明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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Dual nature

王子、姫が参りました/3

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 あの妙におかしい放課後の訪問。月はきちんとハンカチで口元を拭いた。

「おや~? 気づいていなかったんですか~?」
「知ってたの?」

 月の部屋で、瑠璃紺色の瞳とヴァイオレットの瞳が真摯に交わっていた間に何が本当は起きていたのかが、頭のいいふたりから一日遅れで教えられる。

「えぇ、ですから、彼女に怪しまれない程度の間を置いて、僕が口にする回数の多い言葉を言ったんです~」
「そう。変な間もボクへの調べてもいいっていう許可の合図。そのあと、月は『どのような冗談ですか~?』って聞いたでしょ?」
「そうだったっけ?」

 いちいちそんな細かいことは覚えていないのである。このデジタル仕様のふたりではないのだから。

 月が知られなければよいと心配していた相手は、蓮香。
 孔明が月のいるところで話さない方がいいと警戒したのも、蓮香。だったのだ。

 おにぎりのフィルムを指先で開けて、月は上品に小さくかじる。

「僕自身で追い出そうとしましたが、彼女にその都度意識を沈められてしまって、できませんでした」

 善意でしていると思い込んでいる人間。自分を排除しようとする他の者を阻止するのは当然だった。ヴァイオレットの瞳が珍しくまぶたから姿を表し、月は遠くの空を眺める。

「誰かに頼るしかなかった。ですから、僕の信頼の置ける人にお願いしたんです」

 閉じ込められた二重人格Dual natureという牢獄の中で、隙があればと機会をうかがってきた日々だった。

 冷めたハンバーガーもそれなりにおいしい颯茄は一口かじって、笑顔を月に見せる。

「昨日はよく眠れた?」

 マゼンダ色の長い髪は空の青さの中で冴え渡り、苦痛から解放されたニコニコの笑みで、月は凜とした澄んだ声を鈴音のようにシャンと鳴らした。

「えぇ、もう三年ぶりです~」

 負の連鎖を生み出す歯車はもう破壊されたのだ。この先の高校生活は平和でどこまでも明るく、三人で過ごしていける。

 そんな期待を胸に、颯茄は夏の風に吹かれていたが、孔明がズーズーっと紙パックの飲み物をすすり、

「ボクは今日でお別れだよ」
「えぇっ!? まだ転校してきたばかりなのに?」

 颯茄はびっくりして、ハンバーガーをコンクリートの上に落としそうになった。月は特に気にした様子もなく、ペットボトルのお茶を飲む。

「専門の学校で、神主の修業に励んでください~」
「あぁ、そうか。神職って学科違うんだね」

 みんなやるべきことは違う。孔明は魔導師として、蓮香を止めるために転校してきたのだ。もうその役目は終わったのだ。あの田舎町の神社を掃除する日々へまた戻る。

 孔明は横に倒していた膝を両腕で抱えて、前後に照れたようにゆらゆらと揺れる。

「でも、ボク心残りなことがあるだよなぁ~」

 颯茄と月の言葉が重なった。

「何?」
「何ですか~?」

 聡明な瑠璃紺色の瞳は、自分の左脇にさっきから伸びしていた影を見下ろした。

「知礼ちゃん、そこにいるでしょ?」
「えぇっ!?」

 影が大きく飛び上がった。入ってくればいいものの、物陰でうかがっていた後輩――知礼のとぼけた顔がのぞき込んだ。

「どうしてわかったんですか?」

 まさか最後まで見守られていると知らない颯茄は驚いた顔をした。

「何してるの?」
「おや~?」

 眠らされていた月は初めて会う女子生徒だったが、彼は動じるタイプではなく、ニコニコとして出迎える。

 神主見習い魔導師の観察力は素晴らしく、昨日の放課後は別の角度から見るとこうなっていた。

「ボクと颯ちゃんを後ろから追いかけてくるキミの姿が、廊下の窓に映ってた」
「あぁ、バレバレでしたか」

 知礼は気まずそうに、先輩たち三人の真正面にそっと腰を下ろした。孔明はズボンのポケットに手を入れて、携帯電話を知礼に差し出す。

「ボクにメールして~?」
「先輩、私にも春がきました!」

 後輩の叫び声に近い歓喜が響き渡り、颯茄、月、孔明の笑い声がそれぞれ跳ねて、

「あはははっ!」
「うふふふっ」
「ふふっ」

 四人は晴れ渡る夏空を見上げ、不意に吹いてきた風に髪を揺らす。この先も続いてゆく数々の未来を想像しながら。

 そして、画面はすうっと暗くなり、

 =CAST=

 漆橋 月・藍花 蓮香/月命
 安芸 孔明/孔明
 花水木 颯茄/颯茄
 美波 知礼/知礼

 白字も全て消え去った。fin――――
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