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急速に縮まる距離
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縁というのは不思議なものである。
「「あ…」」
購買で余り人気の無い菓子を買おうと手を伸ばし、触れ合った人がいて声が出た。
向こうも同じだろう。
パッと顔を見るとハリス・レーモンドだった。
「すまない、よそ見をしていた」
「私もです、すみません」
そのあと移動教室で忘れ物に気付き踵を返すと人とぶつかってしまった。
「すみません!急いでいて」
「こちらもよそ見していてすまない」
「「あ」」
ハリス・レーモンドだった。
放課後、昼休みに買った菓子を外で食べようと学園のガゼボに行くと正に同じ菓子を広げて食べようとしている人がいる。
またまたハリス・レーモンドだ。
「こんな会う日も珍しいですね。ここ、良いですか?」
なんだか可笑しくなって笑いながら聞くとコクリと頷いてくれた。
「こんなこと、初めてだ」
「私もです」
ガサガサと菓子の包みを開いてかじり付く。
割って食べると手が汚れるし崩れやすいのでそうして食べるのだが若干はしたないようで人前では食べにくい。
だからこそ静かなガゼボに来たのに人がいたのは意外だった。
「女性もこの菓子を食べるとは意外だ」
嫌みでは無く本気でそう思ったのだろう。
モグモグしながらそんなことを言われた。
「食べにくい割にシンプルな味ですからね。でもたまに食べたくなってこっそりここで食べてるんです。部屋だとボロボロ溢しちゃいそうですし」
ザクザクとした食感と砂糖のジャリジャリさが美味しいがとにかく欠片が落ちやすい。
キレイに食べるのが難しすぎて人気が無いのだと思う。
「実は私もだ。食べたくなるとここで食べてから帰る。今日は委員が無いからだったんだが初めて顔を合わせたな」
相変わらずの無表情だったが何だか微笑んでいるように感じて嬉しくなった。
「半月に一度は食べてるんですけどねー。でもコレ食べてる人…というか買ってる人に初めて会えて嬉しいです」
「男子は買っている者も少なくない。女子は…確かに初めて見たな」
そこからしばらく談笑した。
ハリスの表情は確かにほとんど変化無い。
が、アネリアには声のトーンや僅かな違いで色々な感情を感じとることが出来た。
「レーモンド様ってお話しやすい人だったんですね」
楽しくなってそういうとどうやら驚かれたらしい。
「そんな事…初めて言われた。サーモリア嬢が話し上手で聞き上手だからじゃないか?」
「どうでしょう?私、男性は以前婚約者だったコナル様くらいしかほとんど話したこと無かったんです」
「婚約者、だった?聞いてもいいかい?」
隠す話でもないしダンスのパートナーになるのだ。
アネリアは全て話した。
「それは…婚約を軽く考えすぎな男だな…」
明るく話したがアネリアも思っていたことを言葉にされるとついこちらも真剣になってしまう。
「そうだったみたいです。今から思えば責任感が薄いのかもしれませんし良かったです!こうして男性の友人も出来ましたし」
途中重たい空気にハッとし、少し茶化したように友人と言ってみた。
「友人…」
「失礼でしたか?」
ハリスは公爵子息、こちらは伯爵子女、いくら学園とはいえ調子に乗りすぎただろうか。
「いや、嬉しい。では私のことはハリスと名で呼んで欲しい」
「まぁ!では私もアネリアと呼んで下さい」
嬉しい、というのは思ってもみない返しだった。
こうして二人は友人となり、時々このガゼボで一緒に菓子を食べつつ話す仲になった。
「「あ…」」
購買で余り人気の無い菓子を買おうと手を伸ばし、触れ合った人がいて声が出た。
向こうも同じだろう。
パッと顔を見るとハリス・レーモンドだった。
「すまない、よそ見をしていた」
「私もです、すみません」
そのあと移動教室で忘れ物に気付き踵を返すと人とぶつかってしまった。
「すみません!急いでいて」
「こちらもよそ見していてすまない」
「「あ」」
ハリス・レーモンドだった。
放課後、昼休みに買った菓子を外で食べようと学園のガゼボに行くと正に同じ菓子を広げて食べようとしている人がいる。
またまたハリス・レーモンドだ。
「こんな会う日も珍しいですね。ここ、良いですか?」
なんだか可笑しくなって笑いながら聞くとコクリと頷いてくれた。
「こんなこと、初めてだ」
「私もです」
ガサガサと菓子の包みを開いてかじり付く。
割って食べると手が汚れるし崩れやすいのでそうして食べるのだが若干はしたないようで人前では食べにくい。
だからこそ静かなガゼボに来たのに人がいたのは意外だった。
「女性もこの菓子を食べるとは意外だ」
嫌みでは無く本気でそう思ったのだろう。
モグモグしながらそんなことを言われた。
「食べにくい割にシンプルな味ですからね。でもたまに食べたくなってこっそりここで食べてるんです。部屋だとボロボロ溢しちゃいそうですし」
ザクザクとした食感と砂糖のジャリジャリさが美味しいがとにかく欠片が落ちやすい。
キレイに食べるのが難しすぎて人気が無いのだと思う。
「実は私もだ。食べたくなるとここで食べてから帰る。今日は委員が無いからだったんだが初めて顔を合わせたな」
相変わらずの無表情だったが何だか微笑んでいるように感じて嬉しくなった。
「半月に一度は食べてるんですけどねー。でもコレ食べてる人…というか買ってる人に初めて会えて嬉しいです」
「男子は買っている者も少なくない。女子は…確かに初めて見たな」
そこからしばらく談笑した。
ハリスの表情は確かにほとんど変化無い。
が、アネリアには声のトーンや僅かな違いで色々な感情を感じとることが出来た。
「レーモンド様ってお話しやすい人だったんですね」
楽しくなってそういうとどうやら驚かれたらしい。
「そんな事…初めて言われた。サーモリア嬢が話し上手で聞き上手だからじゃないか?」
「どうでしょう?私、男性は以前婚約者だったコナル様くらいしかほとんど話したこと無かったんです」
「婚約者、だった?聞いてもいいかい?」
隠す話でもないしダンスのパートナーになるのだ。
アネリアは全て話した。
「それは…婚約を軽く考えすぎな男だな…」
明るく話したがアネリアも思っていたことを言葉にされるとついこちらも真剣になってしまう。
「そうだったみたいです。今から思えば責任感が薄いのかもしれませんし良かったです!こうして男性の友人も出来ましたし」
途中重たい空気にハッとし、少し茶化したように友人と言ってみた。
「友人…」
「失礼でしたか?」
ハリスは公爵子息、こちらは伯爵子女、いくら学園とはいえ調子に乗りすぎただろうか。
「いや、嬉しい。では私のことはハリスと名で呼んで欲しい」
「まぁ!では私もアネリアと呼んで下さい」
嬉しい、というのは思ってもみない返しだった。
こうして二人は友人となり、時々このガゼボで一緒に菓子を食べつつ話す仲になった。
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