【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ

文字の大きさ
46 / 70
9章

9-1

しおりを挟む

***

 夕飯のデザートにスイカを食べていると、母親が半分に切ったスイカを目の前に持ってきた。半玉にもかかわらず炊飯器の内釜ほどの大きさのそれは、側面をアルミホイルに覆われている。

「カナー、それ食べ終わったら、青くんのおうちにこれ持っていって」

 叶太はスイカの種をペッと皿に出す。

「え、そればあちゃんが送ってくれたスイカでしょ」

「そう。でも食べきれないでしょ」

「食うよオレ」

「とか言って、去年も食べきれなかったじゃない」

「でも今回はほんとに」

 しつこいと思ったのか、若干イラッとさせた母親が皿を洗う手を動かしながら言う。

「食べ頃の時期に美味しく食べてもらった方が、おばあちゃんも喜ぶってもんでしょ」

「いや、でも」

「もう舞子さんにあげるって言っちゃったの。いいから渡してきて」

「……ったよ」

 叶太は果汁で汚れた口元をティッシュで拭いた。

 重い腰を上げる。スイカの半玉を両手に抱えながらサンダルを履く。玄関から外に出れば、青の家は道を挟んですぐだ。

 インターホンの前で家を見上げると、青の部屋に電気が点いているのが見えた。今日はバイトじゃないんだな。青の在宅を知り、気分が重くなった。

 ファストフード店で青と言い合いをしたのは今日の夕方。ほとぼりが冷めるには、まだ時間が足りなかった。

 今日はもう青と顔を合わせたくなかった。家が近所かつ母親同士の仲がいいと、そういうわけにもいかないからつらい。

 叶太は「はあ」と肩でため息をこぼした。舞子さんにスイカを渡したら、すぐに帰ろう。えいっとインターホンを押したあと、家人が出てくるのを門扉の前で待つ。

 玄関ドアはすぐに開いた。出てきた人を見てホッとした。青のお母さんである舞子さんだったからだ。

「カナくん夜遅くにごめんね~」

 サンダルを鳴らしてドアから出ると、舞子さんは門扉に歩み寄ってきた。少し垂れ下がった涼しげな目尻と、スラッと流れる鼻筋は青とそっくりだ。

「わ~大きなスイカ! ありがと――……って、やっぱり重いわね」

 スイカを渡した瞬間、舞子さんは腰を曲げた。華奢な体にずっしりと圧をかけているのか、前屈みになる舞子さんを見ると手を貸さずにはいられなかった。

「すいません、重かったですよね。家の中まで運びます」

「あら、じゃあお願いしてもいい?」

「もちろんです!」

 再び叶太の手に戻ってきたスイカを抱えて、玄関とリビングを通ってキッチンまで運ぶ。子どもの頃から幾度となく遊びにきた場所だ。家の間取りは頭に入っている。迷うことなくたどり着いたキッチンカウンターの上に、スイカを置いた。

「カナくんありがとね。今青も呼んでくるから、よかったらスイカ一緒に食べていかない?」

 早速スイカを切るつもりなのか、舞子さんはカウンター下の収納スペースから包丁と木製のまな板を出した。

「ありがとうございます。でもオレ、さっきちょうど家で食べてきたばかりで」

「あ、そうだったのね。じゃあお中元でいただいたジュースがあるから、それ持っていってよ」

 舞子さんはちょっと待ってね、と階段下のパントリーを開ける。その上から足音がしたのはそのときだ。

 ふと見上げると、吹き抜けの階段を青が降りてくるのが見えた。がっちりと目が合ってしまい、叶太はわざとらしくサッと逸らす。

「あら、青。千佳子さんからスイカをいただいたんだけど、青は今食べるよね?」

 青の足音に気づいたのか、舞子さんはパントリーの引き戸の陰から顔を出した。

 青はこちらをちらっと見てから、「叶太は?」と母親経由で尋ねる。

「カナくんはおうちで食べたんだって。今ジュース持っていってもらおうと思って用意してるんだけど――」

 他にも叶太の母親に渡したいものがあるらしく、舞子さんは「ごめんね、もうちょっと時間かかるから、青の部屋で待っててもらえる?」と気のいい笑顔を向けた。

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた

谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。 就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。 お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中! 液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。 完結しました *・゚ 2025.5.10 少し修正しました。

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

処理中です...