聖痕を奪われた無自覚最強聖女、浄化力が強すぎて魔界の王子を瀕死(HP1)にしてしまう。物理的に触れられないのに、重すぎる愛で逃げられない

唯崎りいち

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『役立たず』と追放された最強聖女、実は帝都を救っていました。触れられない私を溺愛する執着王子から逃げられません

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 こんにちは! 私は帝都の大聖堂に住んでいる“役立たず”聖女です。

 “役立たず”なので、大聖堂内で会いに行ける聖女アイドルとして活動をしています!

 子供の頃に転生者として目覚めた時から、胸元に聖痕スティグマを持っていたのですが、あまり役に立たないう聖痕でした。

 お陰で信者さんの相談にのれるアイドルになれて楽しいです!

◇◇

 今日はついに教皇様に呼び出されてしまいました。

 「役立たずの無能聖女がやっと追い出されるのね」

 シスターです。
 アイドルは同性に嫉妬されるものですよね。

「だ、誰があなたに嫉妬なんて!」

 でも、困りました。
   「ちょっと、聞いてるの! 聖女!」

 信者さんとはまた会いましょうって約束してるし、アイドル活動はもっと頑張りたいのに……!

◇◇

 教皇様の部屋に行ってノックをすると「入れ」と短く返事がありました。
 私はパニエで膨らませた膝丈のスカートのフリルがドアに挟まれないように部屋に入ります。

 部屋に入ると教皇様は私に背を向けて窓の外を見ています。
 なぜ、偉いお方は窓の外を見ているのでしょう?

 でも、この全然歓迎されていない感じは緊張してしまいます。
 両手の指先と指先を無駄に合わせてしまいます。

 私も教皇様を見習って、次のアイドル活動ではこんな感じのクールな演出も取り入れたいです。

 緊張しながら教皇様の動きを見守っていると、フッと軽く息を吐いてゆっくりこちらを振り向かれます。

 この威圧感、怖いです、完璧です!

「今日も信者と会っていたそうだな」

「はい! 役立たず聖女ですが、せめてお話しで信者さんのお役に立ちたいです」

 教皇様が私に近づいて、聖女の白い聖衣を引っ張って胸元を見つめます。

 っ痛たぁ、少し乱暴な気がしますが、そこに私の聖痕があるので仕方がありません。

 魔法を使う時だけに浮かび上がる幾何学模様の聖痕は、私の力では浮かび上がらないけど、教皇様の魔力が向けられたら、私の胸元に大きく浮かび上がります。

 今のところ、教皇様の定期的な検査によっても、私の聖痕の真の能力は分かっていません。

 教皇様の指先が私の胸元にいつもより強く食い込んで、瞳も食い入るように聖痕を見つめます。

「やっと分かったぞ、これは……! 悪魔の印だ……!」

 教皇様がいつもと違うことを言います。

「悪魔? ですか?」

「これは人々をたぶらかす悪魔の聖痕、『偽神の刻印フェイク・ギアス』だ。まさか、私の代で表れるとは!」

 教皇様の、とんでもないことが起こったぞっとすぐ伝わる芝居がかった演出は惚れ惚れします。

 でも、悪魔とか偽神とか名称が強すぎです!

 あわわ、自分の役立たずだと思っていた聖痕が怖くなってきました……。

「聖女よ、今ならまだ大丈夫だ。その聖痕は私が預かろう。お前は聖女をやめて普通の少女の生活をするといい」

 役立たずどころか厄災だった聖痕を引き受けてくださる教皇様が素敵すぎます。

 アイドル活動を楽しみにしていた信者さんたちごめんなさい!

 聖女は普通の女の子に戻ります!

◆◆◆◆

——大聖堂。
 教皇の部屋—— 

 ははは、聖女から奪った聖痕に力が集まってくるのが分かるぞ!

 アイドル活動などバカな聖女でも制御できた聖痕だ、教皇の私に出来ない訳がない。

 ははは……! 
 
 ドス黒い霧が私の身体から溢れ出す。

「なんだ! バカな! あんな小娘が持っていただけの聖痕が、私に制御出来ないだと!」

 呪いが身体を黒く染めあげて、痛みに悲鳴をあげる。

◇◇◇◇

「ぎゃあああああー! 助けてくれ! 聖女!」


 教皇様が用意してくれた馬車に乗って私は帝都を抜け出します。

 教皇様の最後のお見送りの言葉がここまで聞こえてくるような気がして胸が苦しいです。

 今朝まで聖女だった私が、急に普通の女の子に戻りますと言っても、きっと帝都中が騒ぎになってしまいます。

「あんたみたいな役立たずでも一応は聖女だったんだから身を隠さなきゃね。どこか遠くに行って二度と帰ってくるんじゃないわよ」

 私の人気を認める、事実上のシスターの敗北宣言も頂いてきました。
   「は、敗北なんてしてないわよ!」

 教皇様が行き先まで指定して用意してくださった馬車に、教皇様の優しさと気配りと思いやりを感じます。

「聖女。あなたのような役立たずが大聖堂に十年以上も住んでいられたのがおかしいんだ。あなたが人里にいると厄災が起こると教皇様は仰っている。魔界の森でくたばりな!」

 送ってくれた馬車の御者からの叱咤激励をいただきました。
 多分、私のライバル……シスターのファンでしょうか?

「私はあなたに応援していただかなくても大丈夫でーす! 推し活、頑張ってください! 教皇様によろしくお伝えくださーい」
   「何言ってんだコイツ」

 大きく手を振り、お別れを済ませました。
 私はもう聖女じゃありません!

 ここは人はいないけど、とっても素敵な所です。

 私は聖女の白だけの衣装から解放されて、ピンクのラインが入った膝丈の白いドレスを着て、腰まで垂らした金髪を揺らして辺りを見回します。

 新鮮な気持ちに目が大きく開かれて、何もかもが美しく映りました。

 カラフルで美味しそうな、黄色と紫の水玉模様の果物や、赤と黒のシマシマ模様の果物の生えた木がたくさんあって、すぐそばには綺麗な小川があります。

 憧れのフルーツバイキング屋さんみたいな場所です。

 聖女でなければ帝都で話題のお店に、シスター達みたいに、たくさん行ってみたかったのですが、叶いませんでした。

 帝都に未練があるとすればそれだけです……。

 でも、ここには天然のフルーツバイキングがあります!

 控えめに言って、サイコーです!!

 私は感動で自然と縮こまった肩を解放するように広げて、大きくジャンプしました!

◆◆◆◆

——帝都、大聖堂。
 教皇の部屋の前—— 

「司祭殿! 聖女様が、お辞めになって出て行かれたと言うのは本当か!」

 聖女様が聖女を辞めるという話は、あっと言う間に伝わり、ファンの間で大騒ぎになっていた。

「皇子、詳しくは教皇様しか分からないのです」

 教皇様の部屋の前……。

「何だ! この黒い霧は!」

 教皇様の部屋の扉の隙間から、黒い霧が溢れ出している。

「聖女様の守りがなくなったからか……!」

 教皇の部屋に入る。

「……う、……聖女よ……」

 ドス黒く染まった教皇の胸元に聖痕があった……!

偽神の刻印フェイク・ギアス

 人の悩みや悪意などの負の感情を集め、自身の力で強制的に癒しのエネルギーに変える聖痕。

「これは! あまりに危険すぎて、先代の教皇が安全な所に封印したと言う聖痕! なぜ教皇の身体にある!」

 突然、皇子の背後に、倒れていた教皇の手が伸びた。

「うわああああああ」

 皇子の身体が黒く変色し、霧のように溶けていく。
 
 持ち主の居なくなった豪華な装飾の服と装具が音を立てて崩れる。

「ひっ!」

 私もー逃げようとするが、すぐに教皇に捕まってしまう。

「なるほど、他人からエネルギー奪えば偽神の刻印フェイク・ギアスが集める悪意も私の身体で処理できるのか……、フっ」

 勝ったぞ! 聖女!

◇◇◇◇

 サイコー! のはずでしたが、甘かったです……。

 私がいくらピョンピョンとはねても、木の上の果物には手が届きません。

 私、聖女としてのアイドル活動では信者さんとお話ししたり握手会ばかりでした。

 反省です、アイドルというからには、歌って踊れなくてはいけなかったのです!

 スカートが規則的に揺れて、フリルとリボンが舞う様子はすごく映えるから、信者さんに見ていただきたかった。

  それなのに、ダンスをサボっていたばかりに、私はここで空腹で死ぬのですね……。

 私は果物を取ろうと十回もジャンプしたので疲れてしまいました。

 パタリと地面に横になって空を見上げると、夕焼けと夜が混じりあってとても綺麗です。

 私の掲げた白い指先が暗い夜空にぼんやり浮かびます。

 魔界はずっと夜の闇の世界だと言います。

 この森はちょうど魔界の入り口なのでしょう。

 ずっと闇の世界も、フルーツバイキング屋さんと同じくらい行ってみたかったのです。

 この指先でペンライトを振ったらとっても映えるでしょう。

 キラッ

 眩い光が闇の空を横断して夕焼けから、こちらの方にまっすぐに落ちて来ます。

 ペンライトの事を考えていたら、巨大ペンライトが落ちて来ます!

 凄まじいスピードで堕ちた光は、私の数歩先にドーンっと大きな音と共に地面に大きな穴を開けました。

 その衝撃の凄まじさに、私の頭上の果物が二つ落ちてきます。

 おお! 神のお恵みです!

 果物の木の下でスカートのフリルを膝に巻き込んで座り、果物の皮をむいてかじりついた時、土埃をあげた地面の穴の中から、甲冑をまとった騎士さんがこちらへ向かってきました。

 黒い甲冑に毒々しい紫色の装飾がされていて、森の雰囲気にピッタリの魔界の騎士さんと言った佇まいです。

 ペンライトかと思ったら、人だったのですね。
 その紫色はペンライトでも素敵な色だと思います。

「魔界の入り口に凄まじい浄化の力を感じてきたが……、この癒しの力は俺を救える聖女の力かもしれない……」

 ……独り言が多い方です。

「どこだ! 聖女! 何処にいる!」

 騎士さんは果物をかじる私を無視して聖女様を探しています。
 チラチラ、私を見ている気もしますが……?

 私はもう聖女ではないので、騎士さんの聖女様が早く見つかるように祈ります。

 シャリシャリとした果物の食感と甘さが口に広がって幸せです!
 片手をほっぺにあってて目をつぶって幸せを全身で感じます。


 騎士さんの足元の土埃は落ち着きましたが、まだまだ足元には霧のように真っ黒なモノが浮いています。

 よく見ると霧は目の前の騎士さんの鎧から漏れ出ているようです。

 これは、“悩み”ではないでしょうか?

 多分、闇の空から来たように見えた騎士さんは魔界の方なのでしょう。

 魔界の方だって、身体から黒い霧が溢れてくるなんて不便です。

 食事中にスプーンを落としてしまったら探すのに一苦労です。
 自分の霧でスプーンがどこに行ったか分からなくなります。

 ここはアイドルとして大聖堂でやっていたように、お話を聞いて解決策を一緒に考えていきましょう。

 聖女アイドルは引退しましたが 第二の人生は魔界でのアイドル活動です!

 役立たずでも少しはお役に立てそうですね!


「な、何を食べている!」

 私が声をかける前に、近づいて来た騎士さんが、私の食べている果物に驚いています。

「そこにある木の果物れすよ。騎士さんのおかげで落ちて来て食べることがれきました! ありがとふございまふ」

 私は心からの感謝の印に立ち上がって深々と頭を下げます。

「これは呪いの果物、『冥府の毒林檎ハデス・アップル』と『獄炎のメロンイフリート・メロン』だぞ! 魔界でも一部のモンスター以外は毒が強すぎて食べる事ができない! だ、大丈夫なのか?」

 騎士様の威厳はどこへやらの、素で慌てる様子に私も血の気が引きます。

 嘘……、憧れのフルーツバイキングで死ぬのですか!?

 さーっと血の気が引いて、意識が遠のいていきます。

 口の中が甘酸っぱくて甘美な味に満たされています。
 これが毒の味ですか……。

 でも、最後に、フルーツバイキング、できて良かった……です……。

 信者さんに崇められても、友だちと街にも行けない。

 聖女として大聖堂に閉じ込められるより、普通の女の子になりたかったんです——。

◇◇

「いや、そこまで即効性の毒では……」

 俺は倒れる少女を抱き止める。

 柔らかそうな長い金色の髪に、白とピンクのドレス——人形のようだ。

「!」
 
 少女に触れた瞬間に俺の身体中を光が駆け巡るような感覚がする。

 そして、長年、俺を苦しめていた身体から溢れる黒い霧、『終焉の蝕毒エターナル・ベノム』が止まった……。

 なんて力だ!

 俺の呪いを解くと言う長年の悲願がこんな一瞬で達成されるとは!

 この子は聖女か……!

 食べる姿が、か、可愛すぎて、幻かと思って見ないようにしておいたが……。

 ……寝顔も可愛い。

 やっと見つけた聖女だ、魔界に閉じ込めて永遠に俺だけのものにする!

 誰にも見せずに、触れさせない。

 聖女を抱いてキスすると、バチッと身体に電流が走る。

 これが、恋か——

◆◆◆◆

——帝都、大聖堂。
 教皇の部屋—— 

 術者を数十人集めて、黒い霧を払って帝国最強の騎士団と、教皇の部屋の前に来る。

 聖女がいなくなって、様子を見に行ったTO(トップオタ)の皇子が帰ってこない。

「やはり、聖女様がいないせいなのか……」

 術者が数十人集まってやっと払える黒い霧を、聖女様はたった一人で抑えていたのか!

 あまりの聖女様の力に畏怖すら感じる。

 ファンで良かった! この国の大臣で、聖女に認知してもらえて良かった!

「ふはははは、何をしている。遠慮せずに入ってpくるがいい」

 教皇はこの黒い霧の中、無事だったのか!?

 嫌な予感がする。

 私たちは大聖堂の、箱推しではないんだ!

 教皇の黒い霧によって、男たちは瞬く間に溶かされて消えていった。

 人型に床に落ちる服だけを残して——。

◇◇◇◇

 私は生きていました。

 死を覚悟していたのに、怖がらせた騎士さんは許せませんよ!

 けれど、ここは何処なのでしょうか?

 目が覚めたら小さなベッドで寝ていました。

 部屋の雰囲気は木の温もりがあって、山小屋のようです。

 立ち上がって窓にかかったカーテンを開けると暗い森が広がっています。

 私が倒れたのは魔界の入り口のフルーツバイキングの森でした。

 その奥に魔界の騎士さんが連れてきてくれたのだと思います。

 夜のように暗いけど、いつも暗い魔界なら夜か昼か分かりません。

 よく見るとベッドには転落防止用の鎖と魔法陣があります。

 ここまで私睡眠中の転落を心配していただいたのに、今は使われていないのは、朝だから起きてこいと言うことでしょう。

 私は部屋を出て騎士さんを探します。

◇◇

「ど、どうやって脱出したんだ!」

 居間の様な場所に見知らぬ若い男性が座っています。

「絶対に逃げられないように鎖と魔法陣をかけてあったのに……まあ、逃げる意思がないならいいが」

「誰ですか?」

 ちょっと男性アイドルっぽい甘いイケメンで、黒髪がふんわりと耳にかかって、少しだけ跳ねているのが可愛いです。
 カメラマンに狙われていたら密会現場としてスクープされてしまいそうです。

 私が聞くと男性はニヤッと笑います。

「誰なんて聞かれるのは久しぶりだな。もう何年も呪いで鎧が脱げなかったから、俺が呪いの騎士だと皆んなにすぐバレた」

 彼がさっきの騎士さんだったようです。

 どこか高貴さのある可愛いイケメンです。
 私を怖がらせたことはちょっと許します。

「鎧が脱げなかったって、お風呂はどうしていたんですか?」

「今入った」

 だから髪がふんわり柔らかそうに見えるんですね。

「でも、脱げない間はどうしていたんですか?」

「……」

 聞いてはいけないことだったようです。

 騎士さんから、アイドル必須のスルースキルを学びました!

「ありがとう、俺の呪いが消えたのは、君の癒しの力のおかげだ。
 だから、俺は聖女の君をずっと俺のそばに置いて魔界に閉じ込める事に決めた。俺のそばなら、なんでも君の思い通りだ」

 騎士さんは私にお礼を言いますが、もう聖女じゃありませんし、聖女時代も癒しの力なんて持っていませんでした。

「それはおかしいな……。君の食べた毒の果物は死ぬ様な物ではないが、食べると肌が果物の皮と同じ水玉やシマシマになるんだ」

 え! ええ!? 鏡を見てないけど、今の私の肌って水玉なのですか~!
 両手で頬をこすってもいつも通りの手触りです。

「心配するな、君の肌の色は正常だ」

「……なら良かったです。でも、騎士さんは、私を驚かせてばかりでやっぱり許せません!」

「いや、あんな禍々しい果物をこんな可愛い子に目の前で食われた俺の方が驚いたわ!」

「か、可愛いって! く、果物は、美味しかったですよ?」

 また食べたいです。

「君の浄化の力なんだろう。俺も君の手にしていたものを食べたがなんともない。毒が完全に消えていた」
 
 ドサっと騎士さんはあの果物達を大量にテーブルの上に広げます。

「沢山とってきたから浄化してくれ。一緒に食べよう」

 信じられません!

 またフルーツバイキングが出来るなんて!

 でも私には毒の浄化なんてできないのです。

 きっと神様が十年以上の聖女の活動に退職金代わりに奇跡を起こして下さったんだと思います。

 感謝して美味しくいただきます。

 そして、果物をこんなに沢山運んで下さった騎士さんにも!

 思わず口の前で両手の指を組み合わせてしまいます。

「ありがとうございます! 大好きです!」

 私は騎士さんの目をまっすぐに見てフルーツバイキングへの熱い想いを伝えます。

「な、なにを言い出すんだ! 君は聖女なんだから皆んなのものだろう! こんなすぐに俺のものになって良いのか? 絶対にするつもりだが、早すぎる」

 私、聖痕がないから聖女にはなれませんが、皆んなのアイドルには戻れます。

 騎士さんはなぜ分かったのでしょう? 教皇様並みにすごい方なのかも。

 バチバチ!

 騎士さんから果物を受け取る時に手が触れたら、静電気が発生しました!

 呪いの鎧の中で、すごい静電気が溜まっていたのでしょう!

「なんだ? ……俺が帯電していたのか? すまない、聖女……」

 そう言う騎士さんはみるみる顔色が悪くなっていきます!

「HPが、1しかない……」

 ええ!! 大変です!

「騎士さんは、なんとかメタルとかみたいな防御力の高いレアモンスターなんですか!?」

「いや、普通の魔界の王子……」

「ええ! じゃあ、瀕死状態じゃないですか!」

 私は急いで毒の果物を剥いて騎士さんに食べさせます。

 騎士さんは、毒の果物を食べると回復していきました。

 毒が浄化されてるみたいです。

 神様! 退職金、ありがとうございます!

「ありがとう、また君のおかげで助かった。呪いが解けたせいかな……やはり、俺のそばにいろ」

 呪いとは初めて会った時の騎士さんの鎧からしみ出していた黒い霧のことでしょうか?

「あーんだ、聖女」

 口を開けてもっと食べモノを欲しがり騎士さんは可愛いです。

 何年も鎧が脱げなかったと言うけど、まだ若そうな見た目です」

「はい! 騎士さん!」

 私は果物を指先で摘んで食べさせてあげます。

「でも、騎士さんのお悩み……呪いはなくなってしまったんですね。アイドルとして“お悩み”相談に乗りたかったのですが、騎士さんが食事中に気軽にスプーンを落とせるようになって良かったです」

「ん? 君と食事する時は、食事中に気軽にスプーンを落とす必要があるのか?」

 私の手から果物を食べる騎士さんが何か言ってます。
 
「聖女様、これから魔界の城まで連れていく。俺のもののなった君は、呪われた魔界を救うんだ」

「ええ!? 困っているなら救いたいけど、私はもう聖女じゃないんですよ」

 聖女だった時も誰も救えませんでしたが。

 そう言いながら私は服を引っ張って、聖痕のあった胸元を騎士さんに見せます。

「なっ!」

 騎士さんが驚いています。

「ね! 聖痕を持っていないでしょう?」

 何故か目を逸らす騎士さんにちゃんと見てもらうために近づきます。

 騎士さんは何故か見ようとせずに首を限界まで回しています。

「や、やめてくれ……、毒より刺激が強い……」

 鎧の頭もクルクル回ると思うけど、騎士さんは鎧じゃなくてもすごい回ります!

「教皇様は気にせずに見て触ってましたよ。騎士さんも、ちゃんと見てください! 私は聖女ではありません!」

「教皇が、見て、触った!?」

 やっと騎士さんはこっちを見てくれました。

 私は聖女に間違えられても誰も救えないんです。

「これは……!」

 騎士さんが私の胸元を見て驚いています。

 さっきまで見るのも嫌がっていたのに、マジマジと見つめて、震える手で私のフリルがついた服を押さえています。

 見ろと言ったのは私ですが、騎士さんの指先の感触になんだか身体が締め付けられて困ります。

「嘘だろ!? 『神域の癒しセレスティアル・ケア』……本当にあったのか……。君は、可愛いだけじゃなくて、千年に一度の逸材だ!」

 セレ、セレス……、なんて?

 騎士さんのただならぬ様子に私も自分の胸元を見ます。

 私の胸に、教皇様の魔力に反応した時に現れた聖痕とは違う幾何学模様が浮かび上がっていました。

「教皇様に聖痕はお預けしましたのに! どうして!?」

 形は違いますが、もしかして、お預けせずに出て来てしまったんですか!?

 私、アイドル引退後に泥棒とか詐欺師とかそんな感じになってませんか?

 と、とんでもないスキャンダルです!

 ごめんなさい! 教皇様!

「生まれついての魂と一体化した聖痕は誰にも奪えない。預けた聖痕とは別物だろう。君が聖女である事は誰にも奪えないんだ」

 よ、良かったです。

 あの怖い名称の聖痕は、ちゃんと教皇様が管理して下さっています。

「改めて言うが、俺は魔界の王子なんだ。魔界では呪いで苦しむものが多い。君の『神域の癒しセレスティアル・ケア』で俺と魔界を救って欲しい」

 王子様と言えば、天然のアイドル! ライバルです!
 通りで、見た目や仕草に品はあると思いました。

 ライバルとは言え、果物をくれた騎士さんに深く頼まれたら断りにくいです。

 でも私は、聖痕を二つも持っていたのに何も出来ない聖女だったのです。

 きっとがっかりさせてしまいます。

「君が俺のそばにずっといてくれるだけでいい。まあ一応、聞いてるだけで君の意思は関係ないんだがな。俺はもう決めてる\[\[」

 魔界の王子様が、同じ事務所に誘ってくれている!

 私は聖女であるより前にアイドルですから、期待に応えたいです!

「魔界の王家直属アイドル聖女として、信者さんとお話ししたり、握手会頑張ります!」

「アイドル? アイドル並みに可愛いが」

 騎士さんが私をじっと見てオーディションをしてくれています。

 歌もダンスも出来ないのに王家の方と一緒にアイドル活動させて下さいなんてちょっとずうずうしかったかもしれません。

「よく分からないが、俺のそばにいてくれるなら、二度と逃さないよ」

 そんな! 私、魔界の王子に捕まってしまい、逃げられません!

 騎士さんが私に手を差し出します。

 熱烈なファンとの、魔界ではじめての握手会です!

 バチッ!
 
 また、騎士さんの静電気です。

「これは……」

 騎士さんが深刻そうな顔をしています。

 呪いで溜まっていた電気は相当な量なのでしょうか?

 なら、ここは一肌脱ぎます!

「お悩み相談に乗らせて下さい!」

「違う……。俺じゃない……。君の聖痕の力が強すぎて、触るもの全てを浄化しようとしている!」

「え! ええ~!!」

「ふ、触れられないのか……!? いや、もう一回……」

 バチバチ!

「うわー! またHPがー!」

 え!? 私、魔界の王子から逃げられるんですか!?

 知らずに、アイドルの高みに来てしまっていました!

 騎士さんに差し出した私の手がさみそうです。

◆◆◆◆

——帝都、大聖堂前—— 

 数十人の術者と帝国最強の騎士団は私の前で溶けて消えていった。

 大臣の私は命からがら逃げ出したが、帝国にはこれ以上、教皇に対抗する手段は残っていない——。

「うわあああああああああ!!」

 教皇の悲鳴が大聖堂から帝都中にこだまする。

 対抗する手段もないが、教皇の部屋に誰も近付かなければ、教皇自身も黒い霧に対抗するエネルギーを手に入れられず自滅する。

 アホか。

「うわあああああああああああああああ!!」

 ただただ、うるさい。

 これが聖女ならみんなでシュプレヒコール
するのに!
 
◇◇◇◇

 私は馬車に揺られて大聖堂に向かっています。

 強すぎる聖痕の力を抑えていたのは、教皇様が預かってくれた怖い名称の聖痕だったのです。

 騎士さんが人間に変装して付いてきてくれます。

「私の為にありがとうございます! 苦しい時もファンでいてくれる騎士さんは私の特別な人です!」

「あ、当たり前だ! 聖女は自分の意思でも俺のものになったんだ、触れられないのは困る。聖痕を取り戻そう」

 けれど馬車の中で揺れるたびに騎士様にぶつかって触れてバチバチしています。

「……浄化されそうだな。HPが1になるくらいで、君を諦めないが」バチッ

 騎士さんは毒の果物(浄化済)を片手にずっと回復し続けています。

 騎士さんは私にも果物や食べ物を食べ出せてくれます。

 私は手で触れると浄化してしまうので、食べ物が食べられまん。

 無機物なら触れるけど、有機物は即消滅です。

「聖女、あーんだ」
 前と違って私しが口を開いて食べる番です。
「あーん、です」

 騎士さんの手から食べると何でも美味しいです。

 ぺろっと騎士さんの指もたまに舐めてしまいます。

 舐めると騎士さんを感じてドキってするけど、騎士さんも私を見つめて、目が合うたびちゃんと触れたくなります。

「聖女……」バチバチ!
 揺れに関係なく騎士さんが抱きついてきて、ドキドキです。

 騎士さんの鎖骨が目の前にあって、綺麗なのに骨と筋肉の形が男らしくてとっても触りたくなります。

「流石に、休まず回復の果物を食べ続けるのは辛いが、聖女がこんな側にいるのに、触れられないなんて……」

 触れてると騎士さんのHPが減って行きます。

 でも、少しでも触れていると、騎士さんの熱と匂いが伝わって嬉しです。

 私も我慢できずに、触れようと手を伸ばすと、騎士さんの持っていた毒の果物(浄化済)に当たってしまいます。

 バチッ

 大きな音を立てて果物が消滅しました。

 私と騎士さんは大人しく離れて座ります。

 不浄ではない有機物に触れると、消滅させてしまいます!

「いやです! 騎士さんを浄化したくありません! でも、騎士さんに触れたいです~!」

「せ、聖女……、君も俺と……!」

 騎士さんは私の魔界でのファン一号なんです!

 握手が出来ないアイドルなんてアイドル失格です!

◇◇

 帝都に着くと、大聖堂は禍々しい霧に覆われています。

「大聖堂が魔王城みたいになっています……」

「安心しろ! うちはもっとアットホームな感じだ」

 魔界の王子の騎士さんがご実家の様子を教えてくれます。

「黒いゴスロリっぽいのも良いと思ったんですけど……」

「帰ったら、もっと禍々しくする!」

 大聖堂から漏れているのは、騎士さんを呪っていたような黒い霧です。

 大聖堂から溢れ出した黒い霧は住宅街の方に伸びて、足元を覆っています。

 大変です! スプーンどころではありません! 鍵を落としたらお家に帰れなくなってしまいます!

 帝都ではもう落とし物が出来ません!

 今なら私の要らなすぎる『神域の癒しセレスティアル・ケア』も役立ちそうです!

「聖女様! あなたが居なくなってから帝都は大変なことになってしまいました」

 あ、シスターファンの御者さんではありませんか!

「鍵が見つからなくて、もう何日も家に帰れないんです、聖女」

 それは大変です。

 けれど私の歩いた場所から霧が消えていきます。

 ちょっと先の階段の下に光るものが……。

 教皇様のキーホルダーが付いた鍵です。

「あ、それは! 俺の鍵です」

 そう言って鍵を私の手から取ろうとする御者さん……。

「下がって、聖女はお前たちが気軽に触れられる相手じゃないんだ!」

 騎士さんが御者さんが私に近寄って浄化されないように防いでくれました。

 これはジャーマネ! マネージャーです!

 今までソロ活動だったので、共同作業が嬉しいです!

 私が触れないように騎士さんに渡し、騎士さんが御者さんに鍵を渡します。

「せ、聖女の触れた鍵……! 大事にします!」

 そう言って御者さんは教皇様のキーホルダーをブチッと壊して外すと投げ捨てて行きます。
  「聖女のキーホルダー、まだ売ってるか? プレミア価格でも買う!」

◇◇

 大聖堂の黒い霧の溢れる大元は教皇様のお部屋でした。

 中に入ると教皇様が真っ黒になって倒れています。

 私が教皇様に近づくと、黒い霧が光に包まれて一瞬で晴れていきます。

「す、すごい! 黒い霧を一瞬で打ち払うなんて! さすが、私の推し!」

 私が戻って来た事を聞いて駆けつけてくれた大臣さんが喜んでくれたので、振り返ってアイドルポーズでサービスです!

「……尊い……!」

 バタッ

 大臣が倒れました。

「だ、大臣! ずるいですよ!」

 久しぶりのアイドル活動でファンの方々が喜んで頂けています。

 ずっと会えない塩対応だったので、久々に神対応ができたでしょうか!?

「クソ! 聖女め……」

 教皇様が起き上がり、私に向かって落ちていた剣を思いっきり投げてきます。

 鋭い剣の先が私の顔に目掛けて飛んでくるのに、避けられません!

「聖女!」

 騎士さんに強く腕を掴まれて、バチッと二人の間に電気が流れたのと、剣が私の頬を掠めたのが同時でした。

   「一撃目は外したか……」

「くっ!」

 苦痛に顔を歪める騎士さん!

 浄化の力が、ダイレクトに騎士さんに届いてしまいました!

「騎士さん!」

 嘘です! 騎士さんが浄化されてしまうなんて!

 ここまで連れてきてもらって、マネージャーになっていただいたばかりなのに……。

「聖女……、最後に君に触れられる。HP1でも関係ない、俺は、命をかけて君を愛してる……!」

 弱々しく騎士さんが私の顔に手を伸ばします。

 私も騎士さん触れられないのは嫌です。

 私も騎士さんに近づきます。

 私の唇が騎士さんの上に重なると、騎士さんは驚いた後で、私の身体を強く抱きしめてくれます。

 力強く抱きしめられると、私の身体が騎士さんの中に入っていくみたい。

 体の凹凸に沿って流れる熱い体温と匂いが気持ちいい。

 最後に触れられてよかった。

 最後に…。

 ギューー。

 最後が長いです。

 私の聖痕の無差別の癒しの力が黒い霧を浄化した事で少し弱くなっていました。

「まだバチバチするが、君に、触れる! メタルスライムに生まれ変わらなくても良いな!」

 良かった!

 騎士さんをあと少しで殺してしまう所でした!

 握手会の再開に騎士さんが喜んでくれて私も嬉しいです。

 教皇様は、これを計算して自らを犠牲にして私の為に黒い霧を集めて待っていてくださったのですか!?

 私の背後に教皇様の影が落ちます。

 振り下ろされる二撃目の剣を、騎士様が教皇様ごと殴り倒して止めます。

 床に激しくぶつけて倒れる教皇様。

「俺の聖女の胸元を見て、触った奴は許さない……」

 ゾッとするほど恐ろしい声で、騎士さんが教皇様を睨んでいます。

 私に会えて嬉しいからって、教皇様の行動が過激になっていました!

 それにスモークの焚き過ぎに帝都の方々が困っていましたよ。

 床に転がっている教皇様に、ちょっと厳し目にアイドルからのお願いをします。

「教皇様! 過激なファン活動は控えて下さい! お願いします!」

 床に転がっている教皇様を上から見下すようになってしまいましたが、私は深く頭を下げてお願いします。

「……早く、この聖痕『偽神の刻印フェイク・ギアス』を外してくれ……、頼む、聖女」

 今にも消え入りそうな、か細い声が聞こえます。

 アイドルからの直接のお願いに教皇は感激して泣いています!
   「聖痕が苦しいんだ……」

 教皇様! 推しへの愛が深すぎます!

「聖女の思い込みが暴走してる! 教皇に向ける笑顔が尊すぎて勿体無い! それは俺だけのものだ、聖女」

 やり過ぎたファン活動を反省した教皇様から、騎士さんと魔界で暮らす事になる私への最大級の餞別をいただきました。

 ……。

 けれど、何だか身体が重いです。

 何十人ものファンに押し倒されてるみたいな……。

 で、出待ちはダメですよ!

「どうしたんだ聖女!」

 騎士さんが、倒れそうな私の身体を支えて抱き上げてくれます。

 ズ、ズズズズウウウゥゥゥ!

「!」

 裸の男性が私の聖痕『偽神の刻印フェイク・ギアス』の中から次々と現れて積み重なっていきます。

「「え! ええええええ!」」

 二人同時に声を上げてしまいます。

「教皇に吸い込まれた人達が蘇った! 聖女がまた奇跡を起こした!」

 横にいた信者のファンが何か言ってますが、そんなことより緊急事態ですよっ!

 全裸のファンに押し潰されるーー!

 教皇様はもう押し潰されてるーー!!

 騎士さんが私を抱き上げたまま逃げるように走ってくれます。

「い、いやああああああああああああああ!」

 私の絶叫が響く中、今日のライブは終了です!

◇◇

 「な、何なんだ、大聖堂って言うのは、ま、魔界より、魔境だ……」

 騎士さんが手を地面についてうなだれています。

 私も、今日のライブの光景は一生忘れられそうにありません、悪い意味でっ!

「大丈夫だ。魔界に戻ったら、聖女を俺でいっぱいにしてやる。俺だけを見るんだ、聖女」

「騎士さん……!」

 なんとか手に入れた、聖痕『偽神の刻印フェイク・ギアス』が、私の『神域の癒しセレスティアル・ケア』を完全に抑えてくれます。

「これで聖女に触れても浄化されなくなった」

 騎士さんが伸ばした手を掴んで手を繋ぎます。
 指と指が絡んでいく。

「はい! 騎士さんといっぱい触れ合います!」

「ふ、触れ合い……って、聖女も俺に触れるのか」

「はい! 握手会、頑張ります!」

 騎士さんのもう片方の手を私から握ります。

 ふと、見知った声がしました。

「せ、聖女」

 シスターです!

 どんなでも、さっきの光景を思うと、今は女性に会えると心が和みます。

「あなたが居なくなって、教皇様が狂って帝都は大変だったのよ。ごめんなさい、あなたがどれだけ大事な人なのか、気付かなくて……」

「良いんですよ、シスター。私が可愛すぎるせいなんですから!」

 沈黙。

「空気が読めないところはどうかと思うけど、友達になってあげるわ」

「ありがとうございます! 私は騎士さんと魔界に行きますが、帝都に遊びに来るので、フルーツバイキングに行きましょう!」

「良いわよ、楽しみね。でも、騎士さんって……。げっ、超イケメン!!」

 シスターは帰って行きました。
   「負けたけど、次に会う時までには、私も……!」

 騎士さんが笑っています。

「良かったな、聖女。友達ができて」

「はい!」

 騎士さんと手を繋いで、友達もできて。

 普通の女の子に近づきました!

「でも、これで魔界でアイドル活動できます!」

「聖女……、めっちゃ可愛い。いい笑顔だけど、ダメだ!」

 な、何故ですか~!!?

◆◆◆◆

——その頃の大聖堂、教皇の部屋——

 無数の信者が私を取り囲む。

「教皇、あんたが俺たちに何をしてくれた」

「聖女様のように、話を聞いて悪意を取り除き、癒してくれたことなど無いだろう」

「むしろ、負の感情を増幅させて、帝都を壊滅状態にした」

「聖女様が許しても、俺たちは許さない」

 あの、小娘が!!

 帝国の騎士団もいる。

 皇子も自分の服を探して着ている。

「ん! なんだ、これは!! 聖女と写っている男は誰だ!!!!!! 教皇、お前が聖女を追放するから!!!!!!!!」

 ……終わりだ、聖女が無能なせいで、破滅させられた——!

◇◇◇◇

ちょうど、大聖堂から綺麗な放物線を描いて落ちる流れ星がありました。

「あ、お願い事出来ませんでした!」

「あ? 教皇か?」

 ゴミを見た後のような顔を引っ込めて、騎士さが真剣な顔を私に向けます。

「誰にでも笑顔を向けるような、アイドル活動はもうお終いだ」

「え!? 騎士さんが、どうしてそんな事を言うんですか!?」

「さっきの混乱の時に、大聖堂に聖女と俺が抱き合う写真をばら撒いてきた。今頃大騒ぎだろう。ファンは減っただろなぁ」

 な、なんですか~!

「シスターに会いに帝都に来るのは良いが、あの写真を見てもファンを続けるような危ない奴がいる所には行かせられないからな。帝都と魔界は完全に封鎖だ。シスターに会う時は俺が完全に送って着いて行く!」

「騎士さんとも帝都でデート出来るの嬉しいですけど……」

 私が言うと騎士さんの顔が緩みました。

「君は、俺だけのアイドルで、これから一生続けるんだ。ずっと俺だけを見ていろ。本当に君を愛してるのは俺だけだから。俺のそばにいるだけで魔界は救える」

 ……。

 私は騎士さんのストレート過ぎる告白に真っ赤になってしまいます。

 騎士さんは、ガチ恋勢だったんですね。

 本当ならアイドルが一人のファンを特別扱いできませんが……。

「もう、君は俺だけの女だ」

 は、恥ずかしいです!

「わ、私、騎士さんと専属契約したいです!」

「当然だ! 触れられないと思っていた君に、聖痕より深い愛の契約を刻む」

 すごいことを言う騎士さんに抱きしめられても、私の『神域の癒しセレスティアル・ケア』は、もうバチバチしません。

「君を俺だけのものにする為ならなんでもする。君は、魔界の奥の俺の許可がなければ永遠に出られない場所で、俺の為だけに可愛くしていればいいだけだ」

 騎士さんが、私の身体を抱いて、ちゃんとしたキスをしてくれます。

 私も騎士さんの頭に触れると、髪の毛が指に絡み付いて、唇と指先から騎士さんの二つの感触に責められます。

 騎士さんの腕の中で甘いキスが続いて、もうこの温もりから離れられません。
 
 一人のファンから逃げられない私は、あなただけの最高のアイドルになりたい!
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