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最後の恋は神さまとでした
恋する天才軍師の戦術/2
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澄藍はコントローラーを机の上に放り投げて、両手で顔を覆った。
「今の会話、全部罠だった!」
孔明の話してきた会話のほとんどが疑問形だった。それは罠の基本だと彼女は既に学んでいたが、あの間延びした口調にだまされたのだ。
「やられた~! 孔明さんに!」
いつもその口調で話しているから、その人がそういう人とは限らない。という可能性があることを、澄藍はすっかり忘れていた。
「天才軍師が恋愛するとこうなるのか!」
疑問形は相手の情報を得るための手段。しかし、彼の疑問形はそれだけではなかった。別の意味があり、全ての会話が何重にも罠が仕掛けられていたのだった。
「いや~~~! もう、完敗です!」
テレビゲームだからこそ、振り返ってみることもできるが、今のを現実でやられたら、気づかないうちにスルーしているのが現状だ。澄藍は変な意地が働いて、今の場面をもう一度見ようとは思わず、記憶力だけでたどった。
孔明のイメージと言えば、さわやか好青年で頭が非常にいい。しかし、彼女にとってはそんな男はどうでもよかった。なぜなら、一癖も二癖もある男が好みだからだ。
コウがなぜか心配していたが、それには及ばなかった。彼女の脳裏にきちんと印象が残り始めた。
今までの場面でも罠があったのかもしれない。そう思うと、澄藍の手は止まってしまうのだった。
「普通の会話だと思っただろう?」
突然子供の声が響き渡った、ヘッドフォンをしているのも関わらず。普通だと思っていた男が実は一番取り扱い注意だったと知り、澄藍は子供の姿をした神さまに泣きつく。
「あぁ、コウ。やられたよ!」
ふんぞり返りながら、コウの小さな足はぴょんぴょんとコミカルな音を立てて、女のまわりを歩き出した。
「とりあえず、この前のゲームで何か気づいたことなったか?」
「あぁ、中間テストのヤマをかける話」
「どう言ってた?」
「普通さ、先生がどこを重点的に教えてたとか、教科書のどの部分とかの話じゃない?」
「それは当たり前の話だな」
コウはバッサリ切り捨てた。それでは軍師という職業には到底着けないだろう。無駄死にもいいところである。
「だからさ、こう言ったんだよね。『政府の政策が何かを知ってれば、ヤマが当たるよね』って」
「そのレベルじゃないと、孔明とは少なくとも言えないな」
見ている範囲と方向が違う。覚えている出来事がやはり今までの全てなのだ。しかも、それを高校生でやるというところも重要。神威の効いた作品である以上、セリフに失敗するとは思えない。
そうなるとやはり、孔明が平和な国で高校生をしたら、こうなる可能性が十分あるということだった。感覚で長らく生きていた澄藍は最近ようやくこの話が理解できるようになった。
「教育ってさ、国っていう組織の中で生きていくのに、最低限の共通事項を覚えるためのものじゃない? だから、合ってるんだよね。孔明さんってこんな考え方をするんだ、高校生なのにさ」
神の力で棚から出した本を階段のようにして、コウは上へ登ってゆく。それを見ながら、澄藍は大いに感心していた。
さっきの悲鳴を聞いていたコウとしては、いつまでも話を進めない人間の女に先を促した。
「それで、今騒いでたのは、どういうことだ?」
恋愛を命がけの戦争と同じ目線で見たらどうなるか。
「恋愛をするってことだから、最終目的は相手の気持ちを自分へ向ける。これが作戦成功ってことだよね?」
「そうだ」
「ってことはさ、まず最初にやることは、相手が自分に興味を持ってるかどうかを知る必要があるよね?」
接触しないとこれはわからない。
「具体的に、どういう方法だ?」
「自分について聞いてくるか、聞いてこないか。もしくは、偶然会っても、話をするか、挨拶だけで終わるか」
「最初に何してきた?」
全てを記憶していない澄藍は、挨拶をすっ飛ばしていた。
「偶然だねって言ってたけど、バイトからの帰り道だから、大抵その時間にそこを通ってるってことだよね? だから、偶然のふりをしてる」
挨拶をすることも、何気ない振りを装う術のひとつ。階段のように並んでいた本が斜めに傾き、滑り台のようにつながり、コウは勢いよく降りていった。
「それじゃ、罠はひとつだ。天才軍師の仕業とは言えない」
ひとつの言動からいくつも見出す。
「それを相手が怪しんでる様子がないように見えるってことは、そのあとの会話以降、多少は簡単な罠でも相手は引っかかる可能性が高いになる」
「他には?」
「同じ理由で、自分に対して相手が警戒心を持ってない。相手が自分に興味を持っていないという可能性は最初より低くなる」
探偵が犯人探しをするように、考え出した澄藍に、コウがあの世で今出した虫眼鏡が渡された。彼女はそのレンズをのぞき込み、ゲームの画面に当てる。
「途中で、ウェイトレスになりたいみたいに聞こえるように言ってたけど、はっきりとは言ってないから、違う可能性が高い」
「今の会話、全部罠だった!」
孔明の話してきた会話のほとんどが疑問形だった。それは罠の基本だと彼女は既に学んでいたが、あの間延びした口調にだまされたのだ。
「やられた~! 孔明さんに!」
いつもその口調で話しているから、その人がそういう人とは限らない。という可能性があることを、澄藍はすっかり忘れていた。
「天才軍師が恋愛するとこうなるのか!」
疑問形は相手の情報を得るための手段。しかし、彼の疑問形はそれだけではなかった。別の意味があり、全ての会話が何重にも罠が仕掛けられていたのだった。
「いや~~~! もう、完敗です!」
テレビゲームだからこそ、振り返ってみることもできるが、今のを現実でやられたら、気づかないうちにスルーしているのが現状だ。澄藍は変な意地が働いて、今の場面をもう一度見ようとは思わず、記憶力だけでたどった。
孔明のイメージと言えば、さわやか好青年で頭が非常にいい。しかし、彼女にとってはそんな男はどうでもよかった。なぜなら、一癖も二癖もある男が好みだからだ。
コウがなぜか心配していたが、それには及ばなかった。彼女の脳裏にきちんと印象が残り始めた。
今までの場面でも罠があったのかもしれない。そう思うと、澄藍の手は止まってしまうのだった。
「普通の会話だと思っただろう?」
突然子供の声が響き渡った、ヘッドフォンをしているのも関わらず。普通だと思っていた男が実は一番取り扱い注意だったと知り、澄藍は子供の姿をした神さまに泣きつく。
「あぁ、コウ。やられたよ!」
ふんぞり返りながら、コウの小さな足はぴょんぴょんとコミカルな音を立てて、女のまわりを歩き出した。
「とりあえず、この前のゲームで何か気づいたことなったか?」
「あぁ、中間テストのヤマをかける話」
「どう言ってた?」
「普通さ、先生がどこを重点的に教えてたとか、教科書のどの部分とかの話じゃない?」
「それは当たり前の話だな」
コウはバッサリ切り捨てた。それでは軍師という職業には到底着けないだろう。無駄死にもいいところである。
「だからさ、こう言ったんだよね。『政府の政策が何かを知ってれば、ヤマが当たるよね』って」
「そのレベルじゃないと、孔明とは少なくとも言えないな」
見ている範囲と方向が違う。覚えている出来事がやはり今までの全てなのだ。しかも、それを高校生でやるというところも重要。神威の効いた作品である以上、セリフに失敗するとは思えない。
そうなるとやはり、孔明が平和な国で高校生をしたら、こうなる可能性が十分あるということだった。感覚で長らく生きていた澄藍は最近ようやくこの話が理解できるようになった。
「教育ってさ、国っていう組織の中で生きていくのに、最低限の共通事項を覚えるためのものじゃない? だから、合ってるんだよね。孔明さんってこんな考え方をするんだ、高校生なのにさ」
神の力で棚から出した本を階段のようにして、コウは上へ登ってゆく。それを見ながら、澄藍は大いに感心していた。
さっきの悲鳴を聞いていたコウとしては、いつまでも話を進めない人間の女に先を促した。
「それで、今騒いでたのは、どういうことだ?」
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「恋愛をするってことだから、最終目的は相手の気持ちを自分へ向ける。これが作戦成功ってことだよね?」
「そうだ」
「ってことはさ、まず最初にやることは、相手が自分に興味を持ってるかどうかを知る必要があるよね?」
接触しないとこれはわからない。
「具体的に、どういう方法だ?」
「自分について聞いてくるか、聞いてこないか。もしくは、偶然会っても、話をするか、挨拶だけで終わるか」
「最初に何してきた?」
全てを記憶していない澄藍は、挨拶をすっ飛ばしていた。
「偶然だねって言ってたけど、バイトからの帰り道だから、大抵その時間にそこを通ってるってことだよね? だから、偶然のふりをしてる」
挨拶をすることも、何気ない振りを装う術のひとつ。階段のように並んでいた本が斜めに傾き、滑り台のようにつながり、コウは勢いよく降りていった。
「それじゃ、罠はひとつだ。天才軍師の仕業とは言えない」
ひとつの言動からいくつも見出す。
「それを相手が怪しんでる様子がないように見えるってことは、そのあとの会話以降、多少は簡単な罠でも相手は引っかかる可能性が高いになる」
「他には?」
「同じ理由で、自分に対して相手が警戒心を持ってない。相手が自分に興味を持っていないという可能性は最初より低くなる」
探偵が犯人探しをするように、考え出した澄藍に、コウがあの世で今出した虫眼鏡が渡された。彼女はそのレンズをのぞき込み、ゲームの画面に当てる。
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