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【転移121日目】 所持金8垓5860京6121兆4970億9294万ウェン 「父よ我を護り給え。」
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自由都市同盟は、この世界で最も豊かな国家である。
故に、世界で最も貧乏人が多い。
地球も異世界も社会原理は大して変わらない。
富を生み出す為には、貧乏人という資源が必要不可欠だからだ。
この自由都市がこれだけ豊かなのは、貧乏人の運用に長けているからである。
それ以外に理由はない。
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「リン君。
手筈通りだ。
葬儀会場の外には街中の、いや国中の人間が集まっている。
100万人超えてるかも。」
『まさか。
流石に100万は多過ぎでしょう。
もしかして、ポールさんが何か仕掛けてくれたとか?』
「いやいや、俺は大したことしてない。
だってリン君が粗品を配るって話だよ?
皆、期待するに決まってるじゃない。」
…だよな。
俺だって、世界一の大富豪が粗品配布を宣言したら、とりあえず会場に駆けつける。
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「リン。
群衆整理は順調よ。」
『…なあ、コレット。
あまり手荒な真似はするなよ?』
「安心して。
2桁以上は殺さないように各部隊に通達しているから。」
『そっか、ありがとう。』
「お礼なんて要らないわ。
妻が夫の命令に従うのは当然だもの。」
『俺がやろうとしてる事
君にデメリットしかないんだぞ?』
「男の人の道楽なんて
女にとっては全部そうなんだけど?」
なるほど。
最後まで君には教わる事が多い。
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「よう、独占資本。」
『よお、鉄道王。』
「オマエって本当に馬鹿な奴だよな。」
『知ってる。』
「おまけに世の中を滅茶苦茶にしている。
社会の敵って、オマエみたいな奴の事を言うんだろうな。」
『否めないな。』
「なあ、こっちに残ってやれよ。
こんなに慕われてるんだからさ。」
『帰還を公言しているから引き留めて貰えるんだよ。
もし居座りを宣言したら、皆が手の平を返して殺しに来るよ。』
「…なら、地球はオマエを殺さざるを得ないな。」
『かもな。』
「今からやる事は予行演習なんだろ?
テロを地球でやらかす為の。」
『テロ?
俺は正義を執行するだけだが?』
「最悪だよオマエ。
地球と異世界合わせても、オマエ以下の屑はいない。」
『…そうか。
だったら、どうして俺を手伝ってくれている?』
「俺はオマエの全てを否定している訳じゃあない。
既成の枠組みの中でなら、オマエは良くやっている。
寧ろ、尊敬すらしている。
葬式の提案。
例え魂胆があったとしても、オマエからそんな発想が出るなんて思ってもいなかった。
そこは適切に評価している。」
『念を押しておくが。
俺は枠組みの打破にしか興味はないぞ?』
「…だろうな。
まあ、いいさ。
今は死んでいった連中を弔ってやろうぜ。」
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昼過ぎにピット会長を筆頭とする財界人グループが神殿を訪れる。
情勢が情勢だけに大富豪達は非常に俊敏に動いている。
コイツラ老齢の癖にやたらと土下座が機敏で怖いんだよな。
「朗報で御座います魔王様。」
満面の笑みで合衆国の大統領が面を上げた。
ちなみにコイツは国家元首である以前に広大な農場主・鉱山会社のオーナーであり、元首というより資本家としての立ち位置で発言する事が多い。
個別に列伝を立てても良いくらいに濃厚なキャラなのだが、帰還寸前なのでコイツの紹介は全カット。
「この度、我が国は魔王様への忠誠の証として!
国名をコリンズ合衆国に改名致しました!!」
『え? あ、はい。』
「これにより我々は魔王様の臣民となります!!」
『え? なるの?』
「なりまぁす!」
『いや、そんな話は初耳なんですけど?』
「もう議会で可決されちゃいましたからぁ!
勿論、全会一致ですからぁ!」
「あ! 合衆国さん、ズルいですぞ!」
「抜け駆けは止めましょうって言ったのは貴国でしょう!」
「クッソー、魔王様の心証ポイント稼がれてしまった!」
本当に最近はこんな話ばかりである。
人間という生き物はカネの為になら幾らでもプライドを捨てられるのだろうか?
それとも俺の在り方が周囲をそうさせてしまっているのだろうか?
…後者だろうな。
この失敗例を地球での活動にフィードバックしていかなくてはならない。
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「…ま、魔王様。」
大統領の背後からおずおずと進み出る者が居た。
見覚えのあるゴブリンだ。
コレット隊のジェノサイドから生き残り、確か今は魔界の首都エデンで役職に就いていた人物だった筈だが…
「お、おめでとうございます。
先日の部族会議で魔王様に大魔王の称号が贈呈されました。
…その、勝手に決めてゴメンナサイ。」
『…まあ、はい。
俺はもう帰るので。』
「…ですよね。」
ゴブリンは俺の反応を見てしょげかえっているが、また後ろめたさを感じている分、彼らには幾許かの好感を持てる。
俺は傍らのコレットを振り返り
『魔族の保護という俺との約束を、この世界の人々は守るのか?
君に履行の意志はあるのか?』
と尋ねる。
彼女は眉一つ動かさず
「防衛に責任を持つつもりはないが、魔界へ侵攻する勢力の発生は領土接収の口実になるからありがたい。」
と答える。
相変わらず、綴じ蓋を演じるのが上手い。
ヒルダさえ始末すれば、コレットは長期政権を築く事だろう。
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俺が葬式の会場に指定していたのは元連邦大使館の神殿。
四天王も下見に行かせたし、リハも念入りに行った。
故に、この港湾区が本命だったことに気づかれずに済んだ。
ソドムタウンの中でも貧民の巣窟として知られる港湾区。
その中でもポールズbarの向かいにある教会跡。
かつて、巨漢のレオ・アントニオが糞長称号(ファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒)から俺を解放してくれた場所でもある。
最初からここで決着を付けると決めていた。
《参列者の数が多く事故の恐れがあるので、本日の葬儀は略式のみ。
後日、政財界の要人のみで本葬儀を挙行する。
粗品搬出路が群衆で塞がれてしまったので、保管庫のある港湾区での受け取りに変更。》
この文言はフェルナンの発案。
首長国王族は年間200を越えるイベントを主催している。
母親の身分が低いフェルナンは、幼少の頃から雑事を押し付けられる事が多く、大規模イベントの会場運営という誰もやりたがらない仕事を無数にこなして来た。
なので、群衆やスタッフを混乱させないアナウンスも知悉しているのである。
『じゃあ、ポールさん。
葬式饅頭の配布は手筈通りに。
ハーレムメンバーの皆様もお願い致します。』
俺が頭を下げると、ポールの妻たちが快活に頷いた。
奥に座っておられる老婦人はポールのお母上であろうか。
優し気な微笑みを浮かべておられる。
ポールからスラムの顔役だというお兄さんを紹介される。
聞けば俺と年齢が1つしか違わないのだが、実戦経験が豊富な為か風格が凄い。
今回の葬式饅頭作戦はこのお兄さんにも手伝って貰う。
「兄貴がいつも世話になっております。」
あまり無駄話をしない性質なのだろう、静かに微笑むとお兄さんは丁寧に頭を下げてから配置に戻った。
他にも小学生か中学生くらいの女子冒険者グループも助太刀にやって来る。
「冒険屋です♪」
俺が《冒険者》という単語を出す度に被せて訂正して来たので、ひょっとして商標権か何かが絡んでいるのかも知れない。
コレットはヒルダの息が掛かっている冒険者ギルドを異常に警戒しており、少女だけで構成されたこの《冒険屋》を優遇する事で対抗を図っていた。
『見た所、普通の女の子だろ?
冒険者に対抗出来るとは思えないけど。』
「逆よ。
冒険者なんて不安定な仕事、みんな結婚相手に困ってるんだから
女を握っている方が味方につけ易いの。
連邦で戦争をしていた時にヒルダ・コリンズ氏が娼婦スキームを説明してくれたでしょ?
それを私なりにアレンジして運用しているだけ。
おかげで、冒険者絡みの多数派工作だけは、何とか優位に立ててるわ。」
聞けば、ポールソンハーレムに冒険屋の関係者が在籍しているらしく、コレットはかなり早い段階からヒルダの目を盗んで接触を試みていたらしい。
当然、冒険屋のレンタルに関しては無料という訳には行かず、コリンズ家の家財の譲渡状にサインをさせられた。
これで、これまで俺に対して各陣営から贈られた贈答品の所有権は正式にコレット派に移る。
『抜け目ないな。』
「仕方ないでしょ?
私と赤ちゃん、捨てられるんだから。」
…そりゃあ、そうだ。
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葬儀が始まる。
群衆はこちらに来ない。
当然だ、殆どの者が粗品配付列に並んでいるのだから。
ドナルドからの報告。
ピット会長と取り巻きの資本家はここには来ていない。
だろうな。
俺が彼らでも、こんな貧民だらけの地区には怖くて近寄れない。
顔役のお兄さんや冒険屋に守られている俺ですら、貧困由来のこのガラの悪さは怖いのだ。
王国での殉職者の葬儀という事で、カインを筆頭に王国人が多く集う。
地球からは荒木・興津・卜部・工藤、そして予定に無かった鹿内という女子が参列。
「結婚したんじゃなかったのか?」
「帰りたいのよ、決まってるでしょ!!」
「あっそ。」
背後で荒木と鹿内が口論をしている。
どうやら前々から対立していた気配がある。
…あのなぁ、御霊前だぞ。
『天にまします我らが神よ
地にまします彼方の神よ
全ての天地を潤し続けたまえ
輪廻する魂よ
天地を未来永劫周り続けて
星の焔に還り給え。』
葬儀と言っても大した事はしない。
神聖教団の作法に従い念仏を唱え、その後に故人の名を読み上げて終わりだ。
複雑に感じていた異世界式の葬儀手順だが、覚えてしまうと理に適っていて好ましい。
それにしても、殉職者名簿…
凄い数だな。
まあ、そのうちの何割かを殺したのが母娘なので、俺としても粗略に出来ない。
「では、魔王様。
名簿です。」
『カインさん、ありがとうございます。』
「まずは対魔王戦争の戦没者名簿から。」
『あ、ども。』
何の因果かわからないが、対魔王戦争の戦没者葬儀の喪主を魔王の俺が務めている。
ちなみに、祭壇を組み立ててくれたゴブリン達の中には王国と直接干戈を交えた者もいる。
どうやら戦場で級友達を目撃したようだが、その点に関してはどれだけ質問しても回答してくれなかった。
『仮に戦争が再開したら、俺は級友ではなく君達の側に立つ。』
そう宣言しているが、信じて貰えたかは解らない。
改めて思う事だが、戦争ってアホらしいよなあ。
読み上げているうちに、懐かしい文字列が目に飛び込んで来る。
…平原。
改めて、彼が死んだことを認識する。
君とはもっと語り合いたかった。
ああ、今読み上げているのは、魔界で死んだ地球人の欄か…
どれも日本風の姓名である。
…オマエら、本当に死んだんだな。
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「続いて、神聖教団の災害(ヒルダ)犠牲者名簿で御座います。」
『マーティンさん、ありがとうございます。
本来は、貴方にこの座に就いて欲しかったのですが。』
「破門僧の私が重用されてしまえば
組織の和が乱れてしまいますよ。」
マーティン・ルーサーは教団に籍を戻した。
今は教団の立て直しに邁進している。
俺の我儘に応え、教団の聖典を限りなく要約化した書物を発行して貰っている。
ややプロパガンダ染みていて申し訳ないのだが、旧聖典の人間至上的な記述は割愛させた。
魔王という立場の俺が、それをしてしまう事に正当性があるのかは謎だが、現聖典は魔族にも概ね好意的に受け入れられていることは確かである。
膨大な数の教団職員の名を読み上げていると
《よくもまあ、これだけの数を殺したもんだなぁ》
との感慨が湧く。
ふと傍らを見ると、コレットが沈痛な表情で祈りを捧げていた。
薄っすらと涙を浮かべて、まるで聖女気取りである。
終生女を信ずまい、と改めて誓う。
名簿を更に読み進めているうちに、ふと見慣れた文字列が目に飛び込む。
《ロメオ・バルトロ》
どうしてあの時、もっと彼の為人を知ろうとしなかったのだろう。
俺が居座っている大主教の座。
彼こそが座るべきだったのに。
彼の遺稿には題名が無かったので、出版に際して《平等論》と勝手に命名した。
《国土論》と並んで俺が何度も読み込んだ論文である。
きっと的外れな命名ではないと信じたい。
感傷的な気分で読み上げていくうちに、《フェリペ・フェルナンデス》という文字列が飛び込んで来て、不謹慎ながらも思わず内心でクスリと笑ってしまう。
追放とかポーションとか選挙とか、接触回数の割に妙にインパクトに残るオッサンだった。
今思えばユーモラスな人だったよな。
世間的には嫌な奴に分類されるのだろうが、不思議と俺は嫌いじゃない。
もう少し話を聞いておけば良かったかもな。
…アンタ最高の追放芸人だったよ。
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「続いて王国内戦の戦没者名簿で御座います。」
『ありがとう、コレット。』
ヒルダが狙っていた王国利権はコレットが引き継いだ。
地球の級友の葬儀に強引に割り込み、王国内戦との合葬にしてしまったのも、全ては王国領を手中に収めんとする野望が故である。
俺の非難がましい感情が伝わったのか、恐ろしい形相でこちらを睨みつけている。
「せめて子供に国くらいは残しなさいよ!」
先日、面と向かってそう言われたのを思い出す。
4か月前は、《俺とコレットの子供が王国の支配者となる》なんて与太話は誰も信じなかっただろう。
だが、今はもはや王国どころではない。
嘘か真かだが。
俺が支配下に置いたとされるこの世界は、コレットの産んだ子が2代目魔王として相続するらしい。
王国人であるコレットは、特に王国を直轄領として支配する事に拘っている
フェルナンの見立てでは、コレットの王国支配は十中八九成功するとのこと。
何せ息子のハロルド君に帝国利権を受け継がせたいエルデフリダが狂ったように奔走しているのだ。
「王国はコリンズ家の天領に! 帝国は我が子ハロルドに!
皇帝ハロルド! 皇帝ハロルド! ワタクシのハロルド!
王国あげるから帝国寄越しなさいよ!」
それだけを念仏のように唱え続けていたそうだ。
成り上がり者で弱年のコレットはエルデフリダの権威と人脈を頼りにしているので、この結託関係は順調である。
…あくまで今のところは。
例えどんな理由であれ、神聖なる式典が下らない政争に利用されるのは心底腹が立つ。
俺は冷え切った気持ちで淡々と王国内戦の犠牲者名簿を読み上げる。
エドワード王亡命以降の王国内戦の事はよく知らない。
王都周辺に各勢力が布陣し、離合集散を繰り返しながら和戦に勤しんでいたとは報告書で読んでいた。
状況が複雑すぎて今どうなっているのかも解らない。
だから、この名簿については落ち着いた気持ちで読めた。
まあ、これも仕事だからな。
名前を読み上げて丸く収まるなら、読み上げるべきだろう。
次の戦没者欄はエドワード王の近習か…
凄い数だ。
ずっと追い回されていたらしいからな。
「魔王様?」
不意にカインに抱き止められた。
『え?』
「御心を確かに!」
何故だ。
周囲が真っ青な顔で駆け寄って来る。
気が付けば俺は車椅子のまま演台にぐったりもたれ掛っていた。
ん?
心労? 過労? 睡眠不足? 栄養失調?
どれも思い当たるが…
何故、俺は倒れ込んでいる?
「魔王様の所為ではありません!
どうかお心をお鎮め下さい!」
カイン、貴方は何故泣いている?
「奴は!
ダグラスは!
全て納得して選択した筈です!!!」
強く抱きしめる腕の震えからカインの哀しみと気遣いが伝わって来る。
…そっか。
さっき俺、《ダン・ダグラス》と読み上げてしまったんだ。
それにショックを受けている。
いや、違うな。
文字列を見るまで、彼に対しての気遣いを怠り続けていた事に対してだ。
エドワード王の王都から本領への逃避行。
地元のヤクザ者だけが警護要請に応じたとは報告を受けていた。
「エドワード王はほぼ単騎に近い状態で逃亡中。
各諸侯が受け入れ要請を拒絶しているので
数名の傭兵に警護を委ねているとのこと。
傭兵、実質は地元のヤクザですが
その者に勇者称号を与えて、何とか繋ぎ止めているそうです。」
何度かそう聞いた。
自分には関係ないと聞き流していた。
どうして気付かなかったのだろう。
どうして気付かないフリをしていたのだろう。
ダグラスに話が行くのは極めて自然なのだ。
何故なら、直前に俺を自由都市まで移送する事に成功していたのだから。
それも内戦中の連邦を縦断して送り届けている。
あの時点の王都で最も護衛実績が高いのは間違いなくダグラスなのだ。
俺の召喚と追放に立ち会ったエドワード王が護衛を打診しても不思議ではない。
そして、あの寡黙なヤクザ者は極めて義侠心が篤い。
…あれ?
そもそもエドワード王が王位を追われる羽目になったのって
俺のバラ撒いた工作費の所為か…?
え?
俺なのか?
いや、俺なんだ。
ダン・ダグラスを
いや、アウグスブルグ卿もバルトロ上級司祭も。
殺したのは結局…
「魔王様、本日はお休み下さい!
計画は延期しましょう!」
『…いや、俺は大丈夫ですよ。』
「少し! せめて少し休憩を取って下さい!」
急遽、控室に運ばれ代役はマーティンが務める。
いや、俺、大丈夫だと思うけど。
何で身が起こせないのだろう。
耳元で変な音の溜息が鳴っている。
?
俺、今泣いてるのか?
「魔王様。
私も奴の死は今知りました。
連絡が付かなかったのも、追加報酬の受け取りを拒絶していたので
その一環かと思っていたのです。
私の配慮が足りませんでした!
申し訳御座いません!」
『あ、いや。
お亡くなりになったのはダグラスさんだけではないので。
俺、会場に戻りますよ。
…死は、いや供養は平等であるべきだと思います。』
「公人としては素晴らしい姿勢です。
ですが、魔王様。
私的に悲しんでもいいじゃないですか!
貴方は血の通った人間なのですよ!」
『…いえ、本当に大丈夫です。』
そうは言ったものの、背骨が溶けたように起き上がれない。
不思議と力が入らないのだ。
涙をポロポロと溢しながら、止まらない溜息を何とかしようと試みる。
心身が痺れる様に痛い。
横にカインが居なければ、そのまま倒れ込んでいたかも知れない。
『あの人が居なければ、俺は貴方とも会えなかったんですね。』
「うん、そうだね。」
『高利貸と知らずにニコニコ金融に入っちゃったんですよ。
カウンターにあの人が座ってて、驚きましたよ。
デッカい入れ墨入ってるし。』
「うん。」
『俺…
父親を亡くしているのですけど。
あまり厳しい事を言うタイプじゃ無かったので
ダグラスさんみたいな人はカルチャーショックでした。』
「うん。」
『自分ではあの人から相当影響を受けてたつもりなんですけど。
恩義も感じてたつもりなんですけど…
何であの人のこと、今の今まで気に掛けなかったんだろう。
カインさん、俺って本当に薄情ですよね。
そりゃあ妻子も捨てますよ。』
「リン。
ダグラスはね。
君の事を深く愛していた。
それこそ自分の息子を見守るように。
別れ際、何度も君の事を頼まれたよ。」
しばらくの間、俺はダグラスの冥福だけを祈り続けた。
合同葬儀であるにも関わらず、だ。
…魔王失格だな。
『俺、本当に何気なく王国に対して工作費用を投入していたんです。
最初はダグラスさん経由だったのですが
すぐにマキンバ子爵と直接遣り取りするようになって…』
「王国は前から揉めていたんだ。
エドワード王が傍流だって話はしただろう?
リンが工作費を出さなくても、いずれ内戦は起きていた。
そして、ダグラスは昔から義侠心が厚い男だ。」
『あの人、勇者認定されたんですね。』
勇者ダグラス。
悪くない響きだ。
そうだよ、彼こそが英雄と讃えられるべき男だった。
少なくとも、無責任にカネだけバラ撒いている恥知らずなんかより、余程高潔な男だった。
「その価値がある男だという事は
リンが一番知っているだろう?」
『はい。
俺は、あの人に認めて貰いたかった。
もっと色々と教わりたかったです。』
「ダグラスは…
随分リンに肩入れしていたからね。
そう思われていると知ったら
きっと喜ぶよ。」
『そうでしょうか。』
「そうだよ。
私が保証する。
彼は君を愛し、その前途を強く信じていた。
ねえ、リン。
短い間だったけど
君はあの男から多くを学んだ筈だ。
これからの君の人生に活かして欲しい。
それこそがダグラスへの最高の供養だ。」
『最後に、あの人に褒められたんです。
それが嬉しかった。
やっと認めて貰えた…
人生で一番嬉しかったです。』
「…ダグラスは
私の前ではずっと君を褒め続けていた。
出逢った日からずっとだ。
あの不愛想な男が機嫌よく笑うんだよ。
君の話題でね。
リン。
胸を張りなさい。
君はダン・ダグラスが認めた男だ。」
俺がカインの腕の中で泣いていた時間は結構長かったと思う。
30分か、1時間か…
それとももっとか。
「オマエ、すっかり男の顔になったよ。
じゃあな、コリンズ。」
俺は顔を上げ、拳を握り、歯を食いしばって、背筋を伸ばした。
…もうガキじゃないんだ。
男は足を止めてはならない。
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俺の顔は涙でグシャグシャになっていた筈だったが、マーティンは見て見ぬフリをしてくれた。
『マーティンさん、気遣いは不要です。
俺、この顔のまま続きをやりますから。』
「…魔王様。
涙は恥ではありません。
貴方が真摯である証なのです。」
『…ありがとう。』
気休めでも、今は助かる。
後半、声はまだ震えていたが、何とか名簿を読み終え
教団の規定法話もこなす事が出来た。
全くの奇襲であったが、魔族の戦没者名も追加で読み上げた。
…既成事実は作った。
後は君達が活かして欲しい。
途中、心が折れそうになり、何度も車椅子上で姿勢が崩れかけた。
だがカインとマーティンが両脇から助けてくれたので、正気は保てた。
最後に神聖教の決まり文句を参列者一同に唱和させて葬儀は終わった。
==========================
「クラスの連中の名前を呼ぶ時は眉1つ動かさなかった癖にな。」
勝手に俺の隣に座った荒木が呟く。
『涙は価値に対して流されるものだ。』
「それは同感だな。
こっちでの知り合いの名でも見つけたのか?」
『オマエには関係ない。』
「…そうだな。
俺達の物語は交差しない。」
『…物語か。
荒木も色々あったみたいだな。』
「涙に値する人達と出逢ったよ。
もっとも、こちらの世界でドワーフは人間扱いされていなかったが。」
『そっか。』
コイツの義理はコイツが果たす事だろう。
「それにしても、葬式終わったな。
お疲れ様。」
『ありがとう。
でも、疲れるのも生き残った者の仕事だ。
そして俺の仕事はここからが本番だ。』
「色々企んでるみたいだな。」
『男が生きてりゃ思惑の1つや2つは出来るだろう。』
「だな。
そこは賛同する。
…1点報告しておいてやろう。
ピット会長。
オマエの思惑に気付いてない。」
『何故そう思う?』
「葬式のタイミングに合わせて取り巻きとレストランに入って行った。
かなり表情が弛緩していた。
あの人、オマエが帰ることにしか警戒していない。」
『…貴重な情報に感謝する。
借り1とさせてくれ。』
「悪い人ではないよ。
俺にも結構気配りしてくれてるしな。」
『同感だ。
俺もあの人に危害を加えるつもりはない。』
嘘じゃない。
これから始まる出来事が彼にどう影響するかまでは知った事ではないがな。
じゃあ、その出来事を起こしますか。
『ポールさん、後は任せます。』
俺は反対側のポールズbarにゆっくりと合図を送った。
ポールはいつもと変わらぬ表情で軽く手を振り返して来る。
==========================
葬儀が終われば葬式饅頭が配られる。
これは地球の風習だが、異世界にも似たような習俗はあった。
なので、葬儀から粗品配付への流れを説明するのは非常に楽だった。
「皆様! 本日は御参列ありがとうございました!
ただいまから、魔王様の葬式振舞が始まります!」
確かレニーと言ったか。
凄まじい大音声だな。
正直助かる。
『どうもー、魔王でーす♪』
上手く出来ているかは不明だが、極力緩い雰囲気で語り掛ける。
拡声器っぽいスキル器具が見た目以上に機能してくれているので、そこまで大きな声を出さずに済むのが助かる。
口調はジュースを配る時のポールの真似をしている。
あの男を観察していてよく分かった。
何かを成し遂げたい時こそ、決意を顔に出し過ぎてはならない、と。
革命は、それが革命と悟られた瞬間に瓦解するのだ。
地球に帰る前にそれを知れたのは大きな収穫だった。
『待たせちゃってゴメンなさいねー。』
俺の演出した緩い雰囲気が伝わったのか、群衆が安堵した表情を浮かべる。
コレット隊とは違い魔王は大衆を恫喝しない。
意図が伝わったのだ。
『既に聞いているとは思いますが
葬式饅頭の他に粗品を用意しております。』
群衆がどよめく。
そりゃあね。
物が貰えるのは嬉しいよね。
『饅頭を受け取った方から広場に移動して下さい。
後がつっかえてますので、小走りで、小走り♪
将棋倒しで死なない事だけ気を付けて下さいね~♪』
あ、ウケた。
じゃあ、粗品を準備しますか。
ん?
当然、あるよ。
だって、もうすぐ17時じゃない?
《3垓3062京3106兆ウェンの配当が支払われました。》
ここには大量の貧民が集まっている。
1人10億ウェンずつ配ってみる。
さあ、どんな化学反応が起こるんだろうな。
父さん見てますか?
貴方の願いが今日叶います。
ダグラスさん見て下さい。
貴方に見せたかった光景なんです。
「鎮まれ、礼は不要、速やかに去れ。」
10億ウェンのミスリル貨を配布する場所には、そう大書してある。
先程の顔役のお兄さんが大量のチンピラを使って、群衆が立ち止まらないように指示を出させている。
コレット隊と冒険屋(ほぼ同一化しつつあるらしいが)の行列誘導も見事だ。
人を人と思っていないだけあって、実にスムーズに流れを統制している。
「え!? カネ!?」
「馬鹿、これミスリル貨だって!」
「嘘!? 本物!?」
「偽物の筈ないだろ、魔王様は世界一の大富豪なんだぜ!」
「貰っていいの? 逮捕されない?」
「いや! 粗品ってコレー!!?」
「魔王様、エグすぎやろーーーwww」
群衆は驚愕歓喜しているが、パニックにはなっていない。
このカネは、俺やコレット、四天王といった公的な面子が葬儀と云う社会で最も公的な場で配布しているからである。
つまり政策。
群衆とて馬鹿ではない。
今日に限ってピット会長以下政財界人が1人も居ない事に目敏く気付いている。
ここからは作業。
無論、俺に大衆を捌く器量はないので、ここからは俺が集めた運営メンバーの力量に全てを委ねる。
1時間経過してもピット会長達は戻って来ない。
報告によるとレストランでの懇親会がかなり盛り上がっているようである。
彼らの諜報網もかなりのものだが、何故俺の動きに気付かない?
いつもは変事あれば深夜であっても風のように駆け付ける癖に。
まあ、もはやどうでも良い。
今は1枚でも多くの10億ウェン貨幣を貧民に配布するだけである。
2時間経過。
ピット会長は依然レストランで盛り上がっている。
この世界を《コリンズ・ワールド》と命名する為の根回しを行っているらしい。
ここで確信する。
会長の部下が故意に伝達を怠っている。
カネ配りに賛同して俺の為にサボタージュしてくれているのだ。
そうとしか思えない。
最初は談笑していた群衆だが、既に笑顔の者は誰一人いない。
コレット隊や冒険屋に法律面の問い合わせを始めている。
…前々から思っていた事だが、異世界人って妙に理性的だな。
あくまで地球との比較だが、遵法意識が非常に高い気がする。
その点は荒木や卜部も同意見であり、俺達は地球の低民度ぶりを心の底から恥じていた。
3時間経過。
まだ会長は気付いてない。
…異常事態だ。
サボタージュ説は多分的外れではない。
これ、後で部下の人が怒られるんじゃないか?
報告によりと、彼らはコースメニューのデザートまで食べ終わり、足湯+アロママッサージを楽しんでいるらしいので、店を出るのは時間の問題のようだ。
訝しんでる俺を見たフェルナンが耳打ちして来る。
「政財界の重鎮達はここ数日土下座待機を続けておりました。
なので、あの食事会は彼らにとっては久々の休養も兼ねているのです。」
『あ、なるほど。
言われてみれば、彼らずっと土下座してましたものね。』
「殆どが高齢者ですからね。
身体が休養を欲していたのでしょう。」
俺にとっては好都合だ。
可能な限りカネを配り、配り切れなかった分も何らかの手段で分配する。
これをずっと前から実験してみたかったのだ。
通説では過度のバラマキはインフレを引き起こす。
そして民衆自身の生活苦に繋がる、とされているのだが。
本当にそうなのだろうか?
試さなければ見えない糸口があるのではないか?
『カインさん。
貧乏人が大金を持つとどうなるんですか?』
「人によります。
貧困なんて状態に過ぎませんから。
賢い者はカネで幸福を買い、愚者は一時の幸福を買います。」
『このペースで配り続けて
全ての人類に10億ウェンずつ配ったらどうなりますか?』
「どうにもなりませんよ。
魔王様も本当は理解されておられるのでしょう?
優れた者が状況に適応し、劣った者は何ら活かせず死にます。」
『俺、昔から
大金を平等に配れば、世の中は大きく改善されて
誰も生活に困らない時代が来ると信じてたんです。』
「配ってしまったら平等にはならないですよ。
カネの使いかたって十人十色なのですから、」
このカネ配りに最も協力的だったカインだが、最も懐疑的なのも彼だ。
金融業者の彼は、大金を持ってしまった貧民の末路を飽きる程見てきている。
「忠誠ではなく友情から改めて助言させて下さい。
カネは優劣の結果に過ぎません。
何をどうしようが、優れた者は豊かになり
劣った者は能力相応の位置に落ち着きます。」
『俺は人間に優劣は無いと…
いや、父が無価値な人間では無かったことを証明したいのです。
だから、優劣の結果がカネであるとは、どうしても受け入れられない。』
「お父様は…
魔王様を立派に育てられたではありませんか。
世界一の大富豪である魔王様を。
間違いありません。
貴方のお父様は最高の父親です。」
『富豪と言っても…
単にスキルの賜物に過ぎません。』
「尚更ですよ!
天が貴方を選んだのだ!
そして十分に応えている!
お父様はきっと喜んでおられます!
貴方を誇りに思っている筈なんだ!
勿論ダグラスも!」
勿論、カインの言葉は気休めであり詭弁に過ぎない。
それが分からない程、俺は愚かな男ではない。
『カインさん。
俺の方向性は合ってると思いますか?』
「…間違っていると思います。
少なくとも社会にとってはマイナスです。
ただ、きっと一石を投じるタイプの間違いです。」
『…そうですか。
カインさんが仰るなら、きっとそうなのでしょう。
貴方が居てくれて良かった。』
「申し訳ありません。」
『俺は…
それこそ一石を投じる為に生まれて来たのかも知れませんね。』
「もっと御自身の為に生きて下さい。
魔王様はまだお若いでしょう。
故郷に帰られたら、どうか人生を楽しんで欲しいです。」
『…俺の個人的な人生は終わりました。』
「終わってないッ!!」
水掛け論だな。
カインとの会話はいつだって堂々巡りだ。
ああ、きっと父親の仕事ってこういうものなのだろうな。
義務を放棄して去る俺にそれを語る資格はないのは重々承知だが。
結局、ピット会長がカネ配りを知ったのは5時間以上経過してからだった。
すっかり夜は更けている。
「ハアハア! ハアハア!」
『会長、少しお休みになって下さい。
お身体に障ります。』
「ぜひゅーーー ぜひゅーーー。」
『誰かエナドリ持ってない!?』
言い終わる間もなく、会長の側近がエナドリを飲ませる。
会長が瞬時に姿勢を正し、目がキリっとなる。
「ま、魔王様…
お、お怒りをお鎮め下さいませ…」
『え?
いや別に。
怒ってるとかではなくて。』
「で、ですが、魔王様って基本的に公憤が行動原理ですよね?」
『いや…
そこまで自分を掘り下げた事は無かったのですが。
会長が仰るならそうなのでしょう。』
「おカネ…
配っちゃったんですよね?」
『あ、はい。』
「…そ、そのぉ
こ、困る… というか
いや、私はいつでもどこでも魔王様に賛成なのですが
困る人も居るんじゃないかなぁ、と思ったりして…」
『例えば、誰が困りますか?』
「あ、いや。
その、頑張ってミスリル貨を貯めた人とか
いっぱいミスリル貨を持ってる人とか。」
『それ、会長のことじゃないですか。』
「いえいえ!
私は別に魔王様に意見しようとか…
そんな、そんなそんな…」
『…もうコリンズ湾への備蓄は十分だと思うので。
後は皆に配ります。』
「えーーーーー!?
あ、明日からも配ってしまうのですか!?」
『…帰るまでは配り続けるんじゃないでしょうか?』
「あ、あ、あ、あ、あ、あ…
あうあう」
ピット会長達はとりあえず土下座モードに戻った。
恐縮している訳でも恐懼している訳でもない。
これは嫌でも浮かぶ不満の表情を俺に見られない為の防衛姿勢なのだ。
『安心して下さい。』
「え?」
『俺、もう帰りますから。
これ以上、ミスリル貨は拡散しません。』
「あッ!?」
俺はどちらでもいい。
帰れと言われれば、今この場でも帰るつもりなのだ。
逆に異世界人がオーラロードを塞ぐなら、カネ配りの実験台になって貰う。
異世界人の目から見た場合。
俺を留めればミスリルが増える。
俺を逃がせばミスリル貨の価値が目減りする。
資産をミスリル貨で保有している富豪階級には辛いかもな。
「ま、魔王様!
ミスリル貨の使用を…
一旦、中止してもよろしいでしょうか?
勿論、他意は御座いません!
社会的な混乱を収める為のメンテナンス…
そう! メンテナンスで御座います!!!」
『別に、どうぞ、はい。』
「怒ってませんよね?」
『いや、別に、特には。』
資本家たちは慌てて走り去る。
老齢だというのに物凄い瞬発力だ。
あのエネルギーが彼らを資本家たらしめているのだろう。
==========================
「遠市。
オマエのやった事はただの自己満足だ。
これから異世界経済は大混乱に陥るぞ。」
『なあ、荒木よ。
逆に俺の自己満足に社会的メリットはあったかな?』
「…あるに決まってるだろ。
金持ちがあれだけ慌てているんだ。
皆さぞかしスッキリしただろう。
俺も、悪い気はしなかった。」
『…そっか。
大衆が歓呼したという事は
その政策は間違っているということだな。
俺はまた過ちを犯した。』
「だから、最初からそう言ってるじゃねーか。」
『なあ、荒木。
宗教的な目線から見ればどうだろう?』
「しつこいなオマエも。
坊主としては100点満点だよ。
オマエ山奥に籠って死ぬまで念仏唱えてろ。
社会的にも宗教的にもその方が大いにプラスだ。」
『俺、皆から聖職者に向いてるって言われるんだけど
案外、適性あるのかな?』
「馬鹿かオマエ。
ボンクラの分際で政治に興味持つなって言われてるんだ。」
『だよなー。
俺、才能無いわ。』
父さん。
今の俺はフリーハンドで何でも出来る立場になったよ。
今日なんか合同葬儀の導師まで務めた。
でも、ここまでやりたい放題やってるのに
微塵も成果に繋がらない。
いや、わかってるんだ。
俺、本当のことわかってるんだ。
ただ、どうしても納得出来ないだけ。
勿論、俺は折れないんだけどさ。
それでも、ここまで思い通りにならないと、正直凹む。
「遠市。
ゴブリン達が呼んでいるぞ。
最後に唱和お願いしたいってさ。」
『わかった、今行く。』
坊主としての俺は結構需要あるんだよな。
作法も大分覚えたし。
「魔王様、申し訳ありません。
我々、魔族は改宗したてですから
少しでもフォーマルな儀礼をこなしておきたいのです」
『いえ、こちらこそ気遣いが足りずに申し訳ありませんでした。
それでは最後に皆で心を込めて神に祈りましょう。
せーの。』
先程同様、口パクで済ませた。
幾ら定型文とは言え、今の俺にこの文言を唱える資格はない。
======================
【名前】
リン・コリンズ
【職業】
大魔王
神聖教団大主教
世界冒険者ギルド永世名誉理事
※冒険者ギルド・冒険屋の統合計画に伴い辞任。
【称号】
大魔王
【ステータス】
《LV》 58
《HP》 (6/6)
《MP》 (4/6)
《腕力》 3
《速度》 3
《器用》 4
《魔力》 2
《知性》 8
《精神》 13
《幸運》 1
《経験》111京0536兆1662億0955万7238ポイント
次のレベルまで残り93京4813兆0276億1135万2102ポイント
【スキル】
「複利」
※日利58%
下12桁切上
【所持金】
所持金8垓5860京6121兆4970億9294万ウェン
☆葬式振舞として1560兆2280億ウェンを配布
91万人(重複アリ)に支給成功
※コリンズ銀行(旧バベル銀行)の8兆8167億8740万ウェン預入証書保有
※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有
※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有
※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有
※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有
※自由都市海洋開拓債1000億ウェン分を保有
※第2次自由都市未来テック債1000億ウェン分を保有
※首長国臨時戦時国債1100億ウェン分を保有
※自由都市国庫短期証券4000億ウェン分を保有。
故に、世界で最も貧乏人が多い。
地球も異世界も社会原理は大して変わらない。
富を生み出す為には、貧乏人という資源が必要不可欠だからだ。
この自由都市がこれだけ豊かなのは、貧乏人の運用に長けているからである。
それ以外に理由はない。
==========================
「リン君。
手筈通りだ。
葬儀会場の外には街中の、いや国中の人間が集まっている。
100万人超えてるかも。」
『まさか。
流石に100万は多過ぎでしょう。
もしかして、ポールさんが何か仕掛けてくれたとか?』
「いやいや、俺は大したことしてない。
だってリン君が粗品を配るって話だよ?
皆、期待するに決まってるじゃない。」
…だよな。
俺だって、世界一の大富豪が粗品配布を宣言したら、とりあえず会場に駆けつける。
==========================
「リン。
群衆整理は順調よ。」
『…なあ、コレット。
あまり手荒な真似はするなよ?』
「安心して。
2桁以上は殺さないように各部隊に通達しているから。」
『そっか、ありがとう。』
「お礼なんて要らないわ。
妻が夫の命令に従うのは当然だもの。」
『俺がやろうとしてる事
君にデメリットしかないんだぞ?』
「男の人の道楽なんて
女にとっては全部そうなんだけど?」
なるほど。
最後まで君には教わる事が多い。
==========================
「よう、独占資本。」
『よお、鉄道王。』
「オマエって本当に馬鹿な奴だよな。」
『知ってる。』
「おまけに世の中を滅茶苦茶にしている。
社会の敵って、オマエみたいな奴の事を言うんだろうな。」
『否めないな。』
「なあ、こっちに残ってやれよ。
こんなに慕われてるんだからさ。」
『帰還を公言しているから引き留めて貰えるんだよ。
もし居座りを宣言したら、皆が手の平を返して殺しに来るよ。』
「…なら、地球はオマエを殺さざるを得ないな。」
『かもな。』
「今からやる事は予行演習なんだろ?
テロを地球でやらかす為の。」
『テロ?
俺は正義を執行するだけだが?』
「最悪だよオマエ。
地球と異世界合わせても、オマエ以下の屑はいない。」
『…そうか。
だったら、どうして俺を手伝ってくれている?』
「俺はオマエの全てを否定している訳じゃあない。
既成の枠組みの中でなら、オマエは良くやっている。
寧ろ、尊敬すらしている。
葬式の提案。
例え魂胆があったとしても、オマエからそんな発想が出るなんて思ってもいなかった。
そこは適切に評価している。」
『念を押しておくが。
俺は枠組みの打破にしか興味はないぞ?』
「…だろうな。
まあ、いいさ。
今は死んでいった連中を弔ってやろうぜ。」
==========================
昼過ぎにピット会長を筆頭とする財界人グループが神殿を訪れる。
情勢が情勢だけに大富豪達は非常に俊敏に動いている。
コイツラ老齢の癖にやたらと土下座が機敏で怖いんだよな。
「朗報で御座います魔王様。」
満面の笑みで合衆国の大統領が面を上げた。
ちなみにコイツは国家元首である以前に広大な農場主・鉱山会社のオーナーであり、元首というより資本家としての立ち位置で発言する事が多い。
個別に列伝を立てても良いくらいに濃厚なキャラなのだが、帰還寸前なのでコイツの紹介は全カット。
「この度、我が国は魔王様への忠誠の証として!
国名をコリンズ合衆国に改名致しました!!」
『え? あ、はい。』
「これにより我々は魔王様の臣民となります!!」
『え? なるの?』
「なりまぁす!」
『いや、そんな話は初耳なんですけど?』
「もう議会で可決されちゃいましたからぁ!
勿論、全会一致ですからぁ!」
「あ! 合衆国さん、ズルいですぞ!」
「抜け駆けは止めましょうって言ったのは貴国でしょう!」
「クッソー、魔王様の心証ポイント稼がれてしまった!」
本当に最近はこんな話ばかりである。
人間という生き物はカネの為になら幾らでもプライドを捨てられるのだろうか?
それとも俺の在り方が周囲をそうさせてしまっているのだろうか?
…後者だろうな。
この失敗例を地球での活動にフィードバックしていかなくてはならない。
==========================
「…ま、魔王様。」
大統領の背後からおずおずと進み出る者が居た。
見覚えのあるゴブリンだ。
コレット隊のジェノサイドから生き残り、確か今は魔界の首都エデンで役職に就いていた人物だった筈だが…
「お、おめでとうございます。
先日の部族会議で魔王様に大魔王の称号が贈呈されました。
…その、勝手に決めてゴメンナサイ。」
『…まあ、はい。
俺はもう帰るので。』
「…ですよね。」
ゴブリンは俺の反応を見てしょげかえっているが、また後ろめたさを感じている分、彼らには幾許かの好感を持てる。
俺は傍らのコレットを振り返り
『魔族の保護という俺との約束を、この世界の人々は守るのか?
君に履行の意志はあるのか?』
と尋ねる。
彼女は眉一つ動かさず
「防衛に責任を持つつもりはないが、魔界へ侵攻する勢力の発生は領土接収の口実になるからありがたい。」
と答える。
相変わらず、綴じ蓋を演じるのが上手い。
ヒルダさえ始末すれば、コレットは長期政権を築く事だろう。
==========================
俺が葬式の会場に指定していたのは元連邦大使館の神殿。
四天王も下見に行かせたし、リハも念入りに行った。
故に、この港湾区が本命だったことに気づかれずに済んだ。
ソドムタウンの中でも貧民の巣窟として知られる港湾区。
その中でもポールズbarの向かいにある教会跡。
かつて、巨漢のレオ・アントニオが糞長称号(ファウンダーズ・クラウン・エグゼクティブ・プラチナム・ダイアモンド・アンバサダー信徒)から俺を解放してくれた場所でもある。
最初からここで決着を付けると決めていた。
《参列者の数が多く事故の恐れがあるので、本日の葬儀は略式のみ。
後日、政財界の要人のみで本葬儀を挙行する。
粗品搬出路が群衆で塞がれてしまったので、保管庫のある港湾区での受け取りに変更。》
この文言はフェルナンの発案。
首長国王族は年間200を越えるイベントを主催している。
母親の身分が低いフェルナンは、幼少の頃から雑事を押し付けられる事が多く、大規模イベントの会場運営という誰もやりたがらない仕事を無数にこなして来た。
なので、群衆やスタッフを混乱させないアナウンスも知悉しているのである。
『じゃあ、ポールさん。
葬式饅頭の配布は手筈通りに。
ハーレムメンバーの皆様もお願い致します。』
俺が頭を下げると、ポールの妻たちが快活に頷いた。
奥に座っておられる老婦人はポールのお母上であろうか。
優し気な微笑みを浮かべておられる。
ポールからスラムの顔役だというお兄さんを紹介される。
聞けば俺と年齢が1つしか違わないのだが、実戦経験が豊富な為か風格が凄い。
今回の葬式饅頭作戦はこのお兄さんにも手伝って貰う。
「兄貴がいつも世話になっております。」
あまり無駄話をしない性質なのだろう、静かに微笑むとお兄さんは丁寧に頭を下げてから配置に戻った。
他にも小学生か中学生くらいの女子冒険者グループも助太刀にやって来る。
「冒険屋です♪」
俺が《冒険者》という単語を出す度に被せて訂正して来たので、ひょっとして商標権か何かが絡んでいるのかも知れない。
コレットはヒルダの息が掛かっている冒険者ギルドを異常に警戒しており、少女だけで構成されたこの《冒険屋》を優遇する事で対抗を図っていた。
『見た所、普通の女の子だろ?
冒険者に対抗出来るとは思えないけど。』
「逆よ。
冒険者なんて不安定な仕事、みんな結婚相手に困ってるんだから
女を握っている方が味方につけ易いの。
連邦で戦争をしていた時にヒルダ・コリンズ氏が娼婦スキームを説明してくれたでしょ?
それを私なりにアレンジして運用しているだけ。
おかげで、冒険者絡みの多数派工作だけは、何とか優位に立ててるわ。」
聞けば、ポールソンハーレムに冒険屋の関係者が在籍しているらしく、コレットはかなり早い段階からヒルダの目を盗んで接触を試みていたらしい。
当然、冒険屋のレンタルに関しては無料という訳には行かず、コリンズ家の家財の譲渡状にサインをさせられた。
これで、これまで俺に対して各陣営から贈られた贈答品の所有権は正式にコレット派に移る。
『抜け目ないな。』
「仕方ないでしょ?
私と赤ちゃん、捨てられるんだから。」
…そりゃあ、そうだ。
==========================
葬儀が始まる。
群衆はこちらに来ない。
当然だ、殆どの者が粗品配付列に並んでいるのだから。
ドナルドからの報告。
ピット会長と取り巻きの資本家はここには来ていない。
だろうな。
俺が彼らでも、こんな貧民だらけの地区には怖くて近寄れない。
顔役のお兄さんや冒険屋に守られている俺ですら、貧困由来のこのガラの悪さは怖いのだ。
王国での殉職者の葬儀という事で、カインを筆頭に王国人が多く集う。
地球からは荒木・興津・卜部・工藤、そして予定に無かった鹿内という女子が参列。
「結婚したんじゃなかったのか?」
「帰りたいのよ、決まってるでしょ!!」
「あっそ。」
背後で荒木と鹿内が口論をしている。
どうやら前々から対立していた気配がある。
…あのなぁ、御霊前だぞ。
『天にまします我らが神よ
地にまします彼方の神よ
全ての天地を潤し続けたまえ
輪廻する魂よ
天地を未来永劫周り続けて
星の焔に還り給え。』
葬儀と言っても大した事はしない。
神聖教団の作法に従い念仏を唱え、その後に故人の名を読み上げて終わりだ。
複雑に感じていた異世界式の葬儀手順だが、覚えてしまうと理に適っていて好ましい。
それにしても、殉職者名簿…
凄い数だな。
まあ、そのうちの何割かを殺したのが母娘なので、俺としても粗略に出来ない。
「では、魔王様。
名簿です。」
『カインさん、ありがとうございます。』
「まずは対魔王戦争の戦没者名簿から。」
『あ、ども。』
何の因果かわからないが、対魔王戦争の戦没者葬儀の喪主を魔王の俺が務めている。
ちなみに、祭壇を組み立ててくれたゴブリン達の中には王国と直接干戈を交えた者もいる。
どうやら戦場で級友達を目撃したようだが、その点に関してはどれだけ質問しても回答してくれなかった。
『仮に戦争が再開したら、俺は級友ではなく君達の側に立つ。』
そう宣言しているが、信じて貰えたかは解らない。
改めて思う事だが、戦争ってアホらしいよなあ。
読み上げているうちに、懐かしい文字列が目に飛び込んで来る。
…平原。
改めて、彼が死んだことを認識する。
君とはもっと語り合いたかった。
ああ、今読み上げているのは、魔界で死んだ地球人の欄か…
どれも日本風の姓名である。
…オマエら、本当に死んだんだな。
==========================
「続いて、神聖教団の災害(ヒルダ)犠牲者名簿で御座います。」
『マーティンさん、ありがとうございます。
本来は、貴方にこの座に就いて欲しかったのですが。』
「破門僧の私が重用されてしまえば
組織の和が乱れてしまいますよ。」
マーティン・ルーサーは教団に籍を戻した。
今は教団の立て直しに邁進している。
俺の我儘に応え、教団の聖典を限りなく要約化した書物を発行して貰っている。
ややプロパガンダ染みていて申し訳ないのだが、旧聖典の人間至上的な記述は割愛させた。
魔王という立場の俺が、それをしてしまう事に正当性があるのかは謎だが、現聖典は魔族にも概ね好意的に受け入れられていることは確かである。
膨大な数の教団職員の名を読み上げていると
《よくもまあ、これだけの数を殺したもんだなぁ》
との感慨が湧く。
ふと傍らを見ると、コレットが沈痛な表情で祈りを捧げていた。
薄っすらと涙を浮かべて、まるで聖女気取りである。
終生女を信ずまい、と改めて誓う。
名簿を更に読み進めているうちに、ふと見慣れた文字列が目に飛び込む。
《ロメオ・バルトロ》
どうしてあの時、もっと彼の為人を知ろうとしなかったのだろう。
俺が居座っている大主教の座。
彼こそが座るべきだったのに。
彼の遺稿には題名が無かったので、出版に際して《平等論》と勝手に命名した。
《国土論》と並んで俺が何度も読み込んだ論文である。
きっと的外れな命名ではないと信じたい。
感傷的な気分で読み上げていくうちに、《フェリペ・フェルナンデス》という文字列が飛び込んで来て、不謹慎ながらも思わず内心でクスリと笑ってしまう。
追放とかポーションとか選挙とか、接触回数の割に妙にインパクトに残るオッサンだった。
今思えばユーモラスな人だったよな。
世間的には嫌な奴に分類されるのだろうが、不思議と俺は嫌いじゃない。
もう少し話を聞いておけば良かったかもな。
…アンタ最高の追放芸人だったよ。
==========================
「続いて王国内戦の戦没者名簿で御座います。」
『ありがとう、コレット。』
ヒルダが狙っていた王国利権はコレットが引き継いだ。
地球の級友の葬儀に強引に割り込み、王国内戦との合葬にしてしまったのも、全ては王国領を手中に収めんとする野望が故である。
俺の非難がましい感情が伝わったのか、恐ろしい形相でこちらを睨みつけている。
「せめて子供に国くらいは残しなさいよ!」
先日、面と向かってそう言われたのを思い出す。
4か月前は、《俺とコレットの子供が王国の支配者となる》なんて与太話は誰も信じなかっただろう。
だが、今はもはや王国どころではない。
嘘か真かだが。
俺が支配下に置いたとされるこの世界は、コレットの産んだ子が2代目魔王として相続するらしい。
王国人であるコレットは、特に王国を直轄領として支配する事に拘っている
フェルナンの見立てでは、コレットの王国支配は十中八九成功するとのこと。
何せ息子のハロルド君に帝国利権を受け継がせたいエルデフリダが狂ったように奔走しているのだ。
「王国はコリンズ家の天領に! 帝国は我が子ハロルドに!
皇帝ハロルド! 皇帝ハロルド! ワタクシのハロルド!
王国あげるから帝国寄越しなさいよ!」
それだけを念仏のように唱え続けていたそうだ。
成り上がり者で弱年のコレットはエルデフリダの権威と人脈を頼りにしているので、この結託関係は順調である。
…あくまで今のところは。
例えどんな理由であれ、神聖なる式典が下らない政争に利用されるのは心底腹が立つ。
俺は冷え切った気持ちで淡々と王国内戦の犠牲者名簿を読み上げる。
エドワード王亡命以降の王国内戦の事はよく知らない。
王都周辺に各勢力が布陣し、離合集散を繰り返しながら和戦に勤しんでいたとは報告書で読んでいた。
状況が複雑すぎて今どうなっているのかも解らない。
だから、この名簿については落ち着いた気持ちで読めた。
まあ、これも仕事だからな。
名前を読み上げて丸く収まるなら、読み上げるべきだろう。
次の戦没者欄はエドワード王の近習か…
凄い数だ。
ずっと追い回されていたらしいからな。
「魔王様?」
不意にカインに抱き止められた。
『え?』
「御心を確かに!」
何故だ。
周囲が真っ青な顔で駆け寄って来る。
気が付けば俺は車椅子のまま演台にぐったりもたれ掛っていた。
ん?
心労? 過労? 睡眠不足? 栄養失調?
どれも思い当たるが…
何故、俺は倒れ込んでいる?
「魔王様の所為ではありません!
どうかお心をお鎮め下さい!」
カイン、貴方は何故泣いている?
「奴は!
ダグラスは!
全て納得して選択した筈です!!!」
強く抱きしめる腕の震えからカインの哀しみと気遣いが伝わって来る。
…そっか。
さっき俺、《ダン・ダグラス》と読み上げてしまったんだ。
それにショックを受けている。
いや、違うな。
文字列を見るまで、彼に対しての気遣いを怠り続けていた事に対してだ。
エドワード王の王都から本領への逃避行。
地元のヤクザ者だけが警護要請に応じたとは報告を受けていた。
「エドワード王はほぼ単騎に近い状態で逃亡中。
各諸侯が受け入れ要請を拒絶しているので
数名の傭兵に警護を委ねているとのこと。
傭兵、実質は地元のヤクザですが
その者に勇者称号を与えて、何とか繋ぎ止めているそうです。」
何度かそう聞いた。
自分には関係ないと聞き流していた。
どうして気付かなかったのだろう。
どうして気付かないフリをしていたのだろう。
ダグラスに話が行くのは極めて自然なのだ。
何故なら、直前に俺を自由都市まで移送する事に成功していたのだから。
それも内戦中の連邦を縦断して送り届けている。
あの時点の王都で最も護衛実績が高いのは間違いなくダグラスなのだ。
俺の召喚と追放に立ち会ったエドワード王が護衛を打診しても不思議ではない。
そして、あの寡黙なヤクザ者は極めて義侠心が篤い。
…あれ?
そもそもエドワード王が王位を追われる羽目になったのって
俺のバラ撒いた工作費の所為か…?
え?
俺なのか?
いや、俺なんだ。
ダン・ダグラスを
いや、アウグスブルグ卿もバルトロ上級司祭も。
殺したのは結局…
「魔王様、本日はお休み下さい!
計画は延期しましょう!」
『…いや、俺は大丈夫ですよ。』
「少し! せめて少し休憩を取って下さい!」
急遽、控室に運ばれ代役はマーティンが務める。
いや、俺、大丈夫だと思うけど。
何で身が起こせないのだろう。
耳元で変な音の溜息が鳴っている。
?
俺、今泣いてるのか?
「魔王様。
私も奴の死は今知りました。
連絡が付かなかったのも、追加報酬の受け取りを拒絶していたので
その一環かと思っていたのです。
私の配慮が足りませんでした!
申し訳御座いません!」
『あ、いや。
お亡くなりになったのはダグラスさんだけではないので。
俺、会場に戻りますよ。
…死は、いや供養は平等であるべきだと思います。』
「公人としては素晴らしい姿勢です。
ですが、魔王様。
私的に悲しんでもいいじゃないですか!
貴方は血の通った人間なのですよ!」
『…いえ、本当に大丈夫です。』
そうは言ったものの、背骨が溶けたように起き上がれない。
不思議と力が入らないのだ。
涙をポロポロと溢しながら、止まらない溜息を何とかしようと試みる。
心身が痺れる様に痛い。
横にカインが居なければ、そのまま倒れ込んでいたかも知れない。
『あの人が居なければ、俺は貴方とも会えなかったんですね。』
「うん、そうだね。」
『高利貸と知らずにニコニコ金融に入っちゃったんですよ。
カウンターにあの人が座ってて、驚きましたよ。
デッカい入れ墨入ってるし。』
「うん。」
『俺…
父親を亡くしているのですけど。
あまり厳しい事を言うタイプじゃ無かったので
ダグラスさんみたいな人はカルチャーショックでした。』
「うん。」
『自分ではあの人から相当影響を受けてたつもりなんですけど。
恩義も感じてたつもりなんですけど…
何であの人のこと、今の今まで気に掛けなかったんだろう。
カインさん、俺って本当に薄情ですよね。
そりゃあ妻子も捨てますよ。』
「リン。
ダグラスはね。
君の事を深く愛していた。
それこそ自分の息子を見守るように。
別れ際、何度も君の事を頼まれたよ。」
しばらくの間、俺はダグラスの冥福だけを祈り続けた。
合同葬儀であるにも関わらず、だ。
…魔王失格だな。
『俺、本当に何気なく王国に対して工作費用を投入していたんです。
最初はダグラスさん経由だったのですが
すぐにマキンバ子爵と直接遣り取りするようになって…』
「王国は前から揉めていたんだ。
エドワード王が傍流だって話はしただろう?
リンが工作費を出さなくても、いずれ内戦は起きていた。
そして、ダグラスは昔から義侠心が厚い男だ。」
『あの人、勇者認定されたんですね。』
勇者ダグラス。
悪くない響きだ。
そうだよ、彼こそが英雄と讃えられるべき男だった。
少なくとも、無責任にカネだけバラ撒いている恥知らずなんかより、余程高潔な男だった。
「その価値がある男だという事は
リンが一番知っているだろう?」
『はい。
俺は、あの人に認めて貰いたかった。
もっと色々と教わりたかったです。』
「ダグラスは…
随分リンに肩入れしていたからね。
そう思われていると知ったら
きっと喜ぶよ。」
『そうでしょうか。』
「そうだよ。
私が保証する。
彼は君を愛し、その前途を強く信じていた。
ねえ、リン。
短い間だったけど
君はあの男から多くを学んだ筈だ。
これからの君の人生に活かして欲しい。
それこそがダグラスへの最高の供養だ。」
『最後に、あの人に褒められたんです。
それが嬉しかった。
やっと認めて貰えた…
人生で一番嬉しかったです。』
「…ダグラスは
私の前ではずっと君を褒め続けていた。
出逢った日からずっとだ。
あの不愛想な男が機嫌よく笑うんだよ。
君の話題でね。
リン。
胸を張りなさい。
君はダン・ダグラスが認めた男だ。」
俺がカインの腕の中で泣いていた時間は結構長かったと思う。
30分か、1時間か…
それとももっとか。
「オマエ、すっかり男の顔になったよ。
じゃあな、コリンズ。」
俺は顔を上げ、拳を握り、歯を食いしばって、背筋を伸ばした。
…もうガキじゃないんだ。
男は足を止めてはならない。
==========================
俺の顔は涙でグシャグシャになっていた筈だったが、マーティンは見て見ぬフリをしてくれた。
『マーティンさん、気遣いは不要です。
俺、この顔のまま続きをやりますから。』
「…魔王様。
涙は恥ではありません。
貴方が真摯である証なのです。」
『…ありがとう。』
気休めでも、今は助かる。
後半、声はまだ震えていたが、何とか名簿を読み終え
教団の規定法話もこなす事が出来た。
全くの奇襲であったが、魔族の戦没者名も追加で読み上げた。
…既成事実は作った。
後は君達が活かして欲しい。
途中、心が折れそうになり、何度も車椅子上で姿勢が崩れかけた。
だがカインとマーティンが両脇から助けてくれたので、正気は保てた。
最後に神聖教の決まり文句を参列者一同に唱和させて葬儀は終わった。
==========================
「クラスの連中の名前を呼ぶ時は眉1つ動かさなかった癖にな。」
勝手に俺の隣に座った荒木が呟く。
『涙は価値に対して流されるものだ。』
「それは同感だな。
こっちでの知り合いの名でも見つけたのか?」
『オマエには関係ない。』
「…そうだな。
俺達の物語は交差しない。」
『…物語か。
荒木も色々あったみたいだな。』
「涙に値する人達と出逢ったよ。
もっとも、こちらの世界でドワーフは人間扱いされていなかったが。」
『そっか。』
コイツの義理はコイツが果たす事だろう。
「それにしても、葬式終わったな。
お疲れ様。」
『ありがとう。
でも、疲れるのも生き残った者の仕事だ。
そして俺の仕事はここからが本番だ。』
「色々企んでるみたいだな。」
『男が生きてりゃ思惑の1つや2つは出来るだろう。』
「だな。
そこは賛同する。
…1点報告しておいてやろう。
ピット会長。
オマエの思惑に気付いてない。」
『何故そう思う?』
「葬式のタイミングに合わせて取り巻きとレストランに入って行った。
かなり表情が弛緩していた。
あの人、オマエが帰ることにしか警戒していない。」
『…貴重な情報に感謝する。
借り1とさせてくれ。』
「悪い人ではないよ。
俺にも結構気配りしてくれてるしな。」
『同感だ。
俺もあの人に危害を加えるつもりはない。』
嘘じゃない。
これから始まる出来事が彼にどう影響するかまでは知った事ではないがな。
じゃあ、その出来事を起こしますか。
『ポールさん、後は任せます。』
俺は反対側のポールズbarにゆっくりと合図を送った。
ポールはいつもと変わらぬ表情で軽く手を振り返して来る。
==========================
葬儀が終われば葬式饅頭が配られる。
これは地球の風習だが、異世界にも似たような習俗はあった。
なので、葬儀から粗品配付への流れを説明するのは非常に楽だった。
「皆様! 本日は御参列ありがとうございました!
ただいまから、魔王様の葬式振舞が始まります!」
確かレニーと言ったか。
凄まじい大音声だな。
正直助かる。
『どうもー、魔王でーす♪』
上手く出来ているかは不明だが、極力緩い雰囲気で語り掛ける。
拡声器っぽいスキル器具が見た目以上に機能してくれているので、そこまで大きな声を出さずに済むのが助かる。
口調はジュースを配る時のポールの真似をしている。
あの男を観察していてよく分かった。
何かを成し遂げたい時こそ、決意を顔に出し過ぎてはならない、と。
革命は、それが革命と悟られた瞬間に瓦解するのだ。
地球に帰る前にそれを知れたのは大きな収穫だった。
『待たせちゃってゴメンなさいねー。』
俺の演出した緩い雰囲気が伝わったのか、群衆が安堵した表情を浮かべる。
コレット隊とは違い魔王は大衆を恫喝しない。
意図が伝わったのだ。
『既に聞いているとは思いますが
葬式饅頭の他に粗品を用意しております。』
群衆がどよめく。
そりゃあね。
物が貰えるのは嬉しいよね。
『饅頭を受け取った方から広場に移動して下さい。
後がつっかえてますので、小走りで、小走り♪
将棋倒しで死なない事だけ気を付けて下さいね~♪』
あ、ウケた。
じゃあ、粗品を準備しますか。
ん?
当然、あるよ。
だって、もうすぐ17時じゃない?
《3垓3062京3106兆ウェンの配当が支払われました。》
ここには大量の貧民が集まっている。
1人10億ウェンずつ配ってみる。
さあ、どんな化学反応が起こるんだろうな。
父さん見てますか?
貴方の願いが今日叶います。
ダグラスさん見て下さい。
貴方に見せたかった光景なんです。
「鎮まれ、礼は不要、速やかに去れ。」
10億ウェンのミスリル貨を配布する場所には、そう大書してある。
先程の顔役のお兄さんが大量のチンピラを使って、群衆が立ち止まらないように指示を出させている。
コレット隊と冒険屋(ほぼ同一化しつつあるらしいが)の行列誘導も見事だ。
人を人と思っていないだけあって、実にスムーズに流れを統制している。
「え!? カネ!?」
「馬鹿、これミスリル貨だって!」
「嘘!? 本物!?」
「偽物の筈ないだろ、魔王様は世界一の大富豪なんだぜ!」
「貰っていいの? 逮捕されない?」
「いや! 粗品ってコレー!!?」
「魔王様、エグすぎやろーーーwww」
群衆は驚愕歓喜しているが、パニックにはなっていない。
このカネは、俺やコレット、四天王といった公的な面子が葬儀と云う社会で最も公的な場で配布しているからである。
つまり政策。
群衆とて馬鹿ではない。
今日に限ってピット会長以下政財界人が1人も居ない事に目敏く気付いている。
ここからは作業。
無論、俺に大衆を捌く器量はないので、ここからは俺が集めた運営メンバーの力量に全てを委ねる。
1時間経過してもピット会長達は戻って来ない。
報告によるとレストランでの懇親会がかなり盛り上がっているようである。
彼らの諜報網もかなりのものだが、何故俺の動きに気付かない?
いつもは変事あれば深夜であっても風のように駆け付ける癖に。
まあ、もはやどうでも良い。
今は1枚でも多くの10億ウェン貨幣を貧民に配布するだけである。
2時間経過。
ピット会長は依然レストランで盛り上がっている。
この世界を《コリンズ・ワールド》と命名する為の根回しを行っているらしい。
ここで確信する。
会長の部下が故意に伝達を怠っている。
カネ配りに賛同して俺の為にサボタージュしてくれているのだ。
そうとしか思えない。
最初は談笑していた群衆だが、既に笑顔の者は誰一人いない。
コレット隊や冒険屋に法律面の問い合わせを始めている。
…前々から思っていた事だが、異世界人って妙に理性的だな。
あくまで地球との比較だが、遵法意識が非常に高い気がする。
その点は荒木や卜部も同意見であり、俺達は地球の低民度ぶりを心の底から恥じていた。
3時間経過。
まだ会長は気付いてない。
…異常事態だ。
サボタージュ説は多分的外れではない。
これ、後で部下の人が怒られるんじゃないか?
報告によりと、彼らはコースメニューのデザートまで食べ終わり、足湯+アロママッサージを楽しんでいるらしいので、店を出るのは時間の問題のようだ。
訝しんでる俺を見たフェルナンが耳打ちして来る。
「政財界の重鎮達はここ数日土下座待機を続けておりました。
なので、あの食事会は彼らにとっては久々の休養も兼ねているのです。」
『あ、なるほど。
言われてみれば、彼らずっと土下座してましたものね。』
「殆どが高齢者ですからね。
身体が休養を欲していたのでしょう。」
俺にとっては好都合だ。
可能な限りカネを配り、配り切れなかった分も何らかの手段で分配する。
これをずっと前から実験してみたかったのだ。
通説では過度のバラマキはインフレを引き起こす。
そして民衆自身の生活苦に繋がる、とされているのだが。
本当にそうなのだろうか?
試さなければ見えない糸口があるのではないか?
『カインさん。
貧乏人が大金を持つとどうなるんですか?』
「人によります。
貧困なんて状態に過ぎませんから。
賢い者はカネで幸福を買い、愚者は一時の幸福を買います。」
『このペースで配り続けて
全ての人類に10億ウェンずつ配ったらどうなりますか?』
「どうにもなりませんよ。
魔王様も本当は理解されておられるのでしょう?
優れた者が状況に適応し、劣った者は何ら活かせず死にます。」
『俺、昔から
大金を平等に配れば、世の中は大きく改善されて
誰も生活に困らない時代が来ると信じてたんです。』
「配ってしまったら平等にはならないですよ。
カネの使いかたって十人十色なのですから、」
このカネ配りに最も協力的だったカインだが、最も懐疑的なのも彼だ。
金融業者の彼は、大金を持ってしまった貧民の末路を飽きる程見てきている。
「忠誠ではなく友情から改めて助言させて下さい。
カネは優劣の結果に過ぎません。
何をどうしようが、優れた者は豊かになり
劣った者は能力相応の位置に落ち着きます。」
『俺は人間に優劣は無いと…
いや、父が無価値な人間では無かったことを証明したいのです。
だから、優劣の結果がカネであるとは、どうしても受け入れられない。』
「お父様は…
魔王様を立派に育てられたではありませんか。
世界一の大富豪である魔王様を。
間違いありません。
貴方のお父様は最高の父親です。」
『富豪と言っても…
単にスキルの賜物に過ぎません。』
「尚更ですよ!
天が貴方を選んだのだ!
そして十分に応えている!
お父様はきっと喜んでおられます!
貴方を誇りに思っている筈なんだ!
勿論ダグラスも!」
勿論、カインの言葉は気休めであり詭弁に過ぎない。
それが分からない程、俺は愚かな男ではない。
『カインさん。
俺の方向性は合ってると思いますか?』
「…間違っていると思います。
少なくとも社会にとってはマイナスです。
ただ、きっと一石を投じるタイプの間違いです。」
『…そうですか。
カインさんが仰るなら、きっとそうなのでしょう。
貴方が居てくれて良かった。』
「申し訳ありません。」
『俺は…
それこそ一石を投じる為に生まれて来たのかも知れませんね。』
「もっと御自身の為に生きて下さい。
魔王様はまだお若いでしょう。
故郷に帰られたら、どうか人生を楽しんで欲しいです。」
『…俺の個人的な人生は終わりました。』
「終わってないッ!!」
水掛け論だな。
カインとの会話はいつだって堂々巡りだ。
ああ、きっと父親の仕事ってこういうものなのだろうな。
義務を放棄して去る俺にそれを語る資格はないのは重々承知だが。
結局、ピット会長がカネ配りを知ったのは5時間以上経過してからだった。
すっかり夜は更けている。
「ハアハア! ハアハア!」
『会長、少しお休みになって下さい。
お身体に障ります。』
「ぜひゅーーー ぜひゅーーー。」
『誰かエナドリ持ってない!?』
言い終わる間もなく、会長の側近がエナドリを飲ませる。
会長が瞬時に姿勢を正し、目がキリっとなる。
「ま、魔王様…
お、お怒りをお鎮め下さいませ…」
『え?
いや別に。
怒ってるとかではなくて。』
「で、ですが、魔王様って基本的に公憤が行動原理ですよね?」
『いや…
そこまで自分を掘り下げた事は無かったのですが。
会長が仰るならそうなのでしょう。』
「おカネ…
配っちゃったんですよね?」
『あ、はい。』
「…そ、そのぉ
こ、困る… というか
いや、私はいつでもどこでも魔王様に賛成なのですが
困る人も居るんじゃないかなぁ、と思ったりして…」
『例えば、誰が困りますか?』
「あ、いや。
その、頑張ってミスリル貨を貯めた人とか
いっぱいミスリル貨を持ってる人とか。」
『それ、会長のことじゃないですか。』
「いえいえ!
私は別に魔王様に意見しようとか…
そんな、そんなそんな…」
『…もうコリンズ湾への備蓄は十分だと思うので。
後は皆に配ります。』
「えーーーーー!?
あ、明日からも配ってしまうのですか!?」
『…帰るまでは配り続けるんじゃないでしょうか?』
「あ、あ、あ、あ、あ、あ…
あうあう」
ピット会長達はとりあえず土下座モードに戻った。
恐縮している訳でも恐懼している訳でもない。
これは嫌でも浮かぶ不満の表情を俺に見られない為の防衛姿勢なのだ。
『安心して下さい。』
「え?」
『俺、もう帰りますから。
これ以上、ミスリル貨は拡散しません。』
「あッ!?」
俺はどちらでもいい。
帰れと言われれば、今この場でも帰るつもりなのだ。
逆に異世界人がオーラロードを塞ぐなら、カネ配りの実験台になって貰う。
異世界人の目から見た場合。
俺を留めればミスリルが増える。
俺を逃がせばミスリル貨の価値が目減りする。
資産をミスリル貨で保有している富豪階級には辛いかもな。
「ま、魔王様!
ミスリル貨の使用を…
一旦、中止してもよろしいでしょうか?
勿論、他意は御座いません!
社会的な混乱を収める為のメンテナンス…
そう! メンテナンスで御座います!!!」
『別に、どうぞ、はい。』
「怒ってませんよね?」
『いや、別に、特には。』
資本家たちは慌てて走り去る。
老齢だというのに物凄い瞬発力だ。
あのエネルギーが彼らを資本家たらしめているのだろう。
==========================
「遠市。
オマエのやった事はただの自己満足だ。
これから異世界経済は大混乱に陥るぞ。」
『なあ、荒木よ。
逆に俺の自己満足に社会的メリットはあったかな?』
「…あるに決まってるだろ。
金持ちがあれだけ慌てているんだ。
皆さぞかしスッキリしただろう。
俺も、悪い気はしなかった。」
『…そっか。
大衆が歓呼したという事は
その政策は間違っているということだな。
俺はまた過ちを犯した。』
「だから、最初からそう言ってるじゃねーか。」
『なあ、荒木。
宗教的な目線から見ればどうだろう?』
「しつこいなオマエも。
坊主としては100点満点だよ。
オマエ山奥に籠って死ぬまで念仏唱えてろ。
社会的にも宗教的にもその方が大いにプラスだ。」
『俺、皆から聖職者に向いてるって言われるんだけど
案外、適性あるのかな?』
「馬鹿かオマエ。
ボンクラの分際で政治に興味持つなって言われてるんだ。」
『だよなー。
俺、才能無いわ。』
父さん。
今の俺はフリーハンドで何でも出来る立場になったよ。
今日なんか合同葬儀の導師まで務めた。
でも、ここまでやりたい放題やってるのに
微塵も成果に繋がらない。
いや、わかってるんだ。
俺、本当のことわかってるんだ。
ただ、どうしても納得出来ないだけ。
勿論、俺は折れないんだけどさ。
それでも、ここまで思い通りにならないと、正直凹む。
「遠市。
ゴブリン達が呼んでいるぞ。
最後に唱和お願いしたいってさ。」
『わかった、今行く。』
坊主としての俺は結構需要あるんだよな。
作法も大分覚えたし。
「魔王様、申し訳ありません。
我々、魔族は改宗したてですから
少しでもフォーマルな儀礼をこなしておきたいのです」
『いえ、こちらこそ気遣いが足りずに申し訳ありませんでした。
それでは最後に皆で心を込めて神に祈りましょう。
せーの。』
先程同様、口パクで済ませた。
幾ら定型文とは言え、今の俺にこの文言を唱える資格はない。
======================
【名前】
リン・コリンズ
【職業】
大魔王
神聖教団大主教
世界冒険者ギルド永世名誉理事
※冒険者ギルド・冒険屋の統合計画に伴い辞任。
【称号】
大魔王
【ステータス】
《LV》 58
《HP》 (6/6)
《MP》 (4/6)
《腕力》 3
《速度》 3
《器用》 4
《魔力》 2
《知性》 8
《精神》 13
《幸運》 1
《経験》111京0536兆1662億0955万7238ポイント
次のレベルまで残り93京4813兆0276億1135万2102ポイント
【スキル】
「複利」
※日利58%
下12桁切上
【所持金】
所持金8垓5860京6121兆4970億9294万ウェン
☆葬式振舞として1560兆2280億ウェンを配布
91万人(重複アリ)に支給成功
※コリンズ銀行(旧バベル銀行)の8兆8167億8740万ウェン預入証書保有
※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有
※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有
※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有
※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有
※自由都市海洋開拓債1000億ウェン分を保有
※第2次自由都市未来テック債1000億ウェン分を保有
※首長国臨時戦時国債1100億ウェン分を保有
※自由都市国庫短期証券4000億ウェン分を保有。
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