353 / 967
最後の恋は神さまとでした
空似は方向音痴だ/3
しおりを挟む
答えてしまった蓮は気づいていなかった。目の前にいる男は、あのマゼンダ色の長い髪を持つ、女性をプロポーズへと次々と導いた過去のある男と、ある意味同じくらい危険だと。
右の道へ行こうとしていたのに、気づいたら左へ進んでいる焉貴は、自分が策を張ったことなどに気づいても、いつもの無機質で何事もなかったように物事は進んでゆく。
「そう。実際の年齢、それ? 二十三の言動じゃないよね?」
「三年しか生きていない」
蓮の言葉はこれだけだったのに、焉貴はこう導き出した。
「そう。陛下から分身したってことね?」
「なぜわかる?」
「陛下に似てる。三年しか生きてない。突然子供は大きくならない。だから、分身したしかないでしょ?」
「…………」
蓮の綺麗な唇は動かないままだった。理論で考えれば、もう答えは出ていたのだ。学校には、霊界から上がってきた子供がどこかの家の養子となって、入学してくることもよくあることだ。
そんな子供たちのもっぱらの噂は、霊界から神界へ上がる時に、目の前にいる男の義理の父親――明智本家に養子に入るのがブームなのだそうだ。
有名な家であるのは確かで、焉貴は必要な記憶を脳裏の浅い部分に引き上げた。
「義理の父親も分身してたよね?」
「そうだ」
「生みの親は同じで、今は親子。そういうことね?」
「そうだ」
不思議な関係が成り立っていた。聞かれてばかりの蓮は聞き返す。
「お前はいくつだ?」
「俺はお前の数百億倍生きてる」
「嘘をつくな」
蓮の可愛らしい顔が険しくなった。焉貴はまったく動じずに、ナンパで軽薄的に否定する。
「嘘じゃないよ。三百億歳超してるからね。それに、無意識の直感もある。だから、ピンときちゃったわけ。何か運命的なものがあるのかもね、お前と俺」
「運命? お前、独身か?」
ジャケットとタンクトップという身軽な先生に問うてみた。
「奥さんと子供三人いるけど? お前は?」
「俺は妻と子供が四人だ」
「そう」
「ん……。六人家族――いや、六点一人だ……」
おかしな言い直しをするものだと思って、焉貴は食べていた手を止めた。
「何それ? ゼロ点一って、どんな人の数え方?」
「地球という場所に、妻の魂の波動を受けた人間がいる。だから、点一人だ」
守護神である蓮としては、大きく譲って、この数え方で十分だと満足していた。また一粒マスカットを口の中へ入れて、「そう」と、焉貴は無機質にうなずき、
「そんな存在ってよくあんの?」
「いや、あれ一人だ」
蓮はコーヒーを飲んだが、また砂糖の袋を開けて、さーっと琥珀色に水面に流し込むと、スプーンでくるくると混ぜた。
「いつか会わせてくんない? その女と」
「地球へは守護の資格がないといけない。それは俺の一存ではどうすることもできない」
自分は陛下の命令で、例外的におまけの倫礼のそばにいけたが、結局のところ、本人に言われて、筋が通っていないと思い、今は晴れて胸を張って守護神だと言い切れた。
存在を知らない人もいるが、知っている人は知っている仕事。守護神の募集というものもいつもかかっていて、焉貴も当然記憶していた。
「守護の資格って、地球で生きてたことがあるか、同等の経験をしたことがあるかだよね?」
「そうだ」
遠くの宇宙から、宇宙船を一週間も乗り続けてやってきた、破天荒教師は長く生きているだけあって、経験は豊富だった。
「それなら、俺あるよ。むか~し、やったことある。地球じゃないけどさ」
「…………」
蓮は無言のまま考える。おまけの倫礼が見えるのか。どういう反応をするのか。神界育ちみたいなこの男と価値観が合うのか。
焉貴はテーブルに肘をついて、気だるく山吹色のボブ髪を両手でかき上げた。
「今すぐじゃなくていいよ。会ってみたいんだよね、悪ってものを持ってる人間にさ」
このフルーツパーラーで、同じ席に座っていた漆黒の長い髪を持ち、聡明な瑠璃紺色の瞳で頭の良さ全開で話してくる男を思い出す。
(孔明を理解したいんだよね)
違反していれば、途中で止められるだろう。焉貴にとっても、おまけの倫礼にとってもいい影響がなければ、それも同様の措置が取られる。
そうやって、地球は邪神界の影響が未だにある場所として、隔離されていると言っても過言ではなかった。
「ん」
蓮は短くうなずき、コーヒーにさらに砂糖を入れた。さっきから見ていた焉貴は、ジュースのストローをつまみながら、今日初めて一緒に過ごす男を観察していた。
「お前、甘党なの?」
「苦いのが得じゃないだけだ」
ひねくれ蓮は言い方までがねじれていて、焉貴はカラになった砂糖の袋を拾い集めてゆくと、二十個を超していた。
「コーヒーじゃないでしょ? これ。砂糖こんなに入れちゃってさ」
右の道へ行こうとしていたのに、気づいたら左へ進んでいる焉貴は、自分が策を張ったことなどに気づいても、いつもの無機質で何事もなかったように物事は進んでゆく。
「そう。実際の年齢、それ? 二十三の言動じゃないよね?」
「三年しか生きていない」
蓮の言葉はこれだけだったのに、焉貴はこう導き出した。
「そう。陛下から分身したってことね?」
「なぜわかる?」
「陛下に似てる。三年しか生きてない。突然子供は大きくならない。だから、分身したしかないでしょ?」
「…………」
蓮の綺麗な唇は動かないままだった。理論で考えれば、もう答えは出ていたのだ。学校には、霊界から上がってきた子供がどこかの家の養子となって、入学してくることもよくあることだ。
そんな子供たちのもっぱらの噂は、霊界から神界へ上がる時に、目の前にいる男の義理の父親――明智本家に養子に入るのがブームなのだそうだ。
有名な家であるのは確かで、焉貴は必要な記憶を脳裏の浅い部分に引き上げた。
「義理の父親も分身してたよね?」
「そうだ」
「生みの親は同じで、今は親子。そういうことね?」
「そうだ」
不思議な関係が成り立っていた。聞かれてばかりの蓮は聞き返す。
「お前はいくつだ?」
「俺はお前の数百億倍生きてる」
「嘘をつくな」
蓮の可愛らしい顔が険しくなった。焉貴はまったく動じずに、ナンパで軽薄的に否定する。
「嘘じゃないよ。三百億歳超してるからね。それに、無意識の直感もある。だから、ピンときちゃったわけ。何か運命的なものがあるのかもね、お前と俺」
「運命? お前、独身か?」
ジャケットとタンクトップという身軽な先生に問うてみた。
「奥さんと子供三人いるけど? お前は?」
「俺は妻と子供が四人だ」
「そう」
「ん……。六人家族――いや、六点一人だ……」
おかしな言い直しをするものだと思って、焉貴は食べていた手を止めた。
「何それ? ゼロ点一って、どんな人の数え方?」
「地球という場所に、妻の魂の波動を受けた人間がいる。だから、点一人だ」
守護神である蓮としては、大きく譲って、この数え方で十分だと満足していた。また一粒マスカットを口の中へ入れて、「そう」と、焉貴は無機質にうなずき、
「そんな存在ってよくあんの?」
「いや、あれ一人だ」
蓮はコーヒーを飲んだが、また砂糖の袋を開けて、さーっと琥珀色に水面に流し込むと、スプーンでくるくると混ぜた。
「いつか会わせてくんない? その女と」
「地球へは守護の資格がないといけない。それは俺の一存ではどうすることもできない」
自分は陛下の命令で、例外的におまけの倫礼のそばにいけたが、結局のところ、本人に言われて、筋が通っていないと思い、今は晴れて胸を張って守護神だと言い切れた。
存在を知らない人もいるが、知っている人は知っている仕事。守護神の募集というものもいつもかかっていて、焉貴も当然記憶していた。
「守護の資格って、地球で生きてたことがあるか、同等の経験をしたことがあるかだよね?」
「そうだ」
遠くの宇宙から、宇宙船を一週間も乗り続けてやってきた、破天荒教師は長く生きているだけあって、経験は豊富だった。
「それなら、俺あるよ。むか~し、やったことある。地球じゃないけどさ」
「…………」
蓮は無言のまま考える。おまけの倫礼が見えるのか。どういう反応をするのか。神界育ちみたいなこの男と価値観が合うのか。
焉貴はテーブルに肘をついて、気だるく山吹色のボブ髪を両手でかき上げた。
「今すぐじゃなくていいよ。会ってみたいんだよね、悪ってものを持ってる人間にさ」
このフルーツパーラーで、同じ席に座っていた漆黒の長い髪を持ち、聡明な瑠璃紺色の瞳で頭の良さ全開で話してくる男を思い出す。
(孔明を理解したいんだよね)
違反していれば、途中で止められるだろう。焉貴にとっても、おまけの倫礼にとってもいい影響がなければ、それも同様の措置が取られる。
そうやって、地球は邪神界の影響が未だにある場所として、隔離されていると言っても過言ではなかった。
「ん」
蓮は短くうなずき、コーヒーにさらに砂糖を入れた。さっきから見ていた焉貴は、ジュースのストローをつまみながら、今日初めて一緒に過ごす男を観察していた。
「お前、甘党なの?」
「苦いのが得じゃないだけだ」
ひねくれ蓮は言い方までがねじれていて、焉貴はカラになった砂糖の袋を拾い集めてゆくと、二十個を超していた。
「コーヒーじゃないでしょ? これ。砂糖こんなに入れちゃってさ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる