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石けんの香りと伝説の勇者召喚魔方陣
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「おまたせー」
ルリジオンの話が一区切りした頃、風呂場からリリエールがリビングに戻ってきた。
ふわりと香ってくる石けんの匂いと共にリビングを通り過ぎた彼女は、そのまま一端キッチンへ向かう。
そして戻ってくると手に牛乳らしき飲み物が入ったコップを持っていた。
「ちゃんと頭拭かないと風邪引くぞ」
ルリジオンがそう言いながら横にちょこんと座ったリリエールの頭を、彼女が首から掛けていたタオルで拭き直す。
風呂でシャワーを浴びたときに驚いたのが普通に液体石けんとタオルがあったことだ。
といっても日本で売っているものとは違って手作り感溢れるもので。
石けんは適当な空き瓶に入れてあり、タオルも縫合はかなり荒い。
たぶんルリジオンの手作りなのだろう。
「ったく。手の掛かるガキだぜ」
「ごめんなさーい」
一通り頭を吹き終わるとルリジオンは「よし」とリリエールの頭をポンポンと叩く。
そんな二人の姿はまるで本当の親子のように見えなくも無い。
「それじゃあ俺様がどうして魔方陣を書き換えてこの廃村に来た経緯を話そうか」
リリエールの髪を拭き終わったルリジオンが俺の方に向き直る。
「といってもお前さんも大体予想は付くだろ?」
「ええ、まぁ」
ここまでの話を聞けば、彼がどうして王国からリリエールを連れて逃げて来たのかは想像は出来る。
「リュウジ。お前さんの国ではどうだったか知らねぇが、この大陸の国では教会ってのはかなり影響力を持った組織なんだ」
ファロス教の総本山である新生国家ファロスと違い、バスラール王国は一神教の国では無い。
それでも王国内でもファロス教の影響力は強く、王家や国を動かす人々も教会関係者を軽んじることは出来ないらしい。
「影響力を持つってことは同時に腐敗を生む。いろんな国とファロス教の間にも、そりゃここでは言えねぇような関係が出来上がっててな……若い頃はそれが許せなかったんだが……まぁ、その話は本題にゃかんけぇねぇ」
ルリジオンはそんな腐敗した関係を利用して、クラレ家当主から聞いた話の裏付け調査を行った。
そして証拠は簡単に見つかった。
「魔王を倒した勇者クェンジーの話は前にしたが、その勇者を召喚したのは遙か北方のカトファリウス共和国って国を中心にした国家連合だが、魔王討伐軍にはバスラール王国も参戦していた」
といっても大々的に軍隊を派遣していたわけでは無い。
魔王軍が本拠地としていた北の果て。
その最前線までの間には複数の国があり、その場所から一番遠いバスラール王国は軍を派遣するには難しい場所にあった。
結果バスラール王国は軍の派遣という形ではなく有能な人材の派遣と後方支援という形で参戦することを決めて、国内の優秀な人材をまとめ派遣団として最前線へ送り込んだ。
「その派遣団を率いていたのがストルトスの野郎だ」
ストルトスは魔王討伐軍に参加すると順調に武勲をあげていった。
俺たちにとっては許せない相手ではあるが、その実力は本物で。
さらに戦場での立ち回りにも長けていた。
「他の国の優秀な魔法使いや戦士が魔王軍の戦いで倒れる中で、あのジジイだけはしぶとく生き残り続けた。結果、ヤツはいつのまにか討伐軍の幹部にまで成り上がったそうだ」
そんな中、魔王軍あいてに常に劣勢だった討伐軍に朗報がもたらされた。
「討伐軍の中心だったカトファリウス共和国が伝説に過ぎないと思われていた勇者召喚魔方陣を手に入れたと発表したんだ」
多数の有能な人材を失い瓦解寸前だった彼らは、最後の希望を勇者召喚に託すことにした。
「それで討伐軍に参加した国の生き残っているうちで優秀な魔法使いを集めて儀式を行ったんだが。どうやらストルトスの爺さんは討伐軍の中でも嫌われていたらしくてな。召喚の儀式は爺さんがいない間に行われたんだとよ」
各国の英雄たちが命を落とす中、彼が生き残っていたのは見方を犠牲にして自分だけが逃げたからだ。
そんな噂話が討伐軍の中で広まっていた。
「本当か嘘かはわからねぇ。でもアイツのことだ。やっていてもおかしくねぇ」
どちらにしろストルトスを含むバスラールからの派遣団は勇者召喚に関わることが出来なかった。
それだけは事実であった。
ルリジオンの話が一区切りした頃、風呂場からリリエールがリビングに戻ってきた。
ふわりと香ってくる石けんの匂いと共にリビングを通り過ぎた彼女は、そのまま一端キッチンへ向かう。
そして戻ってくると手に牛乳らしき飲み物が入ったコップを持っていた。
「ちゃんと頭拭かないと風邪引くぞ」
ルリジオンがそう言いながら横にちょこんと座ったリリエールの頭を、彼女が首から掛けていたタオルで拭き直す。
風呂でシャワーを浴びたときに驚いたのが普通に液体石けんとタオルがあったことだ。
といっても日本で売っているものとは違って手作り感溢れるもので。
石けんは適当な空き瓶に入れてあり、タオルも縫合はかなり荒い。
たぶんルリジオンの手作りなのだろう。
「ったく。手の掛かるガキだぜ」
「ごめんなさーい」
一通り頭を吹き終わるとルリジオンは「よし」とリリエールの頭をポンポンと叩く。
そんな二人の姿はまるで本当の親子のように見えなくも無い。
「それじゃあ俺様がどうして魔方陣を書き換えてこの廃村に来た経緯を話そうか」
リリエールの髪を拭き終わったルリジオンが俺の方に向き直る。
「といってもお前さんも大体予想は付くだろ?」
「ええ、まぁ」
ここまでの話を聞けば、彼がどうして王国からリリエールを連れて逃げて来たのかは想像は出来る。
「リュウジ。お前さんの国ではどうだったか知らねぇが、この大陸の国では教会ってのはかなり影響力を持った組織なんだ」
ファロス教の総本山である新生国家ファロスと違い、バスラール王国は一神教の国では無い。
それでも王国内でもファロス教の影響力は強く、王家や国を動かす人々も教会関係者を軽んじることは出来ないらしい。
「影響力を持つってことは同時に腐敗を生む。いろんな国とファロス教の間にも、そりゃここでは言えねぇような関係が出来上がっててな……若い頃はそれが許せなかったんだが……まぁ、その話は本題にゃかんけぇねぇ」
ルリジオンはそんな腐敗した関係を利用して、クラレ家当主から聞いた話の裏付け調査を行った。
そして証拠は簡単に見つかった。
「魔王を倒した勇者クェンジーの話は前にしたが、その勇者を召喚したのは遙か北方のカトファリウス共和国って国を中心にした国家連合だが、魔王討伐軍にはバスラール王国も参戦していた」
といっても大々的に軍隊を派遣していたわけでは無い。
魔王軍が本拠地としていた北の果て。
その最前線までの間には複数の国があり、その場所から一番遠いバスラール王国は軍を派遣するには難しい場所にあった。
結果バスラール王国は軍の派遣という形ではなく有能な人材の派遣と後方支援という形で参戦することを決めて、国内の優秀な人材をまとめ派遣団として最前線へ送り込んだ。
「その派遣団を率いていたのがストルトスの野郎だ」
ストルトスは魔王討伐軍に参加すると順調に武勲をあげていった。
俺たちにとっては許せない相手ではあるが、その実力は本物で。
さらに戦場での立ち回りにも長けていた。
「他の国の優秀な魔法使いや戦士が魔王軍の戦いで倒れる中で、あのジジイだけはしぶとく生き残り続けた。結果、ヤツはいつのまにか討伐軍の幹部にまで成り上がったそうだ」
そんな中、魔王軍あいてに常に劣勢だった討伐軍に朗報がもたらされた。
「討伐軍の中心だったカトファリウス共和国が伝説に過ぎないと思われていた勇者召喚魔方陣を手に入れたと発表したんだ」
多数の有能な人材を失い瓦解寸前だった彼らは、最後の希望を勇者召喚に託すことにした。
「それで討伐軍に参加した国の生き残っているうちで優秀な魔法使いを集めて儀式を行ったんだが。どうやらストルトスの爺さんは討伐軍の中でも嫌われていたらしくてな。召喚の儀式は爺さんがいない間に行われたんだとよ」
各国の英雄たちが命を落とす中、彼が生き残っていたのは見方を犠牲にして自分だけが逃げたからだ。
そんな噂話が討伐軍の中で広まっていた。
「本当か嘘かはわからねぇ。でもアイツのことだ。やっていてもおかしくねぇ」
どちらにしろストルトスを含むバスラールからの派遣団は勇者召喚に関わることが出来なかった。
それだけは事実であった。
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