27 / 61
第二十七話 水曜日 夕の刻 〜タイミングが全て悪い!
しおりを挟む
なんと冴鬼が宿題をおえたのは16時にせまるころ……
がっくりとうなだれちゃうけど、津宮先生がひどいんだ!
宿題では『3回書き写し』だったのに、冴鬼には『5回書き写し』を命じていた。
新たに書きなれていない単語を5回も書くとなると、時間がかかってもしかたがない。
「終わったぞぉ!」
「津宮先生のとこに持っていって!」
「おうっ!」
冴鬼が急いで職員室へ行っている間に、ぼくらはすぐに出られるように準備をととのえる。
「図書室よってからだと、ばっちり黄昏刻にハマりそう」
ボヤいたのは橘だ。
きっと冴鬼は提出だけではなく、お小言ももらってくるだろうから、その分、時間はよけいにかかる。
「でも図書室行かないで向かうわけにもねぇ」
机を並べなおしながら、冴鬼を待つこと20分───
「凌くん、迎えにいったほうがよくない?」
「そうだね」
廊下をきゅるりと鳴らして現れたのは冴鬼だ。
「よし! 行くぞっ!」
カバンをひっつかむと、図書室へと走っていく。
ぼくらはそれをおいかけるけど、本当に早い。
半開きになった図書室の戸をあけ進むと、銀水先生が他の生徒と話し込んでいる。
どうも図書委員の集まりがあったようで、そのお話のようだ。
「これは待つしかないかな……」
……とはいうものの、銀水先生もソワソワしている。
だけど、生徒をムシするわけにもいかず、ぼくらの方をチラチラうかがいながらタイミングを図っている。
……とはいえ、ここでもう30分をまわりそうとなったとき、
「我慢できんっ」
冴鬼が立ち上がった。
「凌に蜜花よ、参ろうぞっ!」
ぼくらはひき止めるけど、冴鬼の目はまっすぐ祠にむいている。
「今日、呪いをとくのだろ?」
「確かにそうだけど……」
「危険な時刻に敵地にいくのはまずい。もう今しかないっ」
ここから向かうのにも時間はかかる。
たしかに、ギリギリの時間なのはわかる!
でも……
「わかった。行こう、凌くん」
「え、橘も!? でもさ、どうするつもり?」
「行けばどうにかなるでしょ!」
「その確信はどこから……?」
橘は冴鬼をみた。
案があるんでしょ? と視線がうったえている。
「もちろん!」
冴鬼が仁王立ちでぼくをみると、ふふんと胸をはった。
「フジがな、その祠を徹底的に壊せばいいかも、といっておってな。祠から呪いが出入りしているだろうから、それを壊せば新と百合花の呪いは消えるはずだ。それによって、呪いを実行した人間にだ呪いが返る。そうなれば、こっちのものよ」
「どういうこと?」
「呪いをといて助けてやる! とでもいってやれば、自ずとでてくるだろう?」
……とても合理的な考え方だ。
「でもさ、でもさ、銀水先生も『そうは問屋が卸さない』っていってたじゃん」
「……だが、二人の呪いを早くとかねばならん。わしが今祓っているのは上っ面だ。どんどん呪いは濃くなるぞ」
呪いが濃くなる……
冴鬼がしているのは、ズボンについた泥をはたいて飛ばしたようなもの。汚れは落ちていないんだ……
「わかった。行こう」
立ち上がったぼくらに、銀水先生は何かいおうとしているけれど、その声は僕らには届かない。
なぜならぼくらはもう頭のなかは、呪いをとくことでいっぱいだったから。
がっくりとうなだれちゃうけど、津宮先生がひどいんだ!
宿題では『3回書き写し』だったのに、冴鬼には『5回書き写し』を命じていた。
新たに書きなれていない単語を5回も書くとなると、時間がかかってもしかたがない。
「終わったぞぉ!」
「津宮先生のとこに持っていって!」
「おうっ!」
冴鬼が急いで職員室へ行っている間に、ぼくらはすぐに出られるように準備をととのえる。
「図書室よってからだと、ばっちり黄昏刻にハマりそう」
ボヤいたのは橘だ。
きっと冴鬼は提出だけではなく、お小言ももらってくるだろうから、その分、時間はよけいにかかる。
「でも図書室行かないで向かうわけにもねぇ」
机を並べなおしながら、冴鬼を待つこと20分───
「凌くん、迎えにいったほうがよくない?」
「そうだね」
廊下をきゅるりと鳴らして現れたのは冴鬼だ。
「よし! 行くぞっ!」
カバンをひっつかむと、図書室へと走っていく。
ぼくらはそれをおいかけるけど、本当に早い。
半開きになった図書室の戸をあけ進むと、銀水先生が他の生徒と話し込んでいる。
どうも図書委員の集まりがあったようで、そのお話のようだ。
「これは待つしかないかな……」
……とはいうものの、銀水先生もソワソワしている。
だけど、生徒をムシするわけにもいかず、ぼくらの方をチラチラうかがいながらタイミングを図っている。
……とはいえ、ここでもう30分をまわりそうとなったとき、
「我慢できんっ」
冴鬼が立ち上がった。
「凌に蜜花よ、参ろうぞっ!」
ぼくらはひき止めるけど、冴鬼の目はまっすぐ祠にむいている。
「今日、呪いをとくのだろ?」
「確かにそうだけど……」
「危険な時刻に敵地にいくのはまずい。もう今しかないっ」
ここから向かうのにも時間はかかる。
たしかに、ギリギリの時間なのはわかる!
でも……
「わかった。行こう、凌くん」
「え、橘も!? でもさ、どうするつもり?」
「行けばどうにかなるでしょ!」
「その確信はどこから……?」
橘は冴鬼をみた。
案があるんでしょ? と視線がうったえている。
「もちろん!」
冴鬼が仁王立ちでぼくをみると、ふふんと胸をはった。
「フジがな、その祠を徹底的に壊せばいいかも、といっておってな。祠から呪いが出入りしているだろうから、それを壊せば新と百合花の呪いは消えるはずだ。それによって、呪いを実行した人間にだ呪いが返る。そうなれば、こっちのものよ」
「どういうこと?」
「呪いをといて助けてやる! とでもいってやれば、自ずとでてくるだろう?」
……とても合理的な考え方だ。
「でもさ、でもさ、銀水先生も『そうは問屋が卸さない』っていってたじゃん」
「……だが、二人の呪いを早くとかねばならん。わしが今祓っているのは上っ面だ。どんどん呪いは濃くなるぞ」
呪いが濃くなる……
冴鬼がしているのは、ズボンについた泥をはたいて飛ばしたようなもの。汚れは落ちていないんだ……
「わかった。行こう」
立ち上がったぼくらに、銀水先生は何かいおうとしているけれど、その声は僕らには届かない。
なぜならぼくらはもう頭のなかは、呪いをとくことでいっぱいだったから。
0
あなたにおすすめの小説
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる