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5章
5-5
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「なんとかは風邪引かないっていうじゃん」
「しね」
「あ、ひどい。病人にしねはなくないっ?」
「黙れ。エセ病人が」
「そんなことねえし! まだしっかりおでこも熱いですぅ」
ほら、と青の手を引き、自分の額に乗せる。外に出ていたから、てっきり手も汗ばんでいるものだとばかり思っていた。けれど額にくっつけた青の手は、思いのほかひんやりしていた。
「あれ、おまえ意外と手冷たいのな。きもちいいー」
「……っ」
「あ、そっか。アイス冷凍庫にしまってきたって言ってたもんな。それで冷たいのか」
「……ちょ、っと」
青のひんやりした手を額から頬へと移動させる。自分の熱が移ったことで、ちょっと温くはなったけど、まだ自分の体温より低いので心地いい。
次は頬から首元に手を持っていこうとして、そこでようやく「おいっ」と手を払われた。青はわずかに顔を歪め、叶太の額や頬を辿った手でぎゅっと拳を握った。
「なにビビってんだよ。童貞か?」
これぐらいの接触はいつもしている。今さら何を恥ずかしがっているんだろう。青は顔を隠すみたいにして、握った拳を口元にやった。
「うるせえ。つーか、こういうのは北村にやってもらえばいいじゃん」
「は? なんのこと?」
「だから……触らせるとか、そういうの」
北村に触られることを想像する。青と接触するぐらいのことなら、普通にできる気がする。でももし北村と付き合うことになったら、手を繋いだりキスをしたりする……ということなのか?
頭を働かせて想像してみるが、恋人いない歴=年齢の自分には、いまいちピンとこない。想像はなんとなくできても、現実味がなかった。
「青がなにを言いたいのかよくわかんないけどさ、さすがに遠慮するじゃん。北村には」
「オレにも遠慮しろや」
「え~、むり~」
久しぶりに青と話して、ちょっとはしゃぎすぎただろうか。軽く頭がくらっとする。
叶太はベッドの上でゴロンと倒れ、青の膝に頭を乗せた。青の硬い太ももに頭を置いたと同時に、何か別の硬い感触が首の後ろに当たった。
背後で主張するもの。同じ男だ。いやでも叶太はそれの正体を察した。
「なんでこのタイミングで?」
さすがに気づかなかった振りはできなかった。むしろ自分なら、気づかれているのに気づかない振りをされるぐらいなら、いっそ堂々と指摘してほしいと願うだろう。
だが青はそうじゃないのか、「うるせえ触れんな」と叶太の頭をぐいっと両手で持ち上げて起こした。自身の下半身を隠すように脚を組んでは、考える人みたいなポーズをとる。
あからさまに動揺している青は珍しかった。目線をけっして叶太に合わせようとしないし、買い出しから戻ってきた直後よりも、顔中に汗が噴き出していた。
「いや、ツッコミたくもなるでしょ。もしかして今日溜まってた?」
「誰がおまえに言うかよ」
「いいじゃん。男同士なんだし。でもまあ……」
男同士だからこそ、男の下半身事情なんて逆にどうでもいいか。
今までわちゃわちゃしていた空気が一変する。自分に溜まっていたことがバレて、よっぽど恥ずかしかったのだろう。青はそれきり黙り込んでしまった。
どうにか話題を変えないと。せっかく久しぶりに青と話せたのに、これではまた青に距離を取られてしまう。何か話題を作らなきゃ。
ふと思いついたのは、青が前に言っていた好きな人のことだ。前回も青の方から振ってきた話題でもある。これなら青もまあまあ乗ってくるかもしれない。
「そういえば例の好きな人とは、今も毎日会えてんの?」
膝に置いた青の人差し指が、ピクッと反応する。
「しね」
「あ、ひどい。病人にしねはなくないっ?」
「黙れ。エセ病人が」
「そんなことねえし! まだしっかりおでこも熱いですぅ」
ほら、と青の手を引き、自分の額に乗せる。外に出ていたから、てっきり手も汗ばんでいるものだとばかり思っていた。けれど額にくっつけた青の手は、思いのほかひんやりしていた。
「あれ、おまえ意外と手冷たいのな。きもちいいー」
「……っ」
「あ、そっか。アイス冷凍庫にしまってきたって言ってたもんな。それで冷たいのか」
「……ちょ、っと」
青のひんやりした手を額から頬へと移動させる。自分の熱が移ったことで、ちょっと温くはなったけど、まだ自分の体温より低いので心地いい。
次は頬から首元に手を持っていこうとして、そこでようやく「おいっ」と手を払われた。青はわずかに顔を歪め、叶太の額や頬を辿った手でぎゅっと拳を握った。
「なにビビってんだよ。童貞か?」
これぐらいの接触はいつもしている。今さら何を恥ずかしがっているんだろう。青は顔を隠すみたいにして、握った拳を口元にやった。
「うるせえ。つーか、こういうのは北村にやってもらえばいいじゃん」
「は? なんのこと?」
「だから……触らせるとか、そういうの」
北村に触られることを想像する。青と接触するぐらいのことなら、普通にできる気がする。でももし北村と付き合うことになったら、手を繋いだりキスをしたりする……ということなのか?
頭を働かせて想像してみるが、恋人いない歴=年齢の自分には、いまいちピンとこない。想像はなんとなくできても、現実味がなかった。
「青がなにを言いたいのかよくわかんないけどさ、さすがに遠慮するじゃん。北村には」
「オレにも遠慮しろや」
「え~、むり~」
久しぶりに青と話して、ちょっとはしゃぎすぎただろうか。軽く頭がくらっとする。
叶太はベッドの上でゴロンと倒れ、青の膝に頭を乗せた。青の硬い太ももに頭を置いたと同時に、何か別の硬い感触が首の後ろに当たった。
背後で主張するもの。同じ男だ。いやでも叶太はそれの正体を察した。
「なんでこのタイミングで?」
さすがに気づかなかった振りはできなかった。むしろ自分なら、気づかれているのに気づかない振りをされるぐらいなら、いっそ堂々と指摘してほしいと願うだろう。
だが青はそうじゃないのか、「うるせえ触れんな」と叶太の頭をぐいっと両手で持ち上げて起こした。自身の下半身を隠すように脚を組んでは、考える人みたいなポーズをとる。
あからさまに動揺している青は珍しかった。目線をけっして叶太に合わせようとしないし、買い出しから戻ってきた直後よりも、顔中に汗が噴き出していた。
「いや、ツッコミたくもなるでしょ。もしかして今日溜まってた?」
「誰がおまえに言うかよ」
「いいじゃん。男同士なんだし。でもまあ……」
男同士だからこそ、男の下半身事情なんて逆にどうでもいいか。
今までわちゃわちゃしていた空気が一変する。自分に溜まっていたことがバレて、よっぽど恥ずかしかったのだろう。青はそれきり黙り込んでしまった。
どうにか話題を変えないと。せっかく久しぶりに青と話せたのに、これではまた青に距離を取られてしまう。何か話題を作らなきゃ。
ふと思いついたのは、青が前に言っていた好きな人のことだ。前回も青の方から振ってきた話題でもある。これなら青もまあまあ乗ってくるかもしれない。
「そういえば例の好きな人とは、今も毎日会えてんの?」
膝に置いた青の人差し指が、ピクッと反応する。
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