婚約解消を無かったことにしたい?しませんけど

だましだまし

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リドー・コナルの誤算

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リドー・コナルはやきもきしていた。


アネリアと別れて2ヶ月近く、彼女が前より美しくなったように見えていた。
「逃した魚は大きかったか…?いや、しかし…」

やきもきしている理由はただ一つ。

もうすぐダンス講習があるというのにレミア・レシャットが見つからないのだ。

双子のラミア・レシャットが入学しているのは見かけたので入学は間違いなくしているはずなのに、だ。

とんでもない美少女だからすぐに見つかるはず、そう思っていたのに見つからない。
学年が一つ下にしても噂も立っていない。

「どういうことだ…?」

昼休み、今日も一つ下の学年がよくいる中庭に来ている。
するとラミアに手を引かれる同じ髪色の少女が目に入った。

「ラミア…私には無理よ…!」

俯いていて顔は見えないが噂通りの鈴を転がしたような可愛らしい声をしている。
どうやら中庭に出てくるのを嫌がっているらしい。

「レミアの恥ずかしがりを何とかしろってお母様に言われてるの!今日こそダンス講習の相手を見付けるわよ!」

ダンス講習はもう三日後だ。
相手がいると思っていたのにレミアはまだ相手が見つかっていないという。
やっと見付けた上にダンス講習の相手も空いているなんてなんて幸運!
皆、彼女の美しさに引け目を感じたのだろうと内心舌なめずりをした。

リドーは人前に行くのを恥ずかしいと抵抗している少女を強引に抱きしめた。

「あぁ、レミア!やっと見つけた私の運命の人!」

突然のことに「あ…え…」とかすれた声を漏らすレミア。
ラミアは今まで手を引いていた双子が急に男に抱きしめられたことに呆気に取られている。

「ダンス講習のパートナー、受け入れてくれるね?」

固まって震えているレミアは小さく「だれ…?」と言っているがラミアがハッとしたように反応した。

「レミアのパートナーになって頂けるんですね!?」
「もちろん!私はリドー・コナル。コナル侯爵家の次男さ。君のために婚約者とは別れたんだ!レミア、私とどうか婚約を前提に交際して欲しい」

ワッと拍手が起きる。
リドーの大きな声に中庭にいた学生たちは皆注目していた。
そこに起きた告白劇だ。
ピーピーと口笛まで飛んでいる。

その声に手を上げ応え満たされた気持ちで俯いている少女の頬に手を添えクイッと顔を上げた。



「………ん?」


目に涙をため、白磁のような白い肌を赤く染めている何とも気の弱そうな少女がいる。
細く垂れた目頭と、特に鼻が真っ赤に染まっていて少し間が抜けているように感じてならない。

「あ…あの……よろしく、お願いします…」

そう震える美しい声で返したレミアはたしかに双子のラミアとどこかしら似ていた。
しかしラミアの方が気の強い美人といえるのに対し、目も、鼻も、細く小さく弱々しげなレミアは決して美しいとは言えなかった。
たしかに肌は白いのだが、うっすらソバカスが散らばっている上、赤い鼻がなんとも残念である。


「良かったじゃない!いつの間にこんな素敵な人と出会っていたのよ!」

嬉しそうに笑うラミア。

「私からは初めましてだと思うのだけど…どこかで見初めてくださってたのかな」

照れくさそうにラミアに向かって笑うレミア。

「コナル様おめでとう!」「レミア嬢お幸せに!」と飛び交う声援に拍手。



噂にすら上がらなかったのは入学したレミアの容姿がラミアより美しくなかったからだった。

クラスメイトにはラミアが入学したときの自己紹介で、レミアは幼少の頃から赤鼻を気にして引きこもっていたので優しくして欲しいとお願いしていた。
泣きそうなレミアに私が守ると寄り添うラミアの姉妹愛に、育ちの良い子息令嬢の皆はおかしな噂は立てず優しく見守っていたのだ。

美しいと噂の令嬢がどちらかといえば自分に自信を持たせてくれる容姿で、その上大人しい性格だったので蔑む必要が全くなかったのも全く噂が回らなかった一因だった。


しかしレミアの入学を心待ちにしていた男性たちの間では多少騒がれていた。
「期待とは違った」と。


そんな事は知らなかったリドー・コナル。
それも当然、以前アネリアとの交際を抜け駆けして婚約者にまでなった男だったので誰も情報を流さなかったのである。


「レミア嬢…?」
「何でしょうか…」

掠れそうな声で名前を呼ぶと照れくさそうに震えながら、恐ろしくぎこちないが微笑んで(?)返す様は小動物のような可愛らしさはある。

ラミアは感極まった様子で手を叩き涙まで流して祝福している。

「お父様とお母様に報告の手紙、私からも書くね!」
力強くそう言うラミア。

「あ…ありがと…ラミア。私からも書く…」
嬉しそうに返すレミア。



今更人違いとも、思ってた容姿じゃないから無理だとも言えない。


「いきなり淑女を抱きしめるなんて紳士どころか最低だと思ったけど、運命なんだったら仕方ないわよね!」
ラミアの中庭のギャラリーへの呼びかけに、更に集まり賑やかになった人々は手を叩いて応えた。


今更、引けない。

リドーは精いっぱいの笑顔を顔に貼り付けつつ頭が真っ白になっていた。
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