無気力聖女は永眠したい

だましだまし

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前回と今回

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目の前で作られていたのはフワフワの白い物、綿菓子だった。

そうだ、と思い出す。
前回は手持ちの残金が心配で食べられなかったのだ。
雲が売っていると感動したのを思い出す。
見るのが二度目でもキラキラと輝いて見えるのだから。

そっと屋台に近付くと3つの料金で作ってくれるようだった。
前回はこんな料金表示すりゃよく分かっていなかった。
庶民だった子供時代も街を歩くのはあまりなかったし、叔父について歩いていただけだから当然かもしれないが。
お金を持たないのに料金表を見ても仕方ない。
ワガママ言える立場でも無い。

子供時代は結構覚えているものねぇと思いつつ残金を確認する。
今来ている服を買ったが余裕で前回より多い残金。
一番安い料金の物を注文してもいいだろう。
せっかくのやり直しなのだから。


渡されたのは握りこぶし二つ分、顔より小さいくらいの雲…のような綿菓子だった。
そっと口を付けるとほんのりと温かく、ホワッと溶けた。
そしてとても甘い。

空の雲が食べられたら美味しいのだろうか、なんて思ったこともあったが本当に美味しいのだと錯覚すら起こしてしまう。

ただ、とても甘い。
「年寄りだと一口でしんどい甘さが美味しいわ」
若返ったことを実感しつつ一口づつ大事に食べた。

食べながら先のことを考える。

なんで私はあの村へ行くことになったんだったかな…。

「おねえさん、一人?俺らと飯でも行こうや」
少しガラの悪い二人連れに声をかけられる。

「旦那と子供待ちなのよ~。おねえさんなんて嬉しいねぇ」
笑顔で嘘を吐く。
「ちっ、子持ちかよ」
案の定悪態を吐きながら男たちは離れていった。
修道女をしているときに聞いた処世術である。

それで思い出した。
前回変な男に無理やり連れて行かれそうになってるときに行商人だか何だかの人に助けられたんだった!
それでそのまま一緒に少し過ごしてあの村で離れたのよ!
求婚に困って別れたのよね、懐かしい…。

ほんわか懐かしさに浸っているが気付いた。

今の私だと…出会わなくない?
どうしたらよいか分からなくて職業ギルド探して彷徨ってて絡まれたけど…彷徨ってたから場所も分からないし上等なワンピースも着ていない。

行商人の名前はレバンス。
それは覚えているけど…なんでこの街にいたのかは覚えてない。

村までの道も知らない。

でもレバンスと出会う事が今回は無さそうだしあの修道院へ帰ろうと思ったら自力で行くしかない。

もう…だからやり直しとかしたくなかったのに…。
どうせなら修道院に着いたところからにして欲しかったと思うもどうにも出来ない。

村の道は知らないがこの街の次に寄った場所は分かる。
街の正面門から出て真っ直ぐのここより大きい街だったからだ。

そうだ。
とても大きくて人も多かった。
淑女教育で名前だけは知っていた王都に次いで大きい街だったから図書館があるはずだ。
そこで地図を見て村へ行こう。

そう思い街の正面門を出たところで懐かしい人を見る事になった。

珍しい藍色の髪、間違いない。
レバンスだった。
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