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9章 もふうさフィーバー
366.神殿の近くです
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打ち上げパーティー開催場所は、王都のもふもふ教会に決定した。
「え、いつの間に完成したの?」
「実はまだ教会内部は完成していないのですが、外の庭は使えるので」
「なるほど?」
そんな話をしながら、タマモに案内されてもふもふ教会に向かう。
王都の神殿の近くにあると知ってはいたけど、そもそも神殿にも行ったことがないから、完全に初見の場所だ。
王都の道を歩いていくと、前方に開けた芝生の空間が見えてきた。その奥には荘厳な建物がある。
「あれが神殿ですよ」
「へぇ、大きいね」
王城よりも立派に見えるのはきっと気のせいじゃない。それだけ神殿が担っている役割が大きいということだろう。
神殿と言えば、巫女のラファイエットさんはいるのかな? 第二王女様だから、普段はこっちにいない可能性もあるけど……。
「もふもふ教会はこちらです」
タマモが神殿の前を通り過ぎ、右手側にある木立を指した。その奥に、第二の街にあるもふもふ教会に似た建物が垣間見える。
うん、ザ・教会って感じ。まだ内部を建設中で、作業中の人がちらほらといた。中を見るのが楽しみだな~。ここにもステンドグラスがあるのかな?
タマモにつれられてもふもふ教会に向かっていると、神殿の方から視線を感じる。
たくさんの人を引き連れてきたから、何事かと不審に思われたのかもしれない。
ご近所さんだから挨拶しておこう、と視線の方を振り向く。
「……あれ? ラファイエットさん?」
「あら、モモさん。お久しぶりね。スタ島は楽しめたかしら?」
会えるかな、とちょっと期待していたラファイエットさんが神殿から出てきた。もふもふ教の一団を興味深そうに眺めながら僕に話しかけてくる。
急にたくさんでやって来ちゃってごめんね?
「うん、楽しかったよー。たまに行って、神の社に参拝してるんだ」
実はログインして時間がある時は、神の社に行って捧げ物をしてるんだ。
おかげで世界の穢れ度は現在75%まで下がってる。スタ島行きの航路が始まってるから、他のプレイヤーも行って参拝してるらしい。
そういえば、暴走鯱が呪われていたのは結局なんでだったんだろう? 力を封じる剣が穢れてるなんて、不思議だよねぇ。
「それは素晴らしいことね。最近はモンスターに呪いをかけて回っている不審な人がいるらしいから、世界の穢れに何かしらの影響が出ているんじゃないかと心配していたのよ」
「おっと、なんかドンピシャな情報が出てきた……」
「ドンピシャ?」
「ううん、こっちの話ー」
不思議そうな顔になるラファイエットさんに首を振り、タマモとルトに視線を向ける。二人とも真剣な顔で頷いた。
これ、絶対暴走鯱に関する情報だよね。
「——その呪いをかけて回っている人は捕まってるの?」
「それが、まだなのよ。はじまりの街との航路上に現れたモンスターも呪われているんじゃないかという情報があって、討伐に参加する皆さんに調査をお願いするつもりだったのだけれど、どこかで話が止められていたみたいで……」
ラファイエットさんがため息をつく。
これ、レイドイベント前に聞きに来ていたら、シークレットミッションとワールドミッションに取り組むためのヒントをもらえていた感じだよね。
うーん、ヒントなしでもクリアできたからいいものの……今後はもうちょっと情報収集がんばろっかな。
そんな決意をしながら、ラファイエットさんにレイドイベントで入手した情報を報告した。呪われていた剣については、ルトが実物を取り出し説明する。
「——まあ、モモさんたちがしっかり調査をしてくれたのね!」
報告を聞き終えたラファイエットさんが目を輝かせ相好を崩す。そんなに喜んでもらえてよかったよー。完全に偶然の産物だけど。
「犯人の手がかりはないけどねー」
「いえ、それについてはわたくしの方で調査を進めるから大丈夫よ。それにしても、あのモンスターは厄災のモンスターだったのね。世界のどこかに力を封じられた状態で潜んでいるとは聞いていたけれど……」
頷いたラファイエットさんは、傍に立つ騎士——神殿騎士と言われる白い甲冑姿の男——に「調査用の報酬をお渡しして」と指示を出した。
「報酬をもらえるの?」
「ええ、報告してもらえて助かったもの」
〈ミッション【穢れた巨大モンスターの謎を報告】をクリアしました。報酬が贈られます〉
あ、ミッション達成したことになったんだ? それなら遠慮なく受け取りますー。
騎士さんは僕とルトに白い風呂敷包みのものを手渡した。何が入ってるのかな。
興味津々なタマモとラキアに促されて、中を確認する。
——————
【聖銀の塊】レア度☆☆☆☆
神殿の力で清めた白銀の鉱石
このアイテムで作られた装備・アクセサリーは、装備者への呪いを無効化する
王家所有の鉱山でのみ採掘可能
——————
すごいアイテムをもらっちゃった。
呪いをかけられる機会なんて今のところないけど、今後あるかもしれないからアクセサリーを用意しておこう。ちょうどいいし、ラキアに頼もうかな~。
「ありがとー。大事に使うね」
「こちらこそ感謝しているわ——犯人について何かわかったら、また皆さんにご協力をお願いする可能性もあるからよろしくお願いするわね」
静かに話を聞いていたもふもふ教のみんなに向けて、ラファイエットさんが小さく頭を下げる。その傍に控えていた人たち全員が一斉に頭を下げたから、僕たちはちょっと気圧されちゃった。
「う、うん、わかったよ。また声を掛けてね」
「ええ、ありがとう」
微笑んだラファイエットは傍付きの人に促され、「これからお父様に報告に行くの。慌ただしくてごめんなさいね」と言いながら去っていった。
ラファイエットさんを見送り、なんとなくルトと顔を見合わせる。
「モモがいると、ほんと普通じゃねーことが起きるな」
「僕のせいじゃないと思う……」
そう答えてみたけど、目を逸らしちゃったから、ちょっと信憑性がなかったかもしれない。
「え、いつの間に完成したの?」
「実はまだ教会内部は完成していないのですが、外の庭は使えるので」
「なるほど?」
そんな話をしながら、タマモに案内されてもふもふ教会に向かう。
王都の神殿の近くにあると知ってはいたけど、そもそも神殿にも行ったことがないから、完全に初見の場所だ。
王都の道を歩いていくと、前方に開けた芝生の空間が見えてきた。その奥には荘厳な建物がある。
「あれが神殿ですよ」
「へぇ、大きいね」
王城よりも立派に見えるのはきっと気のせいじゃない。それだけ神殿が担っている役割が大きいということだろう。
神殿と言えば、巫女のラファイエットさんはいるのかな? 第二王女様だから、普段はこっちにいない可能性もあるけど……。
「もふもふ教会はこちらです」
タマモが神殿の前を通り過ぎ、右手側にある木立を指した。その奥に、第二の街にあるもふもふ教会に似た建物が垣間見える。
うん、ザ・教会って感じ。まだ内部を建設中で、作業中の人がちらほらといた。中を見るのが楽しみだな~。ここにもステンドグラスがあるのかな?
タマモにつれられてもふもふ教会に向かっていると、神殿の方から視線を感じる。
たくさんの人を引き連れてきたから、何事かと不審に思われたのかもしれない。
ご近所さんだから挨拶しておこう、と視線の方を振り向く。
「……あれ? ラファイエットさん?」
「あら、モモさん。お久しぶりね。スタ島は楽しめたかしら?」
会えるかな、とちょっと期待していたラファイエットさんが神殿から出てきた。もふもふ教の一団を興味深そうに眺めながら僕に話しかけてくる。
急にたくさんでやって来ちゃってごめんね?
「うん、楽しかったよー。たまに行って、神の社に参拝してるんだ」
実はログインして時間がある時は、神の社に行って捧げ物をしてるんだ。
おかげで世界の穢れ度は現在75%まで下がってる。スタ島行きの航路が始まってるから、他のプレイヤーも行って参拝してるらしい。
そういえば、暴走鯱が呪われていたのは結局なんでだったんだろう? 力を封じる剣が穢れてるなんて、不思議だよねぇ。
「それは素晴らしいことね。最近はモンスターに呪いをかけて回っている不審な人がいるらしいから、世界の穢れに何かしらの影響が出ているんじゃないかと心配していたのよ」
「おっと、なんかドンピシャな情報が出てきた……」
「ドンピシャ?」
「ううん、こっちの話ー」
不思議そうな顔になるラファイエットさんに首を振り、タマモとルトに視線を向ける。二人とも真剣な顔で頷いた。
これ、絶対暴走鯱に関する情報だよね。
「——その呪いをかけて回っている人は捕まってるの?」
「それが、まだなのよ。はじまりの街との航路上に現れたモンスターも呪われているんじゃないかという情報があって、討伐に参加する皆さんに調査をお願いするつもりだったのだけれど、どこかで話が止められていたみたいで……」
ラファイエットさんがため息をつく。
これ、レイドイベント前に聞きに来ていたら、シークレットミッションとワールドミッションに取り組むためのヒントをもらえていた感じだよね。
うーん、ヒントなしでもクリアできたからいいものの……今後はもうちょっと情報収集がんばろっかな。
そんな決意をしながら、ラファイエットさんにレイドイベントで入手した情報を報告した。呪われていた剣については、ルトが実物を取り出し説明する。
「——まあ、モモさんたちがしっかり調査をしてくれたのね!」
報告を聞き終えたラファイエットさんが目を輝かせ相好を崩す。そんなに喜んでもらえてよかったよー。完全に偶然の産物だけど。
「犯人の手がかりはないけどねー」
「いえ、それについてはわたくしの方で調査を進めるから大丈夫よ。それにしても、あのモンスターは厄災のモンスターだったのね。世界のどこかに力を封じられた状態で潜んでいるとは聞いていたけれど……」
頷いたラファイエットさんは、傍に立つ騎士——神殿騎士と言われる白い甲冑姿の男——に「調査用の報酬をお渡しして」と指示を出した。
「報酬をもらえるの?」
「ええ、報告してもらえて助かったもの」
〈ミッション【穢れた巨大モンスターの謎を報告】をクリアしました。報酬が贈られます〉
あ、ミッション達成したことになったんだ? それなら遠慮なく受け取りますー。
騎士さんは僕とルトに白い風呂敷包みのものを手渡した。何が入ってるのかな。
興味津々なタマモとラキアに促されて、中を確認する。
——————
【聖銀の塊】レア度☆☆☆☆
神殿の力で清めた白銀の鉱石
このアイテムで作られた装備・アクセサリーは、装備者への呪いを無効化する
王家所有の鉱山でのみ採掘可能
——————
すごいアイテムをもらっちゃった。
呪いをかけられる機会なんて今のところないけど、今後あるかもしれないからアクセサリーを用意しておこう。ちょうどいいし、ラキアに頼もうかな~。
「ありがとー。大事に使うね」
「こちらこそ感謝しているわ——犯人について何かわかったら、また皆さんにご協力をお願いする可能性もあるからよろしくお願いするわね」
静かに話を聞いていたもふもふ教のみんなに向けて、ラファイエットさんが小さく頭を下げる。その傍に控えていた人たち全員が一斉に頭を下げたから、僕たちはちょっと気圧されちゃった。
「う、うん、わかったよ。また声を掛けてね」
「ええ、ありがとう」
微笑んだラファイエットは傍付きの人に促され、「これからお父様に報告に行くの。慌ただしくてごめんなさいね」と言いながら去っていった。
ラファイエットさんを見送り、なんとなくルトと顔を見合わせる。
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