【完結済】婚約破棄から始まる物語~真実の愛と言う茶番で、私の至福のティータイムを邪魔しないでくださいな

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3、いらぬ恥をかかずにすんで良かったですわね、殿下。

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 あの舞台のように卒業パーティーで婚約破棄を叫ばなかったことだけは、褒めて差し上げます。皆さんのせっかくのパーティーを台無ししてしまいますもの。この店にも多くの目はございますが……パーティーよりもマシでございましょう?いらぬ恥をかかずにすんで良かったですわね、殿下。



 最後に、一応確認しておきましょう。答えは分かり切っておりますけれども、単なる様式美として。

「ところで殿下。陛下にはもうご了承いただいたのでしょうか? 婚約をやめたいというお気持ちに変わりはございませんね?」

 サアッと青ざめ顔を強張らせるお二人。
 でしょうね。陛下が自らの首を絞めるようなことをお認めになるとは思いませんもの。
 だからこそお二人はわざと人前で婚約破棄と叫び、陛下に事後承諾させるおつもりなのでしょう。
 でもこちらといたしましては願ってもない機会。馬鹿なお二人に感謝です。後から取り消しはさせませんわよ?

「一度口から出た言葉は戻せません。あなたが婚約破棄だとおっしゃり、私はそれを受け入れました。もう覆すことはできませんよ?
そのうえであえてお聞きしたのです」

 婚約破棄はできそうだ、と思ったのか、俄然勢いを取り戻す殿下。

「あ、ああ。父上の了承はとっていない。だが俺が話をすれば認めてくださるだ。
お前のように冷たい女と婚姻を結ぶことなど、あり得ぬ!ゆえにこの婚約は破棄するしかない。
お前がいくら渋ろうと、覆すわけがないだろう! 私が共に生きたいと願うのは」
「ああ、アレックス様!うれしいっ!」

あら、またしても茶番?
誰が何を渋りました?「受け入れた」と申しましたよね?

なんというか……ここまでおバカな方だったとは。でも私には好都合ですわ。

こほん、と小さく咳払いをして、盛り上がっているお二人の注意を引きます。

「陛下にご了承いただいていないのであれば、ご連絡せねばなりませんね。
アレックス様、婚約破棄の理由はどうお伝えになるのですか?
この婚約は王命による政略婚ですのよ?破棄なさるにはそれなりの理由がなければ」






 そもそも、この迷惑な婚約の発端は、側妃さま。
 先ほど申しましたとおり、アホック……失礼、アレックス殿下をお産みになったのは、正妃様ではなく側妃様なのです。

 側妃のアイラ様は、もともとは男爵家のお生まれ。
 アイラさまは学生時代、当時公爵令嬢であらせられた現正妃のミリア様から、婚約者であったサイオン陛下を寝取……こほん、陛下と密やかに愛を育まれ、お腹の御子を盾に無理やり側妃として王宮に入ったお方なのです。
 当然ながら男爵家ではたいした後ろ盾とはなりえません。
 
 さて、高位貴族が下位貴族を娶る場合には「形だけでもどこかの高位貴族の養子にしてから娶る」という段階を踏むのが通常です。
 しかし、婚約者のいる、しかもという貴族の令嬢にあるまじき行為をされたアイラ様は、ミリア様のご実家である筆頭公爵家はもちろん、それに連なる高位貴族たちから反感を買いまくっております。他の貴族たちも同様です。わざわざ正妃になる方の怒りを買ってまで後ろ盾となろうという方などいようはずもございません。
 ご本人に品格や知性があればまだ検討の余地もあったのでしょうが……もとより取り柄と言えばその儚げな容姿と男に取り入る才能のみ。ろくな教養もなく成績は底辺。気取らないという言い方もありますが、要するに異性に対する距離が近いだけ。(陛下はそれを「無邪気」「飾らない性格」と思っていらっしゃるようですが……)貴族としての資質が、周りの者がみな眉を顰めるレベルなのです。
 こんな最低限の礼儀も知らぬようなトラブルメーカーを、誰が養子にしたいと思うでしょうか?

 結局、「いったん後ろ盾となってくれる高位貴族の養女となり、そこから改めて王家に召される」ということすらできぬまま、アイラ様はそのまま「男爵家のご令嬢」として側妃となられたのでした。
 
 ご本人は「陛下に寵愛を受けながら、家格のせいで正妃になれなかった悲劇の側妃」のおつもりのようですが、実際には「第一王子を産み、陛下の寵愛を得ているからなんとか王宮に居ることを許されている」、そういったお方なのです。


 こうして「下位貴族が色地がけで正妃様から陛下を寝取り」、いわゆる「できちゃった婚」により第一王子としてお生まれになったのがアレックス様。いかに危ういお立場なのか、分かりますよね?
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