明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

文字の大きさ
724 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Time of judgement/20

しおりを挟む
 天使同士の決闘がひと段落したところで、ラジュのおどけが声が割って入ってきた。

「そこまでにしましょうか~? ダルレシアンのセリフみたいですよ~」

 意見交換をしていた崇剛とダルレシアンに天使たちの視線が注がれた。

「力は加減はしてある。心配しないで」
「そうですか」

 和解はできた。優雅に微笑んだ崇剛の隣で、魔導師は後ろ手にして、体でCの字を作るように、可愛らしく傾けた。

「ん~? また試しちゃった~」

 策略だったと言われて、崇剛は怒るでもなく驚くでもなく、意味ありげに微笑んだ。

「最初にわざと説明せずに、私の反応を見たのですね?」

 会話の順番がおかしかった。わざと罠に乗ってみせた。怒っている振りというカモフラージュをして。

 罠の仕掛け合い――至福の時、策略家にとっては。

 ダルレシアンは春風が吹いたようにふんわりと笑う。

「ふふっ、そう」
「あなたという人は、おかしな人ですね」

 崇剛は手のひらを空を向けて、顔の位置と同じ高さまで持ち上げ、優雅に降参のポーズを取った。この男の中は全て数字でできている。人との距離感も感情も何もかもが明確。

「そうかも?」

 悪戯少年みたいに、認めもせず否定もせず、ダルレシアンは言ってのけた。通常ならば種明かししない。崇剛との距離感という感情の数値がある一定にまで上がったから、逆に教えてしまったほうが関係は良好になると、ダルレシアンは踏んだのだ。

 なごんでいる人間ふたりの耳に、凛とした澄んだ女性的な声が注意を呼びかけた。

「おや? このままでは消滅しますよ~、ふたりとも~」

 崇剛の細く神経質な右手が細身の白いズボンのポケットに当てられ、千里眼の持ち主は慌てることなく、迫ってきた数字の羅列を読み取り、

(51712……。十七時十七分十二秒。Stopの魔法をかけてから、あと五秒で、五分経ってしまう……)

 崇剛が残り時間を告げようとしている隣で、ダルレシアンは癖で自分の爪をじっと見つめて、春風まじりの好青年の声を響かせた。

「あと五秒」

 優雅な聖霊師は見抜いた――。ダルレシアンの癖が何を意味しているのか、可能性から導き出して、彼のエレガントな笑みはより一層深くなった。

「えぇ……二、一。召喚魔法が解けるまで、残り一分四十秒」

 遊線が螺旋を描きながらも、芯のある優雅な声がカウントダウンを終えると、すべたが正常に動き出した。

 ドガーンッ!

 敵の軍勢に次々に打ち込まれる砲弾。魂が消滅しているように見えるが、ギリギリいっぱいの攻撃で倒れ、天使たちが手際よく大忙しで魂を浄化し始めた。

 陣地へ一旦戻ってきた中心となる天使たち六人。

 合気の達人であるカミエと宗教バカはすぐさま、敵の戦場真っ只中へ瞬間移動し、白い袴と修験者の服で、ふんだんに使われるそれぞれの技を繰り出す姿は、聖なるもので美しく動き続けていた。

 それとは反対に、高みの見物と決め込んでいる、金髪天使はニコニコ微笑みながら、土偶と逢瀬おうせを重ねている遺跡バカの名を呼んだ。

「クリュダ?」

 声色は澄んではいたが、その裏にはブラックホールも真っ青な腹黒さが潜んでいた。

 愛しの恋人――土偶から、クリュダは顔を上げて、優しさで満ちあふれた蒼色の瞳は、邪悪と言っても過言ではないサファイアブルーのそれに向けられ、

「はい、何でしょう?」

 ラジュとクリュダの間に立っているシズキは、白いロングブーツをクロスさせながら、腕組みをしていた。コートと銀色の長い髪を風になびかせながら、これから何が起きるのか容易に想像ができた。

 どうやって超不機嫌になってしまう顔で、スミレ色の瞳は左のラジュ、右のクリュダに向けるを繰り返し始める。

 シズキの予想を裏切らず、ラジュの綺麗な唇からはこんな言葉が出てきた。

「実は、もうひとつとっておきの情報があるのです」
「どのようなものですか?」
「あの幻の化石――ガステガの全身が綺麗に残っているものが、敵の中央あたりの地面に埋まっているそうです~」
「本当ですかっ!?」

 クリュダが目の色を変えている隣で、シズキは人差し指にしているアーマーリングの尖った先で、自分のあごをすうっとなぞる。

(貴様らの会話にバリエーションという言葉はないのか?)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...