貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご

文字の大きさ
16 / 18

しおりを挟む
いつまでも泣き続ける夫と思わしき人物に私は意を決して話しかける。
「アンダーソン……いつまでもそうして泣いていても致し方ありませんわ、いい加減に泣き止んで下さい。アレクシスも見ているの、貴方は父親なのよ」
ああ、夫の名前を呼ぶのは何年ぶりだろう。
そんな私の言葉にはっと顔をあげた夫、目はまだ赤かったけれどその顔付きはちゃんと父親の顔付きだった。
一応父親としての自覚はあるらしい。それが分かっただけでも収穫だ。
「……ソフィア…すまなかった」
徐に口を開いた夫はもう何度目か分からない謝罪の言葉を繰り返す。
「…その謝罪は何に対する謝罪ですか?」
「……………」
夫は答えずまた俯いた。
「取り敢えず謝っておけば何とかなるだろうと思っていらっしゃる?そもそも急に謝ろうと思われた理由は?」
「…………」
「もしかして愛人に子供でも出来ましたか?」
「いや!そんな者はいない」
分かっているわ、貴方がそんな人ではない事は。
「では何処かに大金を使った?」
「そんな事も有り得ない!」
ええ、それも分かっています。
「では私達が貴方の仕事に邪魔だからすまない出ていって欲しいと言う事ですか?」
「違う!違う違う違う!」
「では!どういう事なのですか!私とは政略結婚ですし、婚約時代から貴方が私の事を疎ましく思っている事を知っていたから今までなるべく貴方に面倒をかけないように貴方には家族としての役割を求めず貴方はただの同居人だと思ってやって来ました!けれどアレクシスは貴方の子供で、貴方はアレクシスの父親なのよ!」
帰って来るまでは冷静に話をしようと思っていたはずなのに話すうちに感情的になってしまう。これではいけないと思っていても中々言いたい事は止まってくれなかった。
「私は婚約の贈り物は貴方に選んで欲しかった!初夜で領地に置いて帰ってしまったのも嫌だった!出産だって初めてで不安だった!手を握って欲しいとまで思わないけれどそれでも貴方は傍に居てくれると思っていたわ!子供の誕生日にも屋敷にいない!唯一の子供の我儘だって叶えてくれない!そもそも子供が父親と一緒に食事をしたいと言うことの何処が我儘なのよ!私の事は我慢出来たけれどアレクシスの事は別よ!何度でも言うわアレクシスは貴方の子供なの!貴方が嫌だと思っていても貴方と私の子供なの!」
私のあまりの剣幕に夫は逆に少し冷静になったようだった。そんな夫の姿を見て自分のあまりな物言いに後悔しかけたけれど一度自分の口から出た言葉は取り消せないし、今自分が言った事は全て今まで思っていても言えなかった事なのだと思い返し夫の顔を真正面から見つめた。
「…本当にすまない」
夫はまた謝った。そんな夫の態度に今度は私が俯いた。
これだけ言っても夫は何も言ってくれない…夫には私の気持ちは通じない…。
そう諦めかけた私に夫は続けて話し出す。
「君がそんなに思い詰めているとは……本当に今の今まで気づかなかった…本当に私はダメな夫だ」
そう言った夫は私を再び抱き締めた。
「そもそもが間違っているんだ!私達は政略結婚等では無い!私が君に一目惚れしたんだ!」
夫のその言葉は私が思ってもみない言葉だった。

しおりを挟む
感想 239

あなたにおすすめの小説

わたくしは、すでに離婚を告げました。撤回は致しません

絹乃
恋愛
ユリアーナは夫である伯爵のブレフトから、完全に無視されていた。ブレフトの愛人であるメイドからの嫌がらせも、むしろメイドの肩を持つ始末だ。生来のセンスの良さから、ユリアーナには調度品や服の見立ての依頼がひっきりなしに来る。その収入すらも、ブレフトは奪おうとする。ユリアーナの上品さ、審美眼、それらが何よりも価値あるものだと愚かなブレフトは気づかない。伯爵家という檻に閉じ込められたユリアーナを救ったのは、幼なじみのレオンだった。ユリアーナに離婚を告げられたブレフトは、ようやく妻が素晴らしい女性であったと気づく。けれど、もう遅かった。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。 しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。 オリバーはエミリアを愛していない。 それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。 子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。 それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。 オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。 一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

【完結】役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

処理中です...