おにぎり好きな天才放浪画家が、異世界転移で絵を実体化させる『画聖』の力を手に入れる話

もう書かないって言ったよね?

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第26話 俺の手柄が欲しいか

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「やれやれ。清、お前が人形を描いてくれないから苦戦したぞ」

 赤髪ではなく、黒い坊主頭に麦わら帽子を被ると、強は清に苦情を言った。
 両足を拘束していた泥の四本の腕は、ジブロが杖を離すと、ボロボロになって崩れ落ちた。

「か、描いてたんだな。ガ、ガンダム描いてたんだな」
「ガンダムだと? まさか、本当にガンダムを描いていた訳じゃないだろうな?」

 清はサボっていないと否定すると、国民的宇宙ロボットを描いていたと言った。
 だが、赤髪の清と言えば、赤い彗星の清だ。
 白いバッタの方ではないな、と清に強く確認している。

「ガ、ガンダムはガンダムなんだな」
「何故、ザクを描かない!」
「ザ、ザクは敵なんだな。ザ、ザクよりもガンダムが良いんだな」
「信じられない。俺にガンダムに乗れだと。清、貴様、正気か?」

 危険な会話はこの辺で終わりにしよう。ジブロは力尽きたのか、地面に倒れている。
 けれども、野盗七人とセインが散り散りに逃げてしまった。
 追い込まれた獣は何をするのか分からない。
 近隣の村や町に被害が出る前に捕まえた方がいい。

「まあいい。話はこの男を騎士団に渡した後だ。逃げた野盗達の顔は覚えた。街道を封鎖している騎士団に似顔絵を渡して、仕事してもらうとしよう」
「い、一件落着なんだな。こ、これで夢から覚めるんだな」
「何を言っている? これは——」

 強はわざわざ森の中をバイクで走り回って、野盗と鬼ごっこするつもりはない。
 あとは騎士団に野盗狩りはお任せする。これで事件は解決だ。
 これで清も気持ち良く、夢から覚められると思っている。
 残念ながら、それは無理だと強が教えようとするが、丸太小屋からカイルが飛び出してきた。

「ちょっと待てよ! 全員捕まえないと駄目だろ! 最低でも主犯のセインは捕まえようぜ!」

 幹部が倒されて、残るは雑魚だからカイルのやる気は漲っている。
 ここで野盗とセインを捕まえて、手柄を立てれば、騎士団入団も夢じゃない。

「主犯ならば、コイツがいる。見つけられる保証もないんだ。今は本物の騎士団に情報を渡す方が先だ。捕まえるのと逃がさないのは同じようでまったく違う。重要なのは逃がさない事だ」

 野盗は弓矢と剣を持っている。
 森の中に他にもいるかもしれないし、罠が設置されている可能性もある。
 下手に追って、返り討ちに遭う危険を犯す必要はない。
 これは返り討ちに遭いそうなカイルの為に言っている事だ。

「いやいや、だからだよ! アイツら騎士団の服を着てるんだぞ。本物の騎士団が森に捜索に着た時に紛れ込むかもしれないだろ!」
「服なら脱げばいい。情報を渡せば対策を用意できる」
「服なら野盗も脱げるだろ! いいから行こうぜ。あの速い乗り物で探せば簡単に見つけられるだろ!」

 色々と言っているが、一人で探す度胸はないようだ。
 そんなに探したければ一人で探せと言いたいが、絶対に一人では探さない。

「やれやれ、時間の無駄か。カイル、この男をお前に渡す。騎士団に渡して、お前の手柄にすればいい」
「分かった。そこまで言うなら我慢してやるよ!」

 カイルは絶対に帰らないと我儘を言っていたが、ジブロを渡すと言ったらすぐに納得した。
 帰り道に弓矢野盗がいるかもしれない危険に気づいていない。帰るだけでも危険だ。


「い、痛たたたなんだな」
「もしかして、キヨシも怪我しているの?」
「そ、そうなんだな。馬から落ちて、木の根で転んだんだな」

 ジブロの手足をロープで縛り、丸太小屋の盗まれた金品はスケッチブックに入れた。
 あとは近場の町に行くだけだが、清は身体中が痛い。落馬に転倒だ。
 戦ってもいないのに、身体中傷だらけだ。

「ダラシねえなぁ~、キヨシは。野盗の一人も倒してねえのに、怪我だけは一人前にしてるんだからよ」

 ジブロと一緒に馬の乗っているカイルが笑っているが、お前も倒していない。腕を切断しただけだ。

「そんな事言わないの。キヨシ、治してあげようか?」
「おい、クレア。魔力は残しておけよ。いざという時に使えないと困るんだから」
「でも……」

 意地悪なカイルをクレアは叱ると、清に治療するかと聞いた。
 すると、またカイルが言い出した。言っている事は正しいがお前が言うなと言いたい。

「だ、大丈夫なんだな。こ、このぐらい平気なんだな。お、大人しく寝てるんだな」
「そう……ごめんね」

 魔力量が少ないクレアは治せずに謝ったが、清は強がりを言っている訳じゃない。
 バイクに跨る強が持っているスケッチブックの中に普通に入っていく。
 驚くべき光景だが、清が貞男さだおになれるのは戦いを見ていたから、カイルとクレアは知っている。
 強にバイクに複数の魔法属性だ。気にしたら負けなので、もう気にしない。

「はぁ~。い、いい湯なんだなぁ~」

 ザァブ~ン!と清が向かった先は温泉だ。効能は『擦り傷に打ち身』だ。
 温泉に入りながら、おでんの卵、大根、コンニャクを描いて食べれば、すぐに良くなる。
 療養中の清は気にせずに、馬に乗ったカイルとクレア、バイクに乗った強は出発した。
 目指すはフォルクの町だ。このクテツの森を所有する町なので、地理に詳しいはずだ。

 野盗騎士団に襲われたコルの町の様子を見に行きたい、というクレアの願いは却下された。
 負傷者が多くいても、クレアの力では軽傷の数人を治療して終わりだ。
 それよりは野盗の捕縛を優先した方がマシだろうと、行き先はフォルクの町に決定した。

「問題なさそうだな」

 先頭を走る強は周囲を警戒して、森の中の道を進んでいく。
 カイルの馬に腹這いに横に乗せられているジブロを、取り返しに来る野盗はいないようだ。
 無事に森の外に出る事が出来た。

「ここまで来ればもう安心だ。清、真ん中に大きな扉がある絵を描いてくれ」

 バイクを止めると、強はスケッチブックの中の清に注文した。
 一分程度でスケッチブックの中から、一枚の絵が出て来た。
「ふむ……」と縦長の四角い扉の絵を見て、強は頷くと半分に破った。
 気に入らなかった訳ではない。これがやりたかった事だ。

「清、この扉があれば、俺は自由に行き来できる。片方はお前に預ける。ここからは別行動だ」
「別行動って……どこに行くんだよ?」

 真ん中で半分に破いた絵をスケッチブックの中に入れると、強は言った。
 町まで来てくれると思っていたカイルが理由を聞いている。

「カイル、お前の言っていた事は正しい。野盗達を野放しには出来ない。だが、全員を捕まえる自信はない。だから、ここからは二手に分かれた方が良いと思った。カイル、お前にはクレアと清を連れて、町に援軍を呼びに行ってほしい。頼めるか?」
「何だよ、結局は手柄が欲しいのかよ」

 手柄が欲しい訳じゃない。邪魔なお守りがいない方が動きやすいからだ。
 カイルやクレアを守りながら、逃げた野盗を探すのは、強でも難易度が高い。
 だが、カイルが野盗を何としても探したいなら話は別だ。

「では、カイル。俺と交代——」
「仕方ねえな。三人とも俺一人で町まで連れて行ってやるよ」
「……ああ、助かる。お前にしか頼めない重要な仕事だ。よろしく頼む」

 だけど、そういう訳ではないようだ。
 町まで連れて行くのを交代しようか、と強が言おうとすると、素早くカイルは引き受けた。
 一人で危険な捜索をする度胸はない。気絶した野盗幹部の安全な配達の方が良いに決まっている。
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