没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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新たな時代編

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「はぁ……」

岩陰に座りながらレオンは小さくため息を吐く。

目の前では耕した土地で作業をする農民達がいる。

魔法による大規模な開墾を終えた農地では既にレオンにできることはほとんどなく、知識を持った農民達が主導で作業をしている。

それでも普段のレオンならば彼らに何か手伝えることがないかを聞き、魔法など関係なく手伝っていただろう。


しかし、どうにもこの日ばかりは気分が乗らなかった。


「いくらなんでも呆けすぎだ」


口を開けてぼんやりと空を眺めていたレオンに呆れた様子でマークが近づいてきた。

その手には何か手紙のようなものを持っている。


「おいしゃんとしろ。貴族様になったんだからそれらしい姿を領民に見せてやれ。弟が旅立ったからって放心してるんじゃ皆に笑われるぞ」


マークは反応の鈍いレオンの背中をぴしゃりと叩く。

マルクスがクルザナシュを旅立ったのは今朝のことだ。

魔法学院に入学するために今朝早く日が昇る前に馬車に乗って行ってしまった。

それからずっとレオンはこんな調子なのである。


「僕やっぱり王都まで行ってこようかな」


レオンはポツリとそんなことを呟いた。
マークはポカンとした表情になってから大きくため息をつく。


「おい、弟が入学するくらいで心配しすぎだろ。馬車の御者は例年通り魔法使いがやってるし、危険な道も通らない。お前が見に行く必要なんてないんだよ」


マークはそう言って宥めようとするが、レオンは「でも」と反論した。


「でも、旅の途中で馬車が壊れたら? 盗賊に襲われたら?」


マークはさらにため息をつく。


「お前そんなに心配性だったか? とにかく、マルクスのために王都に行くなんて許さないからな」


マークにそう言われてレオンは不貞腐れたように頬を膨らました。


「マークのいじわる」


「バカいえ、甘やかしたらマルクスのためにならないだろうが。魔法学院の入学式は単純に行けばいいってわけじゃない。入学までの旅の過ごし方からもう魔法使いとしての修行が始まってるんだよ」


マークに正論でそう返されてレオンはしゅんとなった。

その様子を見てマークはクスリと笑う。

魔法を使えば国でも有数の実力者のはずのレオンが弟のことで我を忘れているのがおかしかったのだ。

それからマークは手に持っていた手紙を差し出しながら、


「でも、まぁ、王都での用事を済ませた帰りにチラッと学院を覗くくらいならいいんじゃないか?」


と付け加える。

レオンはキョトンとした顔で手紙を受け取る。

手紙の差出人はダレンであった。


「俺のお前宛にさっき使い魔を使って送られてきた手紙だ。詳しいことは読めばわかるけど、すぐに王宮に顔を出してほしいらしい」


レオンとマークの学院時代の友、ダレンは現在魔法騎士団の団長代理として活動している。

そして魔法騎士団は国王からの指示で動く組織。その団長代理から手紙が来たのだから本質的には国王であるヒースクリフがレオンのことを呼んでいると思っていいだろう。


マークはマルクスのことを心配するレオンに、ヒースクリフの用事を済ませた後で様子を見に行くことを提案したのだった。

先程まで呆けていたレオンが突然立ち上がる。


「マーク、ほら早く行こう!」


そう言って急かすレオンにマークは苦笑する。


「急ぎの用らしいから馬車は使えない。少し大変だけど飛んでいくぞ」


そう言ってマークが「浮遊」の魔法を使おうとすると今度はレオンがマークを止めた。


「飛ぶのでも遅いよ。いいから捕まって」


レオンの言葉にマークは不思議そうな表情になったが、促されるままにレオンの腕を掴んだ。

ぐわんと視界が揺れるような感覚がしたかと思えば、気づいた時にはマークはすでに王都の王宮の門の前に立っていたのだった。

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