明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

文字の大きさ
657 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Karma-因果応報-/13

しおりを挟む
「今世の話ではありません、今しているのは。前世の話です。あなたが原因となり、他の罪のない人たちまで巻き添えにしているのです。夜見二丁目の交差点では馬車同士の衝突事故が六回も起き、その度に品物が破損し、そちらの道を通ろうとしていた人たちに遅延が生じた。そちらだけでも、被害をこうむる人は数え切れないほどたくさんいるのです。己自身の言動によって、どれだけの人や物事にどれほどの影響を与えるのか考えたことはありますか? 大人のする言動ではありませんよ。今世でも、あなたの知らないところで、どなたかの恨みを買っているかもしれません」

 未だ元の手のひらの中では、真っ赤な血が泉のように湧き出しては、ぽたりぽたりと床に滴り落ちている、幻覚を見ていた。

「ど、どういうことだ? 他の人間……。それも俺のせいなのか?」

 聖霊師は気にせず、容疑者を次のゲームの盤上へ無理やり引っ張り上げた。

「涼子さんの一千万と千恵さんの五千万の保険金は、どちらの国の保険会社を使ったのですか?」

 まだまだ発展途上国の花冠。電気が通っているのは役所だけ。ガス灯が自宅にある家は珍しかった。

 花冠国では、数千万の保険金を払える保険会社はありません。
 間に幾つかの会社を通していたのでしょう。
 国立氏も気づいていませんでしたからね。

 少しはわかる金の話になったので、元は何とか自分のターンでコマをひとつ進めた。

「そ、それは関係するんですか?」

 犯罪者の心の中は、怒りで荒れ狂っていた。

(な、何でそんなことまで言わなくちゃいけないんだ! 勝手に落ちたり、病気になって死んだんだろ!)

 圧勝という盤上を前にして、崇剛は優雅に足を組み替え、ワンゲーム中一回しかできないキャスリングを計算済みで、いきなり初手で使ってきた。

「えぇ、関係しますよ。あなたにとっての重要性は非常に高いです。お金を大切にしていましたよね?」

 チェスのグラウンドマスターである聖霊師を前にして、容疑者はゲームのルールもわからないまま、見様見真似でポーンをひとつ前へ進ませた。

「シュトライツ王国です」
「そうですか」

 崇剛はポーカフェイスのまま短く相づちを打ち、キングへ迫る勢いでコマを置いた。

「ですが、保険金は入ってこないかもしれませんね」
(邪神界側はあなたに対して、もう既に別の作戦を取っているかもしれません)

 元は驚いて、ワンターン見逃した。

「ど、どういうことですか? 金が入ってこない?」

 ターンがめぐってきた聖霊師は優雅に微笑みながら、元のクイーンをポーン軽く弾いた。

「シュトライツ王国の情勢は知っていますか?」

 そう聞き返す、崇剛の脳裏には、国立を通して、元を逮捕した時の新聞を読む姿が鮮明に浮かんでいた。

 今朝見てきた新聞の小さな記事――惑星の裏側で起きている国の出来事を思い出して、元は笑い話でも聞いたように、一気に緊張感がとけた。

「あ~、あれは……あははっ! ただの小競り合いでしょう」
「違うかもしれませんよ」

 霊的に見ている崇剛には急に真剣な顔つきになって、首を横へ振った。

「まさか、千年以上も続いた王国が滅びるわけないでしょう。金も技術も持ってるし、世界の中心――」
「千年以上続いたから、滅びないとは言い切れませんよ」

 崇剛は可能性の話をしていた。そうして、密かに、ラジュの反応を待っていたが、金髪天使はニコニコしているだけで、何も言わなかった。

 喜べることではない。だから、崇剛の冷静な水色の瞳は一瞬閉じられ、再び開けられると、金第一主義の殺人犯を一気にチェックメイトした。

「シュトライツ王国は崩壊――します」
(事実として確定、100%です)

 普通の人ではわからないし、理解もできない話。まだ起こっていない未来の出来事。

 遠い空の下にある他国の民衆の暴動。今回が初めてのこと。元は当然甘く見ていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

処理中です...