明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Nightmare/6

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 ――清々しい青空が突如広がった。

 頬をかすめてゆく風は、実りの香りを全身へ惜しげもなく与えてゆく。それに乗るように、横へ流れる川のようにサラサラと、細い糸のようなものが波打っていた。

「ん?」

 正体を確かめようとすると、最初に目へ飛び込んできたのは色だった。

「黒……?」

 まじりっ気のない黒。陽の光を反射して、キラキラと輝く。感触は今までの人生で、よく味わったことがあるもの。

「……髪? 誰のだ?」

 いきなり始まった夢の世界――。

 隣に人の気配がすることに今気づかされた。焦点を鼻先から右へ向け、少し遅れて顔をそっちへやると、そこには、長い髪を高く結い上げた男が立っていた。

 窓の外を見つめている瞳は瑠璃紺色。聡明という言葉に尽きる。眉は凛々しいのに、穏やかな春の日差しみたいな柔らかさを持っていた。

「誰かに何かが似てる……」

 この雰囲気はどこかで――涼介は直感した。毎日顔を合わせている主人の、あの猛吹雪を感じさせるようなクールさと同じ。

 いや違う。あれを勝るほどの永遠に溶けることのない氷河期みたいな冷酷さ。それなのに、

「ふふっ」

 もらす笑い声は春風みたいに柔らかで、氷河期と思ったのは、錯覚だったとすぐに否定の一途をたどった。

 整った顔立ち――天国から降臨してきたような神秘的な人物。しかし、頭の上に光る輪っかはなく、背中に立派な翼もない。自分と同じ人間。

 だと思ったが、涼介は威圧感を抱いて、視線を上げた。

「背でかいな……」

 九十五センチもあり、ガタイのいい自分。そうそう大きい男に会ったことはないが、二メートルは絶対に越しているだろうという背丈の男が、ふんわり微笑んでいる。

 白いローブに身を包み、主人のそばを通ると、いつも香ってくる魔除のローズマリーの匂いが漂っていた。

「It looks like this」

 男が不意に手を上げると、ラピスラズリの瑠璃色をはめ込んだ、金の腕輪が同じ色の髪飾りを指先で弄んだ。

 涼介は今言われた言語の前にただ立ち尽くした。

「何て言ったんだ?」

 男は気にした様子もなく、開いている窓枠に両肘を乗せて、景色を楽しんでいるようだった。

「So beautiful……」
「何をしてるんだ?」

 涼介はつられて、外の景色を眺める。とてもいい天気で、三沢岳の紅葉が望めた。

「I wanna come once. Why does my mind get rested?」

 聡明な瑠璃紺色の瞳は少しだけ陰ったように思えたが、春風みたいに微笑んで、

「God bless us? Do you think so?」

 可愛く小首を傾げて、涼介の瞳をじっとのぞき込むようにした。涼介は何とかひとつ訳せた。

「神さまが何だ?」

 戸惑っている涼介を置いて、誰が聞いても好青年で間違いないという声色で、男は流暢に話してゆく。

「Are you such a person?」
「今度は何て言った?」

 黒の長い髪を指先でつまんで、すいてゆくようにツーと伸ばしては、短いものから、男の胸元へさらさらと落ちてゆく。

「Wadaya do if I do this?」

 今は秋だというのに、春風が吹いたようにふんわり微笑んで、男は嬉しそうに言った。

「Translation!」

 何が何だかわからないが、涼介の勘が異変を感じ取った。男は真っ直ぐ立ち上がって、目を潤ませ、白いローブが妖しく近づいてきた。

「I'll excite your hair ’n’ skin smell sweet」

 不思議なことが起きた。さっきまで、まったく意味のわからなかった涼介だったが、

「俺の髪と肌がいい匂いがする……?」

 きちんと理解していた。しかし、相手の言動に違和感を強く持つ。
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