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10章 海は広くて冒険いっぱい
370.待っていたお知らせ
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ログインしてすぐに視界に入ったのは、見慣れた天井と——白猫の顔。翡翠のような瞳がキラキラと輝いてる。
「わっ……ビックリした」
「にゃ(おはようにゃー)」
屋敷の二階で寛いでいたヒスイが、ちょうど僕の顔を覗き込んでいたらしい。
パチパチと目を瞬き驚く僕に対し、ヒスイはマイペースに挨拶して毛繕いを始める。僕がログアウトしてる間も、のびのびと過ごしていたんだろうな。
仕切りをすべて取り払ってある広々とした二階を眺めると、スラリンとユキマル、ナッティがぴょこぴょこと近づいてくるところだった。
「みんな、おはよー」
「きゅぃ(おはよ。今日は何するの?)」
「ぴぅ(もうこんにちはの時間だけど。農地にでも行く……?)」
「きゅーきゅい(私は外を歩きたいわ)」
ヒスイを含めて四体を撫で、挨拶を交わしながら「うーん?」と考える。
今日の予定は決めてない。シーズンイベントは終わったし、すぐに達成したいようなミッションもない。
どうしようかなぁ、と思いながらヒスイを見て、「あっ、そうだ」とひとまずの行動を決めた。
「——スタ島に行こう」
京都に行こう、のノリで呟いたけど、スラリンたちにそのニュアンスは伝わらず、普通に「きゅぃ(捧げ物をするの? それとも神域探検?)」と聞かれた。
捧げ物をする、とは神社に魔宝珠などの特別なアイテムを納め、世界の穢れを浄化することだ。
僕は暇な時に行って魔宝珠を捧げてる。最初は100%に近かった穢れ度も、今は70%を切りそうなくらいになってるはずだ。たくさんのプレイヤーが参加してるから。
穢れ度が100%になったら怖いことが起きそうだもんねー。それは絶対避けたい。
神域探検は、スタ島の北にある泉の底から行ける神域を探検すること。五属性の神魔に対応した五つの神域がある。その内、土属性の黄麒麟の神域は探検済みだ。
他の四つにもいつか行こうとは思ってるんだけど……微妙に面倒くさくてまだ行ってない。
まぁ、のんびりマイペースに、気ままに遊ぶのが楽しいもんね~。
「捧げ物だよー。昨日、ダンジョンで魔宝を掘ってきたから、これで魔宝珠を作って捧げるんだー」
破壊のツルハシでダンジョンの壁を壊せるのが楽しくて、昨日はつい大量に掘っちゃった。おかげでアイテムボックスの一枠上限まで魔宝が詰まってる。これを消費しなくちゃ。
テキパキと手際よく魔宝珠をたくさん作り、捧げ物の準備完了。
「にゃ(モモは自分が神さまなのに、随分と信心深いにゃー)」
ヒスイが不思議そうに首を傾げる。けど、そういうわけじゃないんだよねー。単に自分が始めたワールドミッションに取り組んでるだけです。
「あははーそうかなー」
適当な返事をしながら装備を確かめ、転移でスタ島に向かう。
神の社が見えたと思ったら、たくさんの人の姿もあった。プレイヤーたちが捧げ物をしに来ているのだ。みんながんばってるねー、よきよき。
ヒスイたちを喚び出して、一緒に神の社に向かう。
きゃあきゃあと手を振る人にファンサービスをしながら、神の社前に着き、お賽銭箱の横にある台に魔宝珠を山積みにして奉納した。
「どうぞお納めくださいー」
「にゃ(捧げるにゃー)」
みんなでなむなむと手を合わせる。神社っぽい場所での作法としては間違ってる気がするけど、こういうのはテキトーでいいんだよ。
〈神の社に【魔宝珠(四)】✕19を奉納しました。世界の穢れが浄化されました。報酬としてアイテム【神の石】✕2が贈られます。現在の世界の魔力の穢れ度は78%です〉
あれ? 前に聞いたのより、穢れ度が上がってる?
思わず顔を上げて、神の社をマジマジと見つめる。これまで順調に減ってきたのに、どうして穢れ度が上がってるんだろう?
首を傾げていたら、後ろで話しているプレイヤーの声が聞こえてきた。
「やっぱり、モンスターに呪いをかけて回ってるってヤツのせいで、穢れ度が上がってるっぽいね」
「俺らが奉納をさぼったら、あっという間に100%になっちまうんじゃね?」
「えー、そうなったら何が起きるんだろう?」
「さぁな。他のサーバーでも、まだ100%になったところはないみたいだしなぁ」
なんと。前にラファイエットさんが言っていたように、モンスターに呪いをかけて回る人のせいで、せっかく減らした魔力の穢れが戻ってきてしまっているらしい。
「これ、犯人を捕まえないと、どうしようもなくない?」
僕がポツリと呟くと、聞き取れなかったのか、ヒスイが「にゃ(どうしたにゃ?)」と首を傾げて尋ねてきた。
それに対し「ううん、なんでもないよー」と答えながら、来た道を戻る。
最初の目的は達成したし、これから何をしようかな。
ラファイエットさんに新たな情報がないか聞きに行ってもいいし、ヒスイの里帰り(?)に付き合って、スタ島を探索してもいいなぁ。
そんなことを考えながら歩いていると、不意に通知音が聞こえた。運営さんからの重要マークがついたお知らせだ。
なんだろう? 不思議に思いながら通知を確認する。
——————
『海底都市リュウグウ開放のお知らせ』
かねてよりお知らせしておりました海底都市リュウグウの開放準備が整いました。
それにあわせて、本日より王都ーはじまりの街間の航路運行が開始します。
乗船チケットにつきましては、別途お知らせしておりますのでご確認ください。
——————
おお! 海底都市リュウグウに行けるようになったんだね。
海上レイドイベントで乗船チケットをもらっていたし、そろそろ行けるだろうなぁとは思ってたけど、こんなに早いとは予想外。
前にラファイエットさんに聞いた話によると、海底都市リュウグウは王都とはじまりの街の間の航路で途中下船すると行けるらしい。
海のど真ん中で途中下船して、どうやって海底都市に行けるのか、いまいち想像できないけど、とりあえず行ってみればわかるよね。
そうとなれば、早速——
「みんな、今日の予定が決まったよ!」
「きゅぃ(なぁに?)」
期待でワクワクとした目を向けてくるスラリンたちに微笑み、僕は海の方をビシッと指す。
「新しいエリア、海底都市リュウグウに行こう!」
どんな場所なのかな? 楽しみだねー♪
「わっ……ビックリした」
「にゃ(おはようにゃー)」
屋敷の二階で寛いでいたヒスイが、ちょうど僕の顔を覗き込んでいたらしい。
パチパチと目を瞬き驚く僕に対し、ヒスイはマイペースに挨拶して毛繕いを始める。僕がログアウトしてる間も、のびのびと過ごしていたんだろうな。
仕切りをすべて取り払ってある広々とした二階を眺めると、スラリンとユキマル、ナッティがぴょこぴょこと近づいてくるところだった。
「みんな、おはよー」
「きゅぃ(おはよ。今日は何するの?)」
「ぴぅ(もうこんにちはの時間だけど。農地にでも行く……?)」
「きゅーきゅい(私は外を歩きたいわ)」
ヒスイを含めて四体を撫で、挨拶を交わしながら「うーん?」と考える。
今日の予定は決めてない。シーズンイベントは終わったし、すぐに達成したいようなミッションもない。
どうしようかなぁ、と思いながらヒスイを見て、「あっ、そうだ」とひとまずの行動を決めた。
「——スタ島に行こう」
京都に行こう、のノリで呟いたけど、スラリンたちにそのニュアンスは伝わらず、普通に「きゅぃ(捧げ物をするの? それとも神域探検?)」と聞かれた。
捧げ物をする、とは神社に魔宝珠などの特別なアイテムを納め、世界の穢れを浄化することだ。
僕は暇な時に行って魔宝珠を捧げてる。最初は100%に近かった穢れ度も、今は70%を切りそうなくらいになってるはずだ。たくさんのプレイヤーが参加してるから。
穢れ度が100%になったら怖いことが起きそうだもんねー。それは絶対避けたい。
神域探検は、スタ島の北にある泉の底から行ける神域を探検すること。五属性の神魔に対応した五つの神域がある。その内、土属性の黄麒麟の神域は探検済みだ。
他の四つにもいつか行こうとは思ってるんだけど……微妙に面倒くさくてまだ行ってない。
まぁ、のんびりマイペースに、気ままに遊ぶのが楽しいもんね~。
「捧げ物だよー。昨日、ダンジョンで魔宝を掘ってきたから、これで魔宝珠を作って捧げるんだー」
破壊のツルハシでダンジョンの壁を壊せるのが楽しくて、昨日はつい大量に掘っちゃった。おかげでアイテムボックスの一枠上限まで魔宝が詰まってる。これを消費しなくちゃ。
テキパキと手際よく魔宝珠をたくさん作り、捧げ物の準備完了。
「にゃ(モモは自分が神さまなのに、随分と信心深いにゃー)」
ヒスイが不思議そうに首を傾げる。けど、そういうわけじゃないんだよねー。単に自分が始めたワールドミッションに取り組んでるだけです。
「あははーそうかなー」
適当な返事をしながら装備を確かめ、転移でスタ島に向かう。
神の社が見えたと思ったら、たくさんの人の姿もあった。プレイヤーたちが捧げ物をしに来ているのだ。みんながんばってるねー、よきよき。
ヒスイたちを喚び出して、一緒に神の社に向かう。
きゃあきゃあと手を振る人にファンサービスをしながら、神の社前に着き、お賽銭箱の横にある台に魔宝珠を山積みにして奉納した。
「どうぞお納めくださいー」
「にゃ(捧げるにゃー)」
みんなでなむなむと手を合わせる。神社っぽい場所での作法としては間違ってる気がするけど、こういうのはテキトーでいいんだよ。
〈神の社に【魔宝珠(四)】✕19を奉納しました。世界の穢れが浄化されました。報酬としてアイテム【神の石】✕2が贈られます。現在の世界の魔力の穢れ度は78%です〉
あれ? 前に聞いたのより、穢れ度が上がってる?
思わず顔を上げて、神の社をマジマジと見つめる。これまで順調に減ってきたのに、どうして穢れ度が上がってるんだろう?
首を傾げていたら、後ろで話しているプレイヤーの声が聞こえてきた。
「やっぱり、モンスターに呪いをかけて回ってるってヤツのせいで、穢れ度が上がってるっぽいね」
「俺らが奉納をさぼったら、あっという間に100%になっちまうんじゃね?」
「えー、そうなったら何が起きるんだろう?」
「さぁな。他のサーバーでも、まだ100%になったところはないみたいだしなぁ」
なんと。前にラファイエットさんが言っていたように、モンスターに呪いをかけて回る人のせいで、せっかく減らした魔力の穢れが戻ってきてしまっているらしい。
「これ、犯人を捕まえないと、どうしようもなくない?」
僕がポツリと呟くと、聞き取れなかったのか、ヒスイが「にゃ(どうしたにゃ?)」と首を傾げて尋ねてきた。
それに対し「ううん、なんでもないよー」と答えながら、来た道を戻る。
最初の目的は達成したし、これから何をしようかな。
ラファイエットさんに新たな情報がないか聞きに行ってもいいし、ヒスイの里帰り(?)に付き合って、スタ島を探索してもいいなぁ。
そんなことを考えながら歩いていると、不意に通知音が聞こえた。運営さんからの重要マークがついたお知らせだ。
なんだろう? 不思議に思いながら通知を確認する。
——————
『海底都市リュウグウ開放のお知らせ』
かねてよりお知らせしておりました海底都市リュウグウの開放準備が整いました。
それにあわせて、本日より王都ーはじまりの街間の航路運行が開始します。
乗船チケットにつきましては、別途お知らせしておりますのでご確認ください。
——————
おお! 海底都市リュウグウに行けるようになったんだね。
海上レイドイベントで乗船チケットをもらっていたし、そろそろ行けるだろうなぁとは思ってたけど、こんなに早いとは予想外。
前にラファイエットさんに聞いた話によると、海底都市リュウグウは王都とはじまりの街の間の航路で途中下船すると行けるらしい。
海のど真ん中で途中下船して、どうやって海底都市に行けるのか、いまいち想像できないけど、とりあえず行ってみればわかるよね。
そうとなれば、早速——
「みんな、今日の予定が決まったよ!」
「きゅぃ(なぁに?)」
期待でワクワクとした目を向けてくるスラリンたちに微笑み、僕は海の方をビシッと指す。
「新しいエリア、海底都市リュウグウに行こう!」
どんな場所なのかな? 楽しみだねー♪
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