347 / 724
帝都武闘大会編
第三百四十六話 閑話 カレンの初任務(前編)
しおりを挟む帝都出発の数日前。
「ねぇ。ギルドカードってどうやって作ったらいいの?」
「あっ、そうですね。作っておかないといけないですね」
孤児院を訪れていたカレンに問い掛けられる。
「じゃあ今日はギルドカードを作りに行きましょうか。手続きは簡単ですので」
そうしてギルドカードを作りに冒険者ギルドに向かった。
◇ ◆ ◇
ギルドに入るなり周囲の視線を浴びるヨハン。二種類の視線。
「おい、見ろよあのガキ。えらい美人と可愛い子連れているじゃねぇか」
一つ目は一緒にいる女性達、容姿端麗なカレンと見た目可憐な少女のニーナのこと。
「やるか?」
ニヤッと下卑た笑みを浮かべて立ち上がろうとする男の肩を隣の男がガシッと掴む。
「やめとけって。お前なんて一瞬でやられちまうぞ」
「あん?」
「知らねぇのか? あのガキ、この前の武闘大会で優勝した奴だ」
「……あんなガキがか?」
まるで信じられない。懐疑的な目で見た。
「それに噂じゃ色々とかなりヤバいらしい」
「ヤバいって?」
「優勝するだけの実力はもちろんだが、なんでもバックにすげぇのが付いてるとか」
「ってことはカタギじゃねぇのか? かぁっ。見た目じゃわかんねぇもんだな」
ひそひそと話されているのは、栄誉騎士爵の授与に始まり、ラウルを始めとした帝国の主要権力者に目を掛けてもらっていることが噂に尾ひれを付けている。
「ねぇ。あることないこと色々と言われてるみたいですけど?」
「ほっておけばいいのじゃない?」
カレンのギルドカードを作成するまでああでもないこうでもないと言われ続けた。
「けっ! 面白くねぇ」
「お、おいゼン!」
ガタンと立ち上がり、ギルドの出口に向かうのは冒険者ゼン。その後ろを仲間達が追いかける。
「あんなガキが優勝できるわけねぇだろ。どうせ何か裏があるに決まってやがる」
「いやでもめちゃぐちゃ強かったって話だぜ? ゼンもほらっ……――」
仲間の男が以前大食い大会でヨハンに倒されたことを口にしようとしたところでゼンがギロリと睨んだ。
「くだらねぇことは忘れろ。おら、いくぞ。しょうもねぇゴブリン退治だ。さっさと終わらせてやる」
ドカドカと歩き、ゼン達五人はギルドを出ていく。
「……へぇ。これがギルドカードねぇ」
顔の上にかざしながら嬉しそうにしているカレン。どこか無邪気さを孕んでいる姿はまるで子供の様。
「ねぇ、せっかくだから何か依頼受けましょうよ!」
初めてギルドカードを手にしたことで気持ちが昂り我慢できなくなった。
「そうですね。せっかくだから何か受けましょうか」
カレンの気持ちもわからなくもない。冒険者たるものギルドカードを手にすれば依頼を受けたくなるもの。
「といってもまだカレンさんはEランクだからあまり大きな依頼は受けられないですけどね」
「それはまぁ仕方ないわね。けどすぐに昇格してみせるわ!」
そうして依頼が貼り出されている掲示板を眺めていると横から声を掛けられる。
「おや? そこにいるのはカレン殿とヨハンにニーナではないか」
「アリエルさん」
「そうか。そういえばギルドカードを作りに来たのだったな」
「はい。それで依頼を受けることにしたんですけど、どれにしようかと……」
カレンなら低ランクの依頼などすぐに達成できるレベル。となると効率良く昇格したい。
「ふむ。ならばコレはどうだ?」
「これって?」
「いやなに、ちょっと問題が起きてな」
アリエルが差し出す一枚の紙。
どうでも良さそうとばかりに欠伸をしているニーナ。
「「問題?」」
ヨハンとカレンは紙に目を通すとすぐさま顔を見合わせた。
アリエルが持っていたのはギルドからの依頼書であり、そこには『ゴブリンの大量発生を討伐して欲しい』と書かれていたのだった。
「――……そういや知ってるか?」
「なんだ?」
ヨハン達がギルドを出た後、冒険者達は思い出したように話し出す。
「最近、久々に帝都からS級に昇格した奴が出たって話だよ」
「ああ、そのことか。聞いたぜ。すぐに帝都を出るらしいが、一体どんな奴なんだ?」
「さぁ。どうにも異常なぐらいのスピード昇格したらしいぜ」
「そんな奴いたか?」
「もしかしたら女かもな。風迅と爆撃の時は気付くのが遅れたからな」
「あん時はマジでビビったぜ」
「あの二人が引退して結構長いしそろそろそういう奴が出て来ても良い頃だろうしな」
「もしかしてさっきのガキだったりしてな」
「いやいや、それはいくらなんでも言い過ぎだろ」
「がはは。冗談に決まってるだろ! いくらなんでもあんなガキがS級になったら俺らの立場がねぇだろ!」
「ちげぇねぇ!」
盛大に笑い声を上げる冒険者の横を通りながらアリエルは内心思う。
(既にお前らの立場などないがな)
フッと笑みをこぼしてギルド長室に向かって行った。
◇ ◆ ◇
ゴブリン討伐。これはどのランクからでも受けることができる。
ほぼ最下位ほどの低ランクに位置する魔物であるゴブリンは駆け出し冒険者の経験やスキルアップにも用いられていた。
それがわざわざギルドからの依頼。アリエルによるとそれが今回は異常発生しているのだと。依頼内容は殲滅及び可能であれば原因究明。
通常いくら多く発生したとしても、これまでであれば一度では数匹から数十匹程度だったのだが、それが数百にも昇ると。
11
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる