S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

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神の名を冠する国

第 七百十四話 幕間 もうひとつの結末

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「まさか……まさかこのような事態になろうとは」

崩壊した教皇の間の影に潜むガルアー二・マゼンダ。

「どこで間違えた?」

魔王の復活はもう目前だった。否、間違いなく魔王は復活していた。あとはその圧倒的な力を用いて世界を混沌の海に沈めるつもりだったというのに、それだというのに、かつての人魔戦争規模の争いが起きるどころか、全てが未然に防がれてしまっている。

「あの小僧さえいなければ」

どれだけ強大な障害が立ちはだかろうとも、無尽蔵の力を生み出す魔王にかかれば限界がある人間達など時間をかけることとなったとしても間違いなく殲滅できたはずだった。

「せめて奴さえ……」

殺してしまえれば。後顧の憂いを絶つことができる。
今後、再び計画を立てるともなれば新たに何百年と要するかもしれないが、せめて計画を全て台無しにした要因だけでも消してしまわなければ気が済まない。
今ならば油断して致命傷を負わせられる一撃を見舞えるはず。

「この代償、高くつくぞ」

そうして闇の魔力を練り上げる。

「よっと」
「がはっ」

不意に背後から受ける衝撃にガルアー二・マゼンダは吐血する。背中から剣が突き刺さっていた。
剣を握る男に影から引きずり出される。

「せっかく勝利の祝杯をあげるところだ。汚い真似をして水を差すようなことをするな」
「き、きさま、どう……やって」

影に姿を隠しているその中で致命的な攻撃を加えられるはずがない。

「この……剣は……?」
「ああ」

胸を一突きしている漆黒の剣によるものなのだと遅れて理解する。

「お前のようなくだらねぇ奴を始末するための剣だよ。昔入り用になって作ってもらったんだけど……ってか、もう消えるお前にするような話でもないよな。じゃあな」

ピッと引き抜かれる剣。風穴を開けられるガルアー二は苦悶の表情を浮かべ膝を着く。

「こんな……こんなところで我が野望が潰えたというのか…………。どれだけ、長くの時を生きて来たと思っている」
「んなこと知らねぇよ」
「汚いのは貴様ら人間だ」
「知ってるさ。お前に言われるまでもねぇよ。人間は醜く汚い。けどそれがどうした? だからこそそれに堂々と正面から向き合い、正そうとする奴がいるんだよ」
「ぐぅ…………世迷いごとを」
「だいたい、それを決めるのはテメェじゃねぇよ」
「口惜し、や…………――――」

誰の目に留まることなく、ガルアー二・マゼンダという魔族の存在は消滅していった。

「お前の勝利はしっかりと見届けてやったぜヨハン」

そう男は口にしたのだが、漆黒の剣を鞘に戻しながら考え直すようにして小さく首を振る。

「いや、違ったな。お前らの勝利、だな」
「やったの?」
「ああ。エリザのおかげだ。しかしよくわかったな。ここに魔族が潜んでたって」
「もちろんよ。自慢じゃないけど、私の感知能力に関してはシルビアさんを越えるからね」
「それは自慢していいだろ。おっ? 姐さんもこっちに気付いたようだぜ」

遠方でアトムとエリザの気配を察知したシルビア。

「あとで落ち合うように念話を送っておいたわ」
「そっか。だったらもうこれで終いだな。さてと、じゃあ俺達は先に戻るとするか」
「会っていかないの?」
「どうせあとで会えるだろ。それにあいつらで勝ち取った勝利の余韻は邪魔するもんじゃねぇって」
「……ま、それもそうね。むしろこれからが大変だものね」

振り返り、アトムとエリザは聖都の後片付けへと向っていく。
二人が担っていた役割である獣人と人間の仲介。七族会――獅子王族の族長であるバンス・キングスリーと元風の聖女レオニル・キングスリーの間を取り持ち、話し合いの場を設けなければならなかった。
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