132 / 215
碧の癒し
24
しおりを挟む
当然、と自信あり気に頷いた彬の顔を、虚ろな瞳が見つめる。
「それも勘?」
「いんや。今回のはちゃんと考えがあってだぜ。だって、死ぬ前に拒絶するような何かが起こったんなら、ここで死ぬのやめるだろ。ここじゃなくても首は吊れるし、他にメリットがあるんなら別だけど、この場所で死ぬ理由がねぇもん」
肩を竦め、あっさりと答える。それに「んー」と唸った隆哉は首を傾げながら枝の真下に立ち、クルリとこちらに向き直った。
「なら。この視界の範囲で何かを感じたって事になる。死んでからなら、ここから動けなかった訳だし」
言いながら一同を見渡した隆哉は、スーッと体の力を抜くように瞼を閉じた。その口からゆっくりと、低い声が流れだす。
「彼女が答えない以上、なるべく彼女に近付いて推測してみるしかないな。順を追って考えてみよう。――まず。周りからは死を選ぶ程の悩み事があるようには見えなかった彼女だけど、逆を言えば『周りに気取られたくない程の何かを思いつめてここまでやってきた』という事にもなる。アルコールを飲んではいないし、突発的な行動ではないだろう。
そして、首を吊ったのは周りが――勿論この神社の人々もみんなが寝静まっている深夜未明。辺りは静かだ。それから空が段々と白んできて。――何を感じる?」
「それも勘?」
「いんや。今回のはちゃんと考えがあってだぜ。だって、死ぬ前に拒絶するような何かが起こったんなら、ここで死ぬのやめるだろ。ここじゃなくても首は吊れるし、他にメリットがあるんなら別だけど、この場所で死ぬ理由がねぇもん」
肩を竦め、あっさりと答える。それに「んー」と唸った隆哉は首を傾げながら枝の真下に立ち、クルリとこちらに向き直った。
「なら。この視界の範囲で何かを感じたって事になる。死んでからなら、ここから動けなかった訳だし」
言いながら一同を見渡した隆哉は、スーッと体の力を抜くように瞼を閉じた。その口からゆっくりと、低い声が流れだす。
「彼女が答えない以上、なるべく彼女に近付いて推測してみるしかないな。順を追って考えてみよう。――まず。周りからは死を選ぶ程の悩み事があるようには見えなかった彼女だけど、逆を言えば『周りに気取られたくない程の何かを思いつめてここまでやってきた』という事にもなる。アルコールを飲んではいないし、突発的な行動ではないだろう。
そして、首を吊ったのは周りが――勿論この神社の人々もみんなが寝静まっている深夜未明。辺りは静かだ。それから空が段々と白んできて。――何を感じる?」
0
あなたにおすすめの小説
★【完結】棘のない薔薇(作品230327)
菊池昭仁
恋愛
聡と辛い別れをした遥はその傷が癒えぬまま、学生時代のサークル仲間、光一郎と寂しさから結婚してしまい、娘の紅葉が生まれてしあわせな日々を過ごしていた。そんな時、遙の会社の取引先の商社マン、冴島と出会い、遙は恋に落ちてしまう。花を売るイタリアンレストラン『ナポリの黄昏』のスタッフたちはそんな遥をやさしく見守る。都会を漂う男と女。傷つけ傷つけられて愛が加速してゆく。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
あなたが幸せになるために
月山 歩
恋愛
幼い頃から共に育った二人は、互いに想い合いながらも、王子と平民という越えられない身分の壁に阻まれ、結ばれることは叶わない。
やがて王子の婚姻が目前に迫ると、オーレリアは決意する。
自分の存在が、最愛の人を不貞へと追い込む姿だけは、どうしても見たくなかったから。
彼女は最後に、二人きりで静かな食事の時間を過ごし、王子の前から姿を消した。
失恋までが初恋です。
あんど もあ
ファンタジー
私の初恋はお兄様。お兄様は、私が五歳の時にご両親を亡くして我が家にやって来て私のお兄様になってくださった方。私は三歳年上の王子様のようなお兄様に一目ぼれでした。それから十年。お兄様にはルシンダ様と言う婚約者が、私にも婚約者らしき者がいますが、初恋は続行中ですの。
そんなマルティーナのお話。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ワシの子を産んでくれんか
KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。
「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。
しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。
昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。
ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。
救いのような笑顔と、罪のような温もり。
二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる