孵化すると、テイムモンスターとなる
テイム枠が一つ以上余っていないと孵化しない
——————
なんと。暴走鯱の内部を探索するのは、シークレットミッションだったらしい。
僕はそんなことになるとは考えずに、好きに行動しただけだ。でも、報酬もらえたからラッキーだね。
称号の効果は結構いいし、アイテムも好奇心をそそる。海獣の卵からどんなモンスターが孵るのか気になるな~。テイム枠を余らせておかないと。
「モモ……」
不意にルトの呆然とした声が聞こえた。
ルトも一緒に行動してたんだから、同じアナウンスがあったんだろう。その手には青いマーブル模様の卵もあるし。
「——俺、テイム枠なんて持ってねーよ?」
「大丈夫だよ。テイマーじゃなくても、六体まではテイムできるらしいから」
オギンをテイムした時に入手した情報を教えると、ルトがホッと表情を緩めた。
「それならいいんだけど、これ、アイテムボックスに入れたままで孵化すると思うか?」
「……それは大丈夫だと思うよ? 卵を抱えて冒険しろ、なんてさすがに言わないでしょ」
卵はルトでも両手で抱えるほどのサイズがあるし、僕よりちょっと小さめくらいな感じだ。背負って行動するなんてできそうもない。
そんな理不尽な要求はされないだろう、という僕の予想に、ルトは納得したのか頷いた。
「だよな。よし、これは孵るまで放置しとこ」
「……もうちょっと愛情を持ってもいいんじゃない?」
「俺はテイマーじゃないし、卵に愛情を持てるタイプじゃない」
はっきりと断言するルトに、思わず苦笑する。
望んで手に入れたわけじゃないし、そんなこともあるよね。僕はたまにアイテムボックスから取り出して磨いて愛でよう。
「モモさんたち、どうされました?」
もふもふ教の奥義発動に恍惚とした表情だったタマモが、ようやく正常化した。すぐさま僕の顔を覗き込んで笑み崩れてるけど、これは通常運転です。
「暴走鯱の中に入って探索したのがシークレットミッション扱いで、報酬をもらえたんだよー」
「それはよかったですね。もう少し時間があれば、他の方も探索できたのでしょうが……」
「ごめんね?」
「いえいえ! 早いもの勝ちは世の常ですから、お気になさらず!」
慌ててフォローしてくれたタマモに「ありがとー」と返して、シークレットミッションについて話す。
ワールドミッションクリアから暴走鯱への最終攻撃まであまり時間がなかったから、ちゃんと報告できてなかったんだよねー。
たまにルトが補足を入れてくれたから、残さず伝えられたと思う。タマモたちはこの情報を掲示板に流すらしい。
最後の第四回レイドイベント参加者は、今回の情報を元にイベントを進められそうだ。よかったね。攻略最速タイムを更新されたら、ちょっぴり悔しいけど。
「タマモさん! 俺はシークレットミッション、半分クリアって出ましたよ」
不意に知らない男の人がタマモに話しかけた。タマモは「ラキアさん、よかったですね!」と微笑みながら応じてる。
「へぇ、口に突入しただけのヤツも、シークレットミッション半分クリア扱いか」
感心した様子でルトが呟く。
ラキアと呼ばれた人がタマモに報告してる内容を盗み聞きすると、半分クリアで報酬としてアイテム【暴走鯱の牙】が贈られたらしいとわかった。
僕はそれよりこの男の人が気になるんだけど!
「ルト、あの人が誰か知ってる?」
「あ? ……んー、タマモに惚れてるプレイヤー? 相手にされてない、つーかタマモは気づいてないけど。わりと攻略前線にいることが多いヤツだよ」
「へえ! タマモにそんな人がいたんだ」
今フラグ可視化を使ったら、恋愛フラグが見えるのかな?
ラキアにカフェに誘われても、タマモは「今日はもふもふを愛でるのに忙しいので!」と明るく断ってるから、フラグがベキッと折られている気がしなくもない。
フラグ折りスキルがなくたって、フラグは容易に折られてしまうものなんだよ……可哀想なフラグ君……。
僕が密かに憐れんでいると、ラキアが僕を見てスッと腰を下ろした。榛色の瞳と目が合う。優しそうな人だ。
「はじめまして、俺はラキアです」
「はじめましてー、僕はモモだよ」
僕がにこにこと微笑みかけると、ラキアも目を細めてうんうん、と頷いた。
「知ってます。タマモさんが大好きな人……もふもふ? なので」
途中で『人じゃないな』と言いたげに僕を見たラキアが訂正を入れながら微笑む。
ラキアの恋心をルトに聞かされてるから、ちょっぴり申し訳ない。
でも、ラキアは僕に含むところはないようで、「これから俺とも仲良くしてもらえると嬉しいです」と丁寧に頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくー」
握手。
たくさんのもふもふ教信徒と思しき人たちに羨ましそうに見られていても気にしないラキアは、見た目以上に強かなタイプのようだ。
「俺、アクセサリー技士なので、必要な時は声を掛けてください」
「アクセサリー技士?」
僕が首を傾げると、ラキアがにこやかに補足を入れてくれる。
「鍛冶士の進化先です。最近転職したんです。アクセサリー作製に補正効果が付くんですよ」
「へえ! そういうのがあるんだ? いいね。僕は装備してもアクセサリーしか効果が出ないから、今度作ってもらうかも」
いい人に出会えたな~。
喜ぶ僕に、ラキアも微笑みながら「素材は持ち込みをお願いする可能性が高いですけど、いつでもご依頼ください」と言ってくれた。
「モモ、報酬の確認はしなくていいのか?」
「あ、そうだった!」
不意にルトに声をかけられ、ちらりと船の外を見ると、いつの間にか王都の船着き場近くまで戻ってきているようだ。
着くまでに確認を終わらせようと、大量の通知マークを選択。
さて、レイドイベント報酬はどんなものをもらえてるのかな~。
〈海上レイドイベントのシークレットミッション【巨大モンスターの内部探索】を完全クリアしました。報酬として称号【秘密を暴く者】とアイテム【海獣の卵】が贈られます〉
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称号【秘密を暴く者】
秘密というものは、それがあると知られた時点で秘密にはなりえない……
シークレットミッションクリア成功率が5%アップ、幸運値+7
【海獣の卵】レア度☆☆☆☆☆
種族不明な水属性モンスターの卵
孵化すると、テイムモンスターとなる
テイム枠が一つ以上余っていないと孵化しない
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なんと。暴走鯱の内部を探索するのは、シークレットミッションだったらしい。
僕はそんなことになるとは考えずに、好きに行動しただけだ。でも、報酬もらえたからラッキーだね。
称号の効果は結構いいし、アイテムも好奇心をそそる。海獣の卵からどんなモンスターが孵るのか気になるな~。テイム枠を余らせておかないと。
「モモ……」
不意にルトの呆然とした声が聞こえた。
ルトも一緒に行動してたんだから、同じアナウンスがあったんだろう。その手には青いマーブル模様の卵もあるし。
「——俺、テイム枠なんて持ってねーよ?」
「大丈夫だよ。テイマーじゃなくても、六体まではテイムできるらしいから」
オギンをテイムした時に入手した情報を教えると、ルトがホッと表情を緩めた。
「それならいいんだけど、これ、アイテムボックスに入れたままで孵化すると思うか?」
「……それは大丈夫だと思うよ? 卵を抱えて冒険しろ、なんてさすがに言わないでしょ」
卵はルトでも両手で抱えるほどのサイズがあるし、僕よりちょっと小さめくらいな感じだ。背負って行動するなんてできそうもない。
そんな理不尽な要求はされないだろう、という僕の予想に、ルトは納得したのか頷いた。
「だよな。よし、これは孵るまで放置しとこ」
「……もうちょっと愛情を持ってもいいんじゃない?」
「俺はテイマーじゃないし、卵に愛情を持てるタイプじゃない」
はっきりと断言するルトに、思わず苦笑する。
望んで手に入れたわけじゃないし、そんなこともあるよね。僕はたまにアイテムボックスから取り出して磨いて愛でよう。
「モモさんたち、どうされました?」
もふもふ教の奥義発動に恍惚とした表情だったタマモが、ようやく正常化した。すぐさま僕の顔を覗き込んで笑み崩れてるけど、これは通常運転です。
「暴走鯱の中に入って探索したのがシークレットミッション扱いで、報酬をもらえたんだよー」
「それはよかったですね。もう少し時間があれば、他の方も探索できたのでしょうが……」
「ごめんね?」
「いえいえ! 早いもの勝ちは世の常ですから、お気になさらず!」
慌ててフォローしてくれたタマモに「ありがとー」と返して、シークレットミッションについて話す。
ワールドミッションクリアから暴走鯱への最終攻撃まであまり時間がなかったから、ちゃんと報告できてなかったんだよねー。
たまにルトが補足を入れてくれたから、残さず伝えられたと思う。タマモたちはこの情報を掲示板に流すらしい。
最後の第四回レイドイベント参加者は、今回の情報を元にイベントを進められそうだ。よかったね。攻略最速タイムを更新されたら、ちょっぴり悔しいけど。
「タマモさん! 俺はシークレットミッション、半分クリアって出ましたよ」
不意に知らない男の人がタマモに話しかけた。タマモは「ラキアさん、よかったですね!」と微笑みながら応じてる。
「へぇ、口に突入しただけのヤツも、シークレットミッション半分クリア扱いか」
感心した様子でルトが呟く。
ラキアと呼ばれた人がタマモに報告してる内容を盗み聞きすると、半分クリアで報酬としてアイテム【暴走鯱の牙】が贈られたらしいとわかった。
僕はそれよりこの男の人が気になるんだけど!
「ルト、あの人が誰か知ってる?」
「あ? ……んー、タマモに惚れてるプレイヤー? 相手にされてない、つーかタマモは気づいてないけど。わりと攻略前線にいることが多いヤツだよ」
「へえ! タマモにそんな人がいたんだ」
今フラグ可視化を使ったら、恋愛フラグが見えるのかな?
ラキアにカフェに誘われても、タマモは「今日はもふもふを愛でるのに忙しいので!」と明るく断ってるから、フラグがベキッと折られている気がしなくもない。
フラグ折りスキルがなくたって、フラグは容易に折られてしまうものなんだよ……可哀想なフラグ君……。
僕が密かに憐れんでいると、ラキアが僕を見てスッと腰を下ろした。榛色の瞳と目が合う。優しそうな人だ。
「はじめまして、俺はラキアです」
「はじめましてー、僕はモモだよ」
僕がにこにこと微笑みかけると、ラキアも目を細めてうんうん、と頷いた。
「知ってます。タマモさんが大好きな人……もふもふ? なので」
途中で『人じゃないな』と言いたげに僕を見たラキアが訂正を入れながら微笑む。
ラキアの恋心をルトに聞かされてるから、ちょっぴり申し訳ない。
でも、ラキアは僕に含むところはないようで、「これから俺とも仲良くしてもらえると嬉しいです」と丁寧に頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくー」
握手。
たくさんのもふもふ教信徒と思しき人たちに羨ましそうに見られていても気にしないラキアは、見た目以上に強かなタイプのようだ。
「俺、アクセサリー技士なので、必要な時は声を掛けてください」
「アクセサリー技士?」
僕が首を傾げると、ラキアがにこやかに補足を入れてくれる。
「鍛冶士の進化先です。最近転職したんです。アクセサリー作製に補正効果が付くんですよ」
「へえ! そういうのがあるんだ? いいね。僕は装備してもアクセサリーしか効果が出ないから、今度作ってもらうかも」
いい人に出会えたな~。
喜ぶ僕に、ラキアも微笑みながら「素材は持ち込みをお願いする可能性が高いですけど、いつでもご依頼ください」と言ってくれた。
「モモ、報酬の確認はしなくていいのか?」
「あ、そうだった!」
不意にルトに声をかけられ、ちらりと船の外を見ると、いつの間にか王都の船着き場近くまで戻ってきているようだ。
着くまでに確認を終わらせようと、大量の通知マークを選択。
さて、レイドイベント報酬はどんなものをもらえてるのかな~。
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