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5章
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叶太の部屋に上がると、青はすぐに本棚へと手は伸ばさなかった。
「なんかほしいもんある?」
と聞いきてくれたので、叶太は正直に、
「ポカリとウイダーインゼリー、あとコンソメパンチとセブンのブリトー、あとファミチキと爽のバニラが食いたい」
と指折り数えながら答えた。
「はあ? 却下」
「オレ病人だぞ。そっちがほしいものあるか聞いてきたくせに、それでも男かよ!」
「それだけ食欲あるくせに病人名乗ってんじゃねえ。せめて一つのコンビニで完結させろ」
「え~」
ほしいものリストの取捨選択に悩んでいるうちに、青は「とりあえず適当に買ってくる」と言い残し、スクールバッグから財布を取り出して部屋から出て行った。
青が帰ってきたのは、それから十五分後のこと。叶太の家からコンビニまでを自転車で行き来したらしく、あっという間にコンビニ袋を片手に戻ってきた。
「アイスは溶けかかってたから冷凍庫に入れてきた。あとは面倒だから全部持ってきた」
そう言いながら部屋に入ってくると、青はベッドの上に寝転んでいた叶太にコンビニ袋を差し出した。
「サンキュ。今月のバイト代入ったら返すわ」
「ん」
青もベッドに腰を落とし、ファンタグレープの蓋を開けてゴクゴクと飲み始めた。ビー玉のように盛り上がった喉仏が上下に動く。その横を汗が流れている。
学校一のモテ男をパシリみたいにしてしまった罪悪感に駆られる。だが買ってきてもらったコンビニ袋の中身を見た瞬間、どうでもよくなった。
「おっ。ブリトーとファミチキ、どっちもあるじゃん」
「コンビニのハシゴとか初だわ。まじクソ暑かった……」
青は屍のように言うと、ペットボトルの蓋をきゅっと閉めた。
「悪い悪い。なんかおまえの顔見てたら腹減ってきてさぁ」
ポカリとファミチキの袋をコンビニ袋から取り出す。肉汁を口の端に溢れさせながらかぶりつく。
青の視線を感じ、「なによ?」と尋ねた。
「いや、北村に頼らなかったのかなって」
んぐっ、と飲み込みかけのチキンが喉に詰まりそうになる。まさかここで北村の話になるとは思わなかった。
「北村なら、一つ返事でローソンまで行ってたぞ」
「ローソンは今回頼んでないし……」
「それぐらい、あいつはおまえのためなら文句も言わずに動くんじゃねーのってことだよ」
青の言いたいことはわかる。事実、北村とのラインではほしいものがあったら遠慮なく言ってくださいと、持っていきますと言われている。だが、その気遣いに自分は乗ることができなかった。
北村に頼まなかった理由や気持ちをなんとなく言語化できなくて、叶太は咄嗟に言った。
「来てくれたときに風邪うつしたら悪いじゃん。それに……遊園地行けなくなっちゃったし」
「仕方ないだろ。つーか、オレにはうつしてもいいのかよ」
たしかに自分たちは今、狭い部屋の中でマスクもせず近い距離で喋っている。叶太の言う「うつしたら悪い」が通用しない場所に、青を引き込んだのは自分だ。言い逃れができない。
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