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番外編~受験生のオレと、遠慮がちな幼なじみの初デートの話~
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「うん。オレは叶太と毎日でもデートしたいよ」
青は大真面目に言い切る。青ってこんなやつだったっけ? もっとクールで、感情を表に出さないタイプだった気がする。
以前に比べて甘々な言動が格段に増えた男。戸惑うこともあるけれど、これは自分だけにしか見せない顔なんだよな。そう思うと地味に……いや、かなり嬉しいかもしれない。これじゃ青にツッコむこともできないなと思った。
叶太はまた緩みそうになる頬にキュッと力を入れた。
「と、とにかく今日はおまえの予定が空いててよかったよ」
青は「当たり前だろ」と言いながら、叶太の手と太ももの間に自身の手を滑らせた。指の合間に自身の指を入れ、恋人繋ぎで握りしめる。バスの振動が、お互いの指の隙間を埋めるように揺れる。
初めてじゃないのに、青と手を繋ぐときはいつも胸がドキドキする。子どものときに繋いだとき、付き合う前に花火大会で手を繋いだとき、そして今。どれも同じ手なのに、どこか違うと感じるのはどうしてだろう。
青は叶太の肩にコテンと頭を乗せた。自分より背が高いのに、首が痛くないのかな。叶太の心配をよそに、青の表情はずいぶんと穏やかだ。
「オレの予定なんて、叶太は気にしなくていいの。どうせ予定なんてねえし、オレが叶太に合わせるから」
「めっちゃ尽くすじゃん」
ははっと軽く笑えば、青は「叶太にだけな」とこちらの肩の上で、猫のように頭をスリスリさせた。
やがてバスが緑地公園に到着する。さりげなく手を繋いだままバスを降り、叶太たちはカフェやパン屋などが建ち並ぶ飲食店エリアに向かった。
やはり青の目当てはそのエリアにある店だったようで、木でできた看板の前で立ち止まると「ここ」と叶太の手を優しく引いた。
そこは隠れ家カフェで、表からは店の外観が見えない。看板の横にある森の小道を入ってすぐの場所にあった。青も初めて入る店らしく、ちょっと緊張しているみたいだ。店内に入ると、出迎えてくれた女性の店員に「二人です」と硬い声で伝えた。
靴を脱ぎ、古民家風の店内の奥に進むと、半個室に仕切られたテーブルに案内された。半個室の中を見て、叶太は驚いた。天井から吊るされたハンモックが、並ぶように二本揺れていた。
ハンモックの下にはアフリカンな柄の色鮮やかな絨毯が敷かれ、小窓から緑地公園の自然が見える。足元には小さなストーブも用意されていて、まさにくつろぐための空間が広がっていた。
「すげぇ。オレ、こんなオシャレな店に来るの初めてなんだけど」
ハンモックなんて、昔父親とキャンプに行ったとき以来だ。叶太は早速ハンモックに腰を沈め、ゆらゆらと揺らした。
「もうすぐ受験で気張ってるかなと思ってさ。今日ぐらいゆっくりしてもらいたかった」
青はそう言うと、叶太に続いてハンモックに大股で腰を下ろした。
気遣いが嬉しかった。同時にさっきバスの中でスケベなことを考えていた自分がちょっと恥ずかしい。
「ありがとな。すげえいいじゃん、ここ」
叶太はハンモックに揺られながら、体の力を抜いた。時間の流れがゆっくり感じる。受験のプレッシャーをあまり感じていない方だと思っていたけれど、自分でも気づかないうちに疲労は少しずつ溜まっていたのかもしれない。
ハンモックの上で脱力すると、居心地の良さから眠気がやってきそうだ。
そのあと注文を取りにきた店員にランチセットを頼み、青とちょこちょこ話をしながらゆったりとした時間を過ごした。お昼ご飯を食べ終え、ジンジャーエールを飲んでいるときだった。
青が唐突に「オレも叶太と同じ大学に行く」と言い出した。
青は大真面目に言い切る。青ってこんなやつだったっけ? もっとクールで、感情を表に出さないタイプだった気がする。
以前に比べて甘々な言動が格段に増えた男。戸惑うこともあるけれど、これは自分だけにしか見せない顔なんだよな。そう思うと地味に……いや、かなり嬉しいかもしれない。これじゃ青にツッコむこともできないなと思った。
叶太はまた緩みそうになる頬にキュッと力を入れた。
「と、とにかく今日はおまえの予定が空いててよかったよ」
青は「当たり前だろ」と言いながら、叶太の手と太ももの間に自身の手を滑らせた。指の合間に自身の指を入れ、恋人繋ぎで握りしめる。バスの振動が、お互いの指の隙間を埋めるように揺れる。
初めてじゃないのに、青と手を繋ぐときはいつも胸がドキドキする。子どものときに繋いだとき、付き合う前に花火大会で手を繋いだとき、そして今。どれも同じ手なのに、どこか違うと感じるのはどうしてだろう。
青は叶太の肩にコテンと頭を乗せた。自分より背が高いのに、首が痛くないのかな。叶太の心配をよそに、青の表情はずいぶんと穏やかだ。
「オレの予定なんて、叶太は気にしなくていいの。どうせ予定なんてねえし、オレが叶太に合わせるから」
「めっちゃ尽くすじゃん」
ははっと軽く笑えば、青は「叶太にだけな」とこちらの肩の上で、猫のように頭をスリスリさせた。
やがてバスが緑地公園に到着する。さりげなく手を繋いだままバスを降り、叶太たちはカフェやパン屋などが建ち並ぶ飲食店エリアに向かった。
やはり青の目当てはそのエリアにある店だったようで、木でできた看板の前で立ち止まると「ここ」と叶太の手を優しく引いた。
そこは隠れ家カフェで、表からは店の外観が見えない。看板の横にある森の小道を入ってすぐの場所にあった。青も初めて入る店らしく、ちょっと緊張しているみたいだ。店内に入ると、出迎えてくれた女性の店員に「二人です」と硬い声で伝えた。
靴を脱ぎ、古民家風の店内の奥に進むと、半個室に仕切られたテーブルに案内された。半個室の中を見て、叶太は驚いた。天井から吊るされたハンモックが、並ぶように二本揺れていた。
ハンモックの下にはアフリカンな柄の色鮮やかな絨毯が敷かれ、小窓から緑地公園の自然が見える。足元には小さなストーブも用意されていて、まさにくつろぐための空間が広がっていた。
「すげぇ。オレ、こんなオシャレな店に来るの初めてなんだけど」
ハンモックなんて、昔父親とキャンプに行ったとき以来だ。叶太は早速ハンモックに腰を沈め、ゆらゆらと揺らした。
「もうすぐ受験で気張ってるかなと思ってさ。今日ぐらいゆっくりしてもらいたかった」
青はそう言うと、叶太に続いてハンモックに大股で腰を下ろした。
気遣いが嬉しかった。同時にさっきバスの中でスケベなことを考えていた自分がちょっと恥ずかしい。
「ありがとな。すげえいいじゃん、ここ」
叶太はハンモックに揺られながら、体の力を抜いた。時間の流れがゆっくり感じる。受験のプレッシャーをあまり感じていない方だと思っていたけれど、自分でも気づかないうちに疲労は少しずつ溜まっていたのかもしれない。
ハンモックの上で脱力すると、居心地の良さから眠気がやってきそうだ。
そのあと注文を取りにきた店員にランチセットを頼み、青とちょこちょこ話をしながらゆったりとした時間を過ごした。お昼ご飯を食べ終え、ジンジャーエールを飲んでいるときだった。
青が唐突に「オレも叶太と同じ大学に行く」と言い出した。
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