389 / 555
9章 もふうさフィーバー
367.パーティー準備
しおりを挟む
思いがけない情報と報酬を入手することになったけど、今は打ち上げパーティー前の料理教室に集中するぞー。
ということで、教会の外になぜか作られていた調理スペースに、もふもふ教の人たちと集う。
料理をしない人は、パーティー会場の設営をしてくれてるよ。ちょうどいい機会だから、現時点で入手してるイースター遊具を仮置きして、みんなに体験してもらうんだって。僕も楽しみ!
「やっぱり暴走鯱の肉を使った料理がいいかな?」
「それはもちろんですけど、仙桃ミルクを使ったお菓子も教えてもらいたいです」
「え、なんで?」
「もちろん天兎たちに会いに行きたいからです!」
満面の笑みでタマモが答えた。周りのもふもふ教の人たちも大きく頷いてる。
あ、はい。すごく納得できたよ。天兎に会うには、心のこもった手作りお菓子が必要だって僕が情報を教えたんだもんね。みんな会いたがるに決まってるよ。
「わかったよー。じゃあ、メイン料理は暴走鯱の肉を使って、デザートは仙桃ミルクを使ったお菓子にしようね」
「はい! できれば私でも作れそうな簡単なメニューを教えてください」
真剣な眼差しのタマモを見つめ返し、僕は「……うん、できる限りがんばるよ」と答えるしかなかった。ゲームの補正効果に期待したい。
たぶん気持ちはすっごくこもってる料理ができると思うんだ。味がどうなるかはわからないし、気持ちが重すぎるって思われる可能性はあるけど。
「じゃあ、まずはパパッと暴走鯱のお肉で料理しちゃうねー。みんなも真似してみて」
料理スキルを持っていない人は、実際に調理道具と火を使って料理すればスキルを習得できる。すでに持っている人は調理道具さえあればなんとかなるだろう。
暴走鯱の肉で作れそうなレシピは、ここに到着するまでに検索してる。
レイドイベントの第一回や第二回に参加したプレイヤーがすでに料理を試していたみたいだから助かった。
リアルでシャチの肉はあまり食用にされないらしいけど、暴走鯱は牛肉に似た味わいらしい。
それならいろんな調理ができる。
「暴走鯱のお肉を薄く切りましてー」
包丁を当てて薄切りをイメージすると、あっという間に完成した。一枚が僕の顔くらい大きい。
タマモを見ると、時々自分の指に包丁を当てながらも、ちゃんとお肉を切り分けられてる。だいぶ厚切りだけど、切れてるからオッケー。ゲーム内では包丁に殺傷能力がなくてよかったね!
「一枚、味見用に炙ってみます! 料理スキルだと、そのままで塩味がつくよ。スキルを持ってない人は、この塩を一振りしてね」
錬金術で作っておいた塩コショウの瓶をみんなに提供してから、お肉をフライパンに載せて、料理スキルで焼く。すぐにいい匂いがしてきた。お腹が空いてくるよー。
我慢できずに、ほどよく焼けた肉を口に運ぶ——前に鑑定しなきゃ!
——————
【暴走鯱の焼けた肉(一枚)】レア度☆☆☆☆
満腹度が5回復する
ほどよく脂が落ちて旨味が増した焼いた肉
——————
塊肉を二十枚に切り分けたから、いい感じの満腹度回復量になってる。
これにコショウを足して味を整えて、ようやくパクリと食べてみた。もぐもぐ……うまぁ!
じゅわっと肉汁が溢れ、弾力のある赤身の旨味が口いっぱいに広がった。塩コショウだけでも十分に美味しい。
味は確かに牛肉っぽいけど、ちょっと違った感じもする。どう表現すればいいかわかんない。でも、美味しいことに変わりはないよ。
「……焦げてしまいました……」
タマモが火の上に置いたフライパンの中身を見下ろし、しょんぼりとしてる。確かに、お肉の表面が黒い。しかも厚みがあるから、中はまだ生焼けっぽい。
仕方ないから、僕が焦げを削いであげてから、錬金術で作ったアルミホイルに包み、オーブンで蒸し焼きしてみた。
開けてみると、いい感じに火が通ってる。
「はい、食べてみて」
「ありがとうございます! ——ん、美味しい……!」
タマモがほっぺたを押さえて感動してる。
初めて完成できた料理(ほぼ僕が仕上げたし、ただ焼いただけだけど)を食べられて嬉しいみたいだ。ちょっとは自信が出てきたかな?
こんな調子でみんなにアドバイスしたり、修正してあげたりしながら料理を続ける。
暴走鯱の肉で作ったのは、ステーキやビーフシチュー風煮込み、ハンバーグ、すき焼き、肉じゃが、などなど。和洋折衷にいろんな料理を作ってみた。
終盤には、タマモが満面の笑みで料理スキル習得を報告してくれた。
でも、結構時間かかったね? リアルで料理下手だとスキルの習得が遅いのかな。
「私でも料理ができたなんて……! モモさんのおかげです! やっぱりモモさんは神ですね!」
喜び方が大げさすぎる——とは、これまでのタマモのやらかしを何度もフォローしてきた僕には言えない。
ほんとに何度も予想外の失敗をしでかしてくれたんだよ……なんとか修正できた僕すごい! 暗黒物質が製造されなかったのは、僕のおかげです! みんな感謝してください! もふもふ教集団食中毒は回避されました。
料理スキルを入手できたからには、これまでみたいな失敗はあまり起きないと期待していいよね? ……だいぶ不安だー。
続いて仙桃ミルクのお菓子作りも教えることになったけど、できる限りタマモ一人でも成功しそうな簡単なレシピ、仙桃ミルクプリンを作ることにした。
プリンの素は僕の錬金術製で、仙桃ミルクとプリンの素を混ぜて冷やすだけで完成できるんだよ。
プリンの素を店で販売するね、と教えたらタマモとたくさんのもふもふ教の人に拝まれた。料理が苦手な人はタマモだけじゃなかったんだよ……みんな、がんばって天兎に会ってね。
簡単なお菓子だけど、心を込めて混ぜて、冷やしてる間も心を込め続けたら、きっと天兎にも通じるはず。『重いな……』って思われる可能性もなきにしもあらずだから、ほどほどにね!
ということで、教会の外になぜか作られていた調理スペースに、もふもふ教の人たちと集う。
料理をしない人は、パーティー会場の設営をしてくれてるよ。ちょうどいい機会だから、現時点で入手してるイースター遊具を仮置きして、みんなに体験してもらうんだって。僕も楽しみ!
「やっぱり暴走鯱の肉を使った料理がいいかな?」
「それはもちろんですけど、仙桃ミルクを使ったお菓子も教えてもらいたいです」
「え、なんで?」
「もちろん天兎たちに会いに行きたいからです!」
満面の笑みでタマモが答えた。周りのもふもふ教の人たちも大きく頷いてる。
あ、はい。すごく納得できたよ。天兎に会うには、心のこもった手作りお菓子が必要だって僕が情報を教えたんだもんね。みんな会いたがるに決まってるよ。
「わかったよー。じゃあ、メイン料理は暴走鯱の肉を使って、デザートは仙桃ミルクを使ったお菓子にしようね」
「はい! できれば私でも作れそうな簡単なメニューを教えてください」
真剣な眼差しのタマモを見つめ返し、僕は「……うん、できる限りがんばるよ」と答えるしかなかった。ゲームの補正効果に期待したい。
たぶん気持ちはすっごくこもってる料理ができると思うんだ。味がどうなるかはわからないし、気持ちが重すぎるって思われる可能性はあるけど。
「じゃあ、まずはパパッと暴走鯱のお肉で料理しちゃうねー。みんなも真似してみて」
料理スキルを持っていない人は、実際に調理道具と火を使って料理すればスキルを習得できる。すでに持っている人は調理道具さえあればなんとかなるだろう。
暴走鯱の肉で作れそうなレシピは、ここに到着するまでに検索してる。
レイドイベントの第一回や第二回に参加したプレイヤーがすでに料理を試していたみたいだから助かった。
リアルでシャチの肉はあまり食用にされないらしいけど、暴走鯱は牛肉に似た味わいらしい。
それならいろんな調理ができる。
「暴走鯱のお肉を薄く切りましてー」
包丁を当てて薄切りをイメージすると、あっという間に完成した。一枚が僕の顔くらい大きい。
タマモを見ると、時々自分の指に包丁を当てながらも、ちゃんとお肉を切り分けられてる。だいぶ厚切りだけど、切れてるからオッケー。ゲーム内では包丁に殺傷能力がなくてよかったね!
「一枚、味見用に炙ってみます! 料理スキルだと、そのままで塩味がつくよ。スキルを持ってない人は、この塩を一振りしてね」
錬金術で作っておいた塩コショウの瓶をみんなに提供してから、お肉をフライパンに載せて、料理スキルで焼く。すぐにいい匂いがしてきた。お腹が空いてくるよー。
我慢できずに、ほどよく焼けた肉を口に運ぶ——前に鑑定しなきゃ!
——————
【暴走鯱の焼けた肉(一枚)】レア度☆☆☆☆
満腹度が5回復する
ほどよく脂が落ちて旨味が増した焼いた肉
——————
塊肉を二十枚に切り分けたから、いい感じの満腹度回復量になってる。
これにコショウを足して味を整えて、ようやくパクリと食べてみた。もぐもぐ……うまぁ!
じゅわっと肉汁が溢れ、弾力のある赤身の旨味が口いっぱいに広がった。塩コショウだけでも十分に美味しい。
味は確かに牛肉っぽいけど、ちょっと違った感じもする。どう表現すればいいかわかんない。でも、美味しいことに変わりはないよ。
「……焦げてしまいました……」
タマモが火の上に置いたフライパンの中身を見下ろし、しょんぼりとしてる。確かに、お肉の表面が黒い。しかも厚みがあるから、中はまだ生焼けっぽい。
仕方ないから、僕が焦げを削いであげてから、錬金術で作ったアルミホイルに包み、オーブンで蒸し焼きしてみた。
開けてみると、いい感じに火が通ってる。
「はい、食べてみて」
「ありがとうございます! ——ん、美味しい……!」
タマモがほっぺたを押さえて感動してる。
初めて完成できた料理(ほぼ僕が仕上げたし、ただ焼いただけだけど)を食べられて嬉しいみたいだ。ちょっとは自信が出てきたかな?
こんな調子でみんなにアドバイスしたり、修正してあげたりしながら料理を続ける。
暴走鯱の肉で作ったのは、ステーキやビーフシチュー風煮込み、ハンバーグ、すき焼き、肉じゃが、などなど。和洋折衷にいろんな料理を作ってみた。
終盤には、タマモが満面の笑みで料理スキル習得を報告してくれた。
でも、結構時間かかったね? リアルで料理下手だとスキルの習得が遅いのかな。
「私でも料理ができたなんて……! モモさんのおかげです! やっぱりモモさんは神ですね!」
喜び方が大げさすぎる——とは、これまでのタマモのやらかしを何度もフォローしてきた僕には言えない。
ほんとに何度も予想外の失敗をしでかしてくれたんだよ……なんとか修正できた僕すごい! 暗黒物質が製造されなかったのは、僕のおかげです! みんな感謝してください! もふもふ教集団食中毒は回避されました。
料理スキルを入手できたからには、これまでみたいな失敗はあまり起きないと期待していいよね? ……だいぶ不安だー。
続いて仙桃ミルクのお菓子作りも教えることになったけど、できる限りタマモ一人でも成功しそうな簡単なレシピ、仙桃ミルクプリンを作ることにした。
プリンの素は僕の錬金術製で、仙桃ミルクとプリンの素を混ぜて冷やすだけで完成できるんだよ。
プリンの素を店で販売するね、と教えたらタマモとたくさんのもふもふ教の人に拝まれた。料理が苦手な人はタマモだけじゃなかったんだよ……みんな、がんばって天兎に会ってね。
簡単なお菓子だけど、心を込めて混ぜて、冷やしてる間も心を込め続けたら、きっと天兎にも通じるはず。『重いな……』って思われる可能性もなきにしもあらずだから、ほどほどにね!
1,279
あなたにおすすめの小説
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。
子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。
マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。
その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。
当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。
そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。
マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。
焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。
やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。
HOTランキング1位になることができました!
皆さま、ありがとうございます。
他社の投稿サイトにも掲載しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。