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「アレクシス……そろそろ帰りましょうか」
「……はい!」
アレクシスは少し残念そうにしていたものの笑顔で頷いてくれた。
その帰りの馬車でアレクシスは言った。
「本当はこのままお父様とは離れ離れでここでお母様と暮らすのかもしれないと思っていたんです」と、その言葉を聞いて胸が締め付けられるようだった。
元々はそんなつもりでこの領地に来た訳ではなかった、ほんの少し愛されないと実感させられる日常から逃げたかっただけ。
でも領地に来てしまったら、夫と離れてしまったらもうあの夫に捨て置かれるような惨めな自分に戻りたくなくて…………そんな私の気持ちをアレクシスは感じ取っていたのかもしれない。
やはりこのままではダメだと決意を新たに取り敢えず夫には話をする時間をどうにか作って貰わなければいけない。
子供との食事の約束を反故にし、子供の誕生日の休みさえも返上して仕事に向かった夫にそんな時間は無いのかもしれない、そもそも私達と話をするのに仕事よりも意味を見出してくれるのだろうか………。
悩む私の手に暖かな温もり。アレクシスが私の手を握り「大丈夫ですよ」と笑っていた。
その顔を見ていると本当に大丈夫なような気がするから不思議だ。
「そうね、大丈夫ね」
そう言ってアレクシスに微笑んだ。
そうよ、夫がこの期に及んでまでも家族と話をする時間さえ作らないような人なら離縁すればいいだけの事。兎に角それまでは城に押しかけてでも夫を連れ帰ってみせるわ!
と、そう意気込んでいた馬車の中での私はこの後屋敷に着いて驚く事となる。
何故ならば普段いないはずの夫が屋敷にいてしかも私達が馬車から降りるのを見た途端こちらへ駆け出して来て私達を抱き締めたのだから。
ぐすっぐすっ
「あなた、いい加減泣き止んで下さい」
私は夢を見ているのかもしれない、本当に目の前の男は今まで私達を蔑ろにしていた夫なのだろうか。
私達が馬車から降りた途端、メルが警戒する程の勢いでこちらに向かって来たかと思えばリチャードが本当に旦那様ですかと疑うほどに私達を抱きしめながら泣きじゃくっている、もう何度目かしれない「すまなかった!」を繰り返すこの男は。
「お父様、苦しいです…離して下さい」
ああ、きっとアレクシスがお父様と言っているのだからこの男は夫なのねと未だこの光景についていけない私は遠くを見ながら「取り敢えず今すぐ離して下さい」と言うのが精一杯だった。
それから何とか夫らしき男を引き剥がしやっと屋敷の中へ。
そして今私達はダイニングのテーブルを挟み向かいあっている。
「取り敢えず……一ヶ月もの間屋敷を空けました事、お詫び申し上げます」
私がそう言うとやっと泣き止んだ夫らしき人物は「もう、二人がこのまま帰って来ないんじゃないかと思った」
と言って再び咽び泣いた。
「……はい!」
アレクシスは少し残念そうにしていたものの笑顔で頷いてくれた。
その帰りの馬車でアレクシスは言った。
「本当はこのままお父様とは離れ離れでここでお母様と暮らすのかもしれないと思っていたんです」と、その言葉を聞いて胸が締め付けられるようだった。
元々はそんなつもりでこの領地に来た訳ではなかった、ほんの少し愛されないと実感させられる日常から逃げたかっただけ。
でも領地に来てしまったら、夫と離れてしまったらもうあの夫に捨て置かれるような惨めな自分に戻りたくなくて…………そんな私の気持ちをアレクシスは感じ取っていたのかもしれない。
やはりこのままではダメだと決意を新たに取り敢えず夫には話をする時間をどうにか作って貰わなければいけない。
子供との食事の約束を反故にし、子供の誕生日の休みさえも返上して仕事に向かった夫にそんな時間は無いのかもしれない、そもそも私達と話をするのに仕事よりも意味を見出してくれるのだろうか………。
悩む私の手に暖かな温もり。アレクシスが私の手を握り「大丈夫ですよ」と笑っていた。
その顔を見ていると本当に大丈夫なような気がするから不思議だ。
「そうね、大丈夫ね」
そう言ってアレクシスに微笑んだ。
そうよ、夫がこの期に及んでまでも家族と話をする時間さえ作らないような人なら離縁すればいいだけの事。兎に角それまでは城に押しかけてでも夫を連れ帰ってみせるわ!
と、そう意気込んでいた馬車の中での私はこの後屋敷に着いて驚く事となる。
何故ならば普段いないはずの夫が屋敷にいてしかも私達が馬車から降りるのを見た途端こちらへ駆け出して来て私達を抱き締めたのだから。
ぐすっぐすっ
「あなた、いい加減泣き止んで下さい」
私は夢を見ているのかもしれない、本当に目の前の男は今まで私達を蔑ろにしていた夫なのだろうか。
私達が馬車から降りた途端、メルが警戒する程の勢いでこちらに向かって来たかと思えばリチャードが本当に旦那様ですかと疑うほどに私達を抱きしめながら泣きじゃくっている、もう何度目かしれない「すまなかった!」を繰り返すこの男は。
「お父様、苦しいです…離して下さい」
ああ、きっとアレクシスがお父様と言っているのだからこの男は夫なのねと未だこの光景についていけない私は遠くを見ながら「取り敢えず今すぐ離して下さい」と言うのが精一杯だった。
それから何とか夫らしき男を引き剥がしやっと屋敷の中へ。
そして今私達はダイニングのテーブルを挟み向かいあっている。
「取り敢えず……一ヶ月もの間屋敷を空けました事、お詫び申し上げます」
私がそう言うとやっと泣き止んだ夫らしき人物は「もう、二人がこのまま帰って来ないんじゃないかと思った」
と言って再び咽び泣いた。
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