明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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心霊探偵はエレガントに〜karma〜

刑事は探偵に告げる/6

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 主人の想いが通じたのか。執事はすぐ隣へ片膝をつく。

「あぁ、わかった」

 夢の中で自分を押し倒した男――強烈な印象は消えないが、執事としては主人の命令に従うしかなかった。

 ダルレシアンは崇剛の細い腕から、男らしい涼介のそれへ慎重に渡された。

「それから、医者を呼んでください」

 半年近くも拘束されたままで、何の怪我も負っていないとは考えにくい。見えない部分で何か異常があるかもしれない。

 旧聖堂で人がひとり倒れている。勘の鋭い涼介はピンときた。主人はまた、幽霊と戦闘したのだと。それを注意しても、またはぐらかされるだけだ。

 二百二センチもある長身のダルレシアンを、涼介は軽々とお姫様抱っこし、心配そうな顔を主人へ向けた。

「わかった。崇剛は?」
「私はもう少しこちらにいますよ」

 もう日が沈んでしまった旧聖堂の闇の中で、優雅な声がうごめいた。

「そうか」

 残るのは主人の勝手だが、執事は一言忠告した。

「お前まで倒れるなよ。俺の体はひとつしかないんだから運べないからな」

 そう言い残すと、ダルレシアンが壊れた木の扉にぶつからないように、執事は慎重に通り抜け、雑木林の中を足早に歩き出した。

 洗いざらしのシャツとホワイトジーンズが放置と忘却の彼方という名がふさわしい旧聖堂から離れていきながら、

「どうなってるんだ? ラハイアット家って、確か遠い外国――」

 新聞を記事を賑わせている教祖が、自分の腕の中にいるとはつゆ知らず、涼介は何が起きているのか考えようとするが、どこかがズレているような気がした。

 急いでいる純粋なベビーブルーの瞳は振動で揺れていたが、かちゃかちゃと金属が歪む音がこっちへ近づいてきた。

「ん?」

 ベルダージュ荘のほうから背の高い男がやってくる。その人のトレードマークであるカウボーイハットを走っている風圧で飛ばされないように、太いシルバリングをしている手で押さえていた。

 ジーパンの長い足が整えられていない、木々の合間の獣道けものみちみたいなところを次々に踏みしめていたが、黒いアーミーブーツを見つけると、意思の強い鋭いブルーグレーの眼光は上げられ、ガサツな声がにわかに珍客として響き渡った。

「涼介っ!」

 兄貴肌の男らしい顔を涼介は見つけ、少し驚いた。

「え……? 国立さん、どうして――」

 心霊刑事は洗いざらしのシャツの肩を強くつかんで、先を言わせなかった。いつも笑いを取るくらい余裕のある国立だったが、珍しく真剣な顔をしていた。

「崇剛っ、崇剛、どこ行きやがった?」

 らしくない国立。行き先を止められた涼介は両肩を強く揺すぶられる。国立のほうが二センチ背は高かったが、旧聖堂へと続く林の道は上り坂。降りてきた涼介のほうが今は頭の位置が幾分高かった。

「崇剛なら、旧聖堂にいますけど……」

 国立は涼介の肩を強く握ったまま、背後に広がるうっそうとした雑木林に、鋭い眼光をやったが、きたこともない場所で何も見えない。

「どこだ?」

 涼介は首だけを後ろへやって、

「ここを真っ直ぐ奥に行ったところです」
「そうか」

 居場所が知れてほっとするのも束の間。

 国立の男らしい大きな手は涼介の肩から滑るように落ちて、ウェスタンブーツのスパーのかちゃかちゃという音と、チェーンの長さの違うペンダントヘッドがすれ合う金属音をさせながら、あっという間に遠ざかっていった。

 長い髪のせいで、お姫様抱っこしているようなラフな格好をした王子みたいになっている涼介は、今きた道を振り返り首を傾げる。

「ん? 変だな? だって、倒れたのは……ダ、ダル……長くて覚えられない」感覚的な執事の思考回路で、話の流れが脱線しそうになったが、何とか持ち直して、「こいつだけだろう? どうして、国立さんもきたんだ? 何があるんだ? これから……?」

 木々の向こうに隠れている旧聖堂の蔓に拘束された壁を思い浮かべていたが、涼介はさっぱりだった。

「わからないな。まぁ、とにかく、こいつを運んで医者を呼ばないと……」

 主人の命令は絶対だ。執事は正面を向いて、坂道をベルダージュ荘を目指してくだり出した。
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