悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん

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元婚約者の嘆き

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◇◆シオンside◇◆


まさかこんな日が来てしまうとは・・・


綺麗に着飾ったドレス姿のカナを遠巻きに見つめることしか出来ない。


町の人が嬉しそうに話している。


「それにしても綺麗だね~」


「本当にカナ様は天使みたいに美しいな~」


目の前には、俺の元婚約者のカナと憎きルキの盛大な婚約式を執り行っている。
会場であるバルコニーから顔を覗かせた2人の姿に沿道から拍手喝采の嵐だ!


本来ならカナの隣には俺が居た筈なのに・・・

くそーー!!
悔しすぎる!!


「おい!全くどこで道草食ってるのかと思えば・・・・
いいか?お前はもう貴族じゃないんだ!!
俺たちと同じ平民なんだよ!!
サボってないで働けよ」


乱暴に腕を引っ張られる俺
まだまだ現実を受け入れられない俺はふて腐れる。



「ふざけんな!!
お前みたいな平民と一緒にするな!!
俺は特別なんだ!!」


俺の言葉にため息をこぼす男


今の俺が暮らす武器商人の家の息子だ!!
いくら平民になったからと言ったって、生まれも育ちも俺は特別なんだ!!


「じゃあ、この家にお前を置いとけねーな!!
とっとと出ていけよ!?
特別なんだよな?馬鹿じゃねーの!?
お前は特別でも何でもない只の武器商人なんだよ!!」


強気な態度の男に一瞬怯むが・・・
今の俺にはここしか居場所かない・・・



あの事件がキッカケで俺は奈落の底に落ちていった。



レイラの片棒を担いだ事が明るみに出た俺は、貴族から平民に身分を落とされた。


本来ならもっと厳しい罪状だったが、カナが尽力してくれたらしく平民への身分落ちだけで済んだんだ。


カナは、きっとまだ俺への愛が消えてないんじゃないのか?



俺はどうしてもカナに会いたかった。


そんな時ふと思い出したんだ!
小さい頃カナの家の庭から敷地に入れる秘密の抜け穴があったのを!!
俺は居てもたってもいられず抜け穴に向かっていた。



うわぁ、こんなに穴が小さかったっけ?


確かに子供の時の抜け道だったな・・・



無理矢理穴を突き進み破壊しながらどうにか庭へと辿り着けた。


そしてカナの部屋へとよじ登るとベランダへの侵入に成功した。


ここまで長い道のりだった。

傷だらけの腕や足、そして破けまくったみすぼらしい上着の襟を正す。


ベランダをノックすると、困惑した表情のカナとガラス越しに目が合う!


いきなり現れた俺の姿に悲鳴をあげそうになるカナ


ビックリした俺は動揺してしまう。


だって、俺が現れたらカナが涙を流しながら抱き締めてくれる筈と疑わなかったからだ!!


よく考えれば分かる筈なのに・・・


しかし、直ぐ正気を取り戻したカナはやっと俺の存在に気づいてくれた。


半べそをかきながらカナの前に立つ。
やっと愛する人と会えた達成感で胸一杯になる。



「も、もしかしてシオンですか?」


「う、うん、俺だってよくわかったね!」


苦虫を見るように険しい顔をするカナに泣きそうになった。


「な、何故ここに?」


「今日、婚約式を見たんだ」


「そ、そうですか?それで?」


「カナは本来なら俺と結婚する筈だったからこんな事になって謝りたかった。
幸せに出来ずに申し訳なかった。」


カナの表情がガラリと変わる。


「幸せにする筈だった??
何を勘違いしてるのかしら?
私と貴方の運命の糸は既に貴女が引きちぎったんじゃないの?
私の貴女への思いは既に消えてるわ!!
今はルキを愛してるもの・・・」


まさかの言葉に固まる俺
そして、カナは俺でないアイツを愛してるだなんてほざく


「俺の前でだけでも正直になれよ!?
ルキじゃなく俺を愛してるだろう?」


嘲笑うように・・・・


「ルキを愛してるわ!!」


ガーン!!!
まさかの言葉に傷つき項垂れる


「シオン、私は今凄く幸せなの!だから私の事は忘れて幸せになってほしい・・・」



やっと現実を受け入れられる。
カナはもう俺を見ていないんだな・・・
もう俺が既に手放してしまったんだから・・・



無言でその場を後にした。
カナは最後まで優しかった・・・






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