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9章
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しおりを挟むげっ、と喉まで出かかった声を飲み込む。舞子さんにそう言われたら、自分に拒否権はない。叶太は引き攣った笑顔を貼り付け、「は、はーい」と返事した。
舞子さんはせっせとスイカを切り、青にスイカ一切れを乗せた小皿を、叶太には冷蔵庫にあったカットメロンを移した器を持たせてくれた。期せずして青の部屋で二人きりになることが決定する。気まずさから気持ちがずんと沈む。
処刑台に連れていかれる囚人のような心持ちで、叶太は青のあとに続き、階段を上った。
部屋に入るや否や、青は机に近づいた。すぐに食べる気はないようで、机の上にコトンとスイカを乗せた皿を置く。
どう切り出せばいいんだろう。夕方のことを謝った方がいいのだろうか。それともいっそのこと、ふざけて場を和ませた方がよかったりするのかな。
迷っているうちに、叶太の前にいた青が突然、
「詩乃さんとは付き合ってないから」
と言い出した。
不意打ちの説明に、叶太はキョトンとする。「は?」という疑問が口から出る前に、青は続ける。
「傍から見れば、付き合ってるように見えるかもしれないけど」
苦しい言い分に頭が痛くなる。叶太は「いやいやいや」と苛立ち気味に笑った。
「なんだよそれ。意味わかんないんだけど」
「意味わかんないって思われてもしょうがないってわかってる。でもオレは――オレが好きなのは……っ」
青がギュッと拳を握り締める。
「つまり町田が嘘ついてるってこと?」
「それは――」
青は目を下にやる。また黙るつもりなのか。卑怯だと思った。
「町田が嘘言ってるっていうなら、なんでおまえは本当のことを周りに言って撤回しないんだよ」
青が何を言いたいのか理解不能だ。詩乃と付き合っていないというのなら、どうして放課後デートなんてしているんだろう。カップルのように振る舞っているんだろう。
青の真意はどこにあるんだ。同時に青が嘘をついているとも思えなかった。これは幼なじみの勘といってもいい。だって青は嫌なことは嫌だとはっきり言うし、好きじゃない相手からの告白はこれまできっぱり断ってきた。
でも幸せそうな詩乃が、嘘をついているようにも見えない。だから厄介なのだ。どれが嘘で、何が本当なのか自分には見極められない。しんどい。
「なんかもう、疲れたわ」
叶太は脱力し、青の横を通って椅子に座った。冷静になって青の弁明に耳を傾ければいいのかもしれない。ていうか、そうした方がいいのだろう。でも青は肝心なところで言いたいことを飲み込むし、自分が知りたいことをちゃんと最後まで教えてくれるかわからない。
考えているうちに、なんだか全部どうでもよくなってくる。フォークに差したメロンを口に運ぶ。こんなときでも食欲があるから不思議だ。
「つーかもうやめない? なんか痴話げんかみたいで、頭ヘンになってくるんだけど」
叶太は椅子に座ったまま、脱力気味にヘラッと青に笑いかけた。
そもそも自分たちは男同士で幼なじみだ。いくら自分が青を好きになってしまったからといって、青にとってそこの関係性は変わらないはず。一人で勝手に嫉妬して、感情をぶつけてしまうなんて、青にとってもいい迷惑だろう。
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