もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

367.パーティー準備

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 思いがけない情報と報酬を入手することになったけど、今は打ち上げパーティー前の料理教室に集中するぞー。

 ということで、教会の外になぜか作られていた調理スペースに、もふもふ教の人たちと集う。
 料理をしない人は、パーティー会場の設営をしてくれてるよ。ちょうどいい機会だから、現時点で入手してるイースター遊具を仮置きして、みんなに体験してもらうんだって。僕も楽しみ!

「やっぱり暴走鯱バイオレンシャチの肉を使った料理がいいかな?」
「それはもちろんですけど、仙桃ミルクを使ったお菓子も教えてもらいたいです」
「え、なんで?」
「もちろん天兎アンジュラパたちに会いに行きたいからです!」

 満面の笑みでタマモが答えた。周りのもふもふ教の人たちも大きく頷いてる。
 あ、はい。すごく納得できたよ。天兎アンジュラパに会うには、心のこもった手作りお菓子が必要だって僕が情報を教えたんだもんね。みんな会いたがるに決まってるよ。

「わかったよー。じゃあ、メイン料理は暴走鯱バイオレンシャチの肉を使って、デザートは仙桃ミルクを使ったお菓子にしようね」
「はい! できれば私でも作れそうな簡単なメニューを教えてください」

 真剣な眼差しのタマモを見つめ返し、僕は「……うん、できる限りがんばるよ」と答えるしかなかった。ゲームの補正効果に期待したい。

 たぶん気持ちはすっごくこもってる料理ができると思うんだ。味がどうなるかはわからないし、気持ちが重すぎるって思われる可能性はあるけど。

「じゃあ、まずはパパッと暴走鯱バイオレンシャチのお肉で料理しちゃうねー。みんなも真似してみて」

 料理スキルを持っていない人は、実際に調理道具と火を使って料理すればスキルを習得できる。すでに持っている人は調理道具さえあればなんとかなるだろう。

 暴走鯱バイオレンシャチの肉で作れそうなレシピは、ここに到着するまでに検索してる。
 レイドイベントの第一回や第二回に参加したプレイヤーがすでに料理を試していたみたいだから助かった。

 リアルでシャチの肉はあまり食用にされないらしいけど、暴走鯱バイオレンシャチは牛肉に似た味わいらしい。
 それならいろんな調理ができる。

暴走鯱バイオレンシャチのお肉を薄く切りましてー」

 包丁を当てて薄切りをイメージすると、あっという間に完成した。一枚が僕の顔くらい大きい。

 タマモを見ると、時々自分の指に包丁を当てながらも、ちゃんとお肉を切り分けられてる。だいぶ厚切りだけど、切れてるからオッケー。ゲーム内では包丁に殺傷能力がなくてよかったね!

「一枚、味見用に炙ってみます! 料理スキルだと、そのままで塩味がつくよ。スキルを持ってない人は、この塩を一振りしてね」

 錬金術で作っておいた塩コショウの瓶をみんなに提供してから、お肉をフライパンに載せて、料理スキルで焼く。すぐにいい匂いがしてきた。お腹が空いてくるよー。
 我慢できずに、ほどよく焼けた肉を口に運ぶ——前に鑑定しなきゃ!

——————
暴走鯱バイオレンシャチの焼けた肉(一枚)】レア度☆☆☆☆
 満腹度が5回復する
 ほどよく脂が落ちて旨味が増した焼いた肉
——————

 塊肉を二十枚に切り分けたから、いい感じの満腹度回復量になってる。
 これにコショウを足して味を整えて、ようやくパクリと食べてみた。もぐもぐ……うまぁ!

 じゅわっと肉汁が溢れ、弾力のある赤身の旨味が口いっぱいに広がった。塩コショウだけでも十分に美味しい。
 味は確かに牛肉っぽいけど、ちょっと違った感じもする。どう表現すればいいかわかんない。でも、美味しいことに変わりはないよ。

「……焦げてしまいました……」

 タマモが火の上に置いたフライパンの中身を見下ろし、しょんぼりとしてる。確かに、お肉の表面が黒い。しかも厚みがあるから、中はまだ生焼けっぽい。

 仕方ないから、僕が焦げを削いであげてから、錬金術で作ったアルミホイルに包み、オーブンで蒸し焼きしてみた。
 開けてみると、いい感じに火が通ってる。

「はい、食べてみて」
「ありがとうございます! ——ん、美味しい……!」

 タマモがほっぺたを押さえて感動してる。
 初めて完成できた料理(ほぼ僕が仕上げたし、ただ焼いただけだけど)を食べられて嬉しいみたいだ。ちょっとは自信が出てきたかな?

 こんな調子でみんなにアドバイスしたり、修正してあげたりしながら料理を続ける。
 暴走鯱バイオレンシャチの肉で作ったのは、ステーキやビーフシチュー風煮込み、ハンバーグ、すき焼き、肉じゃが、などなど。和洋折衷にいろんな料理を作ってみた。

 終盤には、タマモが満面の笑みで料理スキル習得を報告してくれた。
 でも、結構時間かかったね? リアルで料理下手だとスキルの習得が遅いのかな。

「私でも料理ができたなんて……! モモさんのおかげです! やっぱりモモさんは神ですね!」

 喜び方が大げさすぎる——とは、これまでのタマモのやらかしを何度もフォローしてきた僕には言えない。

 ほんとに何度も予想外の失敗をしでかしてくれたんだよ……なんとか修正できた僕すごい! 暗黒物質が製造されなかったのは、僕のおかげです! みんな感謝してください! もふもふ教集団食中毒は回避されました。

 料理スキルを入手できたからには、これまでみたいな失敗はあまり起きないと期待していいよね? ……だいぶ不安だー。

 続いて仙桃ミルクのお菓子作りも教えることになったけど、できる限りタマモ一人でも成功しそうな簡単なレシピ、仙桃ミルクプリンを作ることにした。
 プリンの素は僕の錬金術製で、仙桃ミルクとプリンの素を混ぜて冷やすだけで完成できるんだよ。

 プリンの素を店で販売するね、と教えたらタマモとたくさんのもふもふ教の人に拝まれた。料理が苦手な人はタマモだけじゃなかったんだよ……みんな、がんばって天兎アンジュラパに会ってね。

 簡単なお菓子だけど、心を込めて混ぜて、冷やしてる間も心を込め続けたら、きっと天兎アンジュラパにも通じるはず。『重いな……』って思われる可能性もなきにしもあらずだから、ほどほどにね!
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