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朝食での三人
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「実は町の外も見回ってきたのです」
一人離れたラーウェイは聞き込みのあと、町から出て街道や周りを見回ったのだという。
「そこで見かけた冒険者にも話しを聞きました。すると討伐依頼が出てる魔物さえ今日は町の南側はサッパリいないというんです」
「南…まさか」
「レバンス殿が行商をしていたのは町の南門から近い区画です…。北方面には魔物は普通にいました。私だけなら見かけたんです」
――翌朝
「ナーシャ様って…治癒以外に魔法使えたりします?」
朝食の場でラーウェイがふいに聞いてきた。
「えーっと…浄化が出来るみたいって最近知ったかな?」
何で急にこんなことを聞かれたのか戸惑ってしまう。
私は聖女らしい。
神様曰く聖女らしい。
魔を押さえてるって言っていた。
私だってそれがどういう意味が何度も考えた。
聖女らしいけど昔の聖者のように結界なんて張れないし、魔を押さえてるって分からなかった。
だけど少ーしだけ思い当たる話がある。
貴族として色々教えてくれた老教師が話していた魔物の話だ。
「聖者亡き後、各地に現れた魔物はそれはそれは強かったのですよ?10年ほどで脅威は緩みましたがね。私はあれは結界が無くなった反動と思っているんですよ。本当に脅威だった…!」
私が生まれたのは聖者の没後13年。
魔物の脅威が緩んだのは反動ではなく私が生まれたからなのだとすれば…魔物の力を押さえてるってそういうことなのだとすれば…しかし証明する術は無い。
こんな中途半端な聖女、聖女だとバレたくない。
戸惑いつつニコリとするとハハハッとレバンスが笑い出した。
「二つも魔法持っていたら結界魔法と破邪を使える大聖女様か賢者じゃないか。ラーウェイ、急にどうした?」
口調は笑っているのにラーウェイを見る目が怖い。
これは何かある。
なに?私なにか変なこと言った!?
今回の宿は久々に別の部屋だったからのんびり出来たと思ったのになんで!?
まさか聖女だとバレ…結界張れないし色々利用されそうでスゴく嫌だ!
「ナーシャ」
「はいっ!」
レバンスの呼びかけに思わず元気に返事をしてしまった。
「実はな」
無駄にドキドキする。
体が若いとか関係ない。心臓に悪い。
「ラーウェイ、馬鹿なんだ」
「へ?」
思いも寄らない言葉に我ながら間の抜けた声が出た。
「剣の腕は確かなんだ。うちの父親が認めるほどでさ。でもな、馬鹿なんだ。多分訓練ばっかの鍛えてばっかだったんだろうな…」
真剣な、少し物悲しげに見える言い方に思わずラーウェイさんが可哀想に思えてくる。
「たしかに訓練…大変…か。そんなんですね、ラーウェイさん」
「うぉぉぉーい、ナーシャ様ぁ~…まじっすかぁぁぁ」
シオシオと悲しむラーウェイの様子はレバンスのいうことが本当だと思わせた。
なら、私が聖女と疑われたってわけじゃない?セーフ?
レバンスはやれやれと呆れている。
「あのな、魔法って使えても普通は一人一つ、一種類だからな?」
「あい…ひとり、ひとつ」
そういえば前回の時うっかり者の農夫さんがいたわねとふと思い出す。
知ってて当然のことをうっかり抜けて聞いたりしてよくおかみさんに怒られていた仲良し夫婦だ。
村に着いたばかりの頃、良くしてくれたご夫婦、今世も仲良くできるだろうか。
前回の人生を思い返し懐かしく思うとなんだか緊張が解けて喉が渇いてしまった。
そんなナーシャが飲み物の注文に行ってる隙に「警戒させてどうする」としっかりラーウェイはレバンスに怒られたのだった。
一人離れたラーウェイは聞き込みのあと、町から出て街道や周りを見回ったのだという。
「そこで見かけた冒険者にも話しを聞きました。すると討伐依頼が出てる魔物さえ今日は町の南側はサッパリいないというんです」
「南…まさか」
「レバンス殿が行商をしていたのは町の南門から近い区画です…。北方面には魔物は普通にいました。私だけなら見かけたんです」
――翌朝
「ナーシャ様って…治癒以外に魔法使えたりします?」
朝食の場でラーウェイがふいに聞いてきた。
「えーっと…浄化が出来るみたいって最近知ったかな?」
何で急にこんなことを聞かれたのか戸惑ってしまう。
私は聖女らしい。
神様曰く聖女らしい。
魔を押さえてるって言っていた。
私だってそれがどういう意味が何度も考えた。
聖女らしいけど昔の聖者のように結界なんて張れないし、魔を押さえてるって分からなかった。
だけど少ーしだけ思い当たる話がある。
貴族として色々教えてくれた老教師が話していた魔物の話だ。
「聖者亡き後、各地に現れた魔物はそれはそれは強かったのですよ?10年ほどで脅威は緩みましたがね。私はあれは結界が無くなった反動と思っているんですよ。本当に脅威だった…!」
私が生まれたのは聖者の没後13年。
魔物の脅威が緩んだのは反動ではなく私が生まれたからなのだとすれば…魔物の力を押さえてるってそういうことなのだとすれば…しかし証明する術は無い。
こんな中途半端な聖女、聖女だとバレたくない。
戸惑いつつニコリとするとハハハッとレバンスが笑い出した。
「二つも魔法持っていたら結界魔法と破邪を使える大聖女様か賢者じゃないか。ラーウェイ、急にどうした?」
口調は笑っているのにラーウェイを見る目が怖い。
これは何かある。
なに?私なにか変なこと言った!?
今回の宿は久々に別の部屋だったからのんびり出来たと思ったのになんで!?
まさか聖女だとバレ…結界張れないし色々利用されそうでスゴく嫌だ!
「ナーシャ」
「はいっ!」
レバンスの呼びかけに思わず元気に返事をしてしまった。
「実はな」
無駄にドキドキする。
体が若いとか関係ない。心臓に悪い。
「ラーウェイ、馬鹿なんだ」
「へ?」
思いも寄らない言葉に我ながら間の抜けた声が出た。
「剣の腕は確かなんだ。うちの父親が認めるほどでさ。でもな、馬鹿なんだ。多分訓練ばっかの鍛えてばっかだったんだろうな…」
真剣な、少し物悲しげに見える言い方に思わずラーウェイさんが可哀想に思えてくる。
「たしかに訓練…大変…か。そんなんですね、ラーウェイさん」
「うぉぉぉーい、ナーシャ様ぁ~…まじっすかぁぁぁ」
シオシオと悲しむラーウェイの様子はレバンスのいうことが本当だと思わせた。
なら、私が聖女と疑われたってわけじゃない?セーフ?
レバンスはやれやれと呆れている。
「あのな、魔法って使えても普通は一人一つ、一種類だからな?」
「あい…ひとり、ひとつ」
そういえば前回の時うっかり者の農夫さんがいたわねとふと思い出す。
知ってて当然のことをうっかり抜けて聞いたりしてよくおかみさんに怒られていた仲良し夫婦だ。
村に着いたばかりの頃、良くしてくれたご夫婦、今世も仲良くできるだろうか。
前回の人生を思い返し懐かしく思うとなんだか緊張が解けて喉が渇いてしまった。
そんなナーシャが飲み物の注文に行ってる隙に「警戒させてどうする」としっかりラーウェイはレバンスに怒られたのだった。
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