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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Karma-因果応報-/12
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殺された百五十六人の、邪神界か正神界かも全て振り分けが終わった。全員の魂の行方が優雅な聖霊師から明らかにされた。
「前世であなたに殺された人たちはあなたに対しての恨みを持ち、全員邪神界へ下りました」
自分に恨みを持つ人数の多さに、元は恐れ慄き、唇を振るわせた。
「……全員、邪神界……こ、殺される……!?」
寒くもないのに、体をガタガタとさせて、元は床の隅っこを見つめたまま、ぶつぶつと呪文のようにつぶやいていた。
崇剛の話はまだ終わっておらず、芯があり螺旋状にくるくると遊びまわる声で続きが語られた。
「ですが、最後の犠牲者、百五十六人目である現世では千恵さん、前世ではお七さん――は、あなたに対して恨みを持ちませんでした。彼女は前世でもあなたの妻だったのです。あなたに正神界へ戻るよう改心をしてほしくて生まれ変わったそうです。邪神界の者によって人生の半ばで殺される可能性が高かったため、神から何度も生まれ変わるのを止められたそうです。しかしながら、彼女の意思は固くそれでも生まれ変わり、あなたのそばへやってきました。ですが、やはり殺されてしまいました。あなたの改心を快く思っていない邪神界の者たちに」
「してくれなんて頼んでないっ!」
決死の覚悟で生まれてきた人に対して、金に換金するための結婚を繰り返してきた元は大声でわめき散らした。
神父は千恵に敬意を払いながら、容疑者に静かに問いかけた。
「己自身を犠牲にしてでも、相手を想いやる……。そのような方に出会えるのは、奇跡と言っても過言ではありませんよ。彼女の愛を無下にするのですか?」
「勝手に生まれて死んでいったんだろう! 俺は何もしてない!」
未だに自身の前世の行いで事件が起き、人が死んでいっているという事実を受け止められない元だった。
冷静な水色の瞳は哀れな男からはずされることなく、事件の本質を突きつけた。
「あなたが原因で千恵さんは死んだのですよ。あなたは己さえよければ、人を平気で殺すのですか? そちらとまったく変わりませんよ、あなたが今行っていることは」
「え、え……?」
「あなたが罪を償わずに、このまま生き続けるとは、そちらのような意味なのです。自ら手を下さなくても、殺人鬼と変わらないのです」
「俺が人を殺した……?」
精気まで奪われ、衰弱している元は自分の両手を見つめると、血で真っ赤に染まっていた。夢遊病にでもなって、人を殺して、翌朝に気づく。身に覚えのない犯行、そんな気分だった。
今のままではとても償えそうになかったが、事実は事実として、まずは突きつけなければと思い、聖霊師は犯人へ流暢に長々と説明し始めた。
「世見二丁目の交差点で事故が三月二十五日、金曜日から、六回起きていました。そちらの原因は、子供の地縛霊を迎えにきた女性の霊気で起きたものです。そちらの子供はあなたが殺した身籠った女性の胎児で、女性はあなたへ憎しみを持ち邪神界へと下りました。そのため、子供はたったひとり、正神界へと残りましたが、母親が己の手元に置いておきたくて、子供を邪神界へと連れていったのです。そちらため、無実の子供は自身の意思に関係なく悪に魂を売り飛ばすこととなったのです。しかしながら、どのような境遇であったとしても、正神界へ戻ってきた時、三歳の身で地獄へと落ちるのです。何の罪もない子供まで、あなたが原因で悪へ下ってしまったのです。そちらでも、あなたは己に責任がないと言うのですか?」
「な、何の話だ……?」
制御できない力を持ってしまったがために、自身で責任が取れないほどの罪が重なっていた。元を残して、冷静な水色の瞳は氷の刃で相手を刺すように向けられていた。
「弱き者――子供を犠牲にしてまで生きる人生とはどのような意味があるのですか?」
「俺は誰も殺していない! 何を問われる理由があるんだ?」
怒鳴り散らせば、相手が怯えて、撤回するのだろうという甘え。それはここではもう通じないのだ。
自分の人生が崩壊の序曲を踏んでいるとも認められず、言い逃れをしている犯人の前で、紺の長い髪はゆっくり横へ揺れた。
「前世であなたに殺された人たちはあなたに対しての恨みを持ち、全員邪神界へ下りました」
自分に恨みを持つ人数の多さに、元は恐れ慄き、唇を振るわせた。
「……全員、邪神界……こ、殺される……!?」
寒くもないのに、体をガタガタとさせて、元は床の隅っこを見つめたまま、ぶつぶつと呪文のようにつぶやいていた。
崇剛の話はまだ終わっておらず、芯があり螺旋状にくるくると遊びまわる声で続きが語られた。
「ですが、最後の犠牲者、百五十六人目である現世では千恵さん、前世ではお七さん――は、あなたに対して恨みを持ちませんでした。彼女は前世でもあなたの妻だったのです。あなたに正神界へ戻るよう改心をしてほしくて生まれ変わったそうです。邪神界の者によって人生の半ばで殺される可能性が高かったため、神から何度も生まれ変わるのを止められたそうです。しかしながら、彼女の意思は固くそれでも生まれ変わり、あなたのそばへやってきました。ですが、やはり殺されてしまいました。あなたの改心を快く思っていない邪神界の者たちに」
「してくれなんて頼んでないっ!」
決死の覚悟で生まれてきた人に対して、金に換金するための結婚を繰り返してきた元は大声でわめき散らした。
神父は千恵に敬意を払いながら、容疑者に静かに問いかけた。
「己自身を犠牲にしてでも、相手を想いやる……。そのような方に出会えるのは、奇跡と言っても過言ではありませんよ。彼女の愛を無下にするのですか?」
「勝手に生まれて死んでいったんだろう! 俺は何もしてない!」
未だに自身の前世の行いで事件が起き、人が死んでいっているという事実を受け止められない元だった。
冷静な水色の瞳は哀れな男からはずされることなく、事件の本質を突きつけた。
「あなたが原因で千恵さんは死んだのですよ。あなたは己さえよければ、人を平気で殺すのですか? そちらとまったく変わりませんよ、あなたが今行っていることは」
「え、え……?」
「あなたが罪を償わずに、このまま生き続けるとは、そちらのような意味なのです。自ら手を下さなくても、殺人鬼と変わらないのです」
「俺が人を殺した……?」
精気まで奪われ、衰弱している元は自分の両手を見つめると、血で真っ赤に染まっていた。夢遊病にでもなって、人を殺して、翌朝に気づく。身に覚えのない犯行、そんな気分だった。
今のままではとても償えそうになかったが、事実は事実として、まずは突きつけなければと思い、聖霊師は犯人へ流暢に長々と説明し始めた。
「世見二丁目の交差点で事故が三月二十五日、金曜日から、六回起きていました。そちらの原因は、子供の地縛霊を迎えにきた女性の霊気で起きたものです。そちらの子供はあなたが殺した身籠った女性の胎児で、女性はあなたへ憎しみを持ち邪神界へと下りました。そのため、子供はたったひとり、正神界へと残りましたが、母親が己の手元に置いておきたくて、子供を邪神界へと連れていったのです。そちらため、無実の子供は自身の意思に関係なく悪に魂を売り飛ばすこととなったのです。しかしながら、どのような境遇であったとしても、正神界へ戻ってきた時、三歳の身で地獄へと落ちるのです。何の罪もない子供まで、あなたが原因で悪へ下ってしまったのです。そちらでも、あなたは己に責任がないと言うのですか?」
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「弱き者――子供を犠牲にしてまで生きる人生とはどのような意味があるのですか?」
「俺は誰も殺していない! 何を問われる理由があるんだ?」
怒鳴り散らせば、相手が怯えて、撤回するのだろうという甘え。それはここではもう通じないのだ。
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