無気力聖女は永眠したい

だましだまし

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新たな旅の仲間

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代金だと渡されたのは金貨だった。

「ごめんなさい。お釣りを取ってきますので待ってもらえますか?」

金貨は大銀貨10枚分だ。
前にレバンスから受け取った大銀貨を渡せばお釣りになる。
しかし引き留められてしまった。

「金貨一枚でも安すぎるくらいです。受け取って下さい」

そう言って頭を下げる治療した男性に合わせて護衛たちにも頭を下げられる。
相場的に安いのなら貰って良いのだろうか…。
躊躇っていると彼らはレバンスにも頭を下げた。

「レバンス殿もこんなにも優秀な治癒士を紹介下さって、本当にありがとうございます。まるで聖女様なのかと思うほどの浄化の力。まさか隣町の治癒士が旅に出ていたとは」

うんうんと勝手にナーシャが隣町の浄化の力が強いという治癒士と決めつけてしまった。

「え?ナーシャ、そうなの?」
「違いますよ!?」

まさかのレバンスも否定しない状況に慌てふためく。
が、カラカラと笑われてしまった。

「だよね。実は前に隣町の浄化の治癒は受けたことあるんだけど、当時既にオバサマ治癒士だったからね。料金も大金貨5枚だった」
「大金貨!?」

大金貨を通常利用している者なんて貴族くらいである。
そりゃ破格なはずだ。

「驚いているけど浄化のない治癒魔法でも大銀貨5枚は高くないですからね?」

護衛の一人に言われてしまった。
どうやら世間知らずを露呈してしまったらしい。

「レバンス殿、かの町の治癒士でないのならこの方はお忍びの方なのですか?」
暗に貴族令嬢かと聞かれているのだとナーシャでも分かる。

「護衛対象では無いよ。旅の仲間になったんだ」
「はぁ…そうなのですか?」

どうも貴族令嬢だと疑われているままらしい。

「もうお戻りのルートですよね?私共にルーベンまで護衛させて下さい」
「いや、いらないよ。移動も兼ねて俺の任務なんだから」
「いや、しかしっ…!」

どうやらレバンスと旧知の仲だったようだ。
何となく自分は離れた方が良いなと思い「では」と席を立ち部屋に戻る。

レバンスたちが気付いていたかは微妙だが護衛の一人がぺこりと会釈を返したので良しとした。




「レバンス様、戻りのルートは護衛が居ても仕事に差し支える事はありませんよね」

ナーシャが居なくなり護衛たちも遠慮がなくなる。

「レバンス殿、私の魔物症は痣が無いので確認出来ませんがレバンス殿には噛み傷の跡の皮膚が変色されてましたよね?治ってますよね?あの娘、何者なのですか?まさか本当に聖女…」
「俺も分からない。ただ彼女に治癒されて治ったのは確かだ。俺は旅の道中にあちこちで浄化の力を持つって治癒士に魔法をかけてもらってたから偶然治るタイミングかもしれないって思ったんだ。けど隊長は違うよな」
「えぇ、私は辺境ルーベンの治癒士に一度かけてもらったキリでしたから。彼女をどちらに送られるのです?」
「いや、本当に護衛を受けたとかではないんだよ…。昨日一緒に旅することになったんだ」

レバンスは隊長に経緯を伝えた。
護衛たちも訝しげだが事実だからどうしようもない。

「では、私だけでも護衛に使って下さい。レバンス殿はお強いが誰かを守りながらの旅は不慣れでしょう。お前たちはラノの村に何かあるのか調べてくれ」


ラノの村には何も無い。
前回ナーシャが生きていたというだけで今回もただの治癒士もいない田舎である。

しかし護衛3人はそんな何も無い村を調べる羽目になったのだった。
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