明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

文字の大きさ
656 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Karma-因果応報-/12

しおりを挟む
 殺された百五十六人の、邪神界か正神界かも全て振り分けが終わった。全員の魂の行方が優雅な聖霊師から明らかにされた。

「前世であなたに殺された人たちはあなたに対しての恨みを持ち、全員邪神界へ下りました」

 自分に恨みを持つ人数の多さに、元は恐れ慄き、唇を振るわせた。

「……全員、邪神界……こ、殺される……!?」

 寒くもないのに、体をガタガタとさせて、元は床の隅っこを見つめたまま、ぶつぶつと呪文のようにつぶやいていた。

 崇剛の話はまだ終わっておらず、芯があり螺旋状にくるくると遊びまわる声で続きが語られた。

「ですが、最後の犠牲者、百五十六人目である現世げんせでは千恵さん、前世ではお七さん――は、あなたに対して恨みを持ちませんでした。彼女は前世でもあなたの妻だったのです。あなたに正神界へ戻るよう改心をしてほしくて生まれ変わったそうです。邪神界の者によって人生の半ばで殺される可能性が高かったため、神から何度も生まれ変わるのを止められたそうです。しかしながら、彼女の意思は固くそれでも生まれ変わり、あなたのそばへやってきました。ですが、やはり殺されてしまいました。あなたの改心を快く思っていない邪神界の者たちに」

「してくれなんて頼んでないっ!」

 決死の覚悟で生まれてきた人に対して、金に換金するための結婚を繰り返してきた元は大声でわめき散らした。

 神父は千恵に敬意を払いながら、容疑者に静かに問いかけた。

「己自身を犠牲にしてでも、相手を想いやる……。そのような方に出会えるのは、奇跡と言っても過言ではありませんよ。彼女の愛を無下にするのですか?」
「勝手に生まれて死んでいったんだろう! 俺は何もしてない!」

 未だに自身の前世の行いで事件が起き、人が死んでいっているという事実を受け止められない元だった。

 冷静な水色の瞳は哀れな男からはずされることなく、事件の本質を突きつけた。

「あなたが原因で千恵さんは死んだのですよ。あなたは己さえよければ、人を平気で殺すのですか? そちらとまったく変わりませんよ、あなたが今行っていることは」
「え、え……?」
「あなたが罪を償わずに、このまま生き続けるとは、そちらのような意味なのです。自ら手を下さなくても、殺人鬼と変わらないのです」
「俺が人を殺した……?」

 精気まで奪われ、衰弱している元は自分の両手を見つめると、血で真っ赤に染まっていた。夢遊病にでもなって、人を殺して、翌朝に気づく。身に覚えのない犯行、そんな気分だった。

 今のままではとても償えそうになかったが、事実は事実として、まずは突きつけなければと思い、聖霊師は犯人へ流暢に長々と説明し始めた。

「世見二丁目の交差点で事故が三月二十五日、金曜日から、六回起きていました。そちらの原因は、子供の地縛霊を迎えにきた女性の霊気で起きたものです。そちらの子供はあなたが殺した身籠った女性の胎児で、女性はあなたへ憎しみを持ち邪神界へと下りました。そのため、子供はたったひとり、正神界へと残りましたが、母親が己の手元に置いておきたくて、子供を邪神界へと連れていったのです。そちらため、無実の子供は自身の意思に関係なく悪に魂を売り飛ばすこととなったのです。しかしながら、どのような境遇であったとしても、正神界へ戻ってきた時、三歳の身で地獄へと落ちるのです。何の罪もない子供まで、あなたが原因で悪へ下ってしまったのです。そちらでも、あなたは己に責任がないと言うのですか?」

「な、何の話だ……?」

 制御できない力を持ってしまったがために、自身で責任が取れないほどの罪が重なっていた。元を残して、冷静な水色の瞳は氷の刃で相手を刺すように向けられていた。

「弱き者――子供を犠牲にしてまで生きる人生とはどのような意味があるのですか?」
「俺は誰も殺していない! 何を問われる理由があるんだ?」

 怒鳴り散らせば、相手が怯えて、撤回するのだろうという甘え。それはここではもう通じないのだ。

 自分の人生が崩壊の序曲を踏んでいるとも認められず、言い逃れをしている犯人の前で、紺の長い髪はゆっくり横へ揺れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...