4 / 18
同行のきっかけ
しおりを挟む
馬車を止めて木陰で休んでいる人は何人かいた。
それでも目を引かれたのは不思議な縁を感じる。
前回、彼にはとても世話になった。
求婚も決して無理強いはしなかった。
今回は知り合わないと思うと少し寂しさすら感じてくる。
そう思いつつ前を通り過ぎようとして気付いた。
顔色が悪い。
そして、思い出す。
前回ー…
ナーシャは無理やり男たちに連れて行かれそうになっていた。
「ちょっとオレたちと楽しい時間過ごすか、おうちのヒトに迎えに来てもらうよう手配するかしてもらいたいだけなんだよ」
「迎えなんて無理よっ!離して下さい!」
「憲兵さん!こっちです!」
響き渡る声に男たちの動きが止まる。
「誰だっ!憲兵呼びやがったな!」
声は近かったが姿は見えない。
「いいから逃げろっ!」
それでも男たちはバタバタと走っていった。
声の主を視線で探しつつも呆然としているといつの間にか目の前に男性がいる。
「お嬢さん、大丈夫?お連れの人とかは?」
藍色の髪に爽やかな青い目をした青年だ。
返事を返せないでいると脅えているのと勘違いしたのか自己紹介をしてくれた。
「商売しながら旅してるレバンスだ。従者とはぐれたの?一人だと危ないよ」
「あの…元々一人なの…。一人で暮らしていきたくて…」
どうしようか困ってついそんなことを言ってしまったが何かを察したようだ。
「じゃあ俺を手伝ってくれる?家に帰りたくなれば送るよ」
おそらくだが家出少女と間違われたらしい。
そういって握手、と差し伸ばされた手を握ろうとして少し動きが止まってしまった。
手袋と服の間から見えた皮膚の色がズングリとした土色だったからだ。
驚いてつい視線がそこで止まっていることに気付いたのだろう。
袖をまくって腕を見せた。
「ごめん、見えちゃったね。貴族のお嬢さんには気持ち悪いよね。魔物に噛まれたあとなんだ。魔物症って言って浄化の魔法が使える人しか治せないんだよ。時々全身しんどくなるから仕事の手伝いを頼んだんだけど嫌だろう?帰った方が身のためだよ?」
少しおどけて私に帰るよう促してくる。
「浄化の効果もあるかは試したこと無いけど治癒なら私、出来るわ」
浄化や破邪と治癒の魔法はセットだ。
破邪は聖女にのみ現れるが浄化は治癒の魔法に含まれている事がある。
破邪のように強い力では無いが何度も重ねてかければ魔物の毒や瘴気を治癒し、魔物症も治す力がある。
「じゃあ…試してくれないかな?もし軽減されるようなら生活は保障するから」
その言葉に頷いて魔法をかけると何とたった一度で腕はキレイになり、苦しさも消えたという。
今から思えばナーシャは聖女だったらしいので破邪の魔法が発動したのだが当時は軽症だったのだと勘違いを起こした。
「軽症だと一度で治るのね。良かったわ」
「軽症…いや…でも…。いや、ありがとう!本当にありがとう!」
これがきっかけでそのまま行商の旅に同行させてもらい、治癒士がいないという村で修道女になると決めたのだ。
つまり、今レバンスは魔物症の症状に苦しんで休んでいるのだろう。
彼との思い出はいずれも美しい。
彼と結婚していたら…なんて考えたこともある。
助けたい。
そう思ったと同時に体が動き気が付けば声をかけていた。
それでも目を引かれたのは不思議な縁を感じる。
前回、彼にはとても世話になった。
求婚も決して無理強いはしなかった。
今回は知り合わないと思うと少し寂しさすら感じてくる。
そう思いつつ前を通り過ぎようとして気付いた。
顔色が悪い。
そして、思い出す。
前回ー…
ナーシャは無理やり男たちに連れて行かれそうになっていた。
「ちょっとオレたちと楽しい時間過ごすか、おうちのヒトに迎えに来てもらうよう手配するかしてもらいたいだけなんだよ」
「迎えなんて無理よっ!離して下さい!」
「憲兵さん!こっちです!」
響き渡る声に男たちの動きが止まる。
「誰だっ!憲兵呼びやがったな!」
声は近かったが姿は見えない。
「いいから逃げろっ!」
それでも男たちはバタバタと走っていった。
声の主を視線で探しつつも呆然としているといつの間にか目の前に男性がいる。
「お嬢さん、大丈夫?お連れの人とかは?」
藍色の髪に爽やかな青い目をした青年だ。
返事を返せないでいると脅えているのと勘違いしたのか自己紹介をしてくれた。
「商売しながら旅してるレバンスだ。従者とはぐれたの?一人だと危ないよ」
「あの…元々一人なの…。一人で暮らしていきたくて…」
どうしようか困ってついそんなことを言ってしまったが何かを察したようだ。
「じゃあ俺を手伝ってくれる?家に帰りたくなれば送るよ」
おそらくだが家出少女と間違われたらしい。
そういって握手、と差し伸ばされた手を握ろうとして少し動きが止まってしまった。
手袋と服の間から見えた皮膚の色がズングリとした土色だったからだ。
驚いてつい視線がそこで止まっていることに気付いたのだろう。
袖をまくって腕を見せた。
「ごめん、見えちゃったね。貴族のお嬢さんには気持ち悪いよね。魔物に噛まれたあとなんだ。魔物症って言って浄化の魔法が使える人しか治せないんだよ。時々全身しんどくなるから仕事の手伝いを頼んだんだけど嫌だろう?帰った方が身のためだよ?」
少しおどけて私に帰るよう促してくる。
「浄化の効果もあるかは試したこと無いけど治癒なら私、出来るわ」
浄化や破邪と治癒の魔法はセットだ。
破邪は聖女にのみ現れるが浄化は治癒の魔法に含まれている事がある。
破邪のように強い力では無いが何度も重ねてかければ魔物の毒や瘴気を治癒し、魔物症も治す力がある。
「じゃあ…試してくれないかな?もし軽減されるようなら生活は保障するから」
その言葉に頷いて魔法をかけると何とたった一度で腕はキレイになり、苦しさも消えたという。
今から思えばナーシャは聖女だったらしいので破邪の魔法が発動したのだが当時は軽症だったのだと勘違いを起こした。
「軽症だと一度で治るのね。良かったわ」
「軽症…いや…でも…。いや、ありがとう!本当にありがとう!」
これがきっかけでそのまま行商の旅に同行させてもらい、治癒士がいないという村で修道女になると決めたのだ。
つまり、今レバンスは魔物症の症状に苦しんで休んでいるのだろう。
彼との思い出はいずれも美しい。
彼と結婚していたら…なんて考えたこともある。
助けたい。
そう思ったと同時に体が動き気が付けば声をかけていた。
135
あなたにおすすめの小説
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
黒薔薇の棘、折れる時
こだま。
ファンタジー
漆黒の髪と氷の瞳を持つ悪役令息エドワードは、借金を取り立てた少女アリスと運命を変える。
聖女リリアの甘い仮面の下に隠された野望と、公爵領の禁足地、黒い聖地の災厄。
復讐は調和へ導かれる。
最後に咲いたのは、召使いの少女が残した、永遠に枯れない真紅の薔薇――。
ちょっと切ないお話です。
AIがプロットを作ったファンタジーです。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。
石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。
やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。
失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。
愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる