君との空へ【BL要素あり・短編おまけ完結】

Motoki

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碧の癒し

10

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 石段を上がりきると、最初に目に入ってきたのは、注連縄が巻かれた大きな御神木だった。

 正面に立つ社殿よりも余程存在感がある。でんと堂々たる態度で、上がってきた者達を「よく来たな」と迎え入れる。

 その御神木の前に立ち、幹を伝ってゆっくりと視線を上げていった彬は、その大きさに圧倒された。てっぺんを見る事が出来ず、枝についた葉が黒い影を落としている。しかし微かに揺れる枝葉の隙間からは、ちらちらと陽暮れのオレンジ色の光が洩れ出でていた。

 瞬きも忘れ、呼吸すらも忘れて見上げる彬の耳に、微かな声が届く。何度も耳を掠めるその声を無視して、苛立ちの声音が混じり始めてやっと、彬は顔を廻らせた。

「なんだよ」

 微かに顔を顰める隆哉を見て顔を逸らせた彬は、密かにほくそ笑んだ。ズリ落ちかけたカバンを小脇に抱え直し、足を踏み出す。

 相沢の感情ある顔を見ると、なんだか楽しくなる。安心するのかもしれない。こいつも人間なのだと。ちゃんと、『今』を生きているのだと……。

 例えそれが、『怒り』や『苛立ち』であったとしても。
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