病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
40 / 70

第四十話 属性持ち

しおりを挟む
「お仕事には納期があるのよ。決められた日に決められた物を手に入れないといけないの。分かる?」
『ピィ~?』

 都合の悪い、ううん、都合の良い時に鳥になれるんだね。
 お姉さんのお説教が始まっているけど、『僕、何も分からない』という瞳で鳥になっている。
 
「それでレベルは上がったの?」
『いっぱい上がって敏捷MAXになった!』

 こういうのは聞こえるんだね。
 お説教を諦めてお姉さんが聞くと、自信満々に素早く答えた。

「それは良かったわね。ピーちゃんはGランクの魔物だから、レベルは早く上がるのよ。それで魔力は上げているのよね? どのぐらいになったの?」
『ピィ? 魔力上げてない。今は耐久上げてる。バードストライク強くしている』
「ピーちゃん、前に言ったでしょ。物理攻撃力を上げてもドラゴンには勝てないって。まずは魔力を上げて【属性持ち】にならないと強くなれないのよ」
『属性持ちって何?』
「…………」

 お姉さんが黙っているってことは前に話したんだと思うよ。
 忘れたの? うん、忘れたから聞いたんだね。
 当たり前のこと聞いてゴメンね。怒らないで。

「属性には【火・水・風・地】の四つの基本属性があるの。ピーちゃんには風属性が向いているから、魔法具は風属性にしているのよ」
『うん、役立ってる』
「鳥と風は相性抜群なのよ」

 お姉さんに聞かれて、ピーちゃんは頷いている。
 僕なら火属性がカッコよさそうだから、火属性の魔法具を使いたいな。

「つまり魔法具がないピーちゃんは雑魚なのよ!」
『雑魚なの‼︎』

 まさかの指を指されての雑魚呼ばわりにピーちゃんはショックを受けた。
 でもね、ピーちゃん。ピーちゃんが雑魚だってみんな知ってるよ。
 知らなかったのはピーちゃんだけだよ。

「でも、魔力を上げていけば属性持ちになれる可能性があるのよ。魔法具なしでも今と同じかそれ以上のことを出来るようになるんだから」
『へぇー、そうだったんだ』
「今度は忘れちゃ駄目よ。それと灰色ドラゴンも今のピーちゃんと同じで無属性よ。灰色ドラゴンは属性持ちになると【成獣】と呼ばれるようになるわ。クラスもCからBに上昇するのよ。ピーちゃんも属性持ちになったら、Fにしてあげるわね」
『わぁーい。Fになれるんだ』

 お姉さんに言われてピーちゃんは喜んだ。
 でも、喜んだフリだった。
 なぜか僕に向かって怒って言ってきた。

『Fだと? 誰に言ってんだ! ドラゴン倒してくるからAにしろ!』

 その理屈が通用するなら、大鳥倒したからDランクになっているよ。
 あと、怒るなら僕じゃなくてお姉さんに怒ってね。僕、無関係だから。

「それで魔力はどのくらいになったの?」

 僕の家から再び数日前の冒険者ギルドに戻った。

『うーんと34』
「あら、凄いじゃない。50ぐらいまで上がれば可能性が出てくるわよ。ポイント使わずに、ここまで自然に上がるのは珍しいわね。何か特別な訓練でもやってるの?」

 それはない。ピーちゃんは日向ぼっこしかしていない。
 特訓も枕体当たりぐらいしか見たことがない。

『やってない。この薬草食べたら少しずつ上がってる』

 やっぱりやってなかった。
 収納袋から竜薬草を取り出した。
 食って寝ているだけだった。

「ちょっとピーちゃん⁉︎ これ何⁉︎」

 受付に置かれた竜薬草をお姉さんがすごい勢いで掴んだ。

『薬草。ヤバイ子のお母さんが作った』
「こんな薬草、初めて見たわ! 魔力があふれまくってるじゃない!」
『ふぅ~ん。普通に花壇に生えてるよ』
「花壇って……ヤバイ子の母親も別の意味でヤバイわね。父親は何してるの?」
『うーんとよく旅に出て、子供の風呂覗いている』
「父親もヤバイわね。別の意味で」

 お姉さんが言うには、子供は確実に父親似だそうだ。
 ピーちゃん、僕のお父さんは子供のお風呂を覗く変態じゃないよ。
 覗いた変態鳥はピーちゃんでしょ。
 
 ♢♢♢
 
 お姉さんからお説教と再教育を受けたピーちゃんはもう一度Dダンジョンに向かった。
 やり残した仕事があるからだ。

『……よし、行けそうだ』

 トンネルの出口からチョコンと顔を出して、外を確認した。
 大鳥達【ガルーダ】は待ち伏せていなかった。
 大鳥の名前はお姉さんが教えてくれた。

 もちろん名前が分かったところでやることは変わらない。
 魔物狩りの次は果物狩りだ。
 今度は仲間は呼ばないで隠れて飛んでいく。
 雑鳥の相手は疲れるからやらないそうだ。

 ムチ猫【ドクロヒョウ】が見えたら、身体を丸めて木の実のフリをした。
 ガルーダが見えたら、葉っぱを咥えて隠れた。

 ピーちゃん、ビビってるよね?
 ピーちゃんの話は疑ってないから、ちょっとレベル見せてよ。
 これでレベル20ちょっとだったら、どこら辺から嘘だったか正直に教えてもらうよ。

『ふぅー、今日は勘弁してやる』

 ガルーダが気づかずに飛び去っていくと、ピーちゃんはひと安心した。
 どう見てもビビっている。今日は本当に果物狩りだけに来たらしい。
 トゲトゲの大きな赤い果物、大きくて丸い紫の果物、玉ねぎみたいに皮が重なったピンク色の丸い果物。
 とにかく木にぶら下がっている果物っぽいのを集めまくった。

『あっ、これも持って帰ろ』

 地面に落ちている薪のような木があったから、それも収納袋に入れたそうだ。

『レナスが喜ぶ』

 喜ばなかったよ。ブチ切れたよ。床に叩きつけたよ。
 僕へのお土産は果物だけでよかったよ。そういえば、まだ果物貰ってないよ。
 全部お姉さんに売ってきてないよね?

 ピーちゃんはこうして無事に果物狩りを成功させた。
 レベル偽証を疑った僕はしっかり土下座させられて、ののしられた。
『ドラゴンと戦うから力温存した。そんなことも分からないの? このボケ』
 ののしられるって結構キツいんだね。悔しくて涙が出そうになっちゃった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...