無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生

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悪鬼、襲来

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 似合わないエプロン姿でひょっこりと顔を出したルリジオンに、俺はリュックを指しながら言う。
 心なしかさっきより光が強くなっている気がする。

「――って、その中に何が入ってやがるんだ!」
「たしか路銀の入った袋とオークの素材だけだと思います」
「お前、オークから素材まで回収してたのか」

 そういえばオークを倒した話はしたけど、その後素材を手に入れた話はしていなかったと気がつく。

「ええ、まぁ。剥ぎ取り方は短剣の経験でわかったんで」
「ということは……まさか魔石も持って来たんじゃねぇだろうな?」
「もしかして魔石は取っちゃだめだったんですか?」
「いや、大体の場合はダメじゃねぇけどよ……退け、中を見てみる」

 ルリジオンは俺を横に押しのけるとリュックの蓋を開け中を覗き込んだ。
 次の瞬間、彼の表情が苦虫をかみつぶした様なものに変った。

「こいつぁやべぇかもしれねぇな。紋が刻まれてやがる」
「紋?」
「ああ、見て見ろ」

 ルリジオンはリュックに手を突っ込むと、ゆっくりと明滅を繰り返すオークの魔石を取り出した。
 そしてその魔石をゆっくり回すと一点を指す。

「これが紋……」
「ああ、そうだ。こいつが刻み込まれてる魔石は取っちゃいけねぇ」

 魔石の表面にうっすらと浮んでいるそれは、一見するといくつかの傷が走っているだけにしか見えない。
 異世界人である俺にはわからないが、どうやらそれが紋というものらしい。
 取り出したときには気がつかなかったが、光っているおかげでくっきりとそれが見えるようになっている。

「どうして取ってはいけないんですか?」
「紋の入った魔石ってのはな――」

 ルリジオンが口に仕掛けた時。
 突然外で何かがぶつかる様な激しい音が響く。

 ルリジオンは「チッ。もう来やがったか」と舌打ちをすると魔石を持ったまま立ち上がって――

「こうやって同族を呼んじまうんだよ!」
 
 焦燥感を溢れさせ、そう叫ぶ。

 そしてルリジオンは僅かの間思考した後俺たちに向かって指示を飛ばす。

「俺様は外の様子を見に行ってくる、その間にリリは弓の準備だ」
「わかった」

 リリはルリジオンの言葉を聞くと家の奥へ向かって直ぐに駆け出した。
 一方俺は自分がとんでもないことをしでかしてしまったことにオロオロとしてしまう。

「お、俺はどうすれば」
「リュウジは俺に付いてこい」
「は、はいっ」

 エプロンを投げ捨て、ルリジオンはそう叫ぶと玄関を破るような勢いで家を出て行く。
 その後ろを追いながら俺は背中に向かって謝罪を口にする。

「ごめんなさい。俺、知らなかったんです」
「そんなこたぁわかってる。謝罪は後でどれだけでも聞いてやっから後にしろ」

 開拓村をぐるりと囲む丸太で出来た壁。
 音が響いてくるのは俺がたどり着いた場所から見ると左側面あたりだろう。

「とにかく何匹いるか見てみねぇと作戦もたてらんねぇからな」

 壁には何カ所か見張り台となるやぐらような場所が作られている。
 そして音がする場所に一番近いやぐらの下にたどり着くと振り返り「気付かれない様に大きな声は出すんじゃねぇぞ」と俺に注意してから梯子上っていく。

 俺は小さく頷き返し、その後に続いて急いで梯子を上った。

「ちっ……こいつぁ思ったよりやべぇかもな」

 一足先に上ったルリジオンが、やぐらの壁に隠れる様に外の様子を確認するのを見て俺も同じように壁の外を覗き込む。
 そして絶え間なく続く衝撃音の正体が見えたとき、俺は自分の口から飛び出そうになった悲鳴を両手で口を抑えることで止めた。

 丸太で組まれた壁に向かって、俺の体ほどもある腕を何度も振り下ろしているのは、昨日俺が倒したヤツよりも一回りデカいオークだった。
 それだけでは無い。

「あいつぁお前が倒したオークの連れ合いと子供達だろうな」

 五メートル以上はありそうな巨体のオークの足下。
 そこには三体の子オークが雄叫びを上げながら手にした得物を振り上げている。
 それぞれ二メートルほどはありそうな姿は、とても子供とは思えない。

「あれで子供なんですか?」
「生まれて一年も経ってねぇガキだな。まぁそれでも俺たちからすればバケモノにゃぁかわりねぇが」
「ど、どうしたら。あんなのに勝てる気がしませんよ」
「どうするってお前、こうなったら倒すしかねぇだろ」

 何を当たり前なことを言っているんだという風にルリジオンが呆れた様に応えた。

「あの魔石を返せば――」
「今更遅えよ。もう彼奴らは自分の家族を殺した犯人がここにいるってわかってんだから」
「そう……ですよね」
「もちろんお前にも戦って貰うからな」

 ルリジオンはそう言って俺の胸を軽く拳で叩く。
 そうだ、俺のせいでオーク達が襲ってきているのだから俺がなんとかしないといけない。
 だけど……。

 俺はあることに気がついてミストルティンのステータス画面を呼び出す。


 ミストルティン

 レベル:4
 EXP:261 NEXT 350

 形 態:デフォルト
 モード:アブソープションモード

 《アイテムスロット》

 1:ノコギリ 2:金鎚(ランクA) 3:かんな

 《スキル》

 アブソープション・使用法理解・経験取得・性能回復・鑑定


 わかってはいたけれどあの時俺がオークを倒すことが出来た短剣の名前はそこにはなく。
 武器になりそうなのはノコギリと金鎚の二つだけだ。

 しかしこの二つはあくまでも大工道具。
 もちろん魔物と戦った経験・・はこの二つには全くあるわけがない。
 となるとルリジオンの武器をアブソープションさせてもらうことになるだろう。

「ルリ! 持って来たよ!」

 オークが壁を殴る強烈な音が鳴り響く中、音と音の間を狙ってやぐらの下からリリエールの声が聞こえた。

「来たか。おいリュウジ、急いでリリから弓と矢を貰ってきてくれ」
「はいっ」

 俺は急いで階段を滑るように下ると下で待っていたリリエールから弓と矢筒を受け取る。

「ありがとうリリ」
「がんばってね」
「ああ、絶対にこの場所は守ってみせるよ」

 俺はリリエールに心配掛けまいと不安を顔に出さない様に精一杯の笑顔で応える。
 そして胸からミストルティンを取り出すと、早速受け取った弓に枝先を当て――

「アブソープション!」

 オーク達と戦う力を得るための新たな力を吸収アブソープションする。

『アブソープションするために必要なスロットが足りません。アイテムを入れ替えるスロットを選択してください』

 しかし慌てていたせいで俺は必要な前準備を忘れていたことをミストルティンの声に指摘された。
 俺は声と同時に表示されたステータス画面のアイテムスロット欄に目をむける。


 ミストルティン

 レベル:4
 EXP:261 NEXT 350

 形 態:デフォルト
 モード:アブソープションモード

 《アイテムスロット》

 1:ノコギリ 2:金鎚(ランクA) 3:かんな

 《スキル》

 アブソープション・使用法理解・経験取得・性能回復・鑑定


 現状戦闘に使えないのは『かんな』だろう。
 俺は急いで『かんな』の文字を指先で触れて削除と念じた。
 同時に頭の中にミストルティンの声がまた響く。

『アイテム:複合弓 アブソープション完了――EXPを80獲得――得られた知識と経験をマスターに転送いたします』

 どうやらこの弓は複合弓という名前らしい。
 とにかくこれで武器は手に入った。

「リュウジ! 早くしねぇと壁が持たねぇぞ!」

 激しい音にかき消されそうになりながら、やぐらの上からルリジオンの切羽詰まった様な声が届く。

「今行きます!」

 俺はそう返事をすると矢筒と弓を肩に掛け、梯子に手を掛けた。

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