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失敗か成功か
勇者召喚の儀式に使われる魔方陣は北方の魔王によって滅ぼされた部族が秘匿していたものだった。
それを部族の生き残りが命からがらカトファリウスに伝えたのだという。
「まぁ、結果ストルトスたちがハブられたまま勇者召喚が行われてクェンジーが異世界から召喚されたんだが。どうやらそのときは生け贄は使われなかったらしくてな」
「それはどうして?」
「わからねぇが、どこの国も身内を生け贄になんてしたくなかったのか、それとも元々勇者召喚に生け贄は必要なかったのか」
結局それでも召喚に成功し、勇者クェンジーによって魔王は倒された。
結果だけ見れば大成功だった。
「結果だけ見ればめでたしめでたしだ。だけど一人だけめでたくないやつがいた」
「ストルトスですね」
「ああ。ヤツは自分が勇者召喚の儀式からハブられたことを相当根に持っていたらしくてな。戦勝ムードで浮かれてる他の奴らの隙を突いて勇者召喚の召喚陣の写しを盗んで、戦勝パレードにすら出席せずに帰国したってんだから笑えねぇ」
そしてバスラール王国に戻った彼は、自らを排除して自分たちだけ賞賛を受けた討伐軍の奴らに復讐しようと暗躍し始めた。
異世界の勇者の力を目前で見せつけられた彼は、王国の戦力として勇者を召喚することを追うに提言した。
魔王が現れる前から北方への進出を望んでいた国王にとって、ストルトスから伝えられた勇者の力はさぞかし魅力的に響いたのだろう。
早速国王はストルトスに勇者召喚の儀式を進めるようにと勅令を言い渡す。
「そして勇者を意のままに操る手段として……」
ルリジオンはそこまで言ってから口を紡ぐ。
その生け贄になるはずだったリリエールが隣にいるからだろう。
俺は無言で頷いて彼が言いたいことを理解したことを伝えた。
「そんなことを調べているうちに儀式の日が近づいてリリが王城へ連れてこられた」
「あのときルリに初めて会ったんだよね」
「あ、ああ。そうだったな」
本当は教会で既に会っているはずだが、ルリジオンはそのことはリリエールに言っていないらしい。
「今と違って綺麗な神官の服でね。髭も剃っててかっこいいおじちゃんだったんだよ」
「あのときは周りに信頼させるために真面目な神官を装う必要があったからしかたねぇだろ」
「でも並んでた神官さんの中でルリだけが悲しそうな目をしてくれてたんだ……だからリリはルリの言うことを信じようって思ったの」
儀式の数日前。
ルリジオンたちファロスの神官によってリリエールの『浄化』が行われた。
浄化と言っても実際は生け贄となるリリの体に魔力を注ぎ込むというものだったそうで。
それは召喚する者をより強力にするために行われたのだとという。
「そのあとリリね。とっても狭い箱の中に閉じ込められちゃったんだ。あのときは泣いちゃった」
狭い箱というのは生け贄を儀式の間、閉じ込めておくために使われるもので、一メートルほどの正方形の木箱だそうだ。
正方形の六面には召喚のための魔方陣が描かれていて、儀式が始まるとその全ての魔方陣に魔法使いたちによって魔力が流し込まれ起動させられる。
その時のことを思い出したのだろう。
リリエールの顔は僅かに青ざめていた。
「俺様が助けたときに漏らしてなかっただけ立派だと思うぜ」
「もうっ! ルリはいっつもそんなことばかり言うんだからっ!」
ぽかぽかと隣に座ったルリジオンを、顔を真っ赤にしながら叩くリリエールだが、実際十二歳の子供がそんな箱に突然閉じ込められるという状況は途轍もない恐怖だったろう。
それをルリジオンは軽口を叩くことで和らげようとしたのかもしれない。
「そんなリリを助けてから代わりに食料庫から持って来た豚肉の塊とか放り込んでな」
「豚肉?」
「ある程度重さがないとバレんだろ? それに儀式が発動すればどうせ箱ごと中身は消滅しちまうからバレねぇだろうと思ってたんだよ」
だが結果的にルリジオンがリリエールと共に王城を脱出しようとした所を巡回していた兵士に見つかってしまったことでリリエールが逃げ出したことはバレてしまったのだという。
「それで城の中を逃げ回ってたら偶然あの召喚の間と隣りの転送の間を見つけちまってな」
「それを使ってここに逃げてきたんですか?」
「まぁそういうことだ。一応追ってこれねぇように魔方陣に細工はしたんだが、ついでに召喚魔方陣の方も書き換えておいたんだよ。どうせストルトスの爺さんは魔方陣の細かい部分なんざわかんねぇって思ってな」
ルリジオンは勇者召喚の魔方陣を見て、その中で彼が理解できた召喚する『モノ』を示す部分を書き換えて、最強の勇者では無く最弱の魔物が呼び出される様に書き換えた。
「俺様はてっきりホーンラビットくらいのモノが召喚されるって思ってたんだが。どうやら術式を読み間違えていたみてぇだ……すまねぇな」
「成功ですよ」
「は?」
何を言ってるんだお前はとでも言いたい表情のルリジオンに、俺は彼の間違いを正すためにこう言ってやった。
「成功したからこそ王国にとって戦力にならない俺みたいな無能な者が召喚されたんですから」
それを部族の生き残りが命からがらカトファリウスに伝えたのだという。
「まぁ、結果ストルトスたちがハブられたまま勇者召喚が行われてクェンジーが異世界から召喚されたんだが。どうやらそのときは生け贄は使われなかったらしくてな」
「それはどうして?」
「わからねぇが、どこの国も身内を生け贄になんてしたくなかったのか、それとも元々勇者召喚に生け贄は必要なかったのか」
結局それでも召喚に成功し、勇者クェンジーによって魔王は倒された。
結果だけ見れば大成功だった。
「結果だけ見ればめでたしめでたしだ。だけど一人だけめでたくないやつがいた」
「ストルトスですね」
「ああ。ヤツは自分が勇者召喚の儀式からハブられたことを相当根に持っていたらしくてな。戦勝ムードで浮かれてる他の奴らの隙を突いて勇者召喚の召喚陣の写しを盗んで、戦勝パレードにすら出席せずに帰国したってんだから笑えねぇ」
そしてバスラール王国に戻った彼は、自らを排除して自分たちだけ賞賛を受けた討伐軍の奴らに復讐しようと暗躍し始めた。
異世界の勇者の力を目前で見せつけられた彼は、王国の戦力として勇者を召喚することを追うに提言した。
魔王が現れる前から北方への進出を望んでいた国王にとって、ストルトスから伝えられた勇者の力はさぞかし魅力的に響いたのだろう。
早速国王はストルトスに勇者召喚の儀式を進めるようにと勅令を言い渡す。
「そして勇者を意のままに操る手段として……」
ルリジオンはそこまで言ってから口を紡ぐ。
その生け贄になるはずだったリリエールが隣にいるからだろう。
俺は無言で頷いて彼が言いたいことを理解したことを伝えた。
「そんなことを調べているうちに儀式の日が近づいてリリが王城へ連れてこられた」
「あのときルリに初めて会ったんだよね」
「あ、ああ。そうだったな」
本当は教会で既に会っているはずだが、ルリジオンはそのことはリリエールに言っていないらしい。
「今と違って綺麗な神官の服でね。髭も剃っててかっこいいおじちゃんだったんだよ」
「あのときは周りに信頼させるために真面目な神官を装う必要があったからしかたねぇだろ」
「でも並んでた神官さんの中でルリだけが悲しそうな目をしてくれてたんだ……だからリリはルリの言うことを信じようって思ったの」
儀式の数日前。
ルリジオンたちファロスの神官によってリリエールの『浄化』が行われた。
浄化と言っても実際は生け贄となるリリの体に魔力を注ぎ込むというものだったそうで。
それは召喚する者をより強力にするために行われたのだとという。
「そのあとリリね。とっても狭い箱の中に閉じ込められちゃったんだ。あのときは泣いちゃった」
狭い箱というのは生け贄を儀式の間、閉じ込めておくために使われるもので、一メートルほどの正方形の木箱だそうだ。
正方形の六面には召喚のための魔方陣が描かれていて、儀式が始まるとその全ての魔方陣に魔法使いたちによって魔力が流し込まれ起動させられる。
その時のことを思い出したのだろう。
リリエールの顔は僅かに青ざめていた。
「俺様が助けたときに漏らしてなかっただけ立派だと思うぜ」
「もうっ! ルリはいっつもそんなことばかり言うんだからっ!」
ぽかぽかと隣に座ったルリジオンを、顔を真っ赤にしながら叩くリリエールだが、実際十二歳の子供がそんな箱に突然閉じ込められるという状況は途轍もない恐怖だったろう。
それをルリジオンは軽口を叩くことで和らげようとしたのかもしれない。
「そんなリリを助けてから代わりに食料庫から持って来た豚肉の塊とか放り込んでな」
「豚肉?」
「ある程度重さがないとバレんだろ? それに儀式が発動すればどうせ箱ごと中身は消滅しちまうからバレねぇだろうと思ってたんだよ」
だが結果的にルリジオンがリリエールと共に王城を脱出しようとした所を巡回していた兵士に見つかってしまったことでリリエールが逃げ出したことはバレてしまったのだという。
「それで城の中を逃げ回ってたら偶然あの召喚の間と隣りの転送の間を見つけちまってな」
「それを使ってここに逃げてきたんですか?」
「まぁそういうことだ。一応追ってこれねぇように魔方陣に細工はしたんだが、ついでに召喚魔方陣の方も書き換えておいたんだよ。どうせストルトスの爺さんは魔方陣の細かい部分なんざわかんねぇって思ってな」
ルリジオンは勇者召喚の魔方陣を見て、その中で彼が理解できた召喚する『モノ』を示す部分を書き換えて、最強の勇者では無く最弱の魔物が呼び出される様に書き換えた。
「俺様はてっきりホーンラビットくらいのモノが召喚されるって思ってたんだが。どうやら術式を読み間違えていたみてぇだ……すまねぇな」
「成功ですよ」
「は?」
何を言ってるんだお前はとでも言いたい表情のルリジオンに、俺は彼の間違いを正すためにこう言ってやった。
「成功したからこそ王国にとって戦力にならない俺みたいな無能な者が召喚されたんですから」
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