S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

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再会の王都

第三百五十三話 意外な再会

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「やっと帰ってきたか」
「待ちわびたでおじゃるよ」

王宮の入り口で待っていたのは青髪で身体の大きい男、近衛隊長のジャンと、対照的に背が小さく黒髪で小太りの男、宰相のマルクスであった。

「わざわざ出迎えに来てくれるなんてな。一体どういうことだ?」
「それについては王よりお話があるでおじゃるよ。わっちらも詳しい話は聞かされていないでおじゃる」
「どういうことだ?」

要領を得ない。
しかしジャン達としても知らされているのは、ラウルが王都に帰って来ればどのような用事を差し置いても優先するようにと通達されていたので迎えに来ているだけに過ぎない。
それはローファス王が何よりも待ち焦がれていた瞬間だった。

「とにかくこっちだ」

そうして兵に馬車を預け、そのままジャンに案内されるまま王宮の一室、小さな会議室に連れられる。


「えっ!?」
「むっ!?」

衛兵によって会議室のドアが押し開かれると、そこには目を疑うような光景があった。

「やっと帰ってきやがったか。待ちくた、びれてもないか。それなりに暇つぶしもできたしな」

部屋の中に座り後頭部に手を送って机に脚を乗せていた男がケラケラと笑う。

「はぁ!?」
「えっ!? 父さん?」

ヨハンとラウルの二人ともにしてよく知る顔。
ラウルからすれば記憶にあるその姿よりいくらか歳を重ねているとはいえ間違えようのない、ヨハンの父であるアトムがいたのであった。

「おぅ久しぶりだな、ラウルにヨハン。どうやら俺が最初のようだなお前らと会えたのは。いやぁたまたま王宮ここにいた時にお前らが帰って来てくれて助かったぜ」

すくっと立ち上がり、ヨハンとラウルの前に来る。そのままポンとヨハンの頭の上に手の平を乗せた。

「会えて嬉しいよ。ヨハン、大きくなったな。見違えたよ。ラウルも大人になったな」

にかッとはにかむのだが、あまりにも予想していない人物がいたことによりヨハンとラウルも呆気に取られる。

(……この人がヨハンのお父さん)

その後ろで見ているカレンとニーナは二人してジッとアトムを見つめていた。

「ん? そっちの綺麗な嬢ちゃんと可愛い嬢ちゃんは?」

視線に気付きアトムが問いかける。どちらかが旧知の仲であるリシュエルの娘ということは想像がつくのだが二人共に見覚えがない。

「ちょ、ちょっと待ってよ! なんで父さんがここにいるの!?」
「おい! 一体これはどういうことだ!? どうしてここにアトムがいる!?」

ヨハンとラウルが同時に口を開いた。状況を全く理解できない。
ラウルにしても予想外の出来事に困惑している。まさかここにアトムがいるなどとは思ってもみなかった。

(あの兄さんが取り乱すなんて、ヨハンのお父さんって一体……)

帝国では見ることのない兄の姿。いつも堂々としている姿からはかけ離れており、そんな兄が動揺するなど、ヨハンの父に対してどういう人物なのかという疑問が過る。

「ん? ヨハンは知らなかったか? 俺はローファスと親友なんだぜ? だから王宮にもスッと入れるのさ」
「いやそれは前に王様から聞いて知ってたけど、今いるなんて思わないよ!」
「おいッ! ふざけるな!」
「ラウルよぉ、そんなに焦んなって。ちゃんと話すからさ、そいつが」
「は?」

アトムの目線の先は部屋の外。カレンとニーナのさらに後方を差した。

「ようやく帰って来たかと思えば何を騒いでいるのだこんなところで」

アトムの視線に釣られるようにして背後を振り返ると、そこにはローファスの姿があった。

「ローファス! どういうことだ!?」
「いいから落ち着け。順を追って話すが、それより――」

真剣な眼差しをラウルに向けるローファス。
ラウルもローファスの意図を理解して視線を腰元に落とす。腰に下げている小さな袋には帝国の宝玉が入っていた。

「ああ。宝玉は借りてきた。これを持ち出させるのだから相当な理由だろうとは思うが、何が起きてる?」

ローファスからすればラウルとヨハンが戻ってくるだけでは十分ではない。

「そうか。すまなかった」

必要であれば自ら帝国に赴いて宝玉の貸し出しを嘆願するつもりだったがその必要もなかったと安堵の息を吐く。

「とにかくいったん座ろう。立ち話でするような話ではない」
「ああ」
「それと、すまんがヨハンは席を外してくれるか? 俺たちだけで話したいのだ」
「え? はい。わかりました」

そのままローファスはチラリとカレンとニーナを見る。

「そちらのお嬢さんたちも」
「えー!? ようやくアトムさんに会えたっていうのに!?」
「そうか、そういえばお前は元々アトムに会いに来たのだったな。後で必ず時間を作るから」
「えー、でもぉ」
「ちょっとニーナ。わがまま言わないの。ほらっ、いくわよ」

カレンも聞きたいことが多くあるのだが今は自身に発言権はないと、帝国で何度も経験したそれにもう慣れた様子でガッとニーナの肩を掴む。

「そっちのお嬢さんは初めて見るな」

ローファスと目が合うとカレンはニーナの肩から手を放してニコリと微笑んだ。

「お初にお目にかかりますシグラム国王。ご挨拶が遅れました。わたしはカサンド帝国第一皇女、カレン・エルネライと申します」

綺麗な公人としての所作を用いて一礼する。

「ほぅ。皇女が王国に来るなどとは初めてのことではないか?」
「はい。王国の美しさには感心するばかりです」
「ははは。ラウルの妹にしては世辞が上手いではないか」

ローファスと話しながらぺこりと小さく頭を下げるカレンはチラッとヨハンを見た。

(あっ)

視線の意味。それを即座に理解する。
カレンの紹介はただそれだけでは終わらない。すっと目を送る父アトムなのだが、アトムは妙にそわそわしだした息子を見て疑問符を浮かべた。

「どうかしたのかヨハン?」
「あっ、いえ……そのなんと言いますか……――」

アトムの問いに口籠るヨハン。

「はっはーん。お前さてはこのカレンお嬢さんと婚約でも結びやがったか? まぁ権力者に気に入られればそういうこともあらぁ。逆をいけば俺みたいになるけど。ってもまぁラウルの妹だからんなわけねぇんだけどな」

ケラケラと笑いながら言葉にするアトム。

「――……いえ、その、実は、その通りなんです父さん」
「は?」

ぽりぽりと頭を掻きながら恥ずかし気に口にするのだが、アトムは冗談で言ったはずなのに受ける返答で呆気に取られる。

「……ヨハン、お前、マジで?」

小さくコクリと頭を頷かせた。

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