明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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リレーするキスのパズルピース

手紙と不意打ち/3

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 だがすぐに、男のガサツな声が沈黙を破った、回し蹴りバックを入れるように、素早く力強く。

「そんなん答え決まってんだろ?」

 両手を腰に当て首だけでコンドルのほうへ振り返り、映画の中のワンシーンのように背中で語ってやる感を思いっきり出して、地面をえぐるような強い風がひとつ吹き抜けると、同性でも惚れ込んでしまうほどの、しゃがれた渋い声で告げた。

「金は不必要ナッシング、大事なのはハートだろ」

 即座に、男たちから歓喜と拍手喝采かっさいが巻き起こり、あちこちから一斉に声がけがかかった。

「兄貴、カッコいいっす!」
「兄貴、最高っす!」

 ピューピューという口笛や興奮した叫び声に囲まれた兄貴は、ウェスタンブーツのスパーをカチャッと鳴らして、即行注意を浴びせた。

「感心してんじゃねぇよ、そこでよ」

 したわれまくっている男のカウボーイハットはくるっと反転して、コンドルへ正面を向けると、ふたつのペンダントのチェーンがチャラチャラとすれあった。

「大切なのは一番下の消費者さんなんだよ。デパートさんじゃねぇんだよ。断り入れてきやがれ」
「おっす!」

 統制が取れていることを如実に表すように、野郎どもの返事が全員重なった。彼らはそれぞれの持ち場にすぐに戻り、晴れ渡る青空の下で初夏の風を浴びながら農作業は再開した。

 赤茶のウェスタンブーツはスパーをカチャカチャさせて、肉のかたまりとしてる大木の間に伸びている乾いた土の上を歩いていきながら、吐き捨てるように文句を並べる。

「ったくよ、宇宙の平和を守ろうぜ・・・・・・・・・・デパートも笑い取ってきやがって。だいたい、この世界に金は必要ねえだろ。物々交換とかあんだからよ」

 太陽がないのに降り注ぐ陽光に、鋭いシルバー色を発していた太い六つのリングは、しばらく乾いた地面の上を動いていたが、

「遊んでんじゃねえよ、明日納期なのに。昼飯にすっ――」

 男の言葉がふと途切れたと思ったら、農場からすうっと消え去り、彼の靴跡はそこから先はどこにも続いていなかった。


 農場を見渡せる高台にあるウッドデッキ。地平線が青空の中にくっきり描かれている。砂埃すなぼこりで茶色く変色しあちこち破れかけている西部劇みたいな古いポスター。ごちゃごちゃとものが置かれているて、全て土色。その中央に、艶という言葉など忘却のかなたへ置き去りにしてきたようなロッキングチェアと丸テーブルがあった。

 何の予告もなしに、ウェスタンスタイルで全身を決めている男のガタイのいい体が、椅子の上に放り出されたようにどさっと現れた。丸テーブルの上に置かれた赤く四角ものを、アッシュグレーの眼光で捉えた。

 それは女が長い髪を結い上げたように、キュッとした色気を放つ結び目をしていた。節々のはっきりした男の手が弁当へ手を伸ばそうとすると、予告なく誰かすぐ近くにすうっと立った。

「やあ! 明引呼」
「あぁ?」

 明引呼と呼ばれた男は伸ばしていた手を止めて、突然きた男を怠そうに見た。そこには、深緑のマントと白を基調にした上下。黒のロングブーツ。カーキ色の癖毛と優しさのみちあふれたブラウンの瞳をした男がいた。

「仕事は順調ですか?」

 農場の土臭いウッドデッキに、国家機関のぎれいな制服。不釣り合いな男二人。柔らかな質問に、明引呼はガサツな声で聞き返した。

「貴、何やってんだ? こんなところで、こんな時間によ」

 兄貴と呼ばれた男は太いシルバーリングをした拳を叩き付けそうな威圧感だったが、現れた男はにっこりと微笑んだ。

「僕の名前は貴増参です。省略はなしです」

 いつの間にか手のひらに現れたダーツの矢を、左側の壁にかけてあるマトを狙って、明引呼は力任せに投げた。

「細けえこと、ごちゃごちゃ言ってねぇで、ワークどうしやがった?」
交代チェンジしていただいちゃいました」

 ズドンとど真ん中を射た矢とは反対側で、貴増参が相手に合わせて話を返してきた。この男ボケているようで、意外と頭がいいところがある。それを知っている明引呼のウェスタンブーツは、スパーをカチャッと言わせながら、床の上で軽く組まれた。

「重要なことでも起きやがったか? 他の野郎に頼んでまでくるなんてよ」

 仕事を交代してもらう。席を外す。ただ事ではない予感が漂っていた。だが、羽布団のように柔らかな低い声が口をついて出てきた内容はこれだった。

「明引呼の年齢を聞きたくてきました」
「あぁ?」

 急用でも何でもないもので、明引呼のたくましい両腕はカウボーイハットの後ろに折り曲げられ当てられ、当然のツッコミを返した。

「そんなこと聞くために、てめえ、ワーク抜け出してきたのかよ?」
「ぜひ、この機会に聞かせていただきたくて……」

 振られた明引呼の口元はどこかニヤリとしていた。

「オレは二十五だろ?」
「そちらは前の年齢です」
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